一茶: 蝶 2/3

一茶発句集春の部<蝶>の2回目分を掲げる。蛙と違って夫婦で描かれる蝶が多く、小蝶もよく登場する。たとえば、「たの(頼)もしやしかも小こてふ(蝶)の若夫婦わかふうふ 」(2983)、「はつ(初)蝶てふの夫婦ふうふ連づれして来きたりけり」(2991)、「てふ小こてふ小蝶こてふの中なかの山家やまが哉」(2938)などがある。

ふりがな小林一茶発句集春7: 蝶 2/3
2931 廿日はつか日ぐらし[の]里
寺山てらやまや児ちご[は]ころげる蝶てふはとぶ(飛)
七番日記 化9
2932夜明よあけから小こてふ(蝶)の夫婦ふうふかせ(稼)ぎ哉
七番日記 化9
2933うら住ずみや五尺ごしやくの空そらも春はるのてふ(蝶)
七番日記 化10
2934けさの雨あめ蝶てふがねぶつ(舐)て仕廻しまひけり
七番日記 化10
2935するが(駿河)ぢ(路)は蝶てふも見みるらん不二ふじの夢ゆめ
七番日記 化10
2936茶ちやの淡あはや蝶てふは毎日まいにち来きてくれる
句稿消息 化10
2937蝶てふ来くるや何なんのしやう(仕様)もない菴いほへ
七番日記 化10 (異)『志多良』『希杖本』中七「何のしや〳〵りも」 (類)『文化句帖』化4 「鶯や何のしやうもない門に」
2938てふ小こてふ小蝶こてふの中なかの山家やまが哉
七番日記 化10 (異)『句稿消息』上五「蝶にてふ」
2939蝶てふ[〳〵]や猫ねこと四眠しみんの寺てら座敷ざしき
七番日記 化10
2940手枕てまくらや蝶てふは毎日まいにち来きてくれる
七番日記 化10
2941寝ねるてふ(蝶)にかし(貸)ておくぞよ膝ひざがしら(頭)
七番日記 化10
2942のら(野良)猫ねこよ見みよ〳〵蝶てふのおとなしき
七番日記 化10
2943一ひとあば(暴)れ〳〵て去さりし小こてふ(蝶)哉
七番日記 化10
2944べつたりと蝶てふの善光寺ぜんくわうじ平だひら哉
七番日記 化10
2945まふ(舞)蝶てふにふり(振)も直なほさぬ茨いばら哉
七番日記 化10
2946丸まるく寝ねた犬いぬにべつたり小こてふ(蝶)哉
七番日記 化10
2947天窓あたま干ほスお婆ばゝや蝶てふも一ひとむしろ(筵)
七番日記 化11
2948大雨おほあめの降ふつて涌わいたる小こてふ(蝶)哉
七番日記 化11
2949かい曲まがりかくれんぼする小こてふ(蝶)哉
七番日記 化11
2950さをしか(小牡鹿)の角つのをも遊あそぶ小こてふ(蝶)哉
七番日記 化11
2951蝶てふ小こてふ(蝶)あは(哀)れ疲つかれて帰かえるかや
七番日記 化11
2952蝶てふとぶや上野うえのゝの山門さんもん*明あいたとて
七番日記 化11 *上野寛永寺の山門
2953蝶てふとんでくわら〳〵川がはのきげん(機嫌)哉
七番日記 化11
2954蝶てふべたり[ア]ミダ(阿弥陀)如来にょらいの頬ほゝべたへ
七番日記 化11
2955ちる(散)花はなにがつかりしたる小こてふ(蝶)哉
七番日記 化11
2956とぶ(飛)蝶てふに追おひ[立たて]ら[れ]つゝ寺参てらまゐり
七番日記 化11
2957 卅三さんじふ三間さんげん堂だう
とぶ(飛)蝶てふも三万さんまん三千さんぜん三百さんびやくかな
七番日記 化11
2958とぶ(飛)蝶てふは罪つみも報むくいも菜畠なはた*哉
七番日記 化11 *「なし」に掛ける
2959 泥足どろあしを蝶てふに任まかせて寝ねたりけり
七番日記 化11
2960 菜なよ梅うめよ蝶てふがてん〳〵舞まひをまふ(舞)
七番日記 化11
2961 ばら〴〵と目めをつく(衝)程ほどの小こてふ(蝶)哉
七番日記 化11
2962 春はるのてふ(蝶)大盃おほさかづきを又またなめ(舐)よ
七番日記 化11
2963 べつたりと蝶てふの咲さきたる枯木かれき哉
七番日記 化11
2964 まふ(舞)蝶てふのこぼして行ゆくや鳩はとの豆まめ
