零れ話: ユビサシ[指さし]

人を指名したり、人数を数えるときの「指さし」は、日本人はあまり気にしない。だが。外国人には嫌がられることがある。 親指を立てるサインは「よくやった(OK)」の意味。 しかし、中東などでは“侮辱”を表すことがあるという。 人差し指中指でつくるおなじみのVサイン。 なに気なしにとっているが、ギリシャでは「くたばれ」の意となる。 無意識なしぐさ、サインも、国によっては別の意思表示として伝わってしまう。気をつけたい。

今日の歳時記: クリノハナ[栗の花]

花栗の ちからかぎりに 夜もにほふ 龍太 梅雨の頃、山道を辿ると、甘くて青臭い栗の花が匂ってくる。足下には雄花の房が散り敷きつめられ、栗の木の梢を見上げると、曇り空に、黄白色の花がたわわに咲いている。 さて、梅雨の語源は「ついる」といわれ、漢字で「栗花落」。 梅雨の頃、栗の花が散る様子を表したものだ。 漢字表記は、梅にとって代わられたが、梅雨はまさに栗の花の時期でもある。

零れ話: 日本酒の始まり

酒をつくることを「醸(かも)す」という。 これは「噛(か)む」が語源である。 つまり、もっとも原始的な酒は、米を口で噛んだものを吐き出し、それを一定期間蓄えてつくったものらしい。 こういった口噛みの酒づくりは、すべて女性によって行われた。 更に、神の祭りで供える「神酒(みき)」は、若い未婚の女性が噛んでつくった酒でなければならなかった。 ところで、酒づくりに携わる人を「杜氏(とうじ)」というが、もともとは、「刀自(とじ)」といい、古語では戸主(とぬし)とし、家事一般をとり仕切る主婦のことを指し、働く男を指したという“刀禰(とね)”の対語にあたる。 このように、酒づくりの風習の裏には、日本人独特の女性崇拝の信仰があったのだろう。

今日の歳時記: ウメ[梅]→梅雨

葉がくれに ありと思ほゆ 実梅かな 虚子 五月から六月にかけて、梅の実は急速に大きくなる。 黄熟しない前の梅の実は、緑々として美しいものだ。 青いうちに取って梅干しにしたり、梅酒をつくったり、砂糖で煮て煮梅にする。 ところで、入梅の時期が話題にのぼる頃、何故、“梅雨入り”と呼ばれるのだろうか… 一つには、長雨で湿度が高いために黴(かび)が発生しやすく、「黴雨(ばいう)」といわれていたが、梅の時期と重なることから、同じ音を持つ「梅雨」へと転じたとある。

零れ話: クワバラ、クワバラ

もともと、“雷除け”の呪いであるが、時代劇などでは、幽霊などの出るシーンで「クワバラ、クワバラ」といって、腰を抜かすことがある。 これは、「桑原」が菅原道真のかっての所領で、政敵・藤原時平のざん言で太宰府に流されて死去した。その後、その恨みが雷となって、都によく落雷した。しかし、旧所領には落ちなかった故事による。 更には、和泉国に「桑原井戸」というものがあって、昔、この井戸に雷が落ちた。村人が蓋をしたので、永久にこの土地には落ちないと誓って、出してもらったとの昔話があるというが、このへんに起源があるようだ。

今日の歳時記: シジュウカラ[四十雀]

四十雀の つれ渡りつつ 鳴きにけり 石鼎 春夏の山林などで、ツビーッ、ビーッと高くほがらかにさえずる。 雀よりやや小さい小鳥で、頭とのどが黒、ほおと胸・腹は白、翼と尾は青黒い。 人になれやすく、挙動敏活で愛らしい鳥である。 更に、単語を組み合わせて文にし、仲間へ伝達する能力を持つという。 語順を正確に理解し、音声を理解する能力は他に例がないといわれる。

零れ話: イワナ[岩魚]

寒冷な水を好み、終生淡水に留まって海には下らない。 あめ鱒の陸封された種類で、本州・四国・北海道の高さ千mほどの山間渓流に生息する。 鮎より上流が“山女(やまめ)”で、山女より上流で泳ぐのが“岩魚”である。 昆虫などに飛びついて食べる。 時には、蛇を捕らえて食うこともあるらしい。 だが、用心深い魚で、驚くと直ぐ岩陰に隠れてしまうところから、この名がついたともいわれる。 夏山の山開きの頃が岩魚釣りの季節で、独特の風味があり、美味しい。

