一茶がもっとも充実していたとされる時期に出版された七番日記に載っている痩蛙の句(縦書き文庫ふりがな小林一茶発句集春7)について考える。この句の上五にある痩蛙(やせがへる)を歌語の<かはづ>に置き換えたらどうなるだろうか。便宜上、前者を a.とし、後者を b.としておこう。
| a. | 痩蛙まけるな一茶是に有 |
| b. | 痩蛙まけるな一茶是に有 |
a.では蛙が<ガエル>と濁音になるが、b.は清音のまま<カワズ>のため、前に<ヤセ>が付くと一旦息を詰まらせて<ッカワズ>のように発音することになる。そのせいか、a.のほうにより強く作者と蛙との一体感を感じる。
参考までに、David G. Lanoue 氏*の英語訳を見てみよう。一茶の俳句の多くを翻訳し句ごとに訳注を付している同氏サイトで検索すると<frog>の句213が表示される。これらの中で<かへる><かはづ>とかな表記されたものは除いて漢字<蛙>をみると、次の痩蛙の句以外は蛙をすべて<kawazu>と読んでいる。
痩蛙まけるな一茶是に有り
yasegaeru makeru na issa kore ni ari
scrawny frog, hang tough! Issa is here
Composed at Ganshoin Temple in Obuse, Nagano Prefecture in 1816. In his diary, Issa explains, “I stooped to watch a frog scuffle on the 20th day of Fourth Month.” Since he likes to describe himself as impoverished and hungry, Issa feels a special kinship with the scrawny frog battling for a mate. (1816年長野県小布施の岩松院にて作句。日記には「4月20日屈み込んで蛙の喧嘩を見た」と述べている。自身を好んで飢えた貧者と表現する一茶は、交尾相手を求めて争うやせ細った蛙に格別な親近感を抱いたのである。)
*He describes himself as a translator of Japanese haiku, a teacher of English and world literature, a writer of haiku and haiku novels.
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