七番日記 化11
2965 麦むぎに菜なにてん〳〵舞まひの小こてふ(蝶)哉
七番日記 化11
2966やよかにも二世にせい*安楽あんらくか艸くさのてふ(蝶)
七番日記 化11 *現世と来世
2967犬いぬと蝶てふ他人たにんむき(向)でもなかりけり
七番日記 化12 (出) 書簡 化12
2968寝いぬるてふ(蝶)鼠ねずみの米こめも通とほりがけ
七番日記 化12
2969桟かけはしを歩あゆんで渡わたる小こてふ(蝶)哉
七番日記 化12
2970がむしやらの犬いぬとも遊あそぶ小こてふ(蝶)哉
七番日記 化12
2971此この方はうが善光寺ぜんくわうじとや蝶てふのとぶ(飛)
七番日記 化12
2972鹿しかの角つのかり(借)て休やすみし小こてふ(蝶)哉
七番日記 化12
2973蝶てふとぶ(飛)や草葉くさばの陰かげも湯ゆがわく(涌)と
七番日記 化12
2974笛役ふえやくは名主なぬしどの也蝶てふのまひ(舞)
七番日記 化12
2975舞賃まいちんに紙かみをとば(飛)すぞのべ(野辺)の蝶てふ
七番日記 化12
2976藪中やぶなかも佛ほとけおはして蝶てふのまふ(舞)
七番日記 化12
2977石いしなごの一二三ひふみを蝶てふの舞まひにけり
七番日記 化13
2978馬うまの耳みみ一日いちにち(嫐)る小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13
2979門畠かどはたや烏からす叱しかれば行ゆく小蝶こてふ
七番日記 化13
2980門莚かどむしろ小蝶こてふの邪魔じやまをしたりけり
七番日記 化13
2981 鹿しかねら(狙)ふ手てを押おさへたる小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13
2982 銭ぜに*の出でた窓まどきら(嫌)うてや行ゆく小蝶こてふ
七番日記 化13 *窓銭、家の窓数に応じた税
2983たの(頼)もしやしかも小こてふ(蝶)の若夫婦わかふうふ
七番日記 化13
2984 蝶てふとぶ(飛)や夫それ仏法ぶつぽうの世よ[の]中なかと
七番日記 化13
2985 蝶てふとぶや茶売ちゃうりさ湯ゆうり野酒売のざけうり
七番日記 化13
2986 蝶てふとぶや横明よこあかりなる流ながし元もと
七番日記 化13
2987 蝶てふとまれも一度いちど留とまれ草くさもち(餅)に
七番日記 化13
2988 蝶てふとまれも一度いちど泊とまれ盃さかづきに
七番日記 化13
2989 毒水どくすゐを咒まじなふやうな小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13
2990 猫ねこの子この命日めいにちをとふ(訪)小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13
2991 はつ(初)蝶てふの夫婦ふうふ連づれして来きたりけり
七番日記 化13
2992 はつ(初)蝶てふやシカモ三み夫婦ふうふ五いつ夫婦ふうふ
七番日記 化13
2993(膝)の児この頬ほゝべたなめ(舐)る小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13
2994目黒めぐろ*へはこちへ〳〵と小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13 *目黒不動尊
2995やよや蝶てふそこのけ〳〵湯ゆがはね(撥)る
七番日記 化13
2996湯入衆ゆいりしゆの頭かしらかぞへる小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13
2997世よにあれば蝶てふも朝あさからかせ(稼)ぐぞよ
七番日記 化13
