竹内民法02

≪物権≫

□物権法総説

物権の直接支配性と排他性
一物一権主義
物権の消滅事由

目的物の物理的滅失。債権または所有権以外の財産権は20年間行使しないとき消滅する。
債権等の消滅時効
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
 債権又は所有権以外の財産権権利を行使することができる時から20年間行使しないときは時効によって消滅する
 前二項の規定は始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のためにその占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するためいつでも占有者の承認を求めることができる
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については同号中10年間とあるの20年間とする

□物権の混同

原則と例外確認
例外として混同しない場合の共通点は第三者の権利の目的になっている場合

混同
第179条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したとき、当該他の物権は消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときはこの限りでない
 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は消滅する。この場合においては前項ただし書の規定を準用する。
 前二項の規定は占有権については適用しない
占有保持の訴え
第198条 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えによりその妨害の停止及び損害の賠償を請求できる
占有保全の訴え
第199条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えによりその妨害の予防又は損害賠償の担保を請求できる
占有回収の訴え
第200条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えによりその物の返還及び損害賠償を請求できる
 占有回収の訴え占有侵奪者の特定承継人に対しては提起できない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときはこの限りでない
占有の訴え提起期間
第201条 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合、その工事に着手した時から1年を経過し又はその工事が完成したときはこれを提起できない
 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は提起できる。この場合、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは前項ただし書の規定を準用する。
 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。
本権の訴えとの関係
第202条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない
 占有の訴えについては本権に関する理由に基づいて裁判できない

□物権的請求権

物権的妨害排除物権的妨害予防物権的返還
占有訴権と比較しつつ要件を確認: 占有回収の訴えは侵害の時から1年間しか行使できないが物権的返還請求権に提訴期間はなく時効消滅もない

□物権的請求権の相手方

原則、現に目的物の支配を妨げている者
判例は登記名義人に対する請求も認めている

□物権変動

物権変動の時期 契約時 意思主義(176条)

虚偽表示
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする。
 前項の規定による意思表示の無効は善意の第三者に対抗できない
詐欺又は強迫
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる
 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り又は知ることができたときに限りその意思表示を取り消すことができる
 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消し善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない
物権の設定及び移転
第176条 物権の設定及び移転当事者の意思表示のみによってその効力を生ずる
不動産に関する物権の変動の対抗要件
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗することができない
解除の効果
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したとき各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負うただし、第三者の権利を害することはできない
 前項本文の場合において、金銭を返還するときはその受領の時から利息を付さなければならない
 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときはその受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない
 解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない
遺産分割の効力
第909条 遺産分割は相続開始時にさかのぼってその効力を生ずるただし、第三者の権利を害することはできない

□公示の原則と公信の原則

  • 不動産→公信の原則なし  
  • 第三者保護は94条2項類推適用にて善意の第三者に対抗できない

□177条の第三者

当事者若しくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺けんけつを主張する正当な利益を有する者

□第三者に当たらないもの

  • 実質的無権利者 無権利者からの譲受人
  • 不法行為者・不法占拠者
  • 不動産登記法5条所定の者 詐欺または強迫によって登記申請を妨げた第三者他人のために登記申請する義務を負う第三者はその登記がないことを主張できない
  • 転々譲渡の前主
  • 差押えをしていない一般債権者
  • 背信的悪意者

□背信的悪意者から善意者ないし単純悪意者が譲り受けた場合

相対的構成: …不動産を二重に買い受けたCが背信的悪意者にあたるとしても転得者Dは第一買受人Bに対する関係でD自身が背信的悪意者と評価されない限り当該不動産の所有権取得をもってBに対抗できる

善意者ないし単純悪意者からの譲受人が背信的悪意者の場合

絶対的構成(通説※判例はない): 一度善意者のもとで権利が確定した場合、その善意者を藁人形として利用したのでない限り、背信的悪意者であっても権利を取得する

□中間省略登記

  • 原則 許されない
  • 例外 登記名義人及び中間者の同意

□第三者との関係

  • ~と登記では、常に第三者がいつ登場したのかという視点で考える
  • 事例はレシピ pp. 25-27 を参照。
詐欺又は強迫
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる
 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り又は知ることができたときに限りその意思表示を取り消すことができる
 前二項の規定の詐欺による意思表示の取消しは善意かつ無過失の第三者に対抗できない
取消しの効果
第121条 取り消された行為は初めから無効であったものとみなす
原状回復の義務
第121条の2 無効な行為に基づく債務履行として給付を受けた者相手方を原状に復させる義務を負う
 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務履行として給付を受けた者は給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったとみなされた行為にあっては給付を受けた当時その行為が取り消せるものであること)を知らなかったときはその行為により現に利益を受けている限度において返還の義務を負う
 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者はその行為により現に利益を受けている限度において返還の義務を負う行為の時に制限行為能力者であった者についても同様とする
時効の効力
第144条 時効の効力はその起算日にさかのぼる
所有権の取得時効
第162条 20年間所有の意思をもって平穏にかつ公然と他人の物を占有した者はその所有権を取得する
 10年間所有の意思をもって平穏にかつ公然と他人の物を占有した者はその占有開始時に善意でかつ無過失だったときはその所有権を取得する
不動産に関する物権変動の対抗要件
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更不動産登記法その他登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗できない
解除の効果
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したとき各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない
 前項本文の場合、金銭を返還するときはその受領の時から利息を付さなければならない
 第一項本文の場合、金銭以外の物を返還するときはその受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない
 解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない

取消しと登記

取消第三者登場→96条3項 ∵96条3項は取消しの遡及効を制限し、善意無過失の第三者を保護するための規定だから。

取消第三者登場→177条 ∵取消しによって復帰的物権変動が生じ(巻き戻し)Bを起点とする二重譲渡事例と同視し得るため、両者は対抗関係となるから。

解除と登記

解除第三者登場→545条1項但書 ∵同条は解除の遡及効を制限し第三者を保護するから。第三者の善意悪意は問わないが、権利保護資格要件の登記が必要(判例は対抗要件としての登記としている)。

解除第三者登場→177条 ∵解除により復帰的物権変動が生じ(巻き戻し)、あたかもBを起点とする二重譲渡事例と同視し得るので対抗関係として処理できるから。

□取得時効と登記

時効完成第三者登場譲受人は当事者であるので対抗関係にない

時効完成第三者登場→177条 ∵時効完成により譲渡人(元所有者)を起点とする二重譲渡事例と同視し得るので、両者は対抗関係として処理される。

□相続と登記

共同相続共同相続人が勝手に単独登記)→自己の持分につき登記なくして主張可

遺産分割

  • 遺産分割共同相続人が自己の持分を第三者に処分その後単独相続の協議をした場合→909条但書 ∵同条は遺産分割の遡及効を制限し、第三者を保護するための規定だから
  • 遺産分割共同相続人が自己の持分を第三者に処分した場合→177条 ∵遺産分割によって新たな権利変動が生じ、共同相続人を起点とする二重譲渡事例と同視し得るから。
相続に関する胎児の権利能力
第886条 胎児は相続については既に生まれたものとみなす。
 前項の規定は胎児が死体で生まれたときは適用しない。
子及びその代襲者等の相続権
第887条 被相続人の子は相続人となる
 被相続人の子が相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によってその相続権を失ったときはその者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者はこの限りでない
 前項の規定は、代襲者が相続の開始以前に死亡し又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によってその代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間ではその近い者を先にする
 被相続人の兄弟姉妹
 第887条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
相続人の欠格事由
第891条 次に掲げる者は相続人となることができない。
 故意に被相続人又は相続の先順位、同順位にある者を死亡するに至らせ又は至らせようとし刑に処せられた者
 被相続人の殺害されたことを知って告発せず又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族のときはこの限りでない
 詐欺又は強迫によって被相続人が相続に関する遺言をし、撤回、取消、変更を妨げた者
 詐欺又は強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ撤回、取消、変更させた者
 相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者
(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときはその相続分は次の各号の定めるところによる。
 子及び配偶者が相続人のとき、子の相続分及び配偶者の相続分は各1/2とする。
 配偶者及び直系尊属が相続人のとき、配偶者の相続分は2/3、直系尊属の相続分は1/3とする。
 配偶者及び兄弟姉妹が相続人のとき、配偶者の相続分は3/4、兄弟姉妹の相続分は1/4とする。
 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるとき各自の相続分は相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の1/2とする
代襲相続人の相続分
第901条 第887条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分はその直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときはその各自の直系尊属が受けるべきであった部分について前条の規定に従ってその相続分を定める。
 前項の規定は第889条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
遺言による相続分の指定
第902条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で共同相続人の相続分を定め又はこれを定めることを第三者に委託できる。
 被相続人が共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め又はこれを第三者に定めさせたとき他の共同相続人の相続分は前二条の規定により定める
相続の一般的効力
第896条 相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものはこの限りでない
共同相続の効力
第898条 相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属する
 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする
共同相続における権利承継の対抗要件
第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができない
 前項の権利が債権である場合次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにし債務者にその承継通知をしたときは共同相続人の全員が債務者に通知したものとみなして同項の規定を適用する
代襲相続人の相続分
第901条 第887条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分はその直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときはその各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める
 前項の規定は第889条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合に準用する。
遺産の分割の効力
第909条 遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない
相続の放棄の効力
第939条 相続放棄した者はその相続に関し初めから相続人とならなかったものとみなす

□占有権

事実上の支配権
本権たる所有権と占有権は通常重なることが多い、別々のこともありえる(例:盗人の占有)

