Fleas observed by Issa

一茶(1763-1828)発句集夏の部蚤のみの項には年代順に107句が載っています。蚤を微細にわたって観察しながら彼は何を考えていたのでしょうか。以下、〳〵は2音以上の繰返し記号で、縦書きで読むとその意味がよく理解できます。→ 一茶発句集夏の部

3497 川中かはなかへ蚤のみを飛とばする旦あした哉 西紀書込 寛中
3498 蚤のみまけの顔かほに遠とほきや小行灯こあんどん 遺稿 寛中
3499 むく起おきに蚤のみはなちやる川辺かはべ哉 西紀書込 寛中
3500 むさしのへ蚤のみをとばする夜明よあけ哉 遺稿 寛中
 夜は人々も大かたもどりてともしびの明きにつけても病床の辺のなつかしくあからさまに寝給ひし父の目覚るを待心ちしてなやみ給ふ顔は目をはなれずよび給ふ声は耳の底にのこりてまどろはば夢に見へさ(醒)むれば俤おもかげに立添ふ
3501 夜よる〳〵にかまけら[れ]たる蚤のみ蚊か哉 終焉日記 享1
3502 放はなし亀がめ蚤のみも序ついでにとばす也 享和二句記 享2
3503 風かぜも吹ふき月つきもさしけり蚤のみの宿やど 享和句帖 享3
3504 草くさの蚤のみはら〳〵もどる火ほかげ哉 享和句帖 享3
3505 痩蚤やせのみの矢指やさしが浦うらの曇くもり哉 享和句帖 享3
3506 盃さかづきに蚤のみおよぐ[ぞ]よ〳〵 七番日記 化8
3507 蚤のみにゝ(似)た虫むしのやれ〳〵不便ふびんさよ 七番日記 化8
3508 庵いほの蚤のみかはいや我われ[と]い(寝)ぬる也 七番日記 化9
3509 蚤のみとぶや笑仏わらひぼとけの御口おんくちへ 七番日記 化9
3510 湖みづうみを蚤のみおよぐぞ[よ]〳〵よ 七番日記 化9
3511 夕暮ゆふぐれや大盃おほさかづきの月つきと蚤のみ 七番日記 化9
3512 あばれ蚤のみ我手わがてにかゝつて成仏じやうぶつせよ 七番日記 化10
3513 有明ありあけや不二ふじ[へ]〳〵と蚤のみのとぶ 七番日記 化10
3514 庵いほの蚤のみふくら雀すずめに[ひ]ろはれな 七番日記 化10
3515 庵いほの蚤のみ不便ふびんやいつか痩やせる也 七番日記 化10
3516 遅おそしとや迎むかへに出でたる庵いほの蚤のみ 七番日記 化10
3517 門榎かどえのき人ひとから蚤のみのうつりけり 七番日記 化10
3518 草原くさはらや何なにを目当めあてに蚤のみのとぶ 七番日記 化10
3519 さわげ〳〵お江戸えど生うまれの蚤のみ蚊かなら 七番日記 化10
3520 皺腕しわかひな歩あるきあきてや蚤のみのとぶ 七番日記 化10
3521 長なが〳〵の留主るすに[も]あかぬ庵いほの蚤のみ 七番日記 化10
3522 蚤のみとべや野のべは刈萱かるかや女郎花をみなへし 七番日記 化10
3523 蚤のみどもに松島まつしま見みせて逃にがしけり 七番日記 化10 (出)『志多良』『発句集続篇』
3524 蚤のみの迹あとそれもわか(若)きはうつくしき 七番日記 化10 (出)『志多良』『句稿消息』『文政版』『浅原日記』
 病中
3525 蚤のみ蠅はへにあなどられつゝけふも暮くれぬ 七番日記 化10 (出)『志多良』『希杖本』
3526 ふくれ蚤のみ腹はらごなしかや木きにのぼる 七番日記 化10
3527 むく起おきや蚤のみを飛とばする角田川すみだがは 七番日記 化10
3528 痩蚤やせのみの達者たつしやにさわぐ山家やまが哉 七番日記 化10
3529 やよや蚤のみ逃にげるが勝かちぞ皆みな逃にげよ 七番日記 化10
3530 よい日ひやら蚤のみがをどるぞはねるぞよ 七番日記 化10 (出)『句稿消息』『志多良』『発句鈔追加』
3531 朝あさ〳〵の蚤のみ捨松すてまつと呼よばれなん 七番日記 化11
3532 追おふな〳〵〳〵子こどもよ子持こもち蚤のみ 七番日記 化11
