一茶発句集 冬2

2024年から総ルビ付きの縦書き文庫版を制作中で、その作業の一部として以下の資料(未定稿)を掲載しています。同文庫版はすでに夏と新年の部の句に旧かなルビを振りました。25年後半に春の部の修正を終えて秋と冬雑の部に取りかかり、26年中に完成する予定です。

一茶発句集 冬2/4
初雪
はつ雪やえどもわら家のあればこそ 七番日記 化14
はつ雪やきせるの脂の十すじ程 七番日記 化14
はつ雪や是より北は庵の領 七番日記 化14
はつ雪や机の上に一握り 七番日記 化14
はつ雪や折敷の上に一握り 七番日記 化14 異
はつ雪に打かぶせたる尿瓶哉 七番日記 政1
はつ雪や今重(ね)たる庵の薪 七番日記 政1
はつ雪やいろはにほへと習声 七番日記 政1
はつ雪やことに夜明の角田川 七番日記 政1
はつ雪や所もところ角田川 七番日記 政1
はつ雪や松にかけたる手挑灯 七番日記 政1
はつ雪は御堂参りの序哉 七番日記 政1
闇夜のはつ雪らしやぼんの凹 七番日記 政1
初雪のどこが二の丸三の丸 八番日記 政2
初雪の飛ぶか二の丸三の丸 梅塵八番 異
はつ雪の降り捨てある家尻哉 おらが春 政2
はつ雪のむだぶりしたる家尻哉 八番日記 政2
初雪や今おろしたる上草り 八番日記 政2
初雪や今に煮らるゝ豚あそぶ 八番日記 政2
はつ雪や上野に着ばけろり止 八番日記 政2
初雪や縁から落し上草履 八番日記 政2
初雪や縁から散し上草履 嘉永版 異
はつ雪や坏の鳥居にかゝりけり 八番日記 政2
はつ雪やぐつと我家に寝たならば 八番日記 政2
初雪や猫がつら出スつぐらから 八番日記 政2
はつ雪や八百屋が裏の一里づか 八番日記 政2
はつ物の内になくなれ門の雪 八番日記 政3
初雪を着て戻りけり秘蔵猫 八番日記 政3
はつ雪を煮て喰けりおくの院 八番日記 政3
はつ雪や今がた生し栗塚に 八番日記 政3
九合目の不二の初雪喰ひけり 八番日記 政4
五合目の不二の初雪喰ひけり 梅塵八番 異
九合目の富士の白雪喰ひけり 発句鈔追加
初雪と共に降たる布子哉 八番日記 政4
はつ雪やあかれぬ内にちつと止 八番日記 政4
はつ雪やあかれぬ内にちいと止 梅塵八番 異
初雪や一二三四五六人 八番日記 政4
はつ雪や出湯のけぶりも鼻の先 八番日記 政4
はつ雪や居仏使ふ立仏 八番日記 政4
はつ雪や御駕籠へはこぶ二八そば 八番日記 政4
初雪やおれが前には布子降 八番日記 政4
はつ雪や正月物を着て居る 八番日記 政4
はつ雪や正月物をきて居り 自筆本 異
はつ雪や正月ものゝ着そ始 糖塚集
はつ雪やづゝぷりと湯に入てから 八番日記 政4
はつ雪や我が古町に入てから 八番日記 政4 異
はつ雪や雪駄ならして善光寺 八番日記 政4
とく止よはつ雪〳〵といふうちに 文政句帖 政5
はつ雪に一の宝の尿瓶かな 文政句帖 政5
はつ雪や一の宝の古尿瓶 だん袋他 異
はつ雪や駕をかく人駕の人 文政句帖 政5
はつ雪や門の栗塚大根づか 文政句帖 政5
はつ雪や御きげんのよい御烏 文政句帖 政5
はつ雪やこきつかはるゝ立仏 文政句帖 政5
はつ雪や酒屋幸つひとなり 文政句帖 政5
はつ雪やといふも家にあればこそ 文政句帖 政5
初雪やとは云ながら寝る思案 文政句帖 政5
はつ雪やとはいふものゝ寝相だん 文政句帖 政5
はつ雪やなど[ゝ]侍る上べのみ 文政句帖 政5
はつ雪やなどゝ世にある人のいふ 文政句帖 政5
はつ雪や何[の]因果に樽ひろひ 文政句帖 政5
はつ雪や軒の菖[蒲]のそれながら 文政句帖 政5
はつ雪や我にとりつく不性神 文政句帖 政5
はつ雪を乞食呼りや馬かい道 文政句帖 政6
はつ雪を降らせておくや鉢の松 文政句帖 政6
はつ雪も横にふる也あさぢ原 文政句帖 政6
初雪や手引を頼む門の橋 文政句帖 政6
はつ雪やなどとて内に居る安房 文政句帖 政6
初雪や右ぬる湯左あつ湯桁 文政句帖 政6
湯の中へ降るやはつ雪たびら雪 文政句帖 政6
裸湯に降るやはつ雪たびら雪 だん袋他 異
赤菊やかれしと初雪ふりおとす 文政句帖 政7
はつ雪を乞食呼(は)り駅場哉 文政句帖 政7
はつ雪を見かけて張るやせう(じ)穴 文政句帖 政7
はつ雪の降りぱなしなる家尻哉 文政句帖 政7
はつ雪や捨る銭から先に立 文政句帖 政7
はつ雪や降りもかくれぬ犬の屎 文政句帖 政7
はつ雪や紅葉ぐるみに丸メ捨 文政句帖 政7
うらの山雪ござつたぞはやゞと 文政句帖 政8
初雪を鳴出しけりせんき虫 文政句帖 政8
初雪やころゝけぶるたばこ殻 文政句帖 政8
はつ雪にはやわらおとす雀哉 希杖本
はつ雪や今行里の見へて降 文政版
はつ雪や腹拵へはけろり止 自筆本

山寺や雪の底なる鐘の声 霞の碑 寛2
外は雪内は煤ふる栖かな 寛政句帖 寛4
雪の山何を烏の親にあたふ 寛政句帖 寛4
黒雲や雪降る山を分登る 寛政句帖 寛5
なりはひや雪に按摩の笛の声 寛政句帖 寛5
雪の朝や先隠居家へ作り道 寛政句帖 寛5
追れ行人(の)うしろや雪明り 西国紀行 寛7
降雪に草履で旅宿出たりけり 樗堂俳諧集 寛8
五日月此世の雪も見惓てか 享和句帖 享3
海音は塀の北也夜の雪 享和句帖 享3
七りんの門も旭や草の雪 享和句帖 享3
杖かりし夜はおとゝしよ門の雪 享和句帖 享3
隣からわろくいはれし松の雪 享和句帖 享3
火嫌いも親ゆづり也門の雪 享和句帖 享3
一人ふえ〳〵けり草の雪 享和句帖 享3
夜〳〵の雪を友也菜雑水 享和句帖 享3
風袋やぶれかぶれの粉雪哉 文化句帖 化1
それがしも雪を待夜や欠土鍋 文化句帖 化1
寝たなりは桜としれしけさの雪 文化句帖 化1
降雪にもつたいなくも枕哉 文化句帖 化1
ふるは雪隣りも同じ手鍋也 文化句帖 化1
雪の日も蒙求しらぬ雀哉 文化句帖 化1
じつとして雪をふらすや牧の駒 文化句帖 化1
捨扶持を寝て見る雪の夕哉 文化句帖 化2
只居ればおるとて雪の降にけり 文化句帖 化2
なりものゝ御停止解る夜の雪 文化句帖 化2
唐の日枝迄登れ雪の笠 文化句帖 化2
雪ちるや小窓のたしの壁土に 文化句帖 化2
雪ちるや友なし松のひねくれて 文化句帖 化2
雪の夜や半人ぶちに梅さして 文化句帖 化2
雪降て人に知らるゝ所哉 文化句帖 化2
夜の雪だまつて通る人もあり 文化句帖 化2
雪ちるや我宿に寝るは翌あたり 文化句帖 化3
雪の雁はやく来よ〳〵門かさん 文化句帖 化3
心からしなのゝ雪に降られけり 文化句帖 化4
椎柴や大雪国を贔屓口 文化句帖 化4
