大浜啓吉著「<法の支配>とは何か: 行政法入門」(岩波新書)を読んだ。立憲君主制の統治原理である法治国家 Rechtsstaat と戦後日本の統治原理である<法の支配> rule of law の根本的な違い、明治の<法治国家>論の枠組みから抜け出せない現代日本の行政法の学説など興味深い。
「法治国家論はドイツ帝国の立憲君主制に特有の国家統治の原理でした。明治の新政府は近代国家の範をドイツに求めて明治憲法を制定したのですが、同時にドイツ帝国憲法の原理である<法治国家>論も受容しました。問題は第二次世界大戦に敗れ、日本国憲法が制定された後においても法治国家論の帰結である<法律による行政の原理>が支配的学説として生き残っていることです。<法の支配>を統治原理とする日本国憲法の下でどうしてそういうことになるのか」(同書 p. 96より引用、句読点ほか編集)
こういう国家の根幹に関わる大事なことを学校教育は教えなかった。それが戦後日本の政治体制ないし55年体制と呼ばれる自民党長期政権にとって不都合だったからだろう。彼らは明治以来の戦争国家と戦後におけるイメージとしての平和国家を切り離すことなく連続させたいのだ。だから、明治150年といい、鉄道150年といって、何かにつけて連続性を強調する。そして、北朝鮮や中国を脅威に据えた安保改定が行われ、なし崩し的な平和憲法の骨抜き化が進行している。自公保守政権のもとでそれが進められていることに危機感を覚え憤りさえ感じる。
| 法律による行政の原理、法律に基づく行政の原理 |
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| 統治国家論 → 法律による行政の原理 法律の法規創造力: 法規(国民の権利を制限し義務を課す一般的抽象的な法規範)を創造するのは立法権(法律)のみで、行政権は法律の授権がない限り法規を創造できない 法律の優位: 法律形式によって表明された国家意思が他のすべての国家意思に優越する 法律の留保: 行政権が一定の活動をする場合には必ず法律の根拠が必要である |
| 法の支配 → 法律に基づく行政の原理 授権執行の原則: 行政権は個別の法律の授権があって初めて法律を執行できる 適法処分の原則: 行政行為は実体法レベルで法律に適合したものでなければならない 手続的デュープロセスの原則: 行政の執行過程における手続上の適法・違法を判断する際の準則 裁判的救済の原則: 行政の執行過程における実体的瑕疵・手続的瑕疵によって私人の権利利益が侵害された場合、裁判上の救済が図られなければならない |
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