一茶: 風とあたら口

一茶発句集春5の季語「鶯」に載っている春2078の句について考えてみた。感官としては、作者が鶯を身近に感ずるあまり(ほとんど一体化している)、風の流れに嫉妬しているようにみえる。「あたら口」という表現にそんな一体感から生じるなまめかしささえ感じる。

比喩的に云えば、作者は鶯の嘴をあたかも女の唇を間近に接するように見入り、そこを通って入ろうとする風の流れを邪魔に思う。作者がそう感じていたかどうかは別の問題で、僕がそう感じるだけかもしれない。

ただ鶯に向かう一茶の接し方は尋常ではない、彼の観察は鶯の鳴き声はおろか一つひとつの仕種にまで及んでいる、その嘴を通した呼気と吸気にまで迫る、けっして一羽の鳥に対するものではない、一個の生に対する慄きさえ感じさせる。

春2078の異本等作品集等
鶯の風をいれるやあたら口梅塵八番
文政3年
風をいれるやあたら口風間八番
文政3年8月
鶯の風[を]いれるやあた風間八番
文政4年1月
風をいれあたら口書簡
鶯の風をるゝあたら口浅黄空
自筆本
ふりがな小林一茶発句集春5縦書き文庫

縦書き文庫版「ふりがな小林一茶発句集」制作の進捗状況は次のとおりです。

縦書き文庫版ふりがな小林一茶発句集
ふりがな小林一茶発句集 新年・春[修正中]
ふりがな小林一茶発句集 夏 [1次校閲済]
ふりがな小林一茶発句集 秋 [1次校閲済]
ふりがな小林一茶発句集 冬 [26年中に完成予定]
参照 https://oguriq.com/issa-tb-contents/

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