寝ならふやしなのゝ山も夜の雪 文化句帖 化4
雪ちるやしなのゝ国の這入口 文化句帖 化4
雪の日や故郷人もぶあしらひ 文化句帖 化4
雪の山見ぬ日となれば別哉 文化句帖 化4
角田川見て居る雪を捨にけり 文化句帖 化5
雪雹うしろ追れて六十里 化五六句記 化5
故郷の袖引雪が降にけり 化五六句記 化6
けさの雪我小便も売られけり 七番日記 化7
雪ちる(や)七十顔の夜そば売 七番日記 化7
雪ちるや鳥もかまはぬ女郎花 七番日記 化7
雪ちるや夜の戸をかく秘蔵猫 七番日記 化7
わらの火のへら〳〵雪はふりにけり 七番日記 化7
腹の虫しかと押へてけさの雪 七番日記 化8
是がまあつひの栖か雪五尺 七番日記 化9
是がまあ死所かよ雪五尺 句稿消息他 異
掌へはら〳〵雪の降り(に)けり 七番日記 化9
ほち〳〵と雪にくるまる在所哉 七番日記 化9
ほちや〳〵と雪にくるまる在所哉 句稿消息他 異
雪ちりて隣の臼の谺哉 七番日記 化9
雪ちりて人の善光寺平哉 七番日記 化9
或人を学者にしたる雪降りぬ 七番日記 化10
むまさうな雪がふうはりふはり哉 七番日記 化10
むまさうな雪やふふはり〳〵と 随斎筆紀 異
大雪の山をづか〴〵一人哉 七番日記 化10
大雪やおれが真上の天の川 七番日記 化10
大雪や印の竿を鳴く烏 七番日記 化10
大雪や膳の際から越後山 七番日記 化10
雁鷗おのが雪とてさはぐ哉 七番日記 化10
下窓の雪が明りのばくち哉 七番日記 化10
松原や駒が勇ば雪がちる 七番日記 化10
しなの路や駒が勇ば雪がちる 自筆本 異
雪ちるやきのふは見へぬ明家札 七番日記 化10
雪ちるやきのふは見へぬ借家札 三韓人他 異
雪ちるや銭はかり込大叺 七番日記 化10
雪の夜や苔屋の際の天の川 七番日記 化10
雪行け〳〵都のたはけ待おらん 七番日記 化10
我郷の鐘や聞くらん雪の底 七番日記 化10
大菊のさんだらぼしやけさの雪 七番日記 化11
おらが世は臼な谺ぞ夜の雪 七番日記 化11
一握り雪持て居る仏かな 七番日記 化11
びんづるの目ばかり光るけさの雪 七番日記 化11
山に雪降とて耳の鳴にけり 七番日記 化11
有様はいま〳〵し(い)ぞ門の雪 七番日記 化12
大雪に犬めがよけて居たりけり 七番日記 化12
三弦で雪を降らする二階哉 七番日記 化12
でも花の都で候か汚れ雪 七番日記 化12
縄帯の美人逃すなけさの雪 七番日記 化12
雪の日や天井張らぬ大御堂 七番日記 化12
下戸達のさたしおかれしけさの雪 七番日記 化13
一握雪進らせんぬれ仏 七番日記 化13
むさしのや雪につくばふ御士 七番日記 化13
後〳〵は鬼も作らず町の雪 七番日記 化14
後〳〵は雪とも云ず成にけり 七番日記 化14
うら壁やしがみ付たる貧乏雪 七番日記 化14
うら壁にしがみつきけり貧乏雪 文政句帖 政8 異
大家の夜なべ盛りや雪つもる 七番日記 化14
ちよんぼりと雪の明りや後架道 七番日記 化14
徳利の土間に転げてけさの雪 七番日記 化14
ともに見るはづでありしよ松の雪 七番日記 化14
鍋の尻ほしておく也雪の上 七番日記 化14
人の親のまだ夜なべ也夜(の)雪 七番日記 化14
雪ちりてとろ〳〵御堂参哉 七番日記 化14
雪ちるやきのふ出来たる湯(の)烟 七番日記 化14
雪ちるやしかもしなのゝおく信濃 七番日記 化14
雪ちるや巣戻りしたるあんま笛 七番日記 化14
雪ちるや卅日の闇を鳴烏 七番日記 化14
雪の日や字を書習ふ盆(の)灰 七番日記 化14
内は煤ぼたり〴〵や夜の雪 七番日記 政1
日〳〵や大雪小雪何のかのと 七番日記 政1
雪ちりて犬の大門通り哉 七番日記 政1
うら壁や貧乏雪のしつかりと 八番日記 政2
曲者と人なとがめそ笠の雪 八番日記 政2
雪ちるやおどけも云へぬ信濃空 八番日記 政2
雪ちるやおどけも云へぬ信濃山 梅塵八番他 政9 異
雪の日やこきつかはるゝおしなどの 八番日記 政2
雪の日や仏お竹が縄だすき 八番日記 政2
雪の日や仏お竹が縄すだれ 梅塵八番 異
雪の夜や横丁曲るあんま笛 八番日記 政2
雪の夜や横町廻るあんま笛 梅塵八番 異
雪ふれや貧乏徳利のこけぬ内 八番日記 政2
重荷負ふ牛や頭につもる雪 八番日記 政3
里の子や雪まちかねし株角力 八番日記 政3
しなのぢや意地にかゝつて雪の降 八番日記 政3
鼻先の掃溜塚もけさの雪 八番日記 政3
早々と来ず共よいを門の雪 八番日記 政3
早々と来ずともよいに門の雪 梅塵八番 異
真直な小便穴や門の雪 八番日記 政3
真直に雪も降しく都かな 八番日記 政3
松のおく又其おくや雪手洗 八番日記 政3
雪ちりて人の大門通り哉 八番日記 政3
雪ちりて人の大門通りけり 梅塵八番 異
雪ちりて人の大門通る哉 書簡
雪ちるや御駕へはこぶ二八蕎麦 だん袋 政3
雪ちるや軒の菖蒲がそりなりに 八番日記 政3
雪ちるや軒の菖蒲のそりなりに 梅塵八番 異
雪ちるや吉原駕のちうを飛 版本題叢 政3
雪ちるやわき捨てある湯のけぶり だん袋 政3
降雪やわき捨てある湯のけぶり 文政句帖 政5 異
雪の日にづんぐり角力さかりけり 八番日記 政3
雪の日にづんぐり角力盛り哉 梅塵八番 異
けんぎやうと呼れて這ふや雪の上 八番日記 政4
小便所の油火にちる粉雪哉 八番日記 政4
雪ちら〳〵一天に雲なかりけり 八番日記 政4
雪ちら〳〵一天雲はなかりけり 自筆本 異
雪降やのがれ出ても降りにけり 八番日記 政4
犬どもがよけ(て)居る也雪の道 文政句帖 政5
犬どもがよけてくれけり雪の道 自筆本他 異
うら壁や雪打つける峰の松 文政句帖 政5
くら壁や雪打つける峰の松 自筆本 異
雷の雪を降らする山家かな 文政句帖 政5
子どもらが雪喰ながら湯治かな 文政句帖 政5
水風呂や雪うめてから子を呼る 文政句帖 政5
居風呂や雪うめてから子を呼る 自筆本 異
角力取がよけてくれけり雪の原 文政句帖 政5
旅人や人に見らるゝ笠の雪 文政句帖 政5
橋下の乞食がいふや乞食雪 文政句帖 政5
降雪のはかりあひもなし負境 文政句帖 政5
降雪のはりあひもなし負境 だん袋他 異
山里や風呂にうめたる門の雪 文政句帖 政5
山里や風呂にうめるも門の雪 文政句帖 政5 異
雪菰や投込んで行くとゞけ状 文政句帖 政5
雪の原道は自然と曲りけり 文政句帖 政5
あばら家や雪の旦の虱狩 文政句帖 政6
大雪やせつぱつまりし人の声 文政句帖 政6
手のひらに雪を降らする湯桁哉 文政句帖 政6
