一茶発句集 冬3

2024年から総ルビ付きの縦書き文庫版を制作中で、その作業の一部として以下の資料(未定稿)を掲載しています。同文庫版はすでに夏と新年の部の句に旧かなルビを振りました。25年後半に春の部の修正を終えて秋と冬雑の部に取りかかり、26年中に完成する予定です。

一茶発句集 冬3/4
芭蕉忌
ばせを忌と申[す]も只一人哉 文政句帖 政8
ばせを忌の入相に入しわらぢ哉 文政句帖 政8
ばせを忌や十人寄れば十ヶ国 文政句帖 政8
ばせを忌や昼から錠の明く庵 文政句帖 政8
芭蕉忌や客が振舞ふ夜蕎麦切 文政句帖
ばせを忌やことしもまめで旅虱 文政版
赤柏
赤柏先神の日と申すべし 享和句帖 享3
鴫も来てかんきんす也赤がしは 七番日記 化11
亥の子
いのこの火治世の雨のかゝる也 享和句帖 享3
雨おり〳〵いのこのかゞり古びけり 文化句帖 化3
御篝も大豊年のいのこ哉 七番日記 化12
外堀にりんといのこのかゞり哉 七番日記 化12
鳴烏いの子の篝いかゞ見た 七番日記 化12
ふいご祭
里並に藪のかぢ屋も祭哉 文化句帖 化2
大師講(智恵粥)
小豆粥大師の雪も降にけり 七番日記 化11
けふの日やする〳〵粥もおがまるゝ 七番日記 化11
相伴に鳩も並ぶや大師粥 七番日記 化11
なむ大師しらぬも粥にありつきぬ 七番日記 化11
なむ大師腹から先へこしらへぬ 七番日記 化11
ちゑ粥をなめ過ごしたる雀哉 文政句帖 政5
ちゑがゆをなめて口利く雀哉 文政句帖 政5
報恩講
来もきたり抑けふの御霜月 我春集 化8
ゑた村<の>御講幟やお霜月 八番日記 政3
門番がたんを切也御講日和 八番日記 政3
夷講
梅さげし人しばしとやえびす講 七番日記 化3
入らぬ世話よ夷の飯をなく烏 七番日記 化9
夷講にこね交られし庵かな 七番日記 化9
夷講ぱつぱと梅のちり出しぬ 七番日記 化9
朝の月夷の飯にかくれけり 七番日記 化12
夷講出入の鳩も並びけり 七番日記 化12
本町や夷の飯の横がすみ 七番日記 化12
杉箸で火をはさみけり夷講 七番日記 化13
夜に入てからが本文(分)の夷講 七番日記 化14
うら町や貧乏徳りの夷講 八番日記 政4
ぼて振や歩行ながらのゑびす講 八番日記 政4
大江戸や辻の番太も夷講 文政句帖 政6
大黒も連に居るや夷講 文政句帖 政6
独居や飯買て来て夷講 文政句帖 政6
飯の陰より顔を出る夷哉 文政句帖 政6
爪に灯をとぼしておふせて夷講 文政句帖 政7
子祭
寝て待ば福が来かや鼠なく 七番日記 化11
子祭りや寝て待てばぼたもちが来る 文政句帖 政7
夜祭りや棚の鼠が一の客 文政句帖 政7
里神楽(夜神楽)
林間に誰呼子鳥里神楽 寛政句帖 寛5
葉うら〳〵灯影とゞかぬ里神楽 寛政句帖 寛6
としうへの人交りて里神楽 享和句帖 享3
里神楽懐の子も手をたゝく 七番日記 化12
ばか蔵も一役するや里神楽 七番日記 化12
宵闇やあんな藪にも里神楽 七番日記 化12
夜神楽や焚火の中へちる紅葉 七番日記 化12
御神楽やおきを弘げる雪の上 七番日記 政1
山本や小ねぎ二人の里神楽 八番日記 政2
山本や彌宣どのなしの里神楽 八番日記 政2
この次はどこの月夜の里神楽 茶翁聯句集 化中
雑魚寝
から人と雑魚寝もすらん女哉 寛政句帖 寛5
鉢たたき
京を出て聞直さうぞはち敲 文化句帖 化1
しばしまて白髪くらべん鉢敲 文化句帖 化1
宋鑑がとふばも見たか鉢敲 文化句帖 化1
西山はもう鶯かはち敲 文化句帖 化1
鉢敲今のが山の凹み哉 文化句帖 化1
我塚もやがて頼むぞ鉢敲 文化句帖 化4
細長い雲のはづれや鉢たゝき 七番日記 化8
有明や梅にも一ツ鉢たゝき 七番日記 化10
君が代や鳥も経よむはちたゝき 七番日記 化10
殊勝さや同じ瓢のたゝき様 七番日記 化10
出始を祝ふてたゝく瓢哉 七番日記 化10
雪礫瓢でうけよ其之丞 七番日記 化10
鶯に目を覚さすな鉢たゝき 七番日記 化11
我家に来よ〳〵下手なはち敲 七番日記 化12
淋しさや同じ瓢(の)たゝきがら 七番日記 政1
茶釜売り
青茶筌かつげば直に淋しいぞ 文化句帖 化2
売ぶりの色に淋しき茶せん哉 文化句帖 化2
臘八
渓の梅世尊へさゝぐ花に哉 寛政句帖 寛4
臘八や我(と)同じく骨と皮 七番日記 化11
寒ごり(寒行)
寒ごりに袖すりてさへ寒(さ)哉 文化句帖 化3
寒垢離にせなかの竜の披露哉 八番日記 政2
寒行や講も頼まぬ御名代 八番日記 政3
寒ごりや首のぐるりの三日の月 文政九十句写 政9
寒垢離や首のあたりの水の月 発句鈔追加
寒習
まゝつ子や灰にいろはの寒ならい(ひ) 文政句帖 政5
寒声
鶯もまあ寒声か朝つから 七番日記 化2
寒声や不二も丸(め)て呑んだ顔 七番日記 化2
寒声や云もなむあみだ仏哉 八番日記 政2
寒声と名のりかけけり常念仏 八番日記 政2
寒声にふし付らるゝ念仏哉 八番日記 政2
木母寺や常念仏も寒の声 八番日記 政3
寒声につかはれ給ふ念仏かな 文政句帖 政5
寒声に念仏をつかふ寝覚哉 文政句帖 政5
寒声に迄つかはるゝ念仏かな 文政句帖 政5
寒声やい組ろ組の喧嘩買 文政句帖 政5
寒声や乞食小屋の娘の子 文政句帖 政5
寒声に顔の売るや悪太郎 文政句帖 政7
寒念仏
此程の梅にかまはず寒念仏 文化句帖 化3
はづかしや喰て寝て聞寒念仏 文化句帖 化3
妹が子も(寒)念仏のもやう哉 文化五六句記 化5
梅見るもむづかしき夜を寒念仏 文化五六句記 化5
かゝる夜に不二もとしよれ寒念仏 文化五六句記 化5
死所はどこの桜ぞ寒念仏 文化五六句記 化5
ふつゝかな我家へもむく寒念仏 文化五六句記 化5
門の梅寒念仏に盗まれし 七番日記 化10
冴る夜や梅に(も)一ツ寒念仏 七番日記 化10
須磨迄はうかれがてらや寒念仏 七番日記 化10
大門やから戻りする寒念仏 七番日記 化10
一夜でも寒念仏のつもり哉 七番日記 化10
若い声と云れうばかり寒念仏 七番日記 化10
けふぎりやはかやつて行く寒念仏 七番日記 化3
はかやりや一文だけの寒念仏 七番日記 化3
垢つかぬうちは殊勝の寒念仏 八番日記 政2
雨の夜やしかも女の寒念仏 八番日記 政2
一文に一ッづゝかよ寒念仏 八番日記 政2
今の世や連をつれたる寒念仏 八番日記 政2
門〳〵や半分で行寒念仏 八番日記 政2
着ぶくれて新寒念仏通りけり 八番日記 政2
そつくりと大津の鬼や寒念仏 八番日記 政2
其迹は新寒念仏と見へにけり 八番日記 政2
つき合や不性〴〵に寒念仏 八番日記 政2
つら役や子持女の寒念仏 八番日記 政2
何果か腰のかゞんだ寒念仏 八番日記 政2
