やなせたかし(柳瀬嵩1919-2013)の自伝「アンパンマンの遺書」(2013年復刻版 岩波現代文庫)を読んだ。文章に衒いや自慢がないのは著者の気質のせいだろうが、晩年に至るまで「日蔭者」だったと自ら認めているのが凄いところだ。
そんな控えめな性格ゆえか、異なる分野の人々から経験のない分野の仕事を頼まれ、やったことがないと断りながらも謙虚に引き受け新境地を拓いてゆく。他の漫画家たちを天才とし自らをB級だとする彼は、幼児だけでなく人々から好かれる人なのだ。
自伝の初版(1995年)は著者が妻に先立たれた後の70歳台前半に書いている。彼自身はその後20年ほど生き、アンパンマンほかのキャラクターを国内にとどまらず海外にも普及させた。余生と呼ぶにはあまりに華麗な晩年だった。人並み外れた生命力の持ち主で、その魅力をはじめに捉えたのが幼児層だったということか。
アンパンマンというキャラクターを好きになれない僕は、孫と彼に寄り沿う娘に感化されて関心を持ち、作者の自伝に感銘を受けている。夫妻の墓標として故郷にアンパンマンミュージアムを生前贈与する、何てすばらしい生涯だろう。
『それいけ! アンパンマン』1988年放送の第1話「アンパンマン誕生」より↓












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