夏の部の季語「せみ」の句は97ある。夏3658の「蝉鳴や空にひつゝく最上川」、夏3656の「戀をせよ戀をせよせよ夏のせみ」がおもしろい。夏3626/70で鳴かない蝉を詠み、それを安気とするのも一茶らしい。
3619 風はやゝ三保に吹入る蝉の声 寛政句帖 寛4
3620 浜松や蝉によるべの浪の声 寛政句帖 寛4
寺は道明寺と云、わづか行ば玉手山尾州公の荼毘処あり竜眼肉の木ありて此かいわいの景地也、艮の方にかつらぎ山見ゆる折から遊山人処々につどふ
3621 初蝉や人松陰をしたふ比 西国紀行 寛7
3622 せみなくや鳥居の外にみたらひ[に] 享和二句記 享2 「井」→「居」 「さ」→「た」
3623 浮島やうごきながらの蝉時雨 享和句帖 享3
3624 蝉鳴や袖に一粒雨落て 享和句帖 享3
3625 大雨や大な月や松の蝉 文化句帖 化1
3626 唖蝉の二日降れし柱哉 文化句帖 化1
3627 かくれ家は浴過けり松の蝉 文化句帖 化1
3628 聞倦て人は去也朶の蝉 文化句帖 化1
3629 蝉なくや柳ある家の朝の月 文化句帖 化1
3630 觜太の夢や見つらん夜の蝉 文化句帖 化1
3631 蜘の巣に月さしこんで夜のせみ 文化句帖 化2
3632 蝉時雨蝶は日やけもせ[ざ]りけり 文化句帖 化2
3633 せみ啼や梨にかぶせる紙袋 文化句帖 化2
3634 今しがた此世に出し蝉の鳴 文化句帖 化3
3635 草の葉やたつぷりぬれて蝉の鳴 化五六句記 化5
3636 蝉なくや貧乏かづらも時を得て 化五六句記 化5
3637 蝉ばかり涼しき衣き[た]りけり 文化句帖 化5
3638 投足の蝉へもとゞけ昼の空 化五六句記 化5
3639 せみ鳴て別して長い日あし哉 化五六句記 化6
古間雪居の母のもにこもるをとふ
3640 母恋し〳〵と蝉も聞ゆらん 化五六句記 化6
3641 世直しの竹よ小藪よ蝉時雨 化五六句記 化6
3642 山人や袂の中の蝉の声 化三-八写 化7
3643 けふ切の声を上けり夏の蝉 七番日記 化8
3644 蝉なくや鷺のつゝ立寺座敷 七番日記 化8
3645 露の世の露を鳴也夏の蝉 我春集 化8
3646 夏の蝉しかし我らが先ぢややら 七番日記 化8 「じ」→「ぢ」
3647 米つきよまて〳〵臼に蝉が鳴 七番日記 化9
3648 蝉鳴や赤い木[の]葉のはら〳〵と 七番日記 化9 (出)『句稿消息』
3649 蝉鳴や今象潟がつ[ぶ]れしと 七番日記 化9 (異)『句稿消息』中七「象潟こんど」
3650 鳴かけて何を見かけて行蝉[か] 七番日記 化9 (異)『句稿消息』中七下五「何を見つけて行蝉か」
3651 初蝉といへば小便したりけり 七番日記 化9 (出)『株番』『句稿消息』
3652 はつ蝉や臼に泊てふつとなく 七番日記 化9
3653 湖に尻を吹かせて蝉の鳴 七番日記 化9 (出)『株番』『句稿消息』
3654 むく犬や蝉鳴く方へ口を明 七番日記 化9 (異)『株番』前書き「六月七日菊池氏にて」 中七「蝉なく空へ」
3655 青空はいく日ぶりぞ蝉の鳴 七番日記 化10
3656 恋をせよ〳〵〳〵夏のせみ 七番日記 化10
3657 せみ鳴や笠のやうなる鳰の海 七番日記 化10
3658 蝉鳴や空にひつゝく最上川 七番日記 化10 (異)『希杖本』上五「蝉の声」『志多良』『句稿消息』『文政版』中七下五「天にひつつく筑摩川」『発句題叢』『希杖本』下五「筑摩川」
3659 蝉なくや我家も石になるやうに 七番日記 化10 (出)『志多良』『句稿消息』『文政版』
3660 そこでなけ同じ風ぞ夏の蝉 七番日記 化10 (出)『志多良』
3661 だまれ蝉今髭どのがござるぞよ 七番日記 化10 (異)『志多良』中七下五「又髭どのがおじやるぞよ」
3662 寺山や袂の下を蝉のとぶ 七番日記 化10
3663 夏の蝉恋する隙も鳴にけり 七番日記 化10 (出)『発句集続篇』(異)『志多良』下五「おしむらん」
3664 逃くらし〳〵けり夏のせみ 七番日記 化10