一夜さがくせに成りけり寒念仏 八番日記 政2
一夜さは出来心也寒念仏 八番日記 政2
夜に入ルや素人めかぬ寒念仏 八番日記 政2
今日あたり剃た童や寒念仏 八番日記 政2
抜額とれぬ坊主や寒念仏 八番日記 政3
都哉寒念仏も供連る 八番日記 政3
小野郎が寒念仏の音頭哉 八番日記 政4
迹供に犬の鳴く也寒念仏 文政句帖 政5
犬踏んでおどされにけり寒念仏 文政句帖 政5
けちむらやをろぬいて行寒念仏 文政句帖 政5
つんぼ札首にかけつゝ寒念仏 文政句帖 政5
夜食出す門ももたぬや寒念仏 文政句帖 政5
真黒な藪と見へしが寒念仏 文政九十句写 政10
寒念仏さては貴殿でありしよな 遺稿
寒の水
見てさへや惣身にひゞく寒の水 文化句帖 化3
裸身や上手に浴る寒の水 七番日記 化14
名代の寒水浴る雀哉 七番日記 政1
寒の水浴よ金比羅金兵衛忌 八番日記 政2
寒水や鳶の輪かかる投手桶 八番日記 政2
どれ程の世をへるとてか寒の水 八番日記 政2
朝風にあの年をして寒の水 八番日記 政3
見るにさへぞつとする也寒の水 八番日記 政3
一文がざぶり浴るや寒の水 八番日記 政4
口切
手前茶の口切にさへゆふべ哉 文化句帖 化3
口切の天窓員也毛なし山 七番日記 化11
よい雨や茶壷の口を切[る]日とて 七番日記 化11
口切やはやして通る天つ雁 七番日記 化12
時雨せよ茶壷の口を今切ぞ 七番日記 化12
西山の口切巡りしたりけり 七番日記 化12
口切の日に点かけて廻しけり 八番日記 政4
冬構へ
冬構蔦一筋も栄耀也 文化句帖 化1
道灌[に]蓑かし申せ冬構 七番日記 化10
炉開き
江戸中に炉を明[る]もひとり哉 文化句帖 化2
化もせで開き通せしいろり哉 文化句帖 化2
炉を明てきたなく身ゆる垣根哉 文化句帖 化2
炉開て先はかざゝん紅葉哉 文化句帖 化3
油桶そわかと開《ら》くいろり哉 七番日記 化10
炉開やあつらへ通り夜の雨 七番日記 化10
炉開や勧学院の鳩雀 七番日記 化10
炉開やけん使がましや鳶の顔 七番日記 化10
なむ大ひ〳〵と明るいろり哉 七番日記 化11
開く炉に峰の松風通ひけり 七番日記 化11
炉開や小判のはじの菊の花 七番日記 化11
炉開や例の通りの初時雨 七番日記 化12
ひとりだけほじくつておくいろり哉 七番日記 化12
炉を明て見てもつまらぬ独哉 七番日記 化12
いろり
炉のはたやよべの笑ひがいとまごひ 真蹟 寛11
二人していろりの縁を枕哉 七番日記 化10
朝つからかぢり付たるいろり哉 七番日記 化13
一尺の子があぐらかくいろり哉 七番日記 化13
いろはにほへとを習ふいろり哉 文政句帖 政5
掛取が土足ふみ込むいろり哉 文政句帖 政5
狙丸がよこ坐うけとるいろり哉 文政句帖 政5
つぐらから猫が面出すいろり哉 文政句帖 政5
としよりやいろり明りに賃仕事 文政句帖 政5
ひだ山の入日横たふいろり哉 文政句帖 政5
よこざには茶の子を居るいろり哉 文政句帖 政5
顔見せ
顔見せや人の中より明烏 七番日記 化11
皺顔も同じ並びぞ梅の花 七番日記 化11
世〔の〕中や皺顔見せになにはから 七番日記 化11
顔見せの顔もことしはいくつへる 七番日記 化12
顔見せや親〔の〕かたみの苦わらひ 七番日記 化12
顔見せや声を合する天つ雁 七番日記 化12
顔見せや大な人のうしろから 文政句帖 政6
顔見せや人の天窓が邪魔になる 文政句帖 政6
煤掃
煤掃や琴もて居る梅の蔭 丁巳春遊 寛9
降雪もはりあひなれや葉竹売 文化句帖 化1
思ふさま鳩も鳴おれ煤もはく 文化句帖 化2
すゝ竹も皆は這入らぬやどり哉 文化句帖 化2
すゝははき何と越路のしやくし達 文化句帖 化2
夕月や松の天窓の煤もはく 文化句帖 化2
かつしかや煤の捨場も角田川 文化句帖 化3
竹売の竹にもしばし雀哉 文化句帖 化3
すゝ払藪の雀の寝床迄 文化句帖 化4
梅椿咲立られてすゝやはく 文化五六句記 化5
梅の木や都のすゝの捨所 文化五六句記 化5
すゝ竹や馬の首も其序 文化五六句記 化5
すゝ竹や先鶯の鳴ところ 文化五六句記 化5
すゝ掃て長閑に暮る菜畠哉 文化五六句記 化5
すゝはきやけろ〳〵門の梅[の]花 文化五六句記 化5
草の戸や梅にせかれて煤をはく 七番日記 化7
煤とりて寝て見たりけり亦打山 七番日記 化7
煤はきや火のけも見へぬ見世女郎 七番日記 化7
蜩のけたゝましさよ煤はらひ 七番日記 化7
ほか〳〵と煤がかすむぞ又打山 七番日記 化7
都鳥それさへ煤をかぶりけり 小くじら 化7
御すゝや雀のあびる程もなき 七番日記 化9
かくれ家や犬の天窓のすゝもはく 七番日記 化9
名月や御煤の過し善光寺 七番日記 化9
浴るともあなたの煤ぞ善光寺 七番日記 化10
有明や(あ)みだ如来とすゝ祝 七番日記 化10
庵のすゝざつとはく真似したりけり 七番日記 化10
庵の煤三文程もなかりけり 七番日記 化10
門雀米ねだりけり煤いはひ 七番日記 化10
水仙も煤をかぶつて立りけり 七番日記 化10
煤捨んそこのき給へ御雀 七番日記 化10
煤はきや池の汀の亀に迄 七番日記 化10
煤はきやさて此次は爺がまひ 七番日記 化10
煤はきや花の水仙梅つばき 七番日記 化10
すゝはくや藪は水仙梅つばき 七番日記 化10
煤ほこり天窓下しや梅つばき 七番日記 化10
なよ竹の世をうぢ山もすゝ払 七番日記 化10
なら坂やほの〴〵煤の横がすみ 七番日記 化10
ほの〴〵と棚引すゝや江戸見坂 七番日記 化10
山里や煤をかぶつて梅椿 七番日記 化10
我庵やすゝはき竹も其序 七番日記 化10
隠家の犬も人数やすゝ祝 七番日記 化11
煤はきにげん気付ルや庵の犬 七番日記 化11
御烏もついと並ぶや煤祝 七番日記 化13
面で煤はいたやうなるやつら哉 七番日記 化13
我家は団(扇)で煤をはらひけり 七番日記 化13
庵の煤嵐が掃いてくれにけり 七番日記 化14
庵の煤口で吹ても仕廻けり 七番日記 化14
庵の煤掃く真似(を)して置にけり 七番日記 化14
煤竹も舞のそぶりの社哉 七番日記 化14
煤掃て垣も洗て三ヶの月 七番日記 化14
それ遊べ煤もはいたぞ門雀 七番日記 化14
煤の手でうけとりにけり小重箱 七番日記 政1
煤払のことはりもせぬ山家哉 七番日記 政1
煤はきや旭に向ふ鼻の穴 七番日記 政1
大仏の鼻から出たり煤払 七番日記 政1
ほちや〳〵と菜遣しぬ煤払 七番日記 政1
ほの〴〵と明わたりけり煤の顔 七番日記 政1
若声や向両国の煤払 八番日記 政1
煤竹にころ〳〵猫がざれにけり 八番日記 政2
