零れ話: フキノトウ[蕗の薹]

早春、雪の解けるころ、土手や堤の中腹に、ぽっちりと出た緑色の芽がある。蕗の薹である。これは蕗の根茎から出る花軸で、円い球状をなし、新鮮な淡緑色であるのでよく目につく。 これを摘んで食用にするが、ほろ苦いなかに独特の風味があり、春を舌で感じる機会となる。

今日の歳時記: スグロノススキ[末黒の薄]

並び立つ 末黒薄や むちのごと 光王 春先に焼いたあとの野山から、生いだした薄のこと。 焼け残りの古株から、青々と芽を出しているものもあり、早々と萌え出た薄の先が、黒く焦げているものもある。 この末黒の薄は、やがてニメートルにも背が伸び、秋になると穂をだす。 黒生(くろう)の薄とも言い、その野を末黒野と言う。

零れ話: ヤマヤキ[山焼]

春早く、山の枯木・枯草を焼きはらうこと。野焼きともいう。 害虫駆除と施肥を兼ねていて、山の中腹に、山焼の白い煙が流れている光景を見かける。 一月十五日に行われている奈良若草山が、美しくも壮観なことで有名だが、近年、新成人の日の変更に伴い、一月の第四土曜日が開催日となっている。 大掛かりな山焼のときは凄まじい光景を呈する。先日、逃げ場を失って、亡くなられた方いる。気をつけたい。合掌…

今日の歳時記: クロッカス[洎夫藍]

早春の サフラン花を もたげたり いはほ ハナサフランとも呼ばれる。 松葉状の葉を三、四枚なした花茎を出し、その先につぼみがつく。匂いがいい華麗な六弁花は、早春の庭に相応しい。 春咲きと秋咲きがあるが、秋咲きのほうは薬用という。 クロッカスは、ギリシア語の“ヒモ”の意、雌しべが糸状だかららしい。

零れ話: ハルイチバン[春一番]

立春以後、初めて吹く強い南風のこと。 もとは、壱岐の漁師が春になって最初に吹く南風をさしたといわれるが、今では、新聞紙上でも話題となっている。 二月も中旬を過ぎると、低気圧が日本海側を通って発達し、これに向かって太平洋側から強い南風が吹き込む。 この頃から、いよいよ春の訪れ・暖かさが感じられるようになる。

今日の歳時記: シタモエ[下萌]

外套を かゝへてたたずむ 下萌えに 冬一郎 春先になると、一雨ごとに土中から、青い草が萌え出してくる。 “春”の字は、地上に芽が出てくることを示す象形文字という。 野原や道端のそこここで新芽を見出すと、瑞々しい春の息吹を感じる。

零れ話: サツマイモ[薩摩芋]

徳川時代の中頃から、日本列島はしばしば飢饉にみまわれた。 その飢饉から農民を救ったのがサツマイモである。 薩摩の国にサツマイモを伝えたのは指宿郡の前田利右衛門で、密貿易の際に、中国から持ち帰った(1705)。 これを薩摩の国から持ち出したのが、伊予国の下見(あざみ)吉十郎で、藩令を犯し、密かに持ち出したという(1732)。 サツマイモを全国的に普及させたのが青木昆陽。「蕃薯(ぱんしょ)=“薩摩芋の異名”考」を著わし(1734)、吉宗に上書した。 青木の努力で、幕府の手で栽培法が研究され、これが普及に貢献したとされ、「甘藷(かんしょ)先生」と呼ばれた。

今日の歳時記: キタマド[北窓]

北窓を 開け父の顔 母の顔 青畝 長い冬の間、閉じたままの北窓を開けるのは、春を迎える喜びの一つである。天気の良い日を選び、チリやホコリにハタキをかけると、キラキラと光舞って外に出てゆく。これまで薄暗く 陰気であった家の中が、パッと明るくなる。在りし日の、懐かしい顔が脳裏に浮かぶ。

零れ話: ハツウマ[初午]

二月に最初の午(うま)の日を「初午」といって、全国のお稲荷さんで縁日が開かれる。元来、地方には山の神信仰があり、春に山の神が田におりてきて、秋の収穫が終わると、再び山に戻ってゆくと思われていた。 何故、二月か…、京都伊奈利山の山の神の祭祀(さいき)権を土地の帰化豪族がにぎり、山上に神社を祀った。その日が二月の初午だったからという。 伊奈利は稲生(いねなり)の転生で、神が稲を背負っている姿から稲荷という字が生まれたと伝えられる。 キツネは…、真言密教の影響で、神がキツネに乗っているという伝承から稲荷信仰と結びついたのである。