2998よわ(弱)足あしの先さきへも行ゆかぬ小こてふ(蝶)哉
七番日記 化13
2999桶伏をけぶせ*の猫ねこを見舞みまふやとぶ(飛)小蝶こてふ
七番日記 化14 *吉原の私刑、揚代を払えない客に桶を被せ晒した、いたずら猫に対する仕置き
3000蝶てふの身みも業ごふの秤はかりにかゝ(掛)る哉
七番日記 化14
3001ぬかるみ(泥濘)に尻しりもち(餅)つく(搗)なでかい蝶てふ
七番日記 化14
3002春はるの蝶てふ平気へいきで上座かみざいたす也
七番日記 化14
3003祝いわひ日びや白しろい僧達そうたち白しろい蝶てふ
七番日記 政1
3004うつく(美)しき仏ほとけになるや蝶てふ夫婦ふうふ
七番日記 政1
3005大猫おほねこの尻尾しつぽでじやらす小こてふ哉
七番日記 政1
3006かいだん(戒壇)の穴あなよりひらり小こてふ(蝶)哉
七番日記 政1
3007神垣かみがきや白しろい花はなには白しろい蝶てふ
七番日記 政1
3008小莚こむしろや蝶てふと小銭こぜにとたゝ(叩)き鉦がね
七番日記 政1
3009それがしが供ともする蝶てふよ一里いちり程ほど
七番日記 政1
3010それ〴〵や蝶てふも白組しろぐみ黄色組きいろぐみ
七番日記 政1 (異)『八番日記』(政4) 上五「陣どるや」
3011てふ〳〵やな(菜)の葉はに留とまる与次郎兵衛よじろべえ*
七番日記 政1 *やじろべえ
3012蝶てふとぶ(飛)や大だい晴天せいてんの虎とらの門もん
七番日記 政1
3013 善光寺
蝶てふ行ゆくやしんらん(親鸞)松まつ*も知しつた顔かお
七番日記 政1 *善光寺本堂の花瓶に挿した松の枝
3014虎とらの門もん*蝶てふもぼつ〴〵這入はひりけり
七番日記 政1 *江戸城外郭の一門
3015はづ(恥)かしやくつとも云いはぬ蝶てふ夫婦ふうふ
七番日記 政1
3016初はつ蝶てふもやつぱり白しろい出立でたち*哉
七番日記 政1 *いでたち
3017一莚ひとむしろ蝶てふもほ(乾)されてをりにけり
七番日記 政1
3018ふり上あげル箒はうきの下したやぬ(寝)る小蝶こてふ
七番日記 政1
3019舞まふは蝶てふ三弦さんげん*流布るふの小村こむら也
七番日記 政1 *三味線
3020まへ(舞)や蝶てふ三弦さんげん流布るふのあさぢ(浅茅)原はら*
七番日記 政1 *浅草橋場の総泉寺門前の原野
3021てふ(蝶)〳〵のふはりととん(飛)だ茶釜ちやがま哉
八番日記 政2
3022蝶てふとぶ(飛)や煮染にしめを配くばる蕗ふきの葉はに
風間八番 政2
3023蝶てふヒラ〳〵庵いほの隅すみ〴〵見みとゞ(届)ける
風間八番 政2
3024初はつ蝶てふの来きたりやしかも夫婦ふうふ連づれ
梅塵八番 政2 (異)『風間八番』(政2) 上五「初蛙」
3025ビンズル*の御鼻おはなをなで(撫)る小蝶こてふ哉
風間八番 政2 *釋迦の弟子の賓頭盧尊者
3026 葎むぐらからあんな小蝶こてふが生うまれけり
八番日記 政2 (異)『風間八番』政2 上五「芥から」 上五「塵塚に」
3027浅黄あさぎだけ少すこしじミ(地味)也とぶ(飛)小蝶こてふ
風間八番 政3 (異)『梅塵八番』中七下五「…じみなり飛胡蝶」
3028後あとになり先さきニなる蝶てふや一里いちり程ほど
風間八番 政3
3029大笊おほざるニ伏ふセらればくる小こてふ(蝶)かな
八番日記 政3 (異)『一茶句帳』「大笊にふせらればくる小蝶かな」
3030黄[色きいろ]組ぐみしろぐミ(白組)てふ(蝶)の出立でたち*哉
風間八番 政3 (異)『梅塵八番』上五「黄色組白組」『一茶句帳』「黄組しろ組くる蝶の出立かな」 *いでたち
3031黄[色きいろ]組ぐみ白組(しろぐみ)てふ(蝶)の地ぢどりけり
風間八番 政3

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