「一茶発句集」冬の部季語師走、「文化句帖」文化1年12月26日(晴)より
鎌倉圓覺寺教導日本橋ニ晒、玉の盃そこなきがごときといへど色好むハ人性にして好ざるハ獲麟よりも稀也、あるハ染どのゝ姫を思ひ又ハ物洗ふ女に迷ふ、やごとなき僧正、雲に住山人する此一筋ハ踏とめがたくやありけん、僧教導ハ佛道のいさほしも九五近き身の戒を破りし罪となん、巷に面をさらさるゝ、よ所目さへいとをしくにが〴〵しくぞ侍る
冬14 選當*し庵に寝ても師走哉 化1 *富くじ
ふりがな一茶発句集冬1に載っている上の句について考える。句だけを読んでその意味を推測することもできる。世間が一斉に忙しくなる師走だというのに己は富くじを買い、ありもしないことを夢みて草庵で寝ている。こんな解釈ができるだろう。
前書きの文章を読んでからこの句を読むと、別の解釈が浮かんで来る。圓覺寺の高僧教導が女犯の罪で人々が忙しげに行き交う日本橋に晒されている。性慾は人の性だから高僧だって迷うこともあるだろうに教導は気の毒なことだ。
自分は師走だというのに富くじを買って草庵で横たわっている。俳諧師になろうとしている己も教導も境遇こそ違え師走の世間とは関係なく過ごしている。彼の孤独と惨めさが思いやられ、自分の身の上に重ねて暮ゆく年の瀬に抗っているかのようだ。
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