「文學界」4月号に掲載される新人賞の候補作に選ばれなかったとき、それを受け入れられるだろうか。候補作に入ることを願うあまり、中間発表を待つあいだに、いつしか選ばれることしか考えなくなった。そんな自分をいじらしくも惨(みじ)めに思う。
何かにとり憑(つ)かれたかのように、変な自信に包まれてしまったのはなぜだろう。候補作に入らない不安よりも根拠のない過信のほうが怖(こわ)いかもしれない。いや、ただの過信だったら、それが打ち砕かれるだけの話で恐れるには及ばない。
候補者にはもう通知があったに違いない。小説の主人公である凭也(ヒョーヤ)が嗤(わら)うかのように川面(かわも)にさざ波が立っている。
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