媒のなき娵や日でり雪 文政句帖 政6
ばゝどのに抱つかせけり雪の道 文政句帖 政6
役馬のおもにゝ雪の小付哉 文政句帖 政6
湯上りや裸足でもどる雪の上 文政句帖 政6
雪ちらり〳〵見事な月夜哉 文政句帖 政6
雪ちるを見かけて無沙汰巡りかな 文政句帖 政6
雪ちる(や)内にも煤(の)ぼた〴〵と 文政句帖 政6
雪ちるや雪駄の音のさはがしき 文政句帖 政6
雪ちるやちん〳〵鴨の神参 文政句帖 政6
雪ちるや軒のあやめのから〳〵と だん袋 政6
雪ちるや軒の菖蒲がから〳〵と 発句鈔追加 異
雪の戸や押せば開くと寝てゝいふ 文政句帖 政6
雪の日やおり〳〵蠅の出てあそぶ 文政句帖 政6
雪払ふこともならぬや荷つけ馬 文政句帖 政6
雪払ふ拍子に都めぐり哉 文政句帖 政6
大雪にいかな我おらぬ烏哉 文政句帖 政7
風陰に雪がつむ也門畠 文政句帖 政7
来る人が道つける也門の雪 文政句帖 政7
来る人が道つくるなり門の雪 文政版 異
来る雪おぞけふるつて戸を〆ル 文政句帖 政7
けさの雪万戸の畑違也 文政句帖 政7
二度目には丸メもせぬや門の雪 文政句帖 政7
腹の虫なるぞよ雪は翌あたり 文政句帖 政7
雪下で草がとりしよ庭の縁 文政句帖 政7
雪見廻筆(に)云せて寝らく哉 文政句帖 政7
大雪を鳴出しけりせんき虫 文政句帖 政8
酒呑が祈り勝也貧乏雪 文政句帖 政8
大門や雪に並べる飴おこし 文政句帖 政8
ちいび〳〵天の雪迄きゝん哉 文政句帖 政8
隣から連小便や夜の雪 文政句帖 政8
雪ちるや一本草のひ(よ)ろ〳〵と 文政句帖 政8
雪と泥半分交の通り哉 文政句帖 政8
雪の日や堂にぎつしり鳩雀 文政句帖 政8
降る雪を払ふ気もなきかゞし哉 政九十句写 政10
ぬく〳〵と雪にくるまる小家哉 自筆本
放ち雪走り入りたる木影ぞ哉 自筆本
深雪へ犬よけけり通り道 自筆本
むこ入りの諷ひすみけりむらの雪 真蹟
むつかしやてつきり雪と見ゆる空 発句鈔追加
むらの雪くち淋しきやけぶり立 真蹟
雪ちるや脇から見たら栄耀駕 文政版
雪の夜にむかふ(の)臼の谺哉 自筆本
吹雪
家陰や吹雪〳〵の吹き溜り 寛政句帖 寛6
灯ちら〳〵疱瘡小家の吹雪哉 寛政句帖 寛6
横壁のけんかたばみを吹雪哉 文化句帖 化2
大吹雪今やあざりの御帰か 七番日記 化11
一吹雪尻つんむけて通しけり 七番日記 化12
一吹雪拍子つきけり米洗 七番日記 政1
居酒屋で馬足のとまる吹雪哉 梅塵八番 政3
衽形に吹込雪や枕元 八番日記 政3
たれ莚天窓で別る吹雪哉 八番日記 政3
菱形に吹入る雪や鉄行灯 八番日記 政3
菱形に降り入る雪や鉄行灯 梅塵八番 異
菱形に雪が吹入る畳哉 八番日記 政3
菱形に雪が降入る畳哉 梅塵八番 異
窓の穴壁の割より吹雪哉 八番日記 政3
東西南北より吹雪哉 八番日記 政4
西東北南より吹雪哉 自筆本 異
たびら雪
真昼の草にふる也たびら雪 享和句帖 享3
たれ菰の福〴〵しさよたびら雪 七番日記 化14
さ莚や猫がきて来(た)太平雪 八番日記 政3

遠乗や霰たばしるかさの上 寛政句帖 寛4
畠打がうてば唸る霰かな 寛政句帖 寛6
衛士の火のます〳〵もゆる霰哉 享和句帖 享3
おれぬ木の下陰や玉霰 享和句帖 享3
玉霰降れとは植ぬ柏哉 享和句帖 享3
藪菊や霰ちる日に咲合 文化句帖 化1
いざ走れ霰ちる夜の古木履 文化句帖 化2
能登殿の矢先にかゝる霰哉 文化句帖 化3
膝ぶしの皺にひつゝく霰哉 文化句帖 化3
玉霰深山紅葉をさそひ来ぬ 文化句帖 化4
掘かけし柱の穴をあられ哉 文化句帖 化4
玉霰瓦の鬼も泣やうに 七番日記 化7
玉霰夜たかは月に帰るめり 七番日記 化7
散る霰鳩が因果をかたる様 七番日記 化7
わやくやと霰を佗る雀哉 七番日記 化7
去程に鈴からおつるあられかな 七番日記 化8
痩脛へざくり〴〵と丸雪哉 七番日記 化9
霰来と諷へる口へあられ哉 七番日記 化10
霰来よと諷へる口へあられ哉 句稿消息 異
来ん〳〵と諷へる口へあられ哉 自筆本
霰ちれくゝり枕を負ふ子ども 七番日記 化10
熊坂が大長刀をあられ哉 七番日記 化10
鶏頭に卅棒のあられ哉 七番日記 化10
来よ〳〵とよんだる霰ふりにけり 七番日記 化10
小莚の娵が盒子よちる丸雪 七番日記 化10
玉霰それ〳〵兄が耳房に 七番日記 化10
玉霰それ〳〵兄が耳たぼに 志多良 異
玉霰峰の小雀も連て来ぬ 七番日記 化10
玉霰峰の小雀も連て来る 発句題叢他 異
玉霰やまの小雀も連て来る 三霜
ちりめんの狙を抱く子よ丸雪ちる 七番日記 化10
散丸雪張子の犬も狂ふぞよ 七番日記 化10
念仏のはかの行也ちる丸雪 七番日記 化10
一降は小雀交りのあられ哉 七番日記 化10
一莚霰もほして有りにけり 七番日記 化10
盛任が横面たゝくあられ哉 七番日記 化10
盛任がしやつ面たゝくあられ哉 句稿消息他 異
弁慶の横面投るあられ哉 自筆本
今降が児が霰ぞそれそこに 七番日記 化11
木啄も不仕合やら藪あられ 七番日記 化11
玉霰茶の子のたしに飛入ぬ 七番日記 化11
玉霰茶の子のたしにとばしりぬ 栗本雑記四 異
ちる霰立小便の見事さよ 七番日記 化11
鳥どもの打ちらかりてちる霰 七番日記 化11
かさ守りのおせん出て見よ玉霰 七番日記 化12
明神にほうり出された霰哉 七番日記 化12
悪形の紋看板をあられ哉 七番日記 化13
霰とぶ方へと身延道者哉 七番日記 化13
鉄棒のからり〳〵やちる霰 七番日記 化13
指して笑ふ仏よ玉丸雪 七番日記 化13
垣際のぱつぱとはしやぐ霰哉 七番日記 化14
小莚や土間の御汁に玉霰 七番日記 化14
ちりめんの狙を負ふ子や玉霰 七番日記 化14
ちりめんの狙を負う子やとぶ霰 七番日記 政1 異
火(の)用心〳〵とや夕霰 七番日記 化14
村中を膳もて行や玉霰 七番日記 化14
わらはべや箕をかぶりつゝ玉霰 七番日記 化14
霰こん〳〵触ル狐哉 七番日記 政1
立臼よ糠篩よ散霰 七番日記 政1
懐に袂に霰〳〵哉 七番日記 政1
箕の中に子もごしや〴〵と霰哉 七番日記 政1
霰来よへろ〳〵神の向方に 八番日記 政2
霰ちれ〳〵〳〵孫が福耳に 八番日記 政2
一あらればらり江戸気の霰哉 八番日記 政3
あながちに雲にかまわぬ霰哉 八番日記 政4
霰ごとつかみ込だる銭叺 八番日記 政4
霰ごと掴み込だり銭叺 梅塵八番 異
霰来よと鉢さし出してらかん哉 八番日記 政4
起よ〳〵転ぶも上手玉霰 八番日記 政4
三味線のばちで掃きやる霰哉 真蹟 政4
