一茶発句集に「馬の尻」を含むものは8句ある。牛の尻・犬の尻はそれぞれ1句ずつあり、ほかにもあるかもしれない。試みにこれらの句の尻をすべて尻として読んでみよう。七番日記(岩波文庫 2003年)でルビのあるのは3の「馬の尻引こする」だけだから、定説では尻と読むのだろう。
| 1 | 万歳や馬の尻へも一祝 | 七番日記 化8 |
| 2 | 乙鳥子のけいこにとぶや馬の尻 | 文政句帖 政9 |
| 5 | 夕涼や水投つける馬の尻 | 七番日記 化11 |
| 6 | 涼しさや水投つける馬の尻 | 七番日記 政1 |
| 7 | 夕顔や馬の尻へも一つ咲 | 七番日記 化13 |
| 8 | 秋風や蓮生坊が馬の尻 | 八番日記 政3 |
| 9 | 梅の月牛の尻迄見ゆる也 | 文化句帖 化1 |
| 10 | 蚊柱や犬の尻から天窓から | 八番日記 政4 |
3と4は尻ではなく尻引(馬を後方へ引き下がらせること)なので削除し、句の作られた時系列に並べ替えると、以下のとおりなる。さあ、読者はシリと読むだろうか、ケツと読むだろうか。
| 1804 牛 | 梅の月牛の尻迄見ゆる也 |
| 1811 馬 | 万歳や馬の尻へも一祝 |
| 1814 馬 | 夕涼や水投つける馬の尻 |
| 1816 馬 | 夕顔や馬の尻へも一つ咲 |
| 1818 馬 | 涼しさや水投つける馬の尻 |
| 1820 馬 | 秋風や蓮生坊が馬の尻 |
| 1821 犬 | 蚊柱や犬の尻から天窓から |
| 1826 馬 | 乙鳥子のけいこにとぶや馬の尻 |
ちなみに、学校教育で教えるのはシリである。ケツなどという下品な表現をしてはいけないのだ。尻をケツと読んだほうが肉感的に聞こえる、そう感じるのは僕だけだろうか。
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