□自主占有と他主占有

所有の意思(所有者として占有する意思)による区別

他主占有から自主占有への転換 判例
被相続人の相続人が相続財産の占有を承継して新たに相続財産を事実上支配することで占有を開始し、そこに所有意思があるとみられる場合被相続人の占有に所有意思がなかったとしても185条のいう新権原により相続人は所有意思をもって占有を始めたというべき……
他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効成立を主張する場合、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有意思に基づくと解される事情を相続人が証明すべき……
占有権の取得
第180条 占有権は自己のためにする意思をもって物を所持することにより取得する。
代理占有
第181条 占有権は代理人によって取得できる
現実の引渡し及び簡易の引渡し
第182条 占有権の譲渡は占有物の引渡しによってする
 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合占有権譲渡は当事者の意思表示のみによってできる
占有改定
第183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したとき、本人はこれによって占有権を取得する
指図による占有移転
第184条 代理人により占有する場合本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したとき、第三者は占有権を取得する
占有の性質の変更
第185条 権原の性質上占有者に所有意思がないとされる場合、その占有者が自己に占有をさせた者に対し所有意思があることを表示、又は新たな権原により更に所有意思をもって占有を始めるのでなければ占有の性質は変わらない
占有の態様等に関する推定
第186条 占有者所有意思をもって善意平穏にかつ公然と占有するものと推定する
 前後の両時点において占有した証拠があるとき占有はその間継続したものと推定する
占有の承継
第187条 占有者の承継人はその選択に従い、自己の占有のみを主張し又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張できる
 の占有者の占有を併せて主張する場合、その瑕疵をも承継する

□自己占有(直接占有)と代理占有(間接占有)

占有の態様による区別

□要件

自己のためにする意思占有意思) 物の所持による利益を自己に帰属させる意思 客観的に判断される
物の所持

占有権の効力 条文を確認

権利推定
善意占有者の果実収受権
損害賠償請求権
費用償還請求権
占有訴権…占有保持、占有保全、占有回収
※物権的請求権と比較対応させながら理解
占有の訴えと本権の訴えはそれぞれ別の請求権なので別の訴訟で行う。両方請求することも、片方請求することも可能。ただし、占有権に基づく請求において抗弁として所有権を主張できない(202条2項)、反訴なら可能(別の訴訟なので)(判例)。

占有の訴え
第197条 占有者は次条から第202条までの規定に従い占有の訴えを提起できる他人のために占有する者も同様とする。
占有保持の訴え
第198条 占有者がその占有を妨害されたとき、占有保持の訴えによりその妨害の停止及び損害賠償を請求できる
占有保全の訴え
第199条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるとき、占有保全の訴えによりその妨害の予防又は損害賠償の担保を請求できる
占有回収の訴え
第200条 占有者がその占有を奪われたとき、占有回収の訴えによりその物の返還及び損害の賠償を請求できる
 占有回収の訴えは占有侵奪者の特定承継人に対して提起できない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときはこの限りでない
占有の訴えの提起期間
第201条 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合においてその工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときはこれを提起できない
 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は提起できる。この場合、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。
本権の訴えとの関係
第202条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また本権の訴えは占有の訴えを妨げない
 占有の訴えは本権に関する理由に基づいて裁判できない

□所有権

  • 承継取得売買等の契約相続
  • 原始取得時効取得即時取得

□添付

付合(不動産・動産)、混和加工

112頁の表で条文を整理。※強行規定ではない(当事者の合意があれば、それに従う)

不動産の付合
第242条 不動産の所有者はその不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない
動産の付合
第243条 所有者を異にする数個の動産が付合により損傷しなければ分離できなくなったときその合成物の所有権は主たる動産の所有者に帰属する分離するのに過分の費用を要するときも同様とする
第244条 付合した動産について主従の区別をできないとき、各動産の所有者はその付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する
混和
第245条 前二条の規定は所有者を異にする物が混和して識別できなくなった場合について準用する
加工
第246条 他人の動産に工作を加えた者(加工者)があるとき、その加工物の所有権は材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは加工者がその加工物の所有権を取得する
 前項に規定する場合、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り加工者がその加工物の所有権を取得する
付合、混和又は加工の効果
第247条 第242条から前条までの規定により物の所有権が消滅したとき、その物について存する他の権利も消滅する
 前項に規定する場合、物の所有者が合成物、混和物又は加工物(合成物等)の単独所有者となったときその物に存する他の権利は以後その合成物等について存し物の所有者が合成物等の共有者となったときはその物について存する他の権利は以後その持分について存する
付合、混和又は加工に伴う償金請求
第248条 第242条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は第703条及び704条の規定に従い、その償金を請求できる
不当利得の返還義務
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度においてこれを返還する義務を負う
悪意の受益者の返還義務等
第704条 悪意の受益者はその受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合になお損害があるときはその賠償の責任を負う

□相隣関係

隣地関係の利害調整のための規程。∴登記不要

囲繞地通行権 210条~213条確認
袋地の所有権に付随する権利→公道に出られない土地の所有権を保護するため法律上設定された権利。☆当事者の契約によって設定する通行地役権とはこの点において異なる