三味線のばちであしらふ霰哉 発句鈔追加 異
たまれ霰たんまれ霰手にたまれ 八番日記 政4
灯蓋に霰のたまる夜店哉 八番日記 政4
子ど(も)らが呼つれ子する霰哉 文政句帖 政5
夕霰ねん〳〵ころり〳〵哉 文政句帖 政5
朝市の火入にたまる霰かな だん袋 政6
あばら家(に)とんで火に入る霰哉 文政句帖 政7
一さんにとんで火に入る霰哉 だん袋他 異
広小路に人打散る霰哉 文政句帖 政7
広小路に人ちらかつて玉霰 文政句帖 政7
念仏に拍子付たる霰哉 自筆本
箕の中の箸御祓や散霰 自筆本
ひさめ
つくばねの雹のかゝる焚火哉 文化句帖 化2
みぞれ
けしからぬ月夜となりしみぞれ哉 享和句帖 享3
酒菰の戸口明りやみぞれふる 享和句帖 享3
酒飯の掌にかゝるみぞれ哉 享和句帖 享3
みぞれはく小尻の先の月よ哉 享和句帖 享3
夕みぞれ竹一本もむつかしき 享和句帖 享3
ゆで汁のけぶる垣根也みぞれふる 享和句帖 享3
散みぞれ臼の湯気さへ見られけり 文化句帖 化3
灯の洩る壁やみぞれの降処 文化句帖 化3
飯の湯のうれしくなるやちるみぞれ 文化句帖 化3
大菊のさんだらぼしをみぞれ哉 七番日記 化10
門番は足で掃寄るみぞれ哉 七番日記 化10
門番が足で掃寄るみぞれ哉 志多良 異
鐉の戸に錆びついて夕みぞれ 発句題叢 政3
初霜
初霜や乞食の竈も一ながめ 寛政句帖 寛4
初霜や蕎麦悔る人めづる人 寛政句帖 寛4
初霜や殺生石も一ながめ 寛政句帖 寛5
初霜や茎の歯ぎれも去年迄 文化句帖 化3
はつ霜や何を願ひの蛬 書簡 化4
はつ霜やかた衣かけてさす小舟 七番日記 化8
初霜の右は元三大師哉 七番日記 化11
はつ霜の草へもちよいと御酒哉 七番日記 化12
はつ霜や女の声のあびらうん 七番日記 化12
はつ霜や並ぶ花売鉦たゝき 七番日記 化12

朝霜や肩絹かけて通る人 寛政句帖 寛5
煤わらもよし置く霜の麦畠 寛政句帖 寛5
朝霜に潮を散す宮居哉 寛政句帖 寛6
朝霜に野鍛冶が散火走る哉 寛政句帖 寛6
暁の霜に風呂屋が門をたゝく哉 寛政句帖 寛6
明の霜風呂屋が門をたゝく哉 霜の会 異
庵の霜まだ誰有てすむ事ぞ しぐれの笠 寛12
一人前菜も青けりけさの霜 享和句帖 享3
起〳〵に嚔の音や草の霜 享和句帖 享3
霜の夜や人待顔の素湯土瓶 享和句帖 享3
掌に酒飯けぶる今朝の霜 享和句帖 享3
としよりの高股立や今朝の霜 享和句帖 享3
大霜の古家も人の地内也 文化句帖 化1
淋しさは得心しても窓の霜 文化句帖 化1
捨ぶちをいつ迄見べき夜の霜 文化句帖 化2
春の夜のおもはくもあり夜の霜 文化句帖 化2
草の霜あはれことしも蹈そむる 文化句帖 化3
けさの霜の梅のこやしに何よけん 文化句帖 化3
酒呑まぬ家のむきあふ霜夜哉 文化句帖 化3
霜風も常と成たる我身哉 文化句帖 化3
念仏の好になられし霜夜哉 七番日記 化7
おく霜や白きを見れば鼻の穴 七番日記 化8
来もきたり抑けふの霜の花 七番日記 化8
塚の霜雁も参て啼にけり 我春集 化8
深川や霜げたやうな玄関番 七番日記 化11
朝霜に打ちらかすや帯小袖 七番日記 化12
加へぎせるかたく無用やけさの霜 七番日記 化12
霜おくと呼る小便序哉 七番日記 化12
おく霜のたしに捨たる髻哉 七番日記 化13
縄帯の〆りかげんやけさの霜 七番日記 化13
縄帯の忰いくつぞ霜(の)夜 七番日記 化13
縄帯の忰いくつぞけさの霜 自筆本 異
八重葎とう〳〵霜を浴にけり 七番日記 化13
霜しぐれ貧乏けぶり目出たさよ 七番日記 化14
霜の虫いかに鳴のが役じやとて 七番日記 化14
霜の夜やくら下通り火(の)用心 七番日記 政1
霜の夜や前居た人の煤下る 七番日記 政1
我門は無きずな旦も小霜哉 七番日記 政1
朝霜や歯磨売ときらず売 八番日記 政2
小松菜の一文束やけさの霜 八番日記 政2
さをしかやゑひしてなめるけさの霜 八番日記 政2
さをしかのゑひしてなめるけさの霜 梅塵八番 異
さ越しかやゆひしてなめるけさの霜 真蹟 政2 一茶館
霜の夜や我通りても馬が呼 八番日記 政2
張番に庵とられけり夜の霜 八番日記 政2
朝霜やしかも子どものお花売 八番日記 政3
蛼(こほろぎ)の霜夜の声を自慢哉 梅塵八番 政3
蛼は霜夜の声を自慢哉 自筆本他 異
蛼が霜夜の声を自慢哉 真蹟
乞食子や膝の上迄けさの霜 八番日記 政3
乞食子よ膝の上迄けさの霜 だん袋他 異
乞食子や膝の上にもけさの霜 梅塵八番
畠並にずいと霜げし草家哉 八番日記 政3
かし店を張らるゝ迄も門の霜 八番日記 政4
貸店に張らるゝ迄も門の霜 梅塵八番 異
さぼてんは大合点か今朝の霜 八番日記 政4
霜足で畳歩くやぢゝい鶏 八番日記 政4
霜をくや此夜はたして子を捨る 八番日記 政4
霜掃て塩花蒔や這入口 八番日記 政4
菜畠は一霜づゝのげんき哉 八番日記 政4
菜畑も一霜づゝのげんき哉 発句鈔追加 異
夜の霜しん〳〵耳は蠅の声 八番日記 政4
起番の貧乏鬮や夜の霜 文政句帖 政5
霜の夜や横丁曲る迷子鉦 文政句帖 政5
霜もふれ〳〵と宵から寝番哉 文政句帖 政5
空色の山は上総か霜日和 文政句帖 政5
知己のけふもへりけり門の霜 文政句帖 政5
霜の夜や窓かいて鳴く勘当猫 文政句帖 政6
なでしこの首もたげけりけさの霜 文政句帖 政6
宿銭におく浄るりや夜の霜 文政句帖 政6
霜の夜や七貧人の小寄合 文政句帖 政7
大霜と見せて泥也ほしわらぢ 文政句帖 政8
霞まで生やうものか霜の鐘 文政版
置霜に一味つきし蕪かな  発句鈔追加
霜あらし誰罪作る流れ榾 真蹟
霜の夜やもどつて寝(る)も人(の)家 自筆本
霜柱
吹からに鼬も鳴ぬ霜柱 文化句帖 化2
縄帯の忰いくつぞ霜柱 七番日記 化13
一方は霜柱也野雪隠 八番日記 政3
霜柱風とが〳〵敷吹にけり 八番日記 政3
霜柱風とか〳〵と吹にけり 梅塵八番 異
霜柱下手が踏んでも見事也 八番日記 政3
我転けて霜は柱と立にけり 八番日記 政3
霜どけ
霜どけやとらまる枝は茨也 享和句帖 享3
霜どけや馬の鼻づら行といふ 七番日記 化7
霜どけや二番坂なる朝談義 七番日記 化14
松柱いの一いの二霜どけぬ 七番日記 化14
枯れ野
麦餅はいく日に成りぬかれの原 発句題叢 異
麦餅の幾日になりぬかれの原 発句鈔追加他
うぢ〳〵と枯野にかゝる跟哉 文化句帖 化3
達磨忌
達磨忌やちんぷんかんと鳴ち鳥 発句鈔追加 異
御取越
御取越飴でもちくふはなし哉 文政版他 異
