一茶: ひばり

ふりがな小林一茶発句集春6 に雲雀ひばりを詠んだ句が115ある。鳴雲雀(雲雀鳴、なく/啼雲雀、雲雀の鳴しを含む)の句が多く、鳴いているか飛んでいる雲雀が目立つ。つばめと作者のあいだにあった近しさはないが、かといって遠い存在ではなく身近に感じている。

天てんに雲雀ひばり人間にんげん海うみにあそぶ日ひぞ(2230)、木曽山きそやまハうしろ(後)になりぬ鳴なく雲雀(2235)、鳴なく雲雀ひばり貧乏びんぼふ村むらのどこが果(2240)、古郷ふるさとの見みへなくなりて鳴なく雲雀(2244)、うつくしや雲雀ひばりの鳴なきし迹あとの空(2259)、山人やまうどは鍬くはを枕まくらや鳴なく雲雀(2268)、などのどかで広々とした背景や高く深い空がひばりの急上昇や急降下を連想させる。

むさしのや野屎のぐその伽とぎに鳴なく雲雀(2293)には思わずほほ笑んでしまう。尻を出しながら雲雀の鳴声と交感する一茶に声を掛けたくなる、春風はるかぜに小草おぐさが揺れ匂いまで漂ってくるようだ。そう、彼は鳥や虫たちと交感できたのだ。