3665 山蝉や鳴〳〵抜る大座敷 句稿消息 化10
3666 蝉鳴や物喰ふ馬の頬べたに 七番日記 化11 (出)『句稿消息』
3667 夏の蝉なくが此世の栄えう哉 七番日記 化11 「よ」→「え」
3668 はつ蝉[や]馬のつむりにちよつ[と]鳴 七番日記 化11
3669 うす赤い花から蝉の生れけり 七番日記 化12
3670 唖蝉それも中〳〵安気かな 七番日記 化12
3671 小坊主や袂の中の蝉の声 七番日記 化12
3672 ざんぶりと一雨浴て蝉の声 七番日記 化12
3673 住吉やあひに相生の蝉の声 句稿消息 化12 (異)『七番日記』上五「涼風や」
3674 蝉鳴て疫病にしたりけり 七番日記 化12
3675 蝉鳴や今伐倒す松の木に 七番日記 化12
3676 蝉鳴やまゆが干るゝ〳〵と 七番日記 化12
3677 鳴蝉や袂の下をついとゝぶ 七番日記 化12
3678 初蝉の聞かれに来たか門柱 七番日記 化12
3679 初蝉の目見えに鳴か如来堂 七番日記 化12 「へ」→「え」
3680 松の蝉経聞ながら生れけり 七番日記 化12
3681 六五つ門桃のおちけり蝉の声 七番日記 化12
3682 じつとして見よ〳〵蝉の生[れ]様 七番日記 化13
3683 蝉鳴や六月村の炎天寺 七番日記 化13 (類) 同日記(化14) 上五「むら雨や」
3684 初蝉のちよと鳴て見し柱哉 七番日記 化13 (異) 同日記(化13) 中七「ふと鳴て見し」
3685 鳴蝉の朝からじいり〴〵哉 七番日記 化14
3686 狗に爰へ来よとや蝉の声 八番日記 政2 (出)『おらが春』
3687 せみなくやつく〴〵赤い風車 八番日記 政2
3688 はつ蝉のうきを見ん〳〵みいん哉 八番日記 政2
3689 松のせみどこ迄鳴て昼になる 八番日記 政2 (出)『おらが春』『嘉永版』『発句鈔追加』『発句集続篇』真蹟
3690 山ぜみの袂の下を通りけり 八番日記 政2 (異)『文政句帖』(政5) 上五「山の蝉」『嘉永版』上五中七「山蝉のたもとの中を」
3691 鰐口のくちのおくより蝉の声 八番日記 政2 (異)『嘉永版』中七「くちの奥なり」
うつせみ
3692 なつかしやゆかしや蝉の捨衣 八番日記 政3 (出)『発句鈔追加』前書き「源氏うつせみ」
3693 狗の夢見て鳴か夜のせみ 八番日記 政4 (異)『梅塵八番』中七「爰見て啼か」
3694 つひの身も見事也けり夏のせみ 八番日記 政4 (類) 同日記(政4) 下五「枯野原」
3695 鳴ながら蝉の登るやぬり柱 八番日記 政4
3696 引捨し臼の横手や蝉の声 八番日記 政4
3697 目の上のこぶし林や蝉の声 八番日記 政4
3698 もろ蝉やもろ雨垂や大御堂 八番日記 政4
3699 藪寺や夜もをり〳〵蝉の声 八番日記 政4 「お」→「を」
3700 臼引が今引く臼をせみの声 文政句帖 政5
3701 蝉鳴や神の[鉄]釘ぬける程 文政句帖 政5
3702 蝉鳴や山から見ゆる大座敷 文政句帖 政5
3703 そよ風は蝉の声より起る哉 文政句帖 政5
3704 とらまへてむりに鳴すや蝉の声 文政句帖 政5
3705 鳥さしの邪魔にとびけり松のせみ 文政句帖 政5
3706 風鈴はちんとも云ず蝉の声 文政句帖 政5
3707 むら雨の雫ながらや蝉の声 文政句帖 政5
3708 もろ蝉の鳴こぼれけり笠の上 文政句帖 政5
3709 道哲の仏の膝や蝉の声 文政句帖 政7
3710 木の下や見るうち蝉と成て鳴 政八草稿 政8【2005】
3711 蝉鳴や盲法師が扇笠 文政句帖 政8
3712 せみ鳴や北かげくらきかご枕 遺稿
3713 山里や臼に盥に蝉の鳴 政八草稿 政8【2005】
3714 明日の事人はなり也夏の蝉 発句集続篇【2005】
3715 ねがはくは念仏を鳴け夏の蝉 文政版
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