御岳山→日の出山→大楢峠

青梅線御岳近くの駐車場で自転車に乗り、御岳山ケーブルの滝本駅までの急坂を、休み休みしながら、一度も降りることなく登った。相棒を待つあいだ、動悸が鎮まるまで、路上に仰向けになっていた。なぜ、こんなに体を酷使するのだろう。 ケーブルで御岳山駅まで自転車を運ぶ。御岳山駅から日の出山まで山道にはハイカーもさほど多くなく、快適な走行を楽しむ。つゆ入りだというのに、日を浴びた樹々の葉が透きとおって輝いている。 日の出山の下で昼食をすませ、コッヘルで湯を沸かしてコーヒーを飲む。これが僕ら流の贅沢なのだが、いつもながらおいしい。前を通過して行く女性一人や二人連れハイカーに話しかけるのも楽しい。 同じ山道を戻り、御岳山の手前で大楢峠に下るルートに入ると、ハイカーもほとんどいない。急峻な断崖沿いの山道は細く、いまにも崩れそうな道が続く。バランスを崩せば断崖を真っさかさま、と思うと怖い。 大楢峠に着いて、きょう2杯めのコーヒーを飲んでいると、予定していたルートを先に行ったハイカーが、小熊を見たと言って戻って来たので、林道を下ることにした。 瓦礫の多いラフな林道を猛スピードで下るのも楽しい。街道に出る手前のトンネルのなかは漆黒の闇だった。最後は街道をクルマに抜かれながら走って御岳の駐車場へ。

今日の歳時記: ヤマモモ[楊梅]

農繁期 楊梅に子ら よぢのぼる 青畝 山桃とも書く。 楊梅の実は田植えの頃に熟す。 大きさI、2㎝の球形で、表面に小さなブツブツが沢山ついている。 熟すると紫赤色になる。 南国の山野に自生し、甘酸っぱい味がして、美味しい。 伊豆高原地区が実のなる最北端といわれ、伊豆急行線の各駅では、自動販売機で「やまももドリンク」という清涼飲料水が売られているらしい。

零れ話: 時の記念日

日本書紀によると、天智天皇の十年(671)四月二十五日、初めて漏刻(ろうこく・水時計)が使用された。 この日が、陽暦の六月十日に当たることから、これを記念して「時の記念日」とした( 大正九年 ) 時間を尊重し、正確な時間の観念を普及させることにより、生活の合理化を進めることを目指したらしい。 ところで、記念日ではあったが、祝日でなない。 現在の日本では六月に“国民の祝日”がないため、「時の記念日」を六月の“国民の祝日”にすべきとの意見も多いが、実現には至っていない。

今日の歳時記: カッコウ[郭公]

うき我を さびしがらせよ かんこ鳥 芭蕉 閑古鳥(かんこどり)、かっこ鳥ともいう。 五月半ばに南方から渡来する夏鳥で、山麓または平原の樹林に棲息する。 その名のように、カッコ〜、カッコ〜と鳴く。 八月中旬南下する。 卵はホウジロ、モズなどの巣に産み落としふ化させる。(托卵) 羽色は雌雄同色で、時鳥と似ている。 「閑古鳥が鳴く」→ 寂れた状況をさす表現だが、地方に行くほど、少子・高齢化のなかで“限界集落”の様相を濃くしている。 これへの対策は、行政は勿論だが、住民個々も考えないと…。 傍観していては、何の解決にも、結びつかない。

零れ話: アジサイの花言葉[移り気]

アジサイは「紫陽花」と書くことから、中国からの渡来種にみえるが、れっきとした日本の自生種である。 花の色が“クロロフィル(葉緑素)”、“カロチノイド(黄の色素)”、“フラボン(白の色素)”で構成されていて、先ずクロロフィルが色あせるとカロチノイドが目立ってくる。 次いでカロチノイドも分解し、フラボンが強くなり、見た目は青くなる。 この頃、光合成によって葉が作った糖分が花のほうにまわってくるので、“アシトシアン(赤の色素)”に変わり、その後、細胞液の酸でマグネシウムが分解し、カリウムが結合し紫に変化する。 よって、アジサイは、緑 → 黄 → 青 → 赤 → 紫 の順にかわるので、“七変化”(移り気)ともいわれる。 梅雨の季節をむかえつつあり、この時期を色どる代表的な花を愛でて、現状に右往左往することなく、己の行き着く先を“あきらめたい(→ 明らかに見定めたい)”