蛼のからさはぎ也御とり越 自筆本 異
神の旅
鳶ひよろひよろ神の御立げな 文政版他 異
鳶ひよろひゝよろ神も御立げな 発句鈔追加他
鳶ひよろひゝよろ神のお立やら 発句類題集
ともかくも寝て待ばやな福の神 七番日記 化12
よい連ぞ貧乏神もさあ御立 自筆本 異
神々の御留守にこんな日和哉 梅塵八番 異
神々の留守ふる廻や隠居菊 梅塵八番他 異
牡丹餅は棚にいざ是へ福の神 文政句帖 政7 異
十夜(蛸十夜)
もろ〳〵の愚者も月夜の十夜哉 八番日記 政3 異
もろ〳〵の愚者も月さす十夜哉 版本題叢他
もろ〳〵のぐ者も月見の十夜哉 自筆本
御十夜は巾着切も月夜かな 嘉永版 異
辻堂に一人たゝきの十夜哉 梅塵八番 異
菜畠を通してもらふ十夜哉 発句鈔追加 異
菜畠や横筋違ひや十夜道 梅塵八番 異
犬ころのみやげをねだる十夜哉 文政句帖 政8 異
芭蕉忌
御宝前にかけ奉る時雨哉 自筆本他 異
芭蕉忌や江戸にもこんな松の月 梅塵八番 異
ばせを忌に丸い天窓の披露哉 文政版 異
芭蕉忌や女のかけし頭陀袋 文政句帖 政8 異
芭蕉忌や鳩も雀も客の数 梅塵八番 異
芭蕉忌や三人り三声の天窓付 梅塵八番 異
ばせを忌に三人三色の頭哉 自筆本
芭蕉忌や我もかやうな頭陀袋 だん袋他 異
ばせをきやききとて歩きながら哉 自筆本 異
芭蕉忌の客が振舞ふ夜蕎麦切 発句鈔追加 異
亥の子
鳴鳥いの子の篝いかゞ見る 自筆本 異
ふいご祭
町並に藪のかぢ屋も祭哉 発句題叢 異
報恩講
枝村の御講幟やお霜月 梅塵八番 異
夷講
杉箸で火をはさむ也夷講 自筆本 異
里神楽(夜神楽)
夜神楽や懐の子も手をたゝく 自筆本 異
ばか蔵も一役す也里神楽 自筆本 異
山本や小ねぎ一人の里神楽 梅塵八番 異
翌は叉どこの月夜の里神楽 自筆本 異
鉢たたき
殊勝さや同じ瓢もたゝき様 自筆本 異
寒ごり(寒行)
寒垢離の背中に竜の披露哉 嘉永版 異
寒習
鶯の子の寒声や朝つから 自筆本 異
寒念仏
若い声と云れうとてや寒念仏 自筆本 異
仕過るやはかやつて行く寒念仏 自筆本 異
垢つかぬうちが殊勝の寒念仏 梅塵八番 異
一文に一つづゝ也寒念仏 自筆本 異
今の世や供を連れたる寒念仏 梅塵八番他 異
つら役や不性〴〵に寒念仏 希杖本 異
つき合や不性〴〵も寒念仏 梅塵八番
一夜さはくせに成りけり寒念仏 梅塵八番 異
寒の水
名代の寒水浴る鳥哉 自筆本 異
朝風のあの年をして寒の水 梅塵八番 異
口切
口切の日に点かけて過しけり 梅塵八番 異
炉開き
炉開や拵へ通り夜の雨 自筆本 異
炉を明て見てもやっぱり独哉 七番日記 化13 異
顔見せ
浅ましや皺顔見せになにはから 自筆本
煤掃
すゝ竹も丸に這入らぬ庵哉 自筆本 異
都鳥それにも煤をあびせけり 松のしをり 異
かくれ家や松の天窓のすゝもはく 自筆本 異
浴るともあなたの煤ぞ本願寺 自筆本 異
煤芥の天窓下しや梅つばき 希杖本別本 異
ほの〴〵と棚引すゝや寛永寺 七番日記 化14 異
庵の煤嵐が掃て仕廻けり 自筆本 異
庵の煤口にて吹て仕廻けり 七番日記 政1 異
庵の煤掃く真似(を)して仕廻けり 七番日記 政1 異
煤掃て松も洗て三ヶの月 自筆本 異
煤払の世話がなき身を涙かな 梅塵八番 異
煤はくも悪日になどゝむづかしや 梅塵八番 異
山里や四五年ぶりの煤払 梅塵八番他 異
故郷や四五年ぶりの煤払 文政句帖
節季候
節季候のむなしく見るや角田川 文化句帖 化3 異
おく小野や森さへあれば節き候 句稿消息 異
おく小野や小藪がくれの節き候 自筆本 異
おく小野の藪もせき候節季候 句稿消息 異
嵯峨山へ節季候候なり込ぬ 志多良 異
節季候に蹴とばさるゝな迹の児 志多良 異
節季候を女もす也江戸の町 自筆本 異
せき候や小銭に羽根が生て舞ふ 梅塵八番 異
節き候が三弦を引都哉 文政句帖 政6 異
年寄のせいにあれ〳〵せつき候 梅塵八番 異
引風よせきから直に節き候 梅塵八番 異
札納
乞食の手へ納めたる御礼かな 文政句帖 政5 異
餅つき
迹臼は烏の餅か西方寺 自筆本 異
門並みや只一臼も餅の唄 句稿消息 異
餅とぶやぱつくり犬の明く口へ 自筆本 異
我庵へ来のではなし餅の音 希杖本 異
かくれ家や猫つくねんともちのばん 発句鈔追加 異
ふんづけて餅にかく也何貫目 梅塵八番 異
草の庵年取もちも買にけり 梅塵八番 異
山里や餅を定木に餅を切 自筆本 異
神の灯や餅を定木に餅を切 文政版
はね餅を猫ふん付て歩く也 梅塵八番 異
はねもちや猫ふん付てこまり入 文政句帖 政8
配り餅
妹が子は餅つく程に成にけり 希杖本 異
我門へ来さうにしたり配り餅 おらが春 異
我門に来さうにしたり配り餅 文政版他
我宿に来さうにしたり配り餅 自筆本
我門に来さうにしたり餅配 版本題叢
我が門へ来さうにしたり餅配り 発句類題集
山本や狐の穴も餅くばり 梅塵八番 異
寝てばかや貰ふもちつき二所 梅塵八番 異
歩行しな口上云ふや餅配り 発句鈔追加 異
餅花
木に餅の花さく夜にも逢にけり 句稿消息 異
木に餅の花さく御世に逢にけり 自筆本
衣配り
山寺の忘れがたみや衣配 梅塵八番 異
年忘れ
捨人や上野歩行てとし忘 希杖本 異
両国や舟も一組とし忘 自筆本 異
つき合や今夜も人の年忘 八番日記他 政2 異
うら山や十所許りの年忘 八番日記 政2 異
人立や庵も寒さのとし忘 梅塵八番 異
草の戸も夜はもの〳〵し年忘 梅塵八番 異
十所程壁に張りけりとし忘 自筆本 異
かくれ家やからつ咄もとし忘 発句鈔追加 異
かくれ家やからつ咄のとし忘 書簡
古暦
一とせを無きずに仕廻ふ暦哉 真蹟 異
掛乞ひ
掛取に水など汲で貰ひけり 自筆本 異
節分
福豆や副梅ぼしや歯にあはず 遺稿 異
鬼除よ浪人よけよさし柊 梅塵八番 異
門にさして祝はるゝなり赤いわし 梅塵八番 異
けふからは正月分ぞ寝よ子供 梅塵八番 異
大門の浪人よけよさし柊 梅塵八番 異
鬼やらひ
かくれ家や歯のない声で福は内 句稿消息他 異
かくれ家や歯のない福で福は内 志多良
かくれ家や歯のない声で鬼は外 句稿消息
其次は子どもの声ぞ鬼やらひ 書簡 異
一声に此世の鬼も逃るげな 梅塵八番 異
一声に此世の鬼は逃にけり 自筆本
一声に此世の鬼は逃るかな 梅塵八番他
一声に此世の鬼は逃るよな おらが春
年とる
あなた任せ任せぞとしは犬もとる 句稿消息他 異
小うるさの年をとるのかやつこらさ 句稿消息 異
はづかしや叉も来てとる江戸の年 八番日記他 政2 異
日本のとしをとるのがらくだかな 自筆本他 異
厄払ひ