煤竹や藪のやしろも一社 八番日記 政2
煤はいた形で出歩く小野郎哉 八番日記 政2
煤払の世話がなき身の涙かな 八番日記 政2
猫連て松へ隠居やすゝはらひ 八番日記 政2
長閑さや煤はとゝ夜の小行灯 八番日記 政2
庵の煤風が払てくれにけり 八番日記 政3
煤竹の高砂めくや爺が舞 八番日記 政3
煤竹や高砂めいた爺が顔 八番日記 政3
煤はくもあく日なんどのむづかしや 八番日記 政3
身一ッを邪魔にされけり煤はらへ 八番日記 政3
山里は四五年ぶりの煤払 八番日記 政3
煤はきやねらひすまして来る行脚 八番日記 政4
煤はきや貰餅おく雪の上 八番日記 政4
煤埃一むら雪のもやう哉 八番日記 政4
隅の蜘蛛案じな煤はとらぬぞよ 八番日記 政4
大犬の胴づかれけりすゝはらい 文政句帖 政5
けふの日や流れも煤になるみがた 文政句帖 政5
煤竹(や)仏の顔も一なぐり 文政句帖 政5
すゝ竹や例の爺の昔舞 文政句帖 政5
煤はかぬとて(も)都の住居哉 文政句帖 政5
煤はきや我は人形につかはるゝ 文政句帖 政5
市神や呑くふのみのすゝ払い 文政句帖 政6
御持仏や肩衣かけて煤をはく 文政句帖 政6
煤さはぎぱたり(と)過て朝御灯 文政句帖 政6
煤過やぞろりととぼる朱蝋燭 文政句帖 政6
煤はきや東は赤い日の出空 文政句帖 政6
掃煤のはく程黒き畳哉 文政句帖 政6
人並や庵も夜なべのすゝ払い 文政句帖 政6
すゝ芥も銭になりけり小松川 文政句帖 政7
煤さはぎすむや御堂の朱蝋燭 文政句帖 政7
すゝ竹を入れぬまねして仕廻けり 文政句帖 政7
煤取て錠をおろして旅かせぎ 文政句帖 政7
煤はきや和尚は居間にひとり釜 文政句帖 政7
煤はきや払ひ出しけり柱疵 文政句帖 政7
煤はきや孫かこつけに両国へ 文政句帖 政7
二番寝の枕(元)よりすゝはらひ 文政句帖 政7
入り道縄引張て煤はらひ 文政句帖 政7
今掃た迹から煤がぼたり哉 文政句帖 政8
梅椿煤をかぶつたげんき哉 文政句帖 政8
酒時を買いで戻るや煤払 文政句帖 政8
けふも〳〵人の煤なり貧乏人 発句鈔追加
煤竹に御諚ありけり爺が舞 希杖本
煤竹のつゝぱりまはるいほり哉 発句鈔追加
煤掃きにとまり合する行脚哉 発句鈔追加
節季候
松風や小野ゝおくさへせき候と 文化句帖 化2
節季候の見むきもせぬや角田川 文化句帖 化3
せき候やそれ〳〵そこの梅の花 文化句帖 化7
今しがた浅ぢをでたり節季候 七番日記 化9
せき候や七尺去て小せき候 七番日記 化9
おく小野や小藪隠れも節き候 七番日記 化10
おく小野や藪もせき候節季がへ 七番日記 化10
さが山に節季候候なり込ぬ 七番日記 化10
節季候にけられ給ふな迹の児 七番日記 化10
せき候の辷つたまゝで梅の花 七番日記 化10
せき候よ女せき候それも御代 七番日記 化10
節季候を女もす也それも御代 七番日記 化10
扨も〳〵六十顔のせ(つ)き候 七番日記 化11
そりや梅が〳〵とやせ(つ)き候 七番日記 化11
なり込やしかもせき候〳〵と 七番日記 化14
えどの世は女もす也節き候 七番日記 政1
門口や上手に辷る節季候 七番日記 政1
木隠てまたやせき候〳〵と 七番日記 政1
木隠のさがもせき候〳〵哉 七番日記 政1
せき候の尻の先也角田川 七番日記 政1
せき候や腮でかぞへる村の家 七番日記 政1
せき候よおの(れ)が妻もして見せよ 七番日記 政1
鵲令の尻ではやすやせ(つ)き候 七番日記 政1
子の真似を親もする也せつきぞろ 八番日記 政2
下京や夜は素人のせつき候 八番日記 政2
せき候やお一日から立に立 八番日記 政2
せき候や小銭も羽が生えて飛ぶ 八番日記 政2
せき候やはる〴〵帰る寺の門 八番日記 政2
町中をよい年をしてせつき候 八番日記 政2
藪の家やむだにして云節季候 八番日記 政2
天窓から湯けむり立て節季候 八番日記 政3
大藪の入もせき候〳〵よ 八番日記 政3
せき候に負ぬや門のむら雀 八番日記 政3
せき候も三弦にのる都哉 八番日記 政3
せき候やさゝらでなでる梅の花 八番日記 政3
せき候やよい年をして画どり顔 八番日記 政3
年寄のせいにやれ〳〵せつき候 八番日記 政3
引風のせきから直に節き候 八番日記 政3
やれも〳〵よい年をして節き候 八番日記 政3
うら家をものがしはせぬぞせつき候 八番日記 政4
から風やしかもしらふのせつき候 八番日記 政4
三絃でせきぞろするや今浮世 八番日記 政4
節き候のとりおとさぬや藪の家 文政句帖 政5
馬の屁の真風下やせつき候 文政句帖 政7
欠茶碗足でなぶるやせつき候 文政句帖 政7
門の犬じやらしながらや小せき候 文政句帖 政7
子仏や指(さ)して居るせつき候 文政句帖 政7
小藪から小藪がくれやせつき候 文政句帖 政7
三絃は妻に引せてせつき候 文政句帖 政7
せき候の犬けとばしもせざりけり 文政句帖 政7
せき候や長大門の暮れの月 文政句帖 政7
せき候や本気でもどるあさぢ原 文政句帖 政7
つぐら子は寝入ばな也せつき候 文政句帖 政7
都だけに少にやけゝりせつき候 文政句帖 政7
脇寄りてせき候さすや門の犬 文政句帖 政7
朝寝坊が寝徳したり節き候 文政句帖 政8
傾城がかはいがりけり小せき候 希杖本
札納
御祓の縛られ給ふ榎哉 七番日記 化10
梅の木や御祓箱をおひながら おらが春 政2
みよしのやさくらの下に納札 八番日記 政2
御祓の古きは少隠居哉 文政句帖 政5
乞食の手へ納めけり古御札 文政句帖 政5
守り札古きはへがれ給ひけり 文政句帖 政5
いせ参いざと流すや古祓 自筆本
餅つき
松ありて又松ありて餅の音 享和句帖 享3
餅臼に松の月よの十五日 享和句帖 享3
もちつきはうしろになりぬ角田川 享和句帖 享3
大原や木がくれてのみ餅をつく 文化句帖 化2
松風も古きためしや餅の音 文化句帖 化2
餅搗もかすむものぞよ小松川 文化句帖 化2
もちつきも夜に入るさまの角田川 文化句帖 化2
もちつきや門は雀の遊処 文化句帖 化2
餅つき(や)一足づゝに京の空 文化句帖 化2
餅つき(や)羅羅の鴻もつゝがなく 文化句帖 化2
家根(の)穴なべて餅つく夜也けり 文化句帖 化2
夜に入れば餅の音する榎哉 文化句帖 化2
我門は常の雨夜や餅の音 文化句帖 化2
春来と餅つく山を見てし哉 文化句帖 化2
木隠れやあみだ如来の餅をつく 文化五六句記 化5
餅つきや都の鶏も皆目覚 文化五六句記 化5
餅つきや今それがしも故郷入 七番日記 化9
あこが餅〳〵とて並べけり 七番日記 化10
迹臼は烏のもちや西方寺 七番日記 化10
庵の夜は餅一枚の明り哉 七番日記 化10