3533 草原くさはらをかせぎ廻まはるや宿やどの蚤のみ 七番日記 化11
3534 狭せまく[と]もいざ飛習とびならへ庵いほの蚤のみ 七番日記 化11
3535 辻堂つじだうを蚤のみ蚊かに借かりて寝ねたりけり 七番日記 化11
3536 蚤のみ[ども]もつつがないぞよ草くさの庵いほ 七番日記 化11
3537 夕ゆふされば痩子やせこやせ蚤のみ賑にぎはしや 七番日記 化11
3538 朝晴あさばれに蚤のみのきげんのよかりけり 七番日記 化12
3539 門かどの蚤のみ犬いぬがまぶつて走はしりけり 七番日記 化12 (出)『句稿消息』
3540 猫ねこの子こが蚤のみすりつける榎えのきかな 七番日記 化12
3541 借直かりなほし〳〵ても蚤莚のみむしろ 七番日記 化13
3542 飛とび下手べたの蚤のみのかはいさまさりけり 七番日記 化13
3543 蚤のみとばす程ほどは草花くさばな咲さきにけり 七番日記 化13
3544 蚤のみどもも隠かくるゝすべはしりにけり 七番日記 化13
3545 蚤噛のみかんだ口くちでなむあみだ(南無阿弥陀)[仏ぶつ]哉 七番日記 化14 (出)『希杖本』
3546 子この蚤のみを休やすみ仕事しごとに拾ひろひけり 七番日記 政1
3547 蚤のみの迹あとかぞへながらに添乳そへぢ哉 七番日記 政1 (出)『おらが春』『文政版』書簡 真蹟
3548 蚤のみの迹あと吹ふいて貰もらうてなく子こ哉 七番日記 政1
3549 一莚ひとむしろ蚤のみを棄すてるぞのけ蛙かへる 七番日記 政1
3550 継ままつ子こや昼寝ひるね仕事しごとに蚤のみ拾ひろふ 七番日記 政1 (出)『嘉永版』
3551 草原くさはらにこすり落おとすや猫ねこの蚤のみ 八番日記 政2
3552 とぶな蚤のみそれ〳〵そこが角田川すみだがは 八番日記 政2
3553 とべよ蚤のみ同おなじ事ことなら蓮はすの上うへ 八番日記 政2 (出)『おらが春』『希杖本』
3554 親猫おやねこが蚤のみをも噛かんでくれにけり だん袋 政3 (出)『発句鈔追加』
3555 芝原しばはらにこすり付つけるや猫ねこの蚤のみ 八番日記 政3
3548 寝莚ねむしろや鼠ねづみの蚤のみの降ふり所どころ 八番日記 政3 (出)『だん袋』『発句鈔追加』
3549 蚤のみか(噛)んで寝ねせて行ゆく也猫ねこの親おや 八番日記 政3 (出)『発句集続篇』書簡
3550 でく〴〵と蚤のみまけせぬや田舎ゐなか猫ねこ 八番日記 政4
3551 猫ねこの蚤のみはら〳〵戻もどる夜よさり哉 八番日記 政4
3552 蚤のみ蠅はへも達者たつしやで留主るすをし[て]居ゐるか 八番日記 政4
3553 湖みづうみや山やまを目当めあてに蚤のみおよぐ 八番日記 政4
3554 我宿わがやどは蚤のみ捨藪すてやぶのとなり哉 八番日記 政4
3555 庵いほの蚤のみ子こどもに迄までもとられけり 文政句帖 政5
3556 蓙ござの蚤のみかくれたふりをしたりけり 文政句帖 政5
3557 座頭坊ざとうばうと知しつて逃にげぬか蓙ござの蚤のみ 文政句帖 政5
3558 順礼じゆんれいの蚤のみやくりから谷たにへとぶ 文政句帖 政5
3559 としよりも蚤のみを追おふ目めはかすまぬか 文政句帖 政5
3560 とんだ蚤のみかくれて人ひとをはかるかよ 文政句帖 政5
3561 新畳にいだたみ蚤のみの[飛とぶ]音おとさは〳〵し 文政句帖 政5
3562 蚤のみ虱しらみよりあひ(寄合)もする背中せなか哉 文政句帖 政5
3563 蚤のみ出でれば蚤のみとり草ぐさも咲さきにけり 文政句帖 政5
3564 人声ひとごゑに蚤のみのとび寄よる河原かはら哉 文政句帖 政5
3565 人ひとの世よや山松陰やままつかげも蚤のみがすむ 文政句帖 政5