今日の歳時記: ホトトギス[時鳥]

午すぎて 旅に在りけり ほととぎす 波郷 子規、不如帰、杜鵑、杜宇、蜀魂などとも書く。 古来、「春の花、夏の時鳥、秋の月、冬の雪 」が四季を代表する詠題とされた。 多くは、五月中旬頃に渡来し、晩秋までいて南方に渡る。 低山帯から高山の林に棲息し、昼夜の別なく、忙しげに鳴く。 「テッペンカケタカ」「本尊かけたか」「特許許可局」など、さまざまに聞きなしている。 一方、「あの声で 蜥蜴食らうか 時鳥」の句がある。 情緒あふれる鳴き声の美しさから、詩歌によく詠まれるが、その同じ口でトカゲを食らうという。 転じて、人や物事は外形で判断しては、間違いを生じやすいとの戒めとしていわれる。

零れ話: “もの”には心が…

「進歩の先には、幸せがあるのか…」との主張がある。 ある方が、「人間は、便利なものに弱い。便利なものほど良いものと思い込み、本当に良いものを捨ててしまっている」とおっしゃっていた。 ITに振り回され、心(“もの”の良さ…)を忘れがちになっている現代人を見通した言葉である。 己を振り返って、“ドキリ”とさせられる。

今日の歳時記: ホタル[蛍]

草の葉を 落るより飛ぶ 蛍かな 芭蕉 初夏の夜、水辺に光りながら飛び交う蛍は美しい。 その神秘的な光は、宇治の蛍合戦など、いろいろな伝説を生んだ。 腹端に複雑な発光器があり、熱を伴わない鮮やかな光を放つ。 小型のを“平家蛍”、大型のものを“源氏蛍”といい、また、山地には“姫蛍”がいる。 蛍は夏だけのものと思いがちである。しかし、地理・気候が絡んでいるのか、朝鮮半島、中国に分布する“アキマドボタル”は秋に成虫が発生し、西表島で発見された“イリオモテボタル”は真冬に発光するらしい。 これからの夕方、避暑をかねて、涼やかな輝きを楽しみたい。

今日の歳時記: オドリコソウ[踊子草]

たんぽぽも まだ咲てあり をどり花 太無 晩春から初夏にかけ、山野や路傍の日陰の地を好んで生じる草で、しそ科の多年草。 高さ30〜50㎝、茎は方形で質は柔らかく、葉の面はしわが多く、縁にのこぎり歯をもっている。 初夏の頃、白色または淡紅紫色の花を開く。 優美な花で、花の形が人が笠をかぶって踊る姿に似ていることからこの名がある。

零れ話: 六月の異名・水無月

そろそろ、田植えもおわり、大きな農事をみなし尽くした…との意味から、「 皆仕尽(みなしつき)月 」「 皆尽(みなつき)月」の略である。 あるいは、田植えもすみ、田ごとに水をたたえている月だともいう【 水無月 → 水“無(の)”月 】 他には、涼暮(すすくれ)月、常夏(とこなつ)月、鳴雷(なるかみ)月、などがある。

今日の歳時記: アリノミチ[蟻の道]

蟻の道 雲の峰より つづきけん 一茶 蟻はどこに行っても目につく。 黒色の大きな山蟻、小さな赤蟻をはじめ、我が国にも100種類以上はいる。 蜜蜂同様、女王蟻、雄蟻、働き蟻が立派な社会生活を営んでいる。 日常見かけるのは働き蟻で、この蟻たちの通路を“蟻の道”という。 また、蟻の動きから、天気予測ができるとの意味で「蟻の道切り」ともいわれ、 ⚪︎ 巣穴を塞いで、高台に移動するときは、大雨が降る前兆。 ⚪︎ 羽蟻が多く出れば、雨が近い。 ⚪︎ 巣穴を出て、忙しく行き交う時は、大風の前兆。 判断材料の一つに加えたい。

零れ話: ニシン[鰊・鯡]の語源

“春告魚”でもあったが、その身を二つに裂いて干すことから「ニ身」(にし)んだといい、江戸時代、松前の人は「ニシンは魚に非ず、松前の米也」として、魚偏に非と書いて「鯡」と唱えたという。 「鰊(れん)」の字は、中国では「小魚の名」となっている。 アイヌ語でニシンは「カド」といい、ニシンの卵を“数の子”というが、これは「カドの子」がなまったものらしい。