人の世や厄をおとしに御いせ迄 自筆本 異
年籠り
君が代やから人も来て年ごもり 文政版 異

追鳥のまき添に出る狐哉 自筆本 異
網代
徳利を蔦に釣して網代守 自筆本 異
紅葉(葉)の千畳敷やあじろ守 七番日記 化10
柴漬
柴漬の札や此主悪太郎 自筆本 異
綿織る
子どもやら菜葉喰せる綿六ろ 梅塵八番 異
年木
寝てみるや元日に焼柴一把 希杖本 異
寒灸
風の子やはらつて逃る寒灸 梅塵八番 異
紙衣
浅草の辰巳へ帰る紙子哉 自筆本 異
加茂(の)水吉野紙子とほこりけり 発句鈔追加 異
唐のよし野迄もと紙子哉 志多良 異
古反故を縫合せつゝ羽折哉 梅塵八番 異
切付の美を尽しても紙子哉 八番日記 政4 異
つぎ交の美をつくしたる紙子哉 文政句帖 政7
紙衣きる身にさへのぞみ好哉 自筆本 異
頭巾
何人ぞ東海道を投頭巾 自筆本 異
立しまに頭巾ではくやたばこ芥 文政句帖 政8 異
足袋
はく日から白足袋にてはなかりけり 自筆本 異
赤足袋や這せておけば猶しやぶる 梅塵八番 異
皮足袋を位ではくや本町店 真蹟 異
ふすま
蛼の踏み荒したる衾哉 自筆本 異
ぶつ〴〵と衾のうちの小言哉 自筆本 異
漏殿がおそろしといふ衾哉 句稿消息 異
いつ〳〵は鹿が餌食ぞ古衾 自筆本 異
雀等が起しに来たる衾哉 自筆本 異
鼠らよ小便無用古衾 自筆本 異
千両のかしくも見ゆるふすま哉 発句鈔追加 異
犬がきてもどなたと申す襖哉 発句鈔追加 異
犬がきてもどなたぞといふ襖哉 版本題叢
ふとん
舟が来て候とはぐふとん哉 自筆本他 異
煎餅のやうなふとんも気楽哉 七番日記 化14 異
夜あけまでぐあひのわるきふとん哉 鼠道行他 異
明る迄ぐあひ直らぬふとん哉 自筆本
飯継にきせればふとんなかりけり 梅塵八番 異
百敷の都は猫もふとん哉 梅塵八番他 異
かんじき
橇を子等に習てはきにけり 梅塵八番 異
雪車
負いながら雪車のうらなる通り哉 自筆本 異
一升樽乗て小僧が小雪車かな 梅塵八番 異
一樽乗て小僧がお雪車哉 自筆本
そり引や家根から呼るとゞけ状 だん袋他 異
そり引や家根からおとすとゞけ状 自筆本
箱ぞりの大鼾にも引れけり 梅塵八番 異
雪かき
我宿はつくねた雪のうしろ哉 自筆本 異
門先や雪降とはきふるとはく 梅塵八番 異
ちとたらぬ僕か隣の雪もはく 文政句帖 政7 異
雪仏
仏にも作る気はなし庵の雪 我春集 異
我国やつい戯にも雪仏 発句鈔追加 異
雪仏犬と子どもが御好かや 七番日記 化12 異
雪仏我手の迹のなつかしや 書簡 異
はつ降りや雪も仏につくらるゝ 自筆本 異
初ものや雪も仏につくられし 随斎筆紀他
彼是と云も当ざの雪仏 梅塵八番 異
やれそれと云も当ざの雪仏 自筆本
彼是といふも当坐ぞ雪仏 おらが春
かりの世の雪も仏となりにけり 八番日記 政3 異
雪つぶて
雪礫投るはづみにつんのめる 自筆本 異
三弦のばちで留たり雪礫 自筆本 異
犬の子も追ふて行也雪礫 七番日記 化14 異
雪がこひ
大犬が尻でこぢるや雪莚 自筆本 異
冬籠り
冬籠る其夜に聞くや夜の雨 発句題叢 異
はや〴〵と誰冬ごもる畑けぶり 遺稿 異
紅葉いろ〳〵いつ古里の冬籠 文化三-八年句日記写 化7 異
柿の木に又罪作る冬籠 句稿消息 異
指捨し柳の陰を冬ごもり 志多良他 異
一畠菊も喰つゝ冬籠り 七番日記 政1 異
冬籠り悪(物)喰が上手なり 梅塵八番 異
冬ごもりいか物喰を習かな 書簡 異
雪隠と背合せや冬籠 文政句帖 政5 異
人誹る会も有也冬籠 文政句帖 政7 異
口の出したいが持病ぞ冬籠 文政句帖 政7 異
火鉢
川風の真西吹く也大火鉢 享和句帖 異
けふも〳〵竹に見とるゝ火桶哉 書簡 異
店先や火鉢のふちのむら雀 自筆本 異
草の戸やそなたが来ても欠け火桶 梅塵八番 異
南天(と)並ぶが丘の火桶哉 梅塵八番 異
大火鉢叉こなからの茶碗酒 梅塵八番 異
炬燵
日本を鵜呑顔して巨燵哉 自筆本 異
かく寝るも我が炬燵ではなかりけり 遺稿 異
同じ世や巨燵仏と立ぼとけ 文政句帖 政5 異
大名をながめながらの巨燵哉 発句鈔追加 異
子ども衆炬燵弁慶とは我事也 自筆本 異

赤い実もはかり込だる粉炭哉 享和句帖 異
深川(や)一升炭も川むかふ 発句題叢 異
深川(や)一升炭も舟さはぎ 句稿消息他
深川(や)一升炭も舟さばき 版本題叢
待時は犬も来ぬぞよおこりずみ 句稿消息 異
おとろへや炭のしみ込掌に 希杖本 異
炭俵
炭もはや俵焚く夜と成にけり 文政句帖 異
ぬかるみにはや踏まるゝ炭俵 七番日記 政1 異
炭焼
炭竈の穴の小隅のうき世哉 発句鈔追加 異
炭竈の穴の小隅もうき世哉 栗本雑記二
炭竈やしばし里ある並様 句稿消息 異

榾の火や吉次喜三太武さし坊 自筆本 異
横つらに腰打かけてほた火哉 希杖本 異
埋火
埋火や桂の鷗聞へけり 版本題叢 異
埋火の芋をながむる鳥哉 文化三-八年句日記写 異
埋火やきせるで天窓はりこくる 真蹟 異
納豆
納豆と同じ枕に寝たりけり 八番日記 政4 異
納豆の糸もよはるや日〳〵に 梅塵八番 異
そば湯
親椀に竜も出さうなそば湯哉 自筆本 異
そばがき
草のとや先蕎麦切をねだる客 梅塵八番 異
鰒汁
今の世は女もすゝるふくと哉 文政句帖 政8
東ぢや女もすゝる鰒汁 自筆本
馬一人先へもどして鰒汁 自筆本 異
肩越に馬の覗くや鰒汁 句稿消息 化10
爰をせに紅葉ちりけり鰒汁 七番日記 化10
鰒汁や背にあてゝ箱根山 自筆本 異
鰒喰がうき名は松に立にけり 自筆本 異
鰒汁や侍部屋の大鼾 文政句帖 政7 異
五十にして鰒の喰味をしる夜哉 発句鈔追加 異
あのものを十ばかりいふ鰒汁 発句鈔追加 異
鰒汁に人吹き込や広小路 自筆本 異
夜〳〵や鰒で生てる外員部屋 自筆本 異
夜〳〵や鰒で生てゐる外員部屋 発句鈔追加 異
暖め鳥
人鬼の里へもどるやぬくめ鳥 梅塵八番他 異
笹鳴
鶯やちつさな声で親をよぶ 発句鈔追加 異
せい出してうぐひすと鳴けいこ哉 自筆本 異
みそさざい
みそさゞいちゝといふても日が暮る 文政版 異
みそさゞいちゝといふても日は暮る 版本題叢
みそさゞい九月卅日も合点か 希杖本 異

とら鰒の顔まじ〳〵と葉かげ哉 享和句帖 異
さる人のそぶりに似たる鰒かな 書簡 異
誰やらが面にも似たる鰒哉 七番日記 化13 異
海鼠
ほの〴〵と明石の浦のなまこかな 発句鈔追加 異
枯れ草
かれ荵かなぐり捨てもせざりけり 享和句帖 享3
鶏頭の立往生をしたりけり 七番日記 化13 異
寒けしや枯ても針のある草は 希杖本 異
とが〳〵し枯てもとげのとれぬ草 自筆本 異