公道に至るための他の土地の通行権
第210条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は公道に至るためその土地を囲んでいる他の土地を通行できる
 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又はがけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも前項と同様とする
第211条 前条の場合、通行の場所及び方法は同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない
 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは通路を開設できる
第212条 第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる
第213条 分割によって公道に通じない土地が生じたとき、その土地の所有者は公道に至るため他の分割者の所有地のみを通行できる。この場合は償金を支払うことを要しない
 前項の規定は土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する

□共有

所有権の量的な割合 合有や総有と異なり持分権の使用収益処分が認められている。(ノート p. 122 添付*の表確認)*所有者の異なる複数の物が結合したことをいう

不動産の付合
第242条 不動産の所有者はその不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない
動産の付合
第243条 所有者を異にする数個の動産が付合により損傷しなければ分離することができなくなったとき、その合成物の所有権は主たる動産の所有者に帰属する分離するのに過分の費用を要するときも同様とする。
第244条 付合した動産について主従の区別をすることができないとき、各動産の所有者はその付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する
混和
第245条 前二条の規定は所有者を異にする物が混和して識別できなくなった場合について準用する。
加工
第246条 他人の動産に工作を加えた者(加工者)があるとき、その加工物の所有権は材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは加工者がその加工物の所有権を取得する
 前項規定の場合、加工者が材料の一部を供したときはその価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料価格を超えるときに限り加工者がその加工物の所有権を取得する
共有物の使用
第249条 各共有者は、共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができる
 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う
 共有者は、善良な管理者の注意をもって共有物の使用をしなければならない
共有持分の割合の推定
第250条 各共有者の持分は相等しいものと推定する
共有物の変更
第251条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えることができない
 共有者が他の共有者を知ることができず又はその所在を知ることができないとき裁判所は共有者の請求により当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる
共有物の管理
第252条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物管理者の選任及び解任を含み共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く各共有者の持分の価格に従いその過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも同様とする
 裁判所は、次の各号に掲げるときは当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる
 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき
 前二項の規定による決定が共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときその承諾を得なければならない
 共有者は、前三項の規定により共有物に次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(賃借権等)で当該各号に定める期間を超えないものを設定できる
 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年
 建物の賃借権等 3年
 動産の賃借権等 6ヵ月
 各共有者は前各項の規定にかかわらず保存行為をすることができる
□共有物の変更・管理・保存

意義と要件を表 p. 125で確認
管理行為は持分価格の過半数であることに注意(頭数ではない)

□共有物の内部・外部関係

判例は、基本的には持分権に基づく使用収益処分は認めるが、それを超える部分についての請求は認めていない。侵害された持分権についての不当利得返還、損害賠償請求は認めている。

□共有者死亡

相続人→②特別縁故者→③他の共有者

□共有物分割請求

原則 可能
例外 不分割特約5年以内)

□分割方法

①現物分割 ②代金分割 ③価格賠償
協議➜まとまらなければ裁判所が決定

協議が整わず裁判所に請求した場合、その分割方法として③(全面的)価格賠償を認めることは共有者間の実質的公平を害さないと認められる場合のみ認めるのが判例。なぜなら、③価格賠償は一人若しくは複数の者に共有物を所有させ、その他の共有者には代金を支払うため、共有者が有していた価値と同じ代金を得られないリスクを負う可能性がある

□地上権

賃貸借との比較 (地上権は物権であることとの差異)
賃貸借を学習後また戻って確認

□永小作権

□地役権

通行地役権 (囲繞地通行権との比較)

地上権の内容
第265条 地上権者は他人の土地において工作物又は竹木を所有するためその土地を使用する権利を有する
地下又は空間を目的とする地上権
第269条の2 地下又は空間は工作物を所有するため上下の範囲を定めて地上権の目的とできる。この場合、設定行為で地上権行使のためその土地使用に制限を加えることができる
 前項の地上権は、第三者がその土地使用又は収益をする権利を有する場合も、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは設定できるこの場合、土地使用又は収益をする権利を有する者はその地上権の行使を妨げることができない
永小作権の内容
第270条 永小作人は小作料を支払い他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
地役権の内容
第280条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る)に違反しないものでなければならない
地役権の付従性
第281条 地役権は要役地(地役権者の土地で、他人の土地から便益を受けるものをいう)の所有権に従たるものとしてその所有権とともに移転し又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときはこの限りでない
 地役権は要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない
地役権の不可分性
第282条 土地の共有者の一人はその持分につきその土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない
 土地の分割又はその一部の譲渡の場合、地役権はその各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときはこの限りでない
地役権の時効取得
第283条 地役権は継続的に行使され、かつ外形上認識することができるものに限り、時効によって取得できる
第284条 土地の共有者の一人が時効により地役権を取得したとき、他の共有者もこれを取得する
 共有者に対する時効更新地役権を行使する各共有者に対してしなければその効力を生じない
 地役権を行使する共有者が数人ある場合、その一人について時効の完成猶予の事由があっても時効は各共有者のために進行する

