一茶: ひきがへる雨蛙

夏の部の季語<ひきがへる><雨蛙>について考える。同じく蛙を扱っていても春の部のそれとは異なり、すべて<かへる>である。蟇蛙はひき、ひき殿と呼びかけられることが多い。<かはづ>よりもぐっと近しい感官を覚えるのは僕だけではあるまい。下の表は、夏の部にある蟇と蛙の字に<かへる>のルビを振ったものである。

夏季語<ひきがへる><雨蛙>の句
2917蟾ひきがへる渋面じふめん作つくつて並ならびけり
七番日記 化10
2918云いいぶんのあるつらつきや引ひきがへる
七番日記 化14
2919雨あめあらし鑓やりもふれとやひきが㒵かほ
七番日記 政1
2920大蟾おおひきは隠居いんきよ気きどりやうらの藪やぶ
七番日記 政1
2921ひき鳴なくや麦殻笛むぎがらぶえとかけ合あいに
七番日記 政1
2922稲妻いなづまにつむりなでけり引蟇ひきがへる
八番日記 政2
2923霧きりに乗のる目付めつきして居いる蟇かへるかな
八番日記 政2
2924雲くもを吐はく口くちつきしたり引蟇ひきがへる
おらが春 政2
2925蟾ひきどのゝ妻つまや待まつらん子こ鳴なくらん
八番日記 政2
2926一雫ひとしずく天窓あたまなでけり引ひきがへる
おらが春 政2
2927罷出まかりいづるは此藪このやぶの蟾ひきにて候さうらふ
八番日記 政2
2928仡きっとして蚊かに喰くわるゝや引ひきがへる
文政句帖 政5
2929蟾ひきがへる笑わろうて損そんをしたのだか
文政句帖 政5
2930蟾ひきがへる我われをつく〴〵ねめつける
文政句帖 政5
2931つくねんと愚ぐを守まもる也引ひきがへる
文政句帖 政6
2932ふるや雨あめなくやはやしの蛙かへる哉
寛政句帖 寛6
2933梢こづえから立小便たちせうべんや青あおがへる
八番日記 政4
2934高たかうは厶ござりますれど木きから蛙かへる哉
文政句帖 政6
2935手てにとれば小便せうべんしたり青あおがへる
発句集続篇

上の表と比較するために先の記事の<かへる>を再掲する。

春夏<かへる>ルビが振られている句
春2741痩やせ蛙がへるまけるな一茶是これに有あり
七番日記 化13
夏2073ばか蛙がへるすこたん云いふな夕涼ゆふすずみ 
七番日記 化13
夏4499人ひと来きたら蛙かへるになれよ冷ひやし瓜うり
七番日記 化10、志多良 化10

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