家のベランダで一羽のアゲハチョウが羽化した。朝、ガラス戸とアミ戸のあいだの狭い隙間で羽を閉じ、じっとしていた。外に出そうとしてガラス戸を動かすと羽に当たり、チョウは仕方なく羽を広げた。さらに戸を開けると戸の枠が羽に当たるので、アミ戸を静かに外した。チョウは微動だにしない。数分後にはまた羽を閉じていた。
家のベランダでは毎年、数羽のチョウが羽化する。ここ数年はみな羽が半分しか開けなかったり、羽が折れ曲がるなど、まともに羽を開いたものはなかった。そんな失望が続いた後だから、けさチョウを発見したときの驚きと喜びは表現しようもない。前日が孫の百日祝いだったこともあり、ことのほか嬉しかった。
午後、チョウは跡形もなく消えていた。きっとどこか遠くに飛んでいったのだろう。安全なところで花の蜜を吸っていればいいのだが。



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