□担保物権総論

前提

  • 債権者平等の原則 …債権額に応じた按分比例による弁済
  • 例外 ➜担保(人的・物的)…優先弁済 ※人的担保については債権で
□担保物権の通有性(性質)
  • 付従性…発生・消滅 被担保債権の発生/消滅により担保物権も発生/消滅する
  • 随伴性移転
  • 不可分性…全部
  • 物上代位性物の上に代わりに位置(成立)する

□留置権

法定担保物権

  • 付従性・随伴性・不可分性あり 
  • 優先弁済効なし ∵その物に交換価値が及んでいないから留置権は物を留置することで間接的に優先弁済を強制する権利、物自体の価値を押さえているわけではない

成立要件

  • 他人の物を留置していること
  • 物との牽連性
  • 被担保債権が履行期にあること
  • 占有が不法行為によって始まったものでないこと
  • 特に牽連性に注意(下の判例を参照↓)
  • 被担保債権発生時の債務者物の引渡請求権者が同一なら牽連性あり違うなら牽連性なし
  • 留置権は物を留置して被担保債権の弁済を促すものだから、物を留置することによって被担保債権の弁済を受けられる立場にないといけない
不動産が二重売買され、第二買主が先に所有権移転登記を経由した。このため所有権を取得できなくなった第一買主は、売主に対し履行不能による損害賠償債権を被担保債権として不動産の留置を主張できない(牽連性が認められない)。[最判 1976.6.17] 下図参照
(c) https://midorinz.com/law/2019/02/12/post-76/

効力

  • 目的物留置
  • 引換給付判決
  • 留置権者の義務と権利

条文確認

  • 留置権の消滅
  • 留置権の行使消滅時効の進行を妨げない
  • 被担保債権が消滅すれば付従性によって留置権も消滅する
  • ただし、留置権を抗弁として提出した場合、150条催告と同じ効果

その他、条文確認

催告による時効の完成猶予
第150条 催告があったときはその時から6ヵ月を経過するまでの間時効は完成しない
 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない
不動産に関する物権変動の対抗要件
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない
留置権の内容
第295条 他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を有するとき、その債権の弁済を受けるまでその物を留置できる。ただし、その債権が弁済期にないときはこの限りでない
 前項の規定は占有が不法行為によって始まった場合には適用しない
留置権者による果実の収取
第297条 留置権者は留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立ってこれを自己の債権の弁済に充当できる
 前項の果実はまず債権の利息に充当残余があるときは元本に充当しなければならない
先取特権の内容
第303条 先取特権者はこの法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する

□先取特権

法定担保物権

  • 付従性随伴性不可分性物上代位性(優先弁済的効力を有する先取特権質権抵当権はその目的物の売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者が受ける金銭その他の物あるいは目的物の上に設定した物権の対価に対しても優先弁済権を及ぼせる性質)あり
  • 一般先取特権には物上代位性なし 
  • 債務者の総財産の上に存在し特定の物が観念しえない

種類

  • 一般先取特権
  • 動産先取特権
  • 不動産先取特権…保存 ➜工事 ➜売買

□質権

約定担保物権

  • 付従性・随伴性・不可分性・物上代位性あり
  • 留置的効力・優先弁済的効力あり
  • 権利質(債権質)には留置的効力はない ∵留置する物が観念しえないから
  • 要物契約物の引渡しによって契約発生の効力が生じる) ⇔ 抵当権

種類

  • 対抗要件とセットで
  • 動産質継続占有 
  • 占有改訂は「引渡し」に含まれない ∵外形上移転がない 
  • 占有回収の訴えによる質物の回復可

不動産質…登記

権利質…第三債務者への通知又は承諾

被担保債権の範囲

  • 346条により、かなり広い範囲で認められている⇔抵当権
  • 質権には留置的効力があるため、後順位の権利者を保護する必要がない
  • 不動産質権は使用収益権が認められているため、利息の請求はできない(358条)
  • 使用収益の利益は利息と同等と考えられている
  • 不動産質は強い権利 → ∴存続期間10年に制限

