『風間本八番日記』(風間八番、信濃教育会1976年)に次の句がある。
山吹に手をかざしたる鼯(ももが)哉
鼯はムササビのことらしい。この句は信濃毎日新聞社(信毎1979年)版全集第1巻では下五が「鼬哉」になっている。
風間八番の上の句の次の行には、
手をかざす鼬(いたち)よどこだ花の雲
がある。信毎版はこの句と梅塵八番の句の表記にしたがって鼬としたのだろうか。山吹は灌木で二つの句いずれも「手をかざ」しているから小動物は地上にいるのであろう。鼬と鼯どちらでもいいようなものだが、イタチは地を這い、ムササビは樹木の枝から枝へと空中を飛ぶ、ずいぶん違うようにも思う。
いや待てよ。ムササビが飛んでいる姿を見た作者とその小動物のあいだに満開の山吹が繁っていて、山吹の花々の上に両手を拡げているように見えた、というのはどうだろうか。ムササビは夜行性のようだから、月夜の晩だったかもしれない。

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