3566 紫むらさきの花はなで蚤のみとる子こども哉 文政句帖 政5
3567 村末むらすゑや芝原しばはらにさへ蚤のみのとぶ 文政句帖 政5
3568 目覚めざましに蚤のみをとばする木陰こかげ哉 文政句帖 政5
3569 目めのかすむなどゝて蚤のみは上手じやうず也 文政句帖 政5
3570 夜よの庵いほや蚤のみの飛音とぶおと騒々さうざうし 文政句帖 政5
3571 うら店だなは蚤のみもいんき(陰気)か外そとへとぶ 文政句帖 政7
3572 追おふな〳〵蚤のみが隠かくれたふりをす[る] 文政句帖 政7
3573 川風かはかぜや砂すなつ原ぱらにも蚤のみがとぶ 文政句帖 政7
3574 木きの猿さるや蚤のみをとばせる犬いぬの上うへ 文政句帖 政7
3575 捨藪すてやぶの蚤のみやはら〳〵とびもどる 文政句帖 政7
3576 臑すねの蚤のみしびれは京きやうへ上のぼつたに 文政句帖 政7
3577 蚤のみばら〴〵足あしにとりつく川原かはら哉 文政句帖 政7
3578 [あばれ蚤のみおのれと入いるや]さかる火ひに 政八草稿 政8
3579 あばれ蚤のみおのれと入いるやもち桶をけへ 政八草稿 政8
3580 庵いほの蚤のみ子こを負おぶひつゝ逃廻にげまはる 文政句帖 政8
3581 老おいぼれと見みくびつて蚤のみも逃にげぬ也 文政句帖 政8
3582 蚤のみひよいひよい〳〵〳〵過すぎて火ひにはまる 文政句帖 政8
3583 蚤のみひよいひよい〳〵〳〵達者たつしやじまん哉 文政句帖 政8
3584 蚤のみ焼やいて日和ひより占うらなふ山家やまが哉 文政句帖 政8 (出)『文政版』
3585 のら猫ねこが負おふて行ゆく也庵いほの[蚤のみ] 政八草稿 政8
3586 掃捨はきすてた其一倍そのいちばいやござの蚤のみ 政八草稿 政8
3587 一人ひとり寝ねた我われも行ゆくぞよ庵いほの蚤のみ 政八草稿 政8
3588 火ひの中なかへわれと入いる也あばれ蚤のみ 政八草稿 政8
3589 山里やまざとやをがんで借かりし蚤のみ莚むしろ 文政句帖 政8
3590 よい月つき[や]内うちへ這入はひれば蚤のみ地獄ぢごく 文政句帖 政8
3591 つゝがなく湯治たうぢしにけり腕うでの蚤のみ 政九十句写 政9
3592 待まちかねて寄よつたぞ〳〵留主るすの蚤のみ 政九十句写 政9 (出)『希杖本』
3593 朝顔あさがほのうしろは蚤のみの地獄ぢごくかな 政九十句写 政10 (出)『希杖本』
3594 かまふなよやれかまふなよ子こもち蚤のみ 政九十句写 政10 (出)『希杖本』
3595 五六人ごろくにん蚤のみ追おひ歩あるくあさぢかな 政九十句写 政10 (出)『希杖本』
3596 大道だいだうに蚤のみはき捨すてる月夜つきよかな 政九十句写 政10 (出)『希杖本』
3597 人ひとの世よや小石原こいしばらより蚤のみうつる 政九十句写 政10 (出)『希杖本』
3598 人ひとの世よや砂すな歩行あるいても蚤のみうつる 政九十句写 政10 出)『希杖本』 
 土蔵住居して 
3599 やけ土つちのほかり〳〵や蚤のみさわぐ 書簡 政10
3600 痩やせ蚤のみにやけ石いしほこり〳〵哉 政九十句写 政10 (出)『希杖本』
3601 痩やせ蚤のみのかはいや留主るすになる庵いほり 政九十句写 政10 (出)『希杖本』
3602 うら山やまを遊あそび歩行あるくや寺てらの蚤のみ 希杖本
3603 願ねがひから京きやうの蚤のみ蚊かに責せめらるゝ 真蹟

One response

  1. shaw Avatar

    蠅よりも蚤のほうが身近な虫だったようで、一茶にとってはほとんど身内のような存在だったと思われます。逆に云うと、その分孤立していたと考えることもできます。

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