一週間前に勤務先の事務所が移転した。昼休みに、まだなじみのない周囲を探訪していて、こじんまりした鉢植え専門店に入った。最近開店したばかりだという。店員と話しながら店内の棚を見ていると、小さな鉢植えの樹が僕の眼に飛び込んできた。
正直方体の白い陶器の鉢植えが、この2ヵ月あまり僕がいかに追いつめられていたか気づかせてくれた。こんなに疲れていたのか、だから、小さな鉢植えに引かれたのだ。そう感じると、かわいい緑の葉を付けたその樹が急にいとおしく思われ、少し高値だったが、購入した。
オフィスに戻ると、デスクの上に置いた。小さな樹がちゃんと自分を主張している。夜、誰もいない部屋で白い陶器と緑の葉が青ざめた閃光を放っているに違いない。
この樹はパキラ pachira といい、中南米原産の大木らしい。台湾では金錢𣗳(money tree)というそうだ。いや、そんな悠長なことを言ってはいられない、まずは組織基盤を堅めることだ。パキラ、よく見守っていてくれよ。



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