零れ話: リンカーン

西部の貧しい開拓者の家に、1809年の2月12日に生まれた。 苦学して弁護士になり、奴隷制度に反対し、1960年に共和党より推されて大統領になる。その結果、有名な南北戦争となるが、彼の北軍の勝利に終わり、奴隷解放がなされた。1964年に再選されたが、翌年、南部出身者によって暗殺された。 ゲテッスバーグにおける「人民の 人民による 人民のための政治」という演説は、民主主義の理念として有名である。 現大統領 トランプ氏は如何に… photo(c) Wikipedia

今日の歳時記: 建国記念日

人の世に なりても久し 紀元節 子規 この日は、戦前は“紀元節”といい、四方拝・天長節・明治節とともに、四大節として祝われていた、 「日本書紀」にある神武天皇が即位したといわれる日を、陽暦に換算した日である。 戦後、様々な論議を呼んだが、結局、昭和四十一年に国民の祝日に復活した。 しかし、未だに、「にっぽん」なのか、「にほん」かも定まっておらず、不透明な事項が多い。

零れ話: ネコ[猫]の渡来

今では屋内や路地裏をわがもの顔に闊歩し、はたまた小説の主人公にさえなっているネコも、古の日本には住んでいなかった。 ネコが登場する最も古い文献は「日本霊異記(平安時代)」である。 ネコの先祖は、エジプトの野生ネコであるリビアネコで、初めは狩猟用に飼われた。 仏教の普及による仏典と共に、インド・中国を経て入ったようで、書物がネズミにかじられて困ったことからと言われる。 日本では仏教の正式伝来以後とされている。

今日の歳時記: ハルメク[春めく]

春めきし そゞろ心や 衣を裁つ くに女 二月、三月のまだ寒い中にも、寒さがゆるみ、春色が目に見えて濃くなるのが感じられるときがある。南国では、すでに太陽がキラキラとかがやき、子ども達は戸外へ出て、嬉々として遊ぶ。 わたし達の気持ちも生き生きとしてくる。

零れ話: タンカ[弾呵]

どっかの国のおじさんが弾呵を切りまくっている。 歯切れはいいが、何処か、“ジコチュウ”の感がある。 もともとは、経典の中で、一つの教えにとらわれている者を諭す意であったが、歯切れのいい言葉でまくしたてることから、江戸っ子の口調を意味するように転じた。 誰か、本来の「弾」→ 罪を正し、「呵」→叱る…方が現れないものか ?

今日の歳時記: ウメ[梅]

むめ一輪 一りんほどの あたたかさ 嵐雪 桜と並び 我が国の代表的な花木。 百花に先んじて、残雪溶けややらぬ山野に、高い香気を放っ咲く。 気品ある清雅花として 古来より数多く歌われ、名歌も多い。 別名に好文木(こうぶんぼく)、春告草(はるつげぐさ)、香散見草(かざみぐさ)、匂草(においぐさ)などがある。

零れ話: ハッサク[八朔]

旧暦の八月“朔日(一日)”頃にとれる。 現代では、十一月頃から収獲を始め、店頭に出回るのは寒くなってからである。原産地は広島の因島。栽培は、他の柑橘類に比べて容易なため、広島のほか和歌山などで作られている。 ハッサクは夏ミカンよりやや小さく、果汁は少ないが皮が薄く、香りもいい。 グレープフルーツのように冷やして横二つに切り、砂糖・ハチミツなどをかけてたべるといい。

今日の歳時記: セリ[芹]

やはらかき 芹の畔踏み 酒買いに 欣一 せりは、早春、至るところの小川や谷間の湿地に、白い根と瑞々しい新葉を出す。 春の七草の一つで、香しい香り、芳香が印象にのこる。 万葉の昔から、早春の食卓を飾り、味わい深く、ビタミンA・B・Cを含み、栄養価も高い。 古名を、根白草・つみまし草、ともいう。

零れ話: リッシュン[立春]

二十四節気の第一。 節分の翌日で、二月四日に当たる。 暦の上では、漸く春になったということで、まだまだ寒さは厳しいが、流石に、日は長くなり、野には草花が芽吹いてくる。 九州など暖かい地方では、梅も咲き始める。 まさに、「春立つ」の気配…

今日の歳時記: セツブン[節分]

節分や 鬼もくすしも 草の戸に 虚子 節分は、季節の変わり目を意味し、冬と春の分岐点。 この日の夜、寺社では悪魔を追い払い、春を迎える意味で、追儺(ついな)が行われる。民間でも、豆をまいたり、イワシの頭や柊(ひいらぎ)の枝を戸口にさしたりする。 古くは、毎年、大晦日の夜に疫鬼を払い、新しい季節を迎えるために、宮中で行った儀式であったらしい。