Sunosaki, a memory landscape

小旅行の2週間後にふと気づいた。小説「大菩薩峠」登場人物の一人、駒井甚三郎が江戸幕府旗本の職を失い、房州で密かに造船所を開設した。その根拠地がまさに洲崎だったではないか、と。そうだ、僕は駒井こと小栗忠順を求めて洲崎に行ったに違いない。「大菩薩峠を読みなおす」を書いたのはことし四月だった。

Two weeks after the excursion, I suddenly realized that Komai Jinzaburo, one of the characters in the novel Daibosatsu Pass, who had lost his position as a bannerman in the Edo shogunate and secretly established a shipyard in Boshu(Chiba Prefecture). I thought to myself, “This is exactly where Komai was based in Sunosaki. Yes, I must have gone to Sunosaki in search of Komai, i.e., Oguri Tadamasa. It was in April of this year that I wrote a blog “Rereading the Daibosatsu Pass.”

韓国の友人と二人、新宿バスタから高速バスに乗って館山駅まで行き、さらに路線バスで30分ほどの洲崎灯台へ行った。海を見たくて、何年か前に訪ねたときの記憶をもとに行ったのだが、バスを降りた瞬間、ここはどこだ、来たことがない、と思った。

灯台はたしかに丘の上にあるが、予想していた場所とは違い、観光地らしくない。ほとんど人がいないし、商店が一軒あるだけだ。その店に入って何度呼びかけても、応答すらない。仕方なく海に向かって藪(やぶ)のなかの細道を歩くと、誰もいない海岸に出た。巨大なタイヤやブイなどのゴミが散乱していた。

海を見たあと、別の細道を辿ると、藪刈をする老人に会ったので、食事するところはないか尋ねると、ないという。先ほど訪ねた店でラーメンぐらい出してくれるが、ともいう。この老人が細道を整備してくれていたのだ。

店の方に向かおうとすると、むかし灯台守が歩いたという登り道を示され、灯台まで登った。そこに若い人たちがいて少し安堵した。韓国人だったので、僕も韓国人を装って話しを交わした。鴨川に住んでいるといった。

灯台のある丘の上から下って、先ほど入って呼びかけた店に行くと、老婆と客人らしい漁師ふうの老人がいた。何か食事はないか聞くと、ラーメンならできるという。二つ返事で注文した。店の棚に並んでいる即席ラーメンが出てくるのだろう、と思って待っていたが、なかなか出てこない。

館山駅まで戻るバスの時刻を気にしながら待つこと15分ほどを、ひどく長く感じた。ようやく出てきたラーメンを見ると、何と昔なつかしい本格的ラーメンではないか。思わず叫んでしまった。その味はまさにおふくろの味で、韓国の友人も格別においしい、といった。

僕は愉快でたまらなかったが、韓国からやって来た友人には少し申しわけない気がした。「こんなところに来てくれてありがとう」といった漁師ふうの老人の言葉が沈むように心に残っている。기억에 오래 남을 즐거운 여행 (永く記憶に残る楽しい旅行)だったと伝えてくれた友人に感謝したい。

One thought on “Sunosaki, a memory landscape”

  1. 여러 생각이 드셨겠네요.
    옛날을 추억하며 가셨을 텐데 기억과 다른 모습…
    발전된 모습이 아니라 오히려 퇴보한 모습을 보셨으니 씁쓸하셨겠습니다.
    그럼에도 옛날식 라면에서 짙은 감동을 느끼셨다니 다행입니다.

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