流質の禁止 ⇔ 商事留置権 ∵弱者保護の観点

転質 条文確認

留置権の内容
第295条 他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を有するときはその債権の弁済を受けるまで、その物を留置できる。ただし、その債権が弁済期にないときはこの限りでない
 前項の規定は占有が不法行為によって始まった場合には適用しない
留置権の不可分性
第296条 留置権者は債権の全部の弁済を受けるまでは留置物の全部についてその権利を行使できる。
留置権者による留置物の保管等
第298条 留置権者は善良な管理者の注意をもって留置物を占有しなければならない
 留置権者は債務者の承諾を得なければ留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用はこの限りでない
 留置権者が前二項規定に違反したとき債務者は留置権の消滅を請求できる
留置権者による費用の償還請求
第299条 留置権者は留置物の必要費を支出したとき所有者に償還させることができる
 留置権者は留置物について有益費を支出したときはこれによる価格の増加が現存する場合に限り所有者の選択に従い、その支出金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は所有者の請求によりその償還について相当の期限を許与できる
留置権の行使と債権の消滅時効
第300条 留置権の行使は債権の消滅時効の進行を妨げない
担保の供与による留置権の消滅
第301条 債務者は相当の担保を供して留置権の消滅を請求できる
占有の喪失による留置権の消滅
第302条 留置権は留置権者が留置物の占有を失うことによって消滅する。ただし、第298条第二項の規定により留置物を賃貸し又は質権の目的としたときはこの限りでない
質権の内容
第342条 質権者はその債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する
質権の設定
第344条 質権の設定は債権者にその目的物を引き渡すことによってその効力を生ずる
質権の被担保債権の範囲
第346条 質権は元本・利息・違約金・質権の実行の費用、質物の保存費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときはこの限りでない
質物の留置
第347条 質権者は前条に規定する債権の弁済を受けるまで質物を留置できる。ただし、この権利は自己に対して優先権を有する債権者に対抗できない
留置権及び先取特権の規定の準用
第350条 第296条から第300条まで及び第304条の規定は、質権について準用する
動産質の対抗要件
第352条 動産質権者は継続して質物を占有しなければその質権をもって第三者に対抗できない
不動産質権者による使用及び収益
第356条 不動産質権者は質権の目的である不動産の用法に従いその使用及び収益をできる
不動産質権者による利息の請求禁止
第358条 不動産質権者はその債権の利息を請求できない356条参照
不動産質権の存続期間
第360条 不動産質権の存続期間は10年を超えることができない設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は10年とする
 不動産質権の設定は更新できる。ただし、その存続期間は更新の時から10年を超えることができない
債権を目的とする質権の対抗要件
第364条 債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む)は第467条の規定に従い第三債務者にその質権の設定を通知し又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗できない
抵当権の内容
第369条 抵当権者は債務者又は第三者が占有移転しないで債務担保に供した不動産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する
 地上権及び永小作権も抵当権の目的とできる。この場合、この章の規定を準用する
指図証券の譲渡
第520条の2 指図証券の譲渡は、その証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ、その効力を生じない。
指図証券の質入れ
第520条の7 第520条の2から前条の規定は指図証券を目的とする質権設定に準用する。

□抵当権

性質

  • 約定担保物権
  • 付従性・随伴性・不可分性・物上代位性あり
  • 優先弁済的効力あり
  • 留置的効力なし ∵非占有担保物権 
  • 諾成契約(当事者の合意による) ⇔ 質権 要物契約

対象

  • 不動産 ②地上権 ③永小作権
  • 抵当権は非占有担保物権であるため、公示方法が必要
  • 登記ができるもののみ対象とされる

対抗要件

  • 登記
  • 抵当権の効力
  • 付加一体物に及ぶ

抵当権の効力が及び付加一体物

  • 付合物 → 〇 従物 → X
  • 従物は主物の処分に従う(87条2項)から、抵当権設定を「処分」とすると、抵当権設定時に存在していた従物には87条2項の効果として抵当権の効力が及ぶ(判例: 物理的一体性説)
主物及び従物
第87条 物の所有者がその物の常用に供するため自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする
 従物は主物の処分に従う
留置権の不可分性
第296条 留置権者は債権の全部の弁済を受けるまでは留置物の全部についてその権利を行使できる
物上代位
第304条 先取特権はその目的物の売却・賃貸・滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使できる。ただし、先取特権者はその払渡し又は引渡し前に差押えをしなければならない
 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても前項と同様とする
物上保証人の求償権
第351条 他人の債務を担保するため質権設定した者はその債務を弁済し又は質権実行によって質物の所有権を失ったときは保証債務に関する規定に従い債務者に対して求償権を有する
留置権等の規定の準用
第372条 第296条、304条及び351条の規定は抵当権について準用する
  • 従たる権利→〇
  • 果実→債務不履行後 〇
  • 分離物→通常の使用収益を超えた場合 〇
  • 抵当権の効力が及んでいた物が不動産から分離搬出された場合 レシピ p. 34 参照 

□物上代位

  • 372条→304条準用
  • 代位の対象
  • 「債務者が受けるべき金銭その他の物」= 抵当不動産の所有者
  • 損害賠償請求権、火災保険金請求権、賃料債権
  • ×転貸賃料債権 ∵「債務者」が受ける金銭でないから
  • 転貸賃料債権を受け取るのは転貸人(賃借人)で賃貸人(抵当権設定者=債務者)ではない