門並みや只一臼も餅さはぎ 七番日記 化10
高砂のやうな二人や餅をつく 七番日記 化10
高砂や松を小楯にもちをつく 七番日記 化10
ちん餅(や)只四五升も歌うたふ 七番日記 化10
鳴烏餅がつかれぬしだらやら 七番日記 化10
餅出よ〳〵とや庭たゝき 七番日記 化10
餅臼にそれうぐひすよ〳〵 七番日記 化10
餅臼に例の鶯とまりけり 七番日記 化10
餅つきと闇を並(べ)る榎哉 七番日記 化10
もち搗や軒から首を出す烏 七番日記 化10
庵の田もとう〳〵餅に成にけり 七番日記 化11
鶏が餅踏んづけて通りけり 七番日記 化11
餅搗や臼にさしたる梅の花 七番日記 化11
餅搗や松の住吉大明神 七番日記 化11
藪陰やとしとり餅も一人つき 七番日記 化11
庵の餅つくにも千代を諷ひけり 七番日記 化13
庵の夜は餅の明りに寝たりけり 七番日記 化13
犬(の)ぶん烏の餅も搗きにけり 七番日記 化13
町並みやどんな庵でも餅さはぎ 七番日記 化13
餅とぶやぴたりと犬の大口へ 七番日記 化13
鶏の餅ふん付ておかしさよ 七番日記 化14
のし餅の皺手の迹はかくれぬぞ 七番日記 化14
のし餅のびは湖のなりや三ヶの月 七番日記 化14
ひえ餅(は)つく音にてもしられけり 七番日記 化14
餅搗のもちがとぶ也犬の口 七番日記 化14
餅搗やおき火ひろげる雪の上 七番日記 化14
世(の)中やおれ(が)こねても餅になる 七番日記 政1
隠家や手の凹程も餅さはぎ 七番日記 政1
のし餅と同(じ)並(び)や角田川 七番日記 政1
のし餅や子どものつかふ大団(扇) 七番日記 政1
餅つきに女だてらの跨火哉 七番日記 政1
餅つきも世間はづれや藪(の)家 七番日記 政1
世は安し焼野ゝ小屋も餅さわぎ 七番日記 政1
藪並に餅もつく也宵の月 七番日記 政1
犬の餅烏が餅もつかれけり 八番日記 政2
母人や丸て投る手本餅 八番日記 政2
はね餅の丁ど入りけり犬の口 八番日記 政2
餅搗が隣へ来たと云子哉 八番日記 政2
もちつきや棚の大黒にこ〳〵と 八番日記 政2
我所へ来のではなし餅の音 八番日記 政2
かくれ家や猫が三疋もちのばん 八番日記 政3
神の餅秤にかゝるうき世哉 八番日記 政3
草の戸ものがしはせぬや餅の札 八番日記 政3
雀にも少しどふ也もち祝ひ 八番日記 政3
のし餅の中や一すじ猫の道 八番日記 政3
のし餅や皺手の迹のあり〳〵と 八番日記 政3
ぶつゝけて餅にかく也何貫目 八番日記 政3
若餅やざぶと搗こむ梅の花 発句類題集 政3
神棚の灯で並べけりもち筵 八番日記 政4
草の庵年取り餅を買にけり 八番日記 政4
さむしろや餅を定木に餅を切 八番日記 政4
三角の餅をいたゞくまゝ子哉 八番日記 政4
並べけりふさ〳〵餅も夜の体 八番日記 政4
はねもちや猫ふん付て歩く也 八番日記 政4
春待や子のない家ももちをつく 八番日記 政4
一丸の餅でぬくめる両手哉 八番日記 政4
餅つきをせがむ子もなし去りながら 八番日記 政4
餅つきや榎にかけし小でうちん 八番日記 政4
餅つきやせがむ子どもをはりあいに 八番日記 政4
夜遊びに出つくはせてや餅をつく 八番日記 政4
我餅や只一升も唄でつく 八番日記 政4
木がくれやとしとりもちもひとりつく 文政句帖 政5
古ばゝが丸める餅の口伝哉 文政句帖 政5
餅搗や灯とどく角田川 文政句帖 政5
餅搗や内義の客はあられ役 文政句帖 政5
餅搗や餅買ふてやるうら家の子 文政句帖 政5
一人前つくとて餅のさはぎ哉 書簡 政7
一枚の餅の明りに寝たりけり 文政句帖 政7
こちへ来る餅の音ぞよ遠隣 文政句帖 政7
一丸メするとて餅のさはぎ哉 文政句帖 政7
栗餅ももやうに並ぶ莚哉 文政句帖 政8
幸に焼餅くるむひと葉かな 梅塵抄録本 政10
餅つきの木陰(に)てうちあはゝ哉 自筆本
餅つきや大黒さまもてつく〳〵 希杖本
餅どたばた〴〵どこがけかちやら 発句鈔追加
配り餅
妹が子は餅負ふ程に成にけり 七番日記 化10
我宿へ来さうにしたり配り餅 七番日記 化10
乙松や手を引れつゝ餅配(り) 七番日記 化13
供連て餅配りけり御太郎 七番日記 化13
和な中や庵の配り餅 七番日記 化14
鳩雀来よ〳〵おれも貰(ひ)餅 七番日記 化14
妹が子のせおふたなりや配り餅 八番日記 政2
山本や狐の穴もくばり餅 八番日記 政2
あてにした餅が二所はづれけり 八番日記 政3
寝て聞や貰ふもちつき二所 八番日記 政4
貰ふ也天神様とちさいもち 八番日記 政4
柴の戸や当の違ひしもち配(り) 文政句帖 政6
歩きしま口上云ふや餅配り 文政句帖 政8
餅とゞくあた〳〵とこがけかち哉 文政句帖 政8
来るはづの餅を聞〳〵ねる夜哉 希杖本
餅花
木に餅の花さく時を見てし哉 七番日記 化10
木に餅をならせ(て)からが一人哉 七番日記 化10
餅花(の)木陰にてうちあはゝ哉 七番日記 化10
木に餅の花咲く世にも逢にけり 七番日記 政1
かまけるな柳の枝に餅がなる 八番日記 政2
もち花の盛(り)も一夜二夜かな 八番日記 政4
もち花のぽたりぽたりとちる日哉 八番日記 政4
もち花やいつちるとなくちるとなく 八番日記 政4
もち花を咲かせて見るや指の先 文政句帖 政7
世のなさ(や)木末に餅の花がさく 文政句帖 政7
衣配り
山雀も笠を着て出よ衣配 文化句帖 化2
若松に雪も来よ〳〵衣配 文化句帖 化2
ぶつ〴〵と鳩の小言や衣配 文文化句帖 化4
籔村も正月着物配りけり 文文化句帖 化4
山しろや小野ゝおく迄衣配 七番日記 化9
其次に猫も並ぶや衣配 七番日記 化10
誰(が)子ぞ辻の仏へ衣配 七番日記 化10
衣配り天窓(数)にははづれけり 七番日記 政1
いも神や始て笑ふ衣配 八番日記 政2
春待や身の志賀へきぬ配り 八番日記 政2
馬迄も正月衣配りけり 八番日記 政3
君が代や厩の馬へも衣配 八番日記 政3
又の世は人に配らんはれ衣 八番日記 政3
山寺の忘(れ)がたみへ衣配 八番日記 政3
山寺や子に迷ふ親の衣配 八番日記 政3
今の世や乞食むらの衣配 文政句帖 政6
小隅から猫の返しや衣配 文政句帖 政6
衣貰ひ配りはせぬや草の家 文政句帖 政6
ごろにやんと猫も並ぶや衣配 文政句帖 政6
江戸住や赤の他人の衣配 文政句帖 政7
江戸の状(それ)いたゞくや衣配 文政句帖 政7
かくれ家や尿瓶も添て衣配 文政句帖 政7
柴の戸(や)配りあまりの節小袖 文政句帖 政7
手軽さや紙拵への衣配 文政句帖 政7
古鳶がとらんとしたり衣配り 文政句帖 政7
やれ孫が手紙どれ〴〵衣配り 文政句帖 政7