枯れ女郎花
女郎花何の因果で枯かねる 文政版他 異
女郎花何の因果に枯かぬる 七番日記他 化13
枯れ芦
浜萩のあこぎに枯て立りけり 自筆本 異
散芒寒くなるのか目に見ゆる 嘉永版他 異
散芒夜の寒さが目に見ゆる 版本題叢他
大根
跡とりや大根一本背におひ 享和句帖 享3
鶴遊べ葛飾大根今や引 嘉永版 異
鶴遊べ葛西の大根今や引 千題集
雉なども粗鳴にけり大根引 文化三ー八年句日記写他 化7 異
藪原の一本大根引れけり 自筆本 異
蛬其大根を今引くぞ 志多良他 異
鳴雀其大根も今引ぞ 発句題叢他 異
大根で団十郎をする子哉 自筆本 異
尼寺や二人かゝつて大根引 嘉永版 異
藪原へ引捨られし大根哉 梅塵八番 異
我門や只四五本の大根蔵 だん袋他 異
四五本の大根引くも人手哉 文政句帖 政7 異
ねぎ
北国やいろりの隅の葱畠 文政句帖 政7 異
冬木
からめしにつんと立たる冬木哉 享和句帖 享3 異
枯れ柳
古柳蛇ともならで枯にけり 自筆本 異
冬木立ち
つの国の何と申も枯木立 発句鈔追加 異
木の葉
楢(の)葉の朝からちるや豆腐桶 発句題叢他
赤い(の)が先へもいるぞあの木の葉 句稿消息 異
文字のある木の葉も降らん身延山 七番日記 政1 異
文字のある木の葉散らん身延山 自筆本
焚く程は手でかいて来る木の葉哉 自筆本 異
窓下へ足でおし寄す木(の)葉哉 自筆本 異
門畠や猫をじやらしてとぶ木の葉 梅塵八番 異
上之上極上赤き木の葉かな 発句鈔追加 異
落ち葉
おち葉してけそりと立や裸蔵 自筆本 異
捨(ら)るゝ迄とや姨のおち葉やく 自筆本 異
おち葉して三日月ころのかきねかな 遺稿 異
散る紅葉
今打し畑のさまなり散紅葉 璧玉集 異
散紅葉妹が小隅にかゝる哉 発句鈔追加 異
神祭
一つかみ樽を拭たる紅葉哉 梅塵八番 異
一つかみ塗樽拭ふ紅葉哉 おらが春
少ちるうちや紅葉も拾はるゝ 梅塵八番 異
霜枯れ
霜がれや庇の上の茶天道 自筆本 異
人顔も霜がれるなり巣鴨道 梅塵八番 異
霜がれや番屋に虱失せ薬 文政句帖 政5 異
霜がれや戸に張る虱失せ薬 文政句帖 政6
帰り花
朽桜なんのねげひを帰り花 書簡 異
木瓜藪や切尽されて帰り花 八番日記 政2 異
木瓜の株刈尽されて帰り花 嘉永版
山木瓜や実をおり分て帰り花 八番日記 政2 異
寒菊
寒菊やとうふの声の大けぶり 自筆本 異
水仙
水仙の笠かりて寝る雀哉 自筆本 異
水仙や女きれなき御庵 句稿消息 異
水仙や垣にゆひ込むつくば山 自筆本 異
山茶花
山茶花のかきねにささむ杓子哉 自筆本 異
枇杷の花
びは咲や世をうぢ山の咄し道 自筆本 異

猫の子が手でおとす也耳の雪 書簡 政6 最新
冬の夜
冬(の)夜や柱の穴に茶(を)上る 文政句帖草稿 政7 新13
(冬の夜や)茶を奉る柱穴 文政句帖草稿 政7 新14
節季候
連て妻ニ見セるや(せっき候) 文政句帖草稿 政7 新17
餅つき
餅つきの真似して遊ぶ蚊藪哉 あつくさ 新118
時雨
遠山の野火が見え〳〵しぐれけり 発句集続編 新176
冬さくら
咲たりと申たばかり冬さくら 発句集続編 新177
冬枯
冬枯の未練に見ゆる小草哉 発句集続編 新178

ふいと来て親子のごとし雪の宿 発句集続編 新179
網代守
里〳〵や浮世の隅の網代守 発句集続編 新180
ぼう馬や母親持ちし網代守 発句集続編 新181
千鳥
小男鹿と一所に寐たる千鳥かな 発句集続編 新182
小鴨
場所替をさして苦にせぬ小鴨かな 発句集続編 新183
白炭
白炭をしやぶりたかって泣子哉 発句集続編 新184
炭窯
すみがまや浮世の隅のとつぱづれ 発句集続編 新185
冬椿
から家や村一番の冬椿 発句集続編 新186
ふすま
南無あみだ仏とかぶるふすま哉 発句集続編 新187
鰒汁
鰒汁や幸ひ月とむめの花 発句集続編 新188
小春(小六月)
蜻蛉の社壇かりきる小春哉 あつくさ 新124
寒し(寒き日 寒き夜)
寒しこゆし虱むつむつむつかしや あつくさ 新125

霜の夜や翌ハ〳〵と壁の穴 あつくさ 新126
大霜の大道に散らす小袖哉 あつくさ 新127
帰り花
ちるひとつ咲のも一つ帰り花 梅双紙 新
冬の山
君が世や風治まりて山ねむる 寛政句帖 寛4
筆頭でかぞへて見たる冬の山 七番日記 化13
枯れ野
遠方や枯野ゝ小家の灯の見ゆる 寛政句帖 寛5
逃水のにげかくれてもかれの哉 与播雑詠 寛中
かくれ家に日のほか〳〵とかれの哉 享和句帖 享3
片袖に風吹通すかれの哉 享和句帖 享3
枯野原あぢな方から夜が明る 享和句帖 享3
草染の総の下迄かれの哉 享和句帖 享3
子七人さはぐかれのゝ小家哉 享和句帖 享3
ざぶり〴〵〴〵雨ふるかれの哉 享和句帖 享3
近道はきらひな人や枯野原 享和句帖 享3
鳥をとる鳥も枯のゝけぶり哉 享和句帖 享3
虫除の札のひよろ〳〵かれの哉 享和句帖 享3
枯原の雨のひゞきし枕哉 文化句帖 化1
小襖にかれのゝ雨のかゝる也 文化句帖 化1
鍋ぶたものべ付にしてかれの哉 文化句帖 化1
野はかれて何ぞ喰たき庵哉 文化句帖 化1
麦餅のいく日立ぞよかれの原 文化句帖 化1
夜〳〵は寝所の下もかれの哉 文化句帖 化1
あちこちに茄子も下る枯の哉 文化句帖 化3
鐘なりて庭も一つにかれの哉 文化句帖 化3
鳥追はぬ家も日暮るゝ枯の哉 文化句帖 化3
がい骨の笛吹やうなかれの哉 七番日記 化7
戸口迄ついと枯込む野原哉 七番日記 化10
御談義の手まねも見ゆるかれの哉 七番日記 化11
大珠数を首にかけたるかれの哉 七番日記 化3
枯の原俵かぶ(つ)て走りけり 七番日記 化3
冬の野にあれでも恋は恋故ぞ 七番日記 化14
くだら野や人を喰ふとなく烏 梅塵八番 政2
西方は極楽(道)よかれのはら 八番日記 政2
忍草忍ばぬ草も枯野哉 八番日記 政2
五六疋馬干しておく枯野哉 八番日記 政3
大長者万灯のさたもかれの哉 八番日記 政4
終の身も見事なりけり枯野原 八番日記 政4
なでしこの咲に付ても枯野哉 八番日記 政4
枯原や夫婦六部が捨念仏 文政句帖 政5
清十郎が鉄砲かつぎて枯の哉 文政句帖 政6
暁立の人の通りもかれの哉 文政句帖 政7
枯原の隅に暖とい在所哉 文政句帖 政7
雉立て人おどろかすかれの哉 文政句帖 政7
吹風に声も枯のゝ烏かな 文政句帖 政7
わら苞(の)豆麩かついでかれの哉 文政句帖 政7
ぬくさうな門口見ゆる枯野哉 発句鈔追加
山風やたのむ小藪も枯の原 希杖本
達磨忌
達磨忌や箒で書し不二の山 七番日記 化11