要件

  • 「払渡し又は引渡し前の差押え」が必要 ∵第三債務者の二重弁済の危険を守るため
  • 第三債務者が二重弁済の危険にさらされていないかという視点で要件判例を押える
  • 判例① 目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた場合 抵当権者は自ら目的債権を押えて物上代位権を行使できる
  • 判例② 目的債権が一般債権者による差し押さえと競合した場合 一般債権者による差押命令の第三債務者への送達と抵当権者による抵当権設定登記のいずれが先かで決する
  • 判例③ 賃料債権が賃貸人への債権を自働債権として相殺された場合 抵当権設定後、賃借人は賃貸人に対する取得債権を自働債権とする賃料債権との相殺によっては抵当権者に対抗できない
  • ①②③ 抵当権設定登記があれば基本的に抵当権者を保護=物上代位権行使を優先(p.35)
  • 判例④ 賃料債権による敷金充当の場合: 賃料債権は敷金充当によりその限度で消滅(p.36)→∴抵当権者はないものに対して物上代位を行使できない
抵当権の物上代位
・抵当権の物上代位の条文は第372条準用の第304条である。
売却代金に対する物上代位は認められない抵当権に追及効があるから。
・第三者との関係では第三者の登場が抵当権設定登記の前か後かを考える
(c) https://forjurist.com/first-civil-law2-12/

□抵当権侵害

抵当権が侵害された場合に抵当権者ができること

  • 抵当権設定者の所有権に基づく妨害排除請求権の代位行使
  • 抵当権に基づく妨害排除請求権 
  • 抵当権は非占有担保物権 ∴通常の使用範囲内であれば設定者の使用は可能
  • 抵当権に基づく妨害排除請求が許されるのは、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難なときであり、抵当権が「侵害」されたと言える
  • 直接自己に抵当不動産の引渡しを請求できるためには、抵当不動産の所有者が抵当不動産を適切に維持管理することが期待できないことが必要
抵当権侵害とは
抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難な状態にあること(最大判 1999.11.24)。抵当権が実行され抵当山林が差押えられた後に樹木が伐採搬出された場合樹木の伐採搬出につき抵当権の効力として差止めを請求できる(大判 1932.4.20)。平成11/17年の判例は順を追って理解(ノート pp. 156-157)
不法行為による損害賠償
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者はこれによって生じた損害賠償責任を負う。(抵当目的物の滅失損傷により抵当権者が損害を受けたというには目的物の価値減少により被担保債権の弁済を受けられなくなったことが必要)

□抵当権の処分

  • 抵当権の譲渡・放棄 → 一般債権者との関係
  • 抵当権の順位譲渡・順位放棄 → 後順位抵当権者との関係
□抵当不動産の第三取得者の保護

抵当権が付着した物権を取得した第三取得者ができること

  • 第三者弁済(474)→ 第三取得者が弁済 ※債権法上の「第三者弁済」
  • 代価弁済(378)→ 抵当権者の請求により抵当権者・第三取得者の合意により行う
  • 抵当権消滅請求(379)→ 第三取得者の請求により行う

 ※第三者弁済は債権消滅に関する条文だから債権総論に含まれる。抵当不動産の第三取得者も第三者に該当し、474条に基づく弁済をして付従性による債権消滅をさせることができる

代価弁済
第378条 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したとき抵当権はその第三者のために消滅する
抵当権消滅請求
第379条 抵当不動産の第三取得者は第383条の定めにより抵当権消滅請求をできる
第三者弁済
第474条 債務の弁済は第三者もすることができる
 弁済するについて正当な利益を有する者でない第三者債務者の意思に反して弁済できない。ただし、債務者の意思に反すること債権者が知らなかったときはこの限りでない
 前項に規定する第三者債権者の意思に反して弁済できない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済する場合そのことを債権者が知っていたときはこの限りでない
 前三項の規定はその債務の性質が第三者の弁済を許さないとき又は当事者が第三者の弁済を禁止し若しくは制限する旨の意思表示をしたときは適用しない
抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力
第387条 登記をした賃貸借はその登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意し、かつその同意の登記があるときはその同意をした抵当権者に対抗できる
 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
抵当建物使用者の引渡しの猶予
第395条 抵当権者に対抗できない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(抵当建物使用者)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6ヵ月を経過するまでその建物を買受人に引き渡すことを要しない。
 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1ヵ月分以上の支払の催告をし、その相当期間内に履行がない場合には適用しない。

□抵当不動産の賃借人の保護

  • 抵当権に劣後する賃借人(抵当権設定後に賃借権を取得した者)ができること
  • 同意の登記による賃借権の対抗制度(387条 使われていない制度)
  • 明渡猶予制度(395条)