江戸状や親の外へも衣配り 文政句帖 政8
傾城や在所のみだへ衣配り 文政句帖 政8
這出た《出た》も頭数也衣配り 文帖句帖 政8
歩(き)しま口上いふや衣配り 書簡 政9
江戸の子の在所の親へ衣くばり 発句鈔追加
きぬ配り見せ〳〵門を通りけり 発句鈔追加
年忘れ
君が世や乞食へあまる年忘 寛政句帖 寛4
年忘れ旅をわするゝ夜も哉 都雀歳旦 寛9
里並みに年を忘るゝ夜也けり 文化句帖 化11
蚤(よ)いざ〳〵〳〵させんとし忘 七番日記 化11
独身や上野歩行てとし忘 七番日記 化11
深川や舟も一組とし忘 七番日記 化14
わんといへさあいへ犬もとし忘 七番日記 化14
山の手や渋茶すゝりてとし忘 七番日記 政1
家なしや今夜も人の年忘 八番日記 政2
いくつやら覚へぬ上にとし忘 八番日記 政2
一人の太平楽や年わすれ 八番日記 政2
うら山や十所ばかり年忘 八番日記 政2
御仲間に猫も坐とるや年わすれ 八番日記 政2
年忘と申(す)さえ一人かな 八番日記 政2
人立や庵も夜さりはとし忘 八番日記 政2
都哉橋の下にも年わすれ 八番日記 政2
両国や舟は舟とて年忘 八番日記 政2
我家やたつた一人も年わすれ 八番日記 政2
犬も(歩)行ばあたるなり年忘れ 八番日記 政4
草の家も夜はもの〳〵し年忘 八番日記 政4
折角に忘れて居たを年忘 八番日記 政4
十所程壁に張也とし忘 八番日記 政4
老松と二人で年を忘れけり 文政句帖 政5
年忘大の用迄忘れけり 文政句帖 政5
部屋住やきのふの残ンでとし忘 文政句帖 政5
藪村や下戸は見へぬとし忘 文政句帖 政5
かくれ家や只咄するとし忘 文政句帖 政5
隠家や貰ひものにてとし忘 文政句帖 政6
何の残かの残本のとし忘 文政句帖 政6
内人数にて仕直すやとし忘 文政句帖 政7
かくれ家や毎日日日とし忘 文政句帖 政7
柴の戸や咄して寝るがとし忘 文政句帖 政7
一人居や一徳利のとし忘 文政句帖 政7
夜〳〵や行先〴〵のとし忘 文政句帖 政7
よん所ない用事迄とし忘  文政句帖 政7
年用意
直き世や雀は竹に年用意 八番日記 政3
一袋猫もごまめの年用意 八番日記 政3
年の市
月さすや年の市日の乳待山 文政句帖 化1
年の市何しに出たと人のいふ 文政句帖 化1
人並みに出る真似したり年の市 文政句帖 化1
年の市叺かぶつて通りけり 七番日記 化10
庵前やとしとり物の市が立 七番日記 政1
山里や藪の中にも年の市 八番日記 政2
としの市馬の下はら通りけり 文政句帖 政5
大御代や小村〳〵もとしの市 文政句帖 政7
皮羽折見せに行也とし(の)市 文政句帖 政7
行戻り人の桃灯や年の市 文政句帖 政7
往連売り
山人や往連わら売に六七里 寛政句帖 寛4
暦配る
君が世や寺へも配る伊勢暦 寛政句帖 寛5
古暦
板壁や親の世からの古暦 文政句帖 政7
数の日の無きずに仕廻ふ暦哉 文政句帖 政7
古札と一ツにくゝる暦哉 文政句帖 政7
山人は薬といふや古ごよみ 文政句帖 政7
善悪も末一日の暦哉 文政句帖 政7
わづらはぬ日をかぞへけり古暦 文政句帖 政7
我程は煤けもせぬや古ごよみ 文政句帖 政7
小十年迹の暦や庵の壁 真蹟
掛乞ひ
掛乞に水など汲で貰ひけり 七番日記 化14
掛乞ややたらにほめる松の雪 七番日記 化14
門松立つ
門松の立初しより夜の雨 文化句帖 化1
神国の松をいとなめおろしや舟 文化句帖 化1
門の松春待ふりもなかりけり 文化句帖 化4
事納
納事なくても家根の印哉 文政句帖 政7
歳暮
浅草の鶏にも蒔ん歳暮米 七番日記 化11
床の間へ安置しにけり歳暮酒 八番日記 政4
宵過の一村歩く歳暮哉 八番日記 政4
節分
高砂の松や笑はんとしの豆 文化句帖 化4
猫の子のざれなくしけりさし柊 七番日記 化10
福豆や副梅ぼしや歯にあはぬ 七番日記 化10
おさな子やたゞ三ツでも年の豆 八番日記 政2
鬼よけの浪人よけのさし柊 八番日記 政2
門にさしてをがまるゝ也赤いわし 八番日記 政2
けふからは正月分ぞ麦の色 八番日記 政2
大門の浪人よけやさし柊 八番日記 政2
三ツ子さへかりゝ〳〵や年の豆 八番日記 政2
迹の子はわざと転ぶやとしの豆 文政句帖 政5
今夜から正月分ンぞ子ども衆 文政句帖 政5
去年のゝ次につゝさす柊哉 文政句帖 政5
待てゝも来るや福豆福俵 文政句帖 政8
鬼やらひ
なやらふや枕の先の松の月 享和句帖 享3
煎豆の福がきたぞよ懐へ 七番日記 化8
今日福が来気で居るや破家 七番日記 化8
打豆の手ごたへもなき伏屋哉 七番日記 化10
鬼の出た迹へ先さす月夜哉 七番日記 化10
かくれ家や歯のない口で福は内 七番日記 化10
闇がりへ鬼追出して笑ひ哉 七番日記 化10
三才の迹とりどのよ鬼をゝふ 七番日記 化10
高砂や鬼追出も歯ぬけ声 七番日記 化10
福はうち〳〵とておはり哉 七番日記 化10
鬼打の豆に辷て泣子哉 七番日記 政1
其迹は子供の声や鬼やらひ 八番日記 政2
一声に此世の鬼が逃るげな 八番日記 政2
我国は子供も鬼を追ひにけり 八番日記 政2
鬼の出た迹はき出してあぐら哉 文政句帖 政5
豆蒔や鼠(の)分ンも一つかみ 文政句帖 政5
としの夜や猫にかぶせる鬼の面 文政句帖 政6
年とる
としとりに鶴も下たる畠哉 享和句帖 享3
我宿は蠅もとしとる浦辺哉 文化句帖 化1
浄土寺の年とり鐘や先は聞 文化句帖 化2
薪売牛と二人がとしよるか 文化句帖 化4
住吉の隅にとしよる鴎哉 文化句帖 化5
大松の迹へ年とる木ぶり哉 七番日記 化7
としとるや竹に雀がぬく〳〵と 七番日記 化8
あなた任せ任せぞとしは犬もとり 七番日記 化10
小うるさい年をとるのかやつこらさ 七番日記 化10
としとるや犬も烏も天窓数 七番日記 化10
とるとしや火鉢なで(ゝ)も遊ばるゝ 七番日記 化12
はづかしや罷出て取江戸の年 八番日記 政2
吹れ来て又もどりけり江戸の年 八番日記 政2
烏さへ年とる森は持にけり 八番日記 政3
年とりのあてもない(ぞ)よ旅烏 八番日記 政3
年取はあれでもするよ旅烏 八番日記 政3
うき旅も巨燵でとしをとりにけり 文政句帖 政5
膳先の猫にも年をとらせけり 文政句帖 政5
旅でとしとるや四十雀五十雀 文政句帖 政5
としとるは大名とても旅宿哉 文政句帖 政5
家もちて雀もとしはとりにける 文政句帖 政6
負て立れぬ程としを拾ふ哉 文政句帖 政6
竹に雀品よく留てとしやとる 文政句帖 政7
どこでとしとつてもそちはらくだ哉 文政句帖 政7
日本にとしをとるのがらくだかな 文政句帖 政7
みだ仏のみやげに年を拾(ふ)哉 書簡 政7