達磨忌や傘さしかける梅の花 七番日記 化11
達磨きやちんぷんかんを鳴ち鳥 七番日記 化11
御取越
御取越飴でもちくふ夜也けり 七番日記 化12
蛬穴に腰かけて御とり越 七番日記 化12
蛼はからさはぎ也御とり越 七番日記 化12
手序にきせる磨くやおとり越 八番日記 政3
とつときの江戸画屏風や御取越 文政句帖 政6
いな声を真ねる子どもや御取越 文政句帖 政8
踏ん付た飯いたゞくや御取越 文政句帖 政8
神の旅
御遅参はおく病神や大社 七番日記 化12
旅支度神の御身もいそがしや 七番日記 化12
鳶ひよろひゝよろ神の御立げな 七番日記 化12
よい連ぞ貧乏神も立給へ 七番日記 化12
氏神の留主事さはぐ烏哉 七番日記  化13
梅嫌糸に釣して神迎 七番日記 化14
おゝ寒し貧乏神の御帰か 七番日記 化14
丸盆に霞並べて神迎 七番日記 化14
我宿に貧乏神も御供せよ 発句題叢 政3
神々の御留主になんと日和哉 八番日記 政4
神々の留主ふる廻や菊の花 八番日記 政4
小猿ども神の御留主を狂ふ哉 八番日記 政4
住吉や御留主の庭も掃除番 八番日記 政4
なら山の神の御留主に鹿の恋 八番日記 政4
けふからは薬利べし神迎 文政句帖 政5
大黒の俵作りて神迎ひ 文政句帖 政5
吉原の棚やおどけたかみ迎ひ 文政句帖 政5
さをしかや神の留主事寝て遊ぶ 文政句帖 政6
神酒樽の流(れ)つきけり神迎 文政句帖 政6
朝笑(ひ)ござるぞ〴〵福の神 文政句帖 政7
御迎ひ出すとござらん貧乏神 文政句帖 政7
門違してくださるな福の神 文政句帖 政7
神〴〵の置みやげかよ上日和 文政句帖 政7
神〴〵の留主せんたくやけふも雨 文政句帖 政7
神の風仕送り給ふ木の葉哉 文政句帖 政7
苦のさばや神の御立も雨嵐 文政句帖 政7
さば後に神も長〳〵旅寝かな 文政句帖 政7
じやゝ(〴〵)雨の降に御帰り貧乏神 文政句帖 政7
鳴き虫(を)つれて行くとや大天狗 文政句帖 政7
貧乏神心御帰り成れたか 文政句帖 政7
不性神置みやげかよ貧乏雨 文政句帖 政7
牡丹餅は棚に寝てまて福の神 文政句帖 政7
まめな妻忘れ給ふな神送 文政句帖 政7
水浴(て)並ぶ烏や神迎ひ 文政句帖 政7
割鍋にとぢぶたも神の御せわ哉 文政句帖 政7
世話しなや神の御身も旅支度 発句鈔追加
十日ん夜
かゞしへも餅備へけり十日ン夜 文政句帖 政6
目出度さやかゞしもつひの夕けぶり 文政句帖 政7
目出度はかゞしもつひのけぶり哉 文政句帖 政8
十夜(蛸十夜)
手束弓矢島の蟹も十夜哉 享和句帖 享3
麦の雨はやして通る十夜哉 文化句帖 化3
もろ〳〵の愚者も月見る十夜哉 文化句帖 化3
雁鴨もこせ〳〵十夜もどり哉 七番日記 化12
田(の)中にづいと道つく十夜哉 七番日記 化2
古ぎせる白髪にさして十夜哉 七番日記 化13
御十夜は巾着切も月夜哉 八番日記 政2
辻堂の一人たゝきの十夜哉 八番日記 政2
菜畠をそらにそれたる十夜哉 八番日記 政2
菜畠を通してくれる十夜哉 八番日記 政2
菜畠や横すじかひの十夜道 八番日記 政2
塀合を通してくれる十夜哉 八番日記 政2
藪寺の人けも見へぬ十夜哉 八番日記 政2
犬に迄みやげをくばる十夜哉 八番日記 政4
大犬がみやげをねだる十夜哉 八番日記 政4
御袋も猫なで声の十夜哉 八番日記 政4
かまくらや十夜くづれの明烏 だん袋 政6
城内の菜畠ほける十夜哉 文政句帖 政6
田から田へ真一文字や十夜道 だん袋 政6
十夜から直(に)吉原参り哉 文政句帖 政7
菜畑も間に合せたる十夜哉 文政句帖 政7
念仏の十夜が十夜月夜哉 文政句帖 政7
法の世は犬さへ十夜参哉 文政句帖 政7
蓑を着てかしこまつたる十夜哉 文政句帖 政7
百敷の都は蛸の十夜哉 文政句帖 政7
雨と月半分交の十夜哉 文政句帖 政8
雨のやみのと怠るや十夜道 文政句帖 政8
庵の犬送つてくれる十夜哉 文政句帖 政8
百敷きの月夜に逢ふ(や)十夜鮹 文政句帖 政8
芭蕉忌
影ぼうしの翁に似たり初時雨 享和句帖 享3
芭蕉忌に先つゝがなし菊[の]花 文化句帖 化1
ばせを忌や丸こんにやくの名所にて 文化句帖 化2
こんにやくにかゝらせ給へ初時雨 文化句帖 化3
ばせを忌や時雨所の御こんにやく 文化句帖 化4
けふの日や鳩も珠数かけて初時雨 七番日記 化7
念入れてしぐれよ藪も翁塚 七番日記 化7
ばらつくや是は御好の初時雨 七番日記 化7
時雨する今日とてふりし上着哉 茶翁聯句集 化10
南無上着なむ翁初しぐれ 七番日記 化10
十月や時雨奉る御宝前 七番日記 化11
芭蕉忌も松も武張りて 七番日記 化12
翁忌や雁も平話な並び様 七番日記 化13
翁忌や何やらしゃべる門雀 七番日記 化13
御宝前にかけ奉るはつしぐれ あとまつり 化13
大切のお十二日ぞはつ時雨 七番日記 化13
梟も一句侍れ此時雨 七番日記 化13
初時雨お十二日を忘ぬや 七番日記 化14
したはしやむかししのぶの翁椀 真蹟 化14
こんにやくもお十二日ぞはつ時雨 八番日記 政2
十月の御十二日ぞはつ時雨 八番日記 政3
はいかいの報恩講やはつしぐれ 八番日記 政3
ばせを忌に執筆の天窓披露哉 だん袋 政3
芭蕉忌やえぞにもこんな松の月 八番日記 政3
初しぐれ鈴ふりにけり今日は 八番日記 政3
ほけ経と鳥もばせうの法事哉 八番日記 政3
霜花もばせう祭のもやう哉 八番日記 政4
芭蕉忌と申[す]も歩きながら哉 八番日記 政4
芭蕉忌に坊主あたまの披露哉 八番日記 政4
芭蕉忌や垣に雀も一並び 八番日記 政4
芭蕉忌や客に留主させて火貰に 八番日記 政4
芭蕉忌や俗も懸たる頭陀袋 八番日記 政4
芭蕉忌や鳩も雀も客めかす 八番日記 政4
芭蕉忌や三人三色の天窓付 八番日記 政4
芭蕉忌や嵐雪いまだ俗天窓 八番日記 政4
芭蕉忌や留主をして居る袴衆 八番日記 政4
芭蕉忌や我もか様に頭陀袋 八番日記 政4
ばせを翁の像と二人やはつ時雨 文政句帖 政6
ばせをきやきやとて歩きながら哉 文政句帖 政6
深川の辺を芭蕉忌廻り哉 文政句帖 政6
旅の皺御覧候へばせを仏 文政句帖 政7
芭蕉[仏]に旅した皺を馳走哉 文政句帖 政7
底本: 信濃教育会編『一茶全集』(信濃毎日新聞社1979年刊 第1巻「発句」)、資料: 「一茶の俳句データベース」(2014年)、参照: 縦書き文庫版「一茶発句集」(2024年から制作 26年に完成予定)、くの字点表記: 〳〵〴〵

Leave a comment