noふりがな小林一茶発句集春6より
2228夕ゆふされば凧たこも雲雀ひばりもをりの哉
寛政句帖 寛5
2229鳴戸なるこなる(鳴)中なかを小島こじまの雲雀ひばり哉
寛政句帖 寛6
2230天てんに雲雀ひばり人間にんげん海うみにあそ(遊)ぶ日ひぞ
西国紀行 寛7
2231一ひと舎やどりおく(後)れし笠かさよ啼なく雲雀ひばり
享和句帖 享3
2232松島まつしまはどれが寝ねよいぞ夕ゆふ雲雀ひばり
享和句帖 享3
2233夕ゆふ雲雀ひばりどの松島まつしまが寝所ねどころ[ぞ]
享和句帖 享3
2234片山かたやまハ雨あめのふり(降)けり鳴なく雲雀ひばり
文化句帖 化1
2235木曽山きそやまハうしろ(後)になりぬ鳴なく雲雀ひばり
文化句帖 化1
2236住吉すみよしに灯ひのとぼ(点)りけり鳴なく雲雀ひばり
文化句帖 化1
2237摘残つみのこる艸くさの先さきより夕ゆふ雲雀ひばり
文化句帖 化1
2238鳴なく雲雀ひばり露つゆけき垣かきと成なりにけり
文化句帖 化1
2239鳴なく雲雀ひばり人ひとの㒵かほから日ひの暮くるゝ
文化句帖 化1
2240鳴なく雲雀ひばり貧乏びんぼふ村むらのどこが果はて
文化句帖 化1
2241野大根のだいこんも花咲はなさきにけり鳴なく雲雀ひばり
文化句帖 化1
2242雲雀ひばり鳴なく通とほりに見みゆる大和やまと哉
文化句帖 化1
2243踏残ふみのこすぜゝ(膳所)よかたゞ(堅田)よ鳴なく雲雀ひばり
文化句帖 化1
2244古郷ふるさとの見みへなくなりて鳴なく雲雀ひばり
文化句帖 化1
2245窓まど二ふたツくり(刳)抜ぬけばはや(早)雲雀ひばり哉
文化句帖 化1
2246夕急ゆふいそぐ干潟ひがたの人ひとや鳴なく雲雀ひばり
文化句帖 化1
2247夕ゆふ雲雀ひばり野辺のべのけぶり(煙)に倦あかるゝな
文化句帖 化1
2248長なが〴〵の雨あめをばいか(如何)にの(野)ゝ雲雀ひばり
文化句帖 化3
2249日永ひなががる人ひとに見みよとの雲雀ひばり哉
文化句帖 化3
2250賣布うりぬのを透すかす先さきより雲雀ひばり哉
文化句帖 化4
2251鳴なく雲雀ひばり朝あさから咽のどのかわ(乾)く也
文化句帖 化4
2252鳴なく雲雀ひばり小艸をぐさも銭ぜにに成なりにけり
文化句帖 化4
2253子こを寝ねかす藪やぶの通とほりかなく(鳴)雲雀ひばり
文化句帖 化5
2254ナマケ(怠)日びをサツサと雲雀ひばり鳴なき出いだす
文化句帖 化5
2255野烏のがらすに藪やぶを任まかセて鳴なく雲雀ひばり
化五六句記 化6
2256浅草あさくさや家尻やじりの不二*ふじも鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化7 *富士権現
2257けふ(今日)も〳〵一ひとつ雲雀ひばりや亦打山*まつちやま
七番日記 化7 *待乳山
2258鳴なく雲雀ひばり水みずの心こころもすみ(澄)きりぬ
七番日記 化7
2259うつく(美)しや雲雀ひばりの鳴なきし迹あとの空そら
株番 化9
2260うつく(美)しや昼ひる[の]雲雀ひばりの鳴なきし空そら
七番日記 化9
2261おり(下)よ〳〵野火のびが付ついたぞ鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化9
2262けふ(今日)も〳〵竹たけのそちらや鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化9
2263三四尺さんしじやくそれ(逸)てもよいぞ鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化9
2264二三尺にさんじゃやく人ひとをはな(離)るゝ雲雀ひばり哉
七番日記 化9
2265二三尺にさんじやく迠まではだまつ(黙)て舞まふ雲雀ひばり
七番日記 化9
2266はたご(旅籠)屋やのおく(奥)庭には見へて鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化7
2267細ほそろ(路)地じのおく(奥)は海うみ也なく(鳴)雲雀ひばり
七番日記 化9
2268山人やまうどは鍬くはを枕まくらや鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化9
2269大井川*おほいがは見みえてそ[れ]から雲雀ひばり哉
七番日記 化10 *大堰川(嵐山下)
2270其藪そのやぶは離はなれづら(辛)いか鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化10
2271釣舟つりぶねは花はなの上うへこぐ(漕)雲雀ひばり哉
七番日記 化10
2272昼飯ひるめしをたべ(食)に下おりたる雲雀ひばり哉
七番日記 化10
2273 三番
今いま拵こしらへた山やまからも鳴なく雲雀ひばり
句稿消息 化11
2274起おき〳〵に何なにをかまけて*鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化11 *愚痴をこぼす
2275から(空)腹ばらと人ひとはいふ(云)也朝あさ雲雀ひばり
七番日記 化11
2276千代ちよのう*(能)が桶をけの中なかから雲雀ひばり哉
七番日記 化11 *安達千代野
2277一ひとつかみ(掴)艸くさを蒔まくぞよ鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化11
2278人ひとは蟻ありと打うつちら(散)かつて鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化11
2279むさしの(武蔵野)にたつた一ひとつの雲雀ひばり哉