としとるもわかれ〳〵やしらぬ旅 真蹟
厄払ひ
必や迹は上手のやくばらひ 七番日記 政10
君が代や厄をおとしに御いせ迄 七番日記 政10
我家やより寄損したる厄ばらひ 七番日記 政10
おれをさへ旦那呼りや厄払(ひ) 七番日記 化14
一文で厄払けり門の月 七番日記 政1
厄払(ひ)などうかれしも昔哉 七番日記 政1
下京や素人らしき厄ばらい 八番日記 政3
誂へてやるや扇の厄おとし 八番日記 政4
御庭や松迄雪の厄をとし 八番日記 政4
幸に盗れにけり厄おとし 八番日記 政4
浅草一厄おとす寺参(り) 文政句帖 政7
有明や一厄おとす窓年貢 文政句帖 政7
おとし厄馬(に)つけたりいせ参り 文政句帖 政7
人の厄引つかんだる乞食哉 文政句帖 政7
村の厄馬につけけりおいど哉 文政句帖 政7
四辻や厄おとす人拾ふ人 文政句帖 政7
四っ辻や落す迹から厄拾ひ 自筆本
千葉笑ひ
千葉寺や隅に子ども(ゝ)むり笑ひ 文政句帖 政6
年籠り
君が世やから人も来て年ごもり 寛政句帖 寛5
とかくして又古郷の年籠 八番日記 政2

狩小屋の夜明也けり犬の鈴 享和句帖 享3
鷹狩や先(は)麦かく御目出度 文化句帖 化2
鷹がりや麦の旭を袖にして 文化句帖 化2
下手鷹をよつておしがるゆふべ哉 文化句帖 化2
目出度さの麦よ畑よ御鷹狩 文化句帖 化2
しほらしや御狩にもなく小田の鶴 八番日記 政4
追鳥に狐もへちをまくる也 文政句帖 政7
老鳥の追れぬ先に覚期哉 文政句帖 政7
追鳥のはづみや罠に人かゝる 文政句帖 政7
追鳥の不足の所へ狐哉 文政句帖 政7
追鳥や狐とてしも用捨なく 文政句帖 政7
追鳥や鳥より先につかれ寝る 文政句帖 政7
追鳥を鳥笑ふや堂の屋根 文政句帖 政7
親子鳥別れ〳〵(に)追れけり 文政句帖 政7
追れ鳥事すむ迄はかくれ居よ 文政句帖 政7
けふでいく日咽もぬらさで鳥逃る 文政句帖 政7
鷹がりの上坐下坐や芝っ原 文政句帖 政7
逃込だ寺が生捕る雉子哉 文政句帖 政7
逃鳥やどちへ向ても人の声 文政句帖 政7
逃鳥よやれ〳〵そちはおとし罠 文政句帖 政7
骨折て鳥追込やきつね穴 文政句帖 政7
三日程追殺されし雉子哉 文政句帖 政7
親と子と別れ〳〵や追れ鳥 自筆本
(追)れ鳥隠れた気だにそれがまあ 自筆本
逃鳥や子をふり返り〳〵 自筆本
網代
あじろ木にま一度かゝれ深山霧 享和句帖 享3
親のおやの打し杭也あじろ小屋 享和句帖 享3
親の世に生し蔦かよあじろ小屋 享和句帖 享3
暁の網代守りとかたりけり 文化句帖 化3
小ざかしき一番鶏やあじろ小屋 文化句帖 化3
せき声を吹なぐらるゝあじろ哉 文化句帖 化3
紅葉(葉)もよそにはせぬや網代守 七番日記 化9
網代木と同じ色なる天窓哉 七番日記 化10
雁聞ん一夜は寝かせ網代守 七番日記 化10
徳利を蔦に釣すや網代守 七番日記 化10
三ヶ月と肩を並(べ)てあじろ守 七番日記 化10
むつまじやくつとも云ぬあじろ守 七番日記 化10
網代守天窓でかぢをとりにけり 七番日記 化12
いま〳〵し紅葉ぞといふ網代守 七番日記 化12
面打てあじろ木叱る爺哉 七番日記 化12
朝妻も一夜は寝かせ網代小屋 七番日記 化13
あじろ木やあはう〳〵と鳴く烏 七番日記 化13
網代守り爰にとゑへん〳〵哉 七番日記 化13
藪越や藪とも見ゆる網代守 七番日記 化13
網代守年に不足はなかりけり 八番日記 政2
陶と首引してあじろ守 文政句帖 政7
柴漬
庵の犬柴漬番をしたりけり 七番日記 化12
権兵衛が柴漬別て哀なり 七番日記 化12
柴漬に古椀ぶく〴〵哉 七番日記 化12
柴漬の札や此主三太郎 七番日記 化12
柴漬や初手はなぐさみがてらとて 七番日記 化12
柴漬や月(を)尋て住給ふ 七番日記 化13
綿繰る
綿くりやひよろ(り)と猫の影法師 七番日記 化11
見てのみも福〴〵しさよほかし綿 七番日記 化11
小鼠がかくれんぼするほかし綿 七番日記 化12
貧乏神巡り道せよ綿むしろ 七番日記 化12
綿弓やてん〳〵天下泰平と 七番日記 化12
子どもやら菜の葉くわせる綿六ろ 八番日記 政4
年木
年木樵女親あり子なき哉 寛政句帖 寛4
三四本流れ寄せたるとし木哉 享和句帖 享3
磯際に拾ひ〳〵てとし木哉 文化句帖 化4
けふ〳〵も人のとし木を負いにけり 文化句帖 化4
二三把のとし木も藪のかざり哉 七番日記 化10
寝てみるや元日焚の柴一把 七番日記 化10
手拭を引ぱつておくとし木哉 七番日記 化10
直なるは隠居のぶんのとし木哉 文政句帖 政5
一人前拾ひ集しとし木哉 文政句帖 政5
麦蒔く
麦蒔いて松の下はく御寺哉 文化句帖 化3
梅の木の連に蒔たる麦菜種 七番日記 化10
一掴み麦を蒔たり堂の隅 七番日記 化10
一掴み麦を蒔ぞよ門雀 句稿消息 化10
ふだらくや岸うつ波で麦を蒔 七番日記 化12
下手蒔のむぎもよしのゝ郡哉 七番日記 化12
麦蒔いて妻有寺としられけり 七番日記 化10
死下手や麦もしつけて夕木魚 七番日記 化14
そば刈る
庵のそばことしも人に刈られけり 七番日記 化12
庵のそば中から折れて仕廻けり 七番日記 化12
あかぎれ
皹に半分喰せる御飯哉 文政句帖 政5
皹や江戸のむすこを云ひながら 文政句帖 政5
皹やかまけ仲間に鳩もなく 文政句帖 政5
皹をかくして母の夜伽かな 遺稿
寒灸
風の子や裸で逃る寒灸 八番日記 政3
後の更衣
道〳〵や拾つた綿で更衣 七番日記 化2
塵の身もことしの綿をきたりけり 七番日記 化3
むだ人やからだに倦ぶれ更衣 八番日記 政4
綿入れ
杖なしに橋渡りけり軽小袖 文政句帖 政7
布子
雲水は虱祭れよ初布子 七番日記 化11
芭蕉塚先おがむ也初布子 七番日記 化11
なむ芭蕉先綿子にはありつきぬ 七番日記 化12
御仏に先備たる布子哉 七番日記 化12
紙衣
うつら〳〵紙衣仲間に入(に)けり 文化句帖 化4
焦紙衣人にかたるな女郎花 七番日記 化7
加茂(川)を二度越さず紙子哉 七番日記 化7
旅空に是も栄花の紙子哉 七番日記 化7
宵過や抑代の紙子連 七番日記 化7
両罔は親思へとの紙子哉 七番日記 化9
金の(なる)木を植たして紙子哉 七番日記 化9
着始に梅引さげる紙子哉 七番日記 化9
浅草の辰巳へもどる紙子哉 七番日記 化10
御ばゝ四十九で信濃へと紙子哉 七番日記 化10
紙衣きたうしろながらが西行ぞ 七番日記 化10
加茂(の)水吉野紙子とほたへたり 七番日記 化10
菊かつぐうしろ見よとの紙衣哉 七番日記 化10
黒塚の婆ゝとも見へぬ紙子哉 七番日記 化10
爰らから都か紙子きる女 句稿消息 化10
