浅黄蝶を詠んだ句が春の句が少なくないのできにアサギ蝶で検索すると下の写真があった。大型の蝶で日本から朝鮮半島・中国・台湾・ヒマラヤまで広く分布し、南西諸島・臺灣と日本のあいだを渡るという。春3045の蝶(風間本)と鴈(梅塵本)には渡りという共通点があるかもしれない。ただし、ここに登場する浅黄蝶がアサギマダラであるかは確かでない。
一茶はアサギ蝶に格別の親しみを感じていたようだ。風に煽られれば乱高下して墜落しかねない、大型とはいえ人の手より小さな躰で数千キロを飛ぶ命がけの渡り。老翁はアサギに自身を見ていたに違いない。

以下の句から一茶の描いたアサギ蝶がみえるくる。地味・狂う・内向性・孤立感などが浮き上がってくる。
- 3034 咲中ニ少ぢみ也浅黄てふ 風間八番 政3 (異)『梅塵八番』「咲中に少しじみなり浅黄蝶」『風間八番』政4 上五「狂ふのも少じミ也浅黄蝶」『梅塵八番』上五「狂ふにも…浅黄蝶」
- 3045 我後に付損じてや帰る蝶
風間八番 政3 (異)『梅塵八番』「我跡につき損じてや帰る鴈」 - 3048 浮かるゝもうちハなりけり浅黄蝶
風間八番 政4 (異)『梅塵八番』中七「内輪なりけり」 - 3050 おとなしや蝶も浅黄の出立は
風間八番 政4 - 3052 狂ふのも少じミ也浅黄蝶
風間八番 政4 (異)『梅塵八番』上五「狂ふにも少し…」 - 3053 こつそりとして遊ぶなり浅黄蝶
梅塵八番 政4 (異)『風間八番』「こつそり〳〵あそぶ也浅黄蝶」
上の3034と下の3072の二つの句を読むと、一茶の苦悩がときに制御しがたいまでに膨らんでいたことが想像される。「狂ふのも少じミ也」では蝶に対する苛立ちを感じるが、3072に至っては「狂え蝶」と強く悲痛な叫びに変わっている。一茶の句を読み続ける作業はしんどい、精神的な重労働のようなものかもしれない。
3072 狂へてふ狂て腹のゐる*ならば
文政句帖 政5 (異) 真蹟 中七「くるふて腹が」 *激した感情が静まる
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