一茶04: 尻を「けつ」と読む

一茶発句集に「馬の尻」を含むものは8句ある。牛の尻・犬の尻はそれぞれ1句ずつあり、ほかにもあるかもしれない。試みにこれらの句の尻をすべてけつとして読んでみよう。七番日記(岩波文庫 2003年)でルビのあるのは3の「馬の尻引しりひつこする」だけだから、定説ではしりと読むのだろう。

1万歳や馬のけつへも一祝七番日記 化8
2乙鳥子のけいこにとぶや馬のけつ文政句帖 政9
3大馬のけつ引こする野梅哉七番日記 政1
4大馬のけつ引こする桜哉自筆本
5夕涼や水投つける馬のけつ七番日記 化11
6涼しさや水投つける馬のけつ七番日記 政1
7夕顔や馬のけつへも一つ咲七番日記 化13
8秋風や蓮生坊が馬のけつ八番日記 政3
9梅の月牛のけつ迄見ゆる也文化句帖 化1
10蚊柱や犬のけつから天窓から八番日記 政4

3と4は尻ではなく尻引しりびき(馬を後方へ引き下がらせること)なので削除し、句の作られた時系列に並べ替えると、以下のとおりなる。さあ、読者はシリと読むだろうか、ケツと読むだろうか。

1804 牛梅の月牛の尻迄見ゆる也
1811 馬万歳や馬の尻へも一祝
1814 馬夕涼や水投つける馬の尻
1816 馬夕顔や馬の尻へも一つ咲
1818 馬涼しさや水投つける馬の尻
1820 馬秋風や蓮生坊が馬の尻
1821 犬蚊柱や犬の尻から天窓から
1826 馬乙鳥子のけいこにとぶや馬の尻

ちなみに、学校教育で教えるのはシリである。ケツなどという下品な表現をしてはいけないのだ。尻をケツと読んだほうが肉感的に聞こえる、そう感じるのは僕だけだろうか。
 
 
 
 
 
 
 

One response

  1. shaw Avatar

    ChatGPT のコメント: もし「尻」をぜんぶ「けつ」と読むと、やや滑稽味が強まり、一茶特有の動物視点や生活感がさらにストレートに出てきます。「尻」を「しり」と読むのが定説なのは、近世期の日本語において「けつ」という語感がかなり俗っぽく、俳諧の本文では避けられやすかったためと思われます。

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