時雨来よ〳〵とて紙衣かな 七番日記 化10
其木から奈良かよ紙衣きる女 七番日記 化10
千代へべき木(の)実を植る紙衣哉 七番日記 化10
どこらから京の榎ぞ夕紙衣 七番日記 化10
似合しや女坂下る紙衣達 七番日記 化10
町並に紙子なんど(と)むづかしき 七番日記 化10
明神の御猿とあそぶ紙衣哉 七番日記 化10
唐の吉野へい(ざ)と紙衣哉 七番日記 化10
世はしまひ紙衣似合とはやさるゝ 七番日記 化13
紙衣似合と云れしも昔也 八番日記 政2
古反故を継合せつゝ羽折哉 八番日記 政2
目出度と人はいへども紙衣哉 八番日記 政2
目出たがらるゝともしよせん紙衣哉 八番日記 政2
やけ穴の日(に)〳〵ふえる紙衣哉 八番日記 政2
狼を一切提し紙衣哉 八番日記 政4
紙張の布子羽折も晴着哉 八番日記 政4
切付の美をつくしたる紙子哉 八番日記 政4
皺足と同じ色なる紙衣哉 八番日記 政4
千両の嫁をとりもつかみこ哉 八番日記 政4
紙衣きる世にさへのぞみ好哉 文政句帖 政5
粘つけよとて鳥が鳴く紙子哉 文政句帖 政5
負けぬ気も紙子似合ふと云はれけり 文政句帖 政5
金のなる木をたんと持紙子哉 文政句帖 政7
達者なは口ばかりなる紙衣哉 文政句帖 政7
焼穴を反故でこそぐる紙衣哉 文政句帖 政7
芭蕉塚先拝む也はつ紙子 自筆本
綿帽子
御頭にひよいと御綿のけしき哉 七番日記 化7
しよう塚の婆ゝへも誰(か)綿帽子 八番日記 政4
綿帽子入道どのと見へぬ也 文政句帖 政5
山里は子どもゝ御免帽子哉 文政句帖 政6
頭巾
京人にあらねど都したはしゝ 享和句帖 享3
ことし頭巾きますとゆふべ哉 享和句帖 享3
諸大夫にすれ違ふたる頭巾哉 享和句帖 享3
野は柳に頭巾やよけん笠よけん 享和句帖 享3
不二颪真ともにかゝる頭巾哉 享和句帖 享3
梅の木に心おかるゝ頭巾哉 文化句帖 化4
立枯の木にはづかしき頭巾哉 文化句帖 化4
小頭巾やとりも直さぬ貧乏神 七番日記 化7
朝ツからすたすた坊が頭巾哉 七番日記 化11
照降を松で覚へる頭巾哉 七番日記 化11
投節や東海道を投頭巾 七番日記 化11
八兵衛が猪首に着なす頭巾哉 七番日記 化11
亦打山夕越くればずきん哉 七番日記 化11
赤づきん垢入道の呼ばれけり 七番日記 化12
あつさりと浅黄頭巾の交ぞ 七番日記 化12
かゝる世や東海道を投頭巾 七番日記 化12
梟が小ばかにしたるづきん哉 七番日記 化11
松の月頭布序にみたりけり 七番日記 化13
古頭巾貧乏神と名のりけり 七番日記 化13
横吹や猪首に着なす蒲頭巾 八番日記 政3
小頭巾や其身そのまゝ貧乏神 八番日記 政4
御仏前でも御めん頭巾哉 文政句帖 政5
年に不足なくてもはやり頭巾哉 文政句帖 政5
南天に一ツかぶせる頭巾哉 文政句帖 政5
頭巾きて見てもかくれぬ白髪哉 文政句帖 政6
立つ迹を頭巾ではくやたばこ芥 文政句帖 政6
紅葉ゝをつかみ込だる頭巾哉 文政句帖 政6
堂守がはつち袋を頭巾哉 文政句帖 政8
足袋
朔日の拇出る足袋で候 文化三-八写 化7
隠居家や赤足袋みせに三度迄 七番日記 化2
はく日からはや白足袋でなかりけり 七番日記 化2
赤足袋や這せておけば直しやぶる 八番日記 政4
捨ひ足袋しつくり合ふが奇妙也 八番日記 政4
赤足袋を手におつぱめる子ども哉 文政句帖 政5
拇の出てから足袋の長さ哉 文政句帖 政5
はく直(に)白足袋にてはなかりけり 文政句帖 政5
はく外によ所行足袋はなかりけり 文政句帖 政5
皮足袋で位知れるや本町店 文政句帖 政7
皮足袋も位ではくや本町店 文政句帖 政7
はづかしやはき替られし破損足袋 文政句帖 政7
赤足袋に手(を)さし入て這ふ子哉 自筆本
ふすま
おり〳〵は竹の影おく衾哉 文化句帖 化2
けふ〳〵と衾張る日もふりにけり 文化句帖 化2
松風や衾こそぐる日はなくて 文化句帖 化2
朝〳〵の衾聞知る雀哉 文化句帖 化3
朝不二を見くせのつきし衾哉 文化句帖 化3
朝ゆふや我と衾と峰の松 文化句帖 化3
鳩よいで巣にやらん厚衾 文化句帖 化3
衾音聞しりて来る雀哉 文化句帖 化3
鶯も一夜来よやれ紙衾 文化句帖 化4
紙衾翌作うと泣にけり 文化句帖 化4
我ともに買ば売うぞ反古衾 文化句帖 化4
どら犬をどなたぞといふ衾哉 文化三-八写 化6
蛼の寒宿とする衾哉 七番日記 化7
蛼のわや〳〵這入衾かな 七番日記 化7
寝衾や峯の紅葉ゝかゝれとて 七番日記 化7
衾張て寝て見たりけり角田川 七番日記 化7
蛼のくひ荒したる衾哉 七番日記 化8
入相に片耳ふさぐ衾哉 七番日記 化9
かぶる衾そこ見しや〳〵れ三ヶ(の)月 七番日記 化9
蛼の鳴〳〵這入る衾かな 七番日記 化9
名所の鐘を聞あく衾哉 七番日記 化9
梟のくす〳〵笑ふ衾哉 七番日記 化9
蛼に借して鳴する衾哉 七番日記 化10
ぶく蛼と衾のうちの小言哉 七番日記 化10
衾から顔出してよぶ菜うり哉 七番日記 化10
漏殿がおそろしとかぶる衾哉 七番日記 化10
いつ〳〵は鹿が餌食ぞ紙衾 七番日記 化11
雀等が起しにわせる衾哉 七番日記 化11
雀らよ小便無用古衾 七番日記 化11
梟が念入て見る衾かな 七番日記 化11
蛼よ巣(を)な思ひそ古衾 七番日記 化12
屁くらべが巳に始る衾かな 七番日記 化12
敷初に梅が咲きけりわら衾 七番日記 化14
猪と隣ずからの衾かな 七番日記 政1
白〳〵と猫呼りつゝ衾かな 七番日記 政1
月のさす穴やすぽんと厚衾 七番日記 政1
夜に入れば衾張らうと泣にけり 七番日記 政1
一番に猫が爪とぐ衾哉 八番日記 政2
どなたぞといへば犬也衾から 発句題叢 政3
老たりな衾かぶるもどつこいな 文化句帖 政5
小衾やつゞらの中に寝る僧都 文政句帖 政5
とは申ながらもかぶる衾かな 文政句帖 政5
へまむしよ入道はした紙ふすま 文政句帖 政5
病つかふてかぶる衾かな 文政句帖 政5
留守札を戸におつ張て衾哉 文政句帖 政5
こらしめに留守の衾ぞ虱ども 文政句帖 政7
千両のかくしも見ゆる紙衾 文政句帖 政7
犬が来てもどなたぞと申(す)襖哉 文政九十句写 政10
早立のかぶせてくれし衾哉 自筆本
ふとん
早立のかぶせてくれしふとん哉 与播雑詠 寛3
昼比にもどりてたゝむふとん哉 享和句帖 享3
座ぶとんに見ておはす也松の鳥 享和句帖 享3
三つ五つ星見てたゝむふとん哉 享和句帖 享3
蛼(こほろぎ)にかして鳴かするふとん哉 七番日記 化9
安房猫おのがふとんは知にけり 七番日記 化10
今少雁を聞とてふとん哉 七番日記 化10
さる人が真丸に寝るふとん哉 七番日記 化10