七番日記 化11
2280門番もんばんが花桶はなをけからも雲雀ひばり哉
七番日記 化11
2281藪尻やぶじりはまだ闇くらいぞよ鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化11
2282大井川おほいがはな(鳴)りしづ(静)まりて鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化12
2283大おほ[地]獄ぢごく小こ地ぢごく(獄)からも雲雀ひばり哉
七番日記 化12
2284子こを捨すてし藪やぶを離はなれぬ雲雀ひばり哉
七番日記 化12
2285素湯さゆ売うりの一藪ひとやぶづゝや鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化12
2286地獄画ぢごくゑの垣かき[に]かゝ(掛)りて鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化12
2287念仏ねんぶつにはや(囃)されて上あがる雲雀ひばり哉
七番日記 化12
2288野のばくちが打うつちら(散)かりて鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化12
2289有明ありあけや雨あめの中なかより鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化13
2290つむ程ほどは雪ゆきも候さうらふはつ(初)雲雀ひばり
七番日記 化13
2291蛤はまぐりも大口おほくち明あくぞ鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化13
2292一ひと掴つかみ雪ゆき進まゐらせんはつ(初)雲雀ひばり
七番日記 化13
2293むさしの(武蔵野)や野屎のぐその伽*とぎに鳴なく雲雀ひばり
七番日記 化13 *話し相手
2294朝明あさあけの[茶釜ちやがま]はなり(成)て雲雀ひばり哉
七番日記 政1
2295朝鳴あさなりの茶釜ちやがまを祝いはへ鳴なく雲雀ひばり
七番日記 政1
2296朝あさなり[の]茶釜ちやがまの際きはを雲雀ひばり哉
七番日記 政1
2297  日本寺
アラカン(阿羅漢)の鉢はちの中なかより雲雀ひばり哉
七番日記 政1
2298宇治山*うぢやまや寺てらはドンチヤン**夕ゆふ雲雀ひばり
七番日記 政1 *黄檗宗本山萬福寺 **勤行の鉦鼓の音
2299 追分*おひわけの一里いちり手前てまへの雲雀ひばり哉
七番日記 政1 *浅間山麓の宿場
2300 小嶋こじまにも畠はたけ打うつ也鳴なく雲雀ひばり
七番日記 政1
2301坂本*さかもとはあれぞ雲雀ひばりと一里いちり鐘がね
七番日記 政1 *中仙道の宿場
2302 坂本さかもとは袂たもとの下したぞ夕ゆふ雲雀ひばり
七番日記 政1
2303 小ちひさな市いちの菜なの葉は[よ]り雲雀ひばり哉
七番日記 政1
2304 胴突*どうつきの畠はたけの中なかより雲雀ひばり哉
七番日記 政1 *土突、地固め
2305 福茶釜*ふくちやがま朝鳴あさなりす也揚あげ雲雀ひばり
七番日記 政1 *縁起のよい茶釜
2306 松嶋まつしまやアチの松まつから又また雲雀ひばり
七番日記 政1
2307 松嶋まつしまやかすみ(霞)は暮くれて鳴なく雲雀ひばり
七番日記 政1
2308 蓑みのを着き[て]寝ねたる人ひとより雲雀ひばり哉
七番日記 政1
2309 夕ゆふ雲雀ひばり寺てらのどんちん*始はじまりぬ
七番日記 政1 *鉦鼓の音
2310 子こをかくす藪やぶの廻まはりや鳴なく雲雀ひばり
おらが春 政2
2311横よこのり(乗)の馬うまのつゞ(続)くや夕ゆふ雲雀ひばり
風間八番 政2
2312蟻程ありほどに人ひと[の]つゞ(続)くや夕ゆふ雲雀ひばり
風間八番 政4
2313布ぬのからも立臼たちうすからも雲雀ひばり哉
風間八番 政4
2314まり(毬)それ(逸)てふと見付みつけたる雲雀ひばり哉
八番日記 政4
2315落おつ雲雀ひばり子この聲こゑ天てんに通つうじけん
文政句帖 政5
2316をり(折)〳〵ニ子こを見廻みまはつては雲雀ひばり哉
文政句帖 政5
2317来こよ雲雀ひばり子このゐる藪やぶが今いまも(燃)ゆる
文政句帖 政5
2318漣さざなみや雲雀ひばりの際きはの釣つり小舟こぶね
文政句帖 政5
2319城内じやうないを根金際*ねこんざい見みし雲雀ひばり哉
文政句帖 政5 *すっかり、残らず
2320手ての前まへや足あしのもとより立たつ雲雀ひばり
文政句帖 政5
2321鳥とりさし(刺)のあつけ(呆気)とら(取)れし雲雀ひばり哉
文政句帖 政5
2322吹ふかれ行ゆく舟ふねや雲雀ひばりのすれ(擦)違ちがひ
文政句帖 政5
2323湖みづうみにおち(落)ぬ自慢じまんや夕ゆふ雲雀ひばり
文政句帖 政5
2324山猫やまねこのあつけ(呆気)とら(取)れし雲雀ひばり哉
文政句帖 政5
2325雨水あまみづの月つきの際きはより雲雀ひばり哉
文政句帖 政7
2326田たへ落おつと見みせて麦むぎより雲雀ひばり哉
文政句帖 政7
2327鶏にはとりニさらば〳〵と雲雀ひばり哉
文政句帖 政7
2328一雨ひとあめのひよい〳〵道みちや鳴なく雲雀ひばり
文政句帖 政7
2329臼うすからも松まつの木きからも雲雀ひばり哉
希杖本
2330 軽井沢
三味線しやみせんに通つううしな(失)ふや落おち雲雀ひばり
浅黄空
2331爪先つまさきのくら(暗)い内うちより雲雀ひばりかな
発句集続篇
2332墓はかからも花桶はなをけからも雲雀ひばり哉
希杖本

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