祐成がふとん引はぐ笑ひかな 七番日記 化10
ふとんきて達磨もどきに居りけり 七番日記 化10
ふとんきるや翌のわらじを枕元 七番日記 化10
ふとんともにおしよせらるゝ寝坊哉 七番日記 化10
舟に着て候ぞろめくるふとん哉 七番日記 化10
まじ〳〵と達磨もどきのふとん哉 七番日記 化10
目覚しの人形並べるふとん哉 七番日記 化10
侘ぬれば猫のふとんをかりにけり 七番日記 化10
今しばし〳〵とかぶるふとん哉 七番日記 化11
煎餅のやうなふとんも我家哉 七番日記 化11
飯粒を鳥に拾(は)すふとん哉 七番日記 化11
夜明てぐあひのわろきふとん哉 七番日記 化11
わらぶとん雀が踏んでくれにけり 七番日記 化11
旅すれば猫のふとんも借にけり 七番日記 化14
飯櫃の片脇かりるふとん哉 七番日記 化14
安き世や二晩ぎりの借ぶとん 七番日記 化14
小蒲団や猫にもたるゝ足のうら 八番日記 政2
飯櫃にきせればふとんなかりけり 八番日記 政2
百敷や都は猫もふとん哉 八番日記 政2
小蒲団や暖し所に子を寝せる 文政句帖 政5
下敷もかぶるも一ツふとん哉 文政句帖 政5
かんじき
かじき佩て出ても用はなかりけり 文化句帖 化4
橇をなりに習てはきにけり 八番日記 政3
橇や庵の前をふみ序 八番日記 政3
橇や人の真似して犬およぐ 八番日記 政3
雪車
馬迄もよいとしとるか雪車の唄 文化句帖 化3
君が代を雀も唄へそりの唄 文化句帖 化3
としとらぬ門のそぶりやそりの唄 文化句帖 化3
雪車負て坂を上るや小さい子 七番日記 政1
負ながら雪車の裏ほす丁場哉 八番日記 政3
一升樽乗て小僧が小ぞり引 八番日記 政4
狗も走りくらする小ぞり哉 八番日記 政4
桟や凡人わざに雪車を引 八番日記 政4
柴雪車を迹からもおす忰哉 八番日記 政4
そり引や屋根から投るとゞけ状 八番日記 政4
寺道や老母を乗せてそりを引 八番日記 政4
箱ぞりの大鼾にて引れけり 八番日記 政4
放し雪車下り留るせどの口 八番日記 政4
ゆう〳〵と犬めがそりの上荷哉 八番日記 政4
そり引や犬が上荷乗て行 自筆本
雪かき
其の上に仏を直せ雪丸め 七番日記 化10
我宿はつくねた雪の麓哉 七番日記 化10
紅葉ゝも丸(め)込だり雪丸メ 七番日記 化14
窓の雪つんでこそ〳〵ばくち哉 八番日記 政2
里の子や杓子(で)作る雪の山 八番日記 政3
里の子や手でつくねたる雪の山 八番日記 政3
雪丸となりおふすれば捨る也 八番日記 政3
我宿は丸めた雪のうしろ哉 八番日記 政3
門先や雪降とはき降とはき 八番日記 政4
門先や童の作る雪の山 八番日記 政4
雪掃や地蔵菩薩のつむり迄 八番日記 政4
男なき寺や立派に雪をはく 文政句帖 政7
ちとたらぬ僕や隣の雪もはく 文政句帖 政7
はつ雪や今捨るとて集め銭 文政句帖 政7
初雪や降よりはやく掃捨る 文政句帖 政7
野ら雪や菰にくるんで捨庵 文政句帖 政8
雪仏
はつ雪やとても作らば立砂仏 我春集 化8
仏をも作る気はなし庵の雪 七番日記 化8
我国やつい戯れも雪仏 書簡 化8
有明や雪で作るも如来様 七番日記 化10
うす雪の仏を作る子ども哉 七番日記 化10
狗の先つくばひぬ雪仏 七番日記 化10
御ひざに雀鳴也雪仏 七番日記 化10
卅日を介給へや雪仏 七番日記 化10
とるとしもあなた任せぞ雪仏 七番日記 化10
はづかしや子どもも作る雪仏 七番日記 化10
はつ雪や仏にするもむづかしき 七番日記 化10
雪仏犬の子どもが御好げな 七番日記 化10
雪仙されば子供が御(好)やら 七番日記 化10
我門にとしとり給へ雪仏 七番日記 化10
我門も足しにせよやれ雪仏 七番日記 化10
わんぱくが仕業ながらも雪仏 七番日記 化10
初雪やとの給ふやうな仏哉 七番日記 化11
藪村や権兵衛が作の雪仏 七番日記 化11
我国や子どもも作る雪仏 七番日記 化11
はいかいを守らせ給へ雪仏 七番日記 化12
はつ雪をお(つ)つくねても仏哉 七番日記 化12
雪仏我手の迹もなつかしや 七番日記 化12
寄合て雀がはやす雪仏 七番日記 化12
出来栄を犬も見るや雪仏 七番日記 化13
初ものや雪も仏につくらるゝ 七番日記 化13
飯焚の爺が作ぞよ雪仏 七番日記 化13
我門は雪で作るも小仏ぞ 七番日記 化13
我してもおがむ気になる雪仏 七番日記 化13
三介が開眼したり雪仏 七番日記 化14
はつ雪や調市が作のみだ仏 七番日記 化14
我門やいつち見じめな雪仏 七番日記 化14
是かれと云も当ざの雪仏 八番日記 政2
かりそめの雪も仏となりにけり 八番日記 政3
坐頭坊が天窓打也雪仏 文政句帖 政5
坐頭坊につゝかれけり雪仏 文政句帖 政5
門先や雪の仏も苦い顔 文政句帖 政7
はつ降りや雪も仏に成にけり 自筆本
雪つぶて
雪礫馬が喰んとしたりけり 七番日記 化10
雪礫投る拍子にころぶかな 七番日記 化10
我袖になげてくれぬや雪礫 七番日記 化10
三弦のばちでうけたり雪礫 七番日記 化11
仰のけにこけて投るや雪礫 七番日記 化12
おかしいと犬やふりむく雪礫 七番日記 化12
犬の子が追ふて行也雪礫 七番日記 化14
榎迄ことしは行かず雪礫 七番日記 化14
親犬が尻でうけけり雪礫 七番日記 化14
つぐら子や雪の礫や御仏へ 七番日記 化14
頼んでもおれには下ス雪礫 八番日記 政2
身代の地蔵菩薩や雪礫 文政句帖 政5
御坐敷や烏がおとす雪礫 文政句帖 政6
かんざしでふはと留めたり雪礫 文政句帖 政6
飛びのいて烏笑ふや雪礫 文政句帖 政6
ふり向ば大どしま也雪礫 文政句帖 政6
雪打や地蔵菩薩の横面へ 文政句帖 政6
身拵へして待犬や雪礫 文政句帖 政8
雪見
とけ降に成て見る也比良の雪 志多良 化10
御用なら蚤も喉雪見衆 七番日記 化2
道観の御覧の雪や三の丸 八番日記 政2
出湯から首ばか出して雪見哉 八番日記 政4
出湯に先ふり入て雪見哉 八番日記 政4
ふとんから首ばか出して雪見かな 八番日記 政4
陶の脉を見い〳〵雪見哉 文政句帖 政7
けふハハ畳の上の雪見哉 自筆本
霜よけ
霜よけのたしに立ちたる地蔵哉 文化句帖 化2
霜よけの足しに引ぱる小藪かな 書簡 化4
底本: 信濃教育会編『一茶全集』(信濃毎日新聞社1979年刊 第1巻「発句」)、資料: 「一茶の俳句データベース」(2014年)、参照: 縦書き文庫版「一茶発句集」(2024年から制作 26年に完成予定)、くの字点表記: 〳〵〴〵

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