□法定地上権

  • 抵当権者の保護を図りつつ社会経済上の不合理を回避するため土地利用権を確保する制度
  • 制度趣旨を守るためにこれらの要件が必要という意識を忘れずに
  • ノートに挙げた判例をこの視点から整理していくと一貫性が保たれ理解しやすい。なぜそのような結論になるのか、理由をきちんと自分の頭で考え各ケースを整理する。
ノートの判例は全て理解する pp. 165-166
土地に抵当権を設定した当時建物が存在していれば、その後建物が改築されても法定地上権は成立する。この場合、旧建物が木造なら新建物も木造が基準となる。ただし、抵当権者の利益を害しない特段の事情がある場合には例外的に新建物を基準とする法定地上権が認められる。(最判 1977.10.11) 土地と建物に共同抵当を設定した後に建物が再築された場合、新建物の所有者が土地の所有者と同一で、かつ新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当の設定を受けたときなど特段の事情がない限り新建物*のために法定地上権は成立しない。(最判 1997.2.14) *旧建物については成立する
一番抵当権設定時には別人所有であったが二番抵当権設定時に同一所有になった場合土地抵当のときは法定地上権は成立しない
[理由] 一番抵当権者は法定地上権の負担がないものとして担保価値を把握して抵当権を設定しているため、この期待値を保護する必要がある。(最判 1990.1.22)
一番抵当権設定時には別人所有であったが二番抵当権設定時に同一所有になった場合建物抵当のときは法定地上権が成立する
[理由] 法定地上権を成立させることが土地利用における社会的経済につながる、こう解しても抵当権設定者は自ら二番抵当権を設定したのだから、その不利益を負うのはやむを得ない。(大判 1939.7.26)
一番抵当権設定時には別人所有であったが二番抵当権設定時に同一所有者になった場合
土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅した後乙抵当権の実行により土地と建物の所有者を異にするに至った場合、当該土地と建物が甲抵当権の設定時に同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは法定地上権が成立する。(最判 2007.7.6)
共有の場合土地共有のときは法定地上権は成立しない
[理由] ABが土地を共有している場合、抵当権の実行により法定地上権が成立してしまうと、土地の所有者Bが了承していなかった強い権利が設定されることになりBの合理的期待に反するので許されない。(最判 1969.11.4)
共有の場合建物共有のときは法定地上権が成立する
[理由] ABが建物を共有している場合、抵当権設定者であるAは法定地上権の成立を予測していたし、そう解してもBの合理的期待を裏切らない。(最判 1971.12.21)
一番抵当権設定時は別人所有で二番抵当権設定時が同一所有の場合、土地抵当と建物抵当の場合でなぜ結論が異なるのか、誰の利益・信頼を守ろうとしているのか。自分の言葉で説明できるように。共有の事例も同じ。
法定地上権
第388条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合に、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったとき、その建物について地上権が設定されたものとみなす。この場合、地代は当事者の請求により裁判所が定める
抵当地の上の建物の競売
第389条 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたとき抵当権者は土地とともにその建物を競売できる。ただし、その優先権は土地の代価についてのみ行使できる
 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗できる権利を有する場合には適用しない
共同抵当における代価の配当
第392条 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合、同時にその代価を配当すべきとき(同時配当)は各不動産の価額に応じて債権の負担を按分する。
 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合、ある不動産の代価のみを配当すべきとき(異時配当)は、抵当権者はその代価から債権全部の弁済を受けられる。この場合、次順位の抵当権者はその弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度としてその抵当権者に代位して抵当権を行使できる
共同抵当における代位の付記登記
第393条 前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者はその抵当権の登記にその代位を付記することができる。

□共同抵当

異時配当の際の処理手順確認(392条2項後段

□根抵当権

極度額の枠内で継続的に発生する債権債務を担保する抵当権

  • 元本が確定すれば通常の抵当権と同じ
  • 元本確定前の根抵当権と通常の抵当権と比較してノートの内容だけ押さえる
根抵当権
第398条の2 抵当権は設定行為で定めるところにより一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定できる
 前項の規定による抵当権(根抵当権)の担保すべき不特定の債権の範囲は債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して定めなければならない
 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権(電子記録債権法)は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

□譲渡担保

所有権の「譲渡」という方式を使用して債権の担保をする制度

  • 物権の所有権が移転する(登記上も)が、通常の売買契約による譲渡のような純粋な所有権移転ではなく、担保目的による所有権の移転だと考えられている。
  • 譲渡担保権設定契約による(諾成・不要物)

対象
不動産・動産、集合動産、集合債権
 

効果
弁済期到来後に弁済がなければ、譲渡担保権者に目的物の所有権が移転する。譲渡担保権者は裁判所による執行を経ずに自ら担保価値の実現ができるので担保権者には有利

差額が生じた場合は清算が必要。目的物が被担保債権を超過していれば、担保権者に清算義務が課され設定者に清算金を支払わなければならない


【判例】
・譲渡担保権設定者は、清算金の支払いがあるまでは、譲渡担保権者からの目的物の引渡請求に対し同時履行の抗弁を主張できる(533条類推適用)
 ・譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者からの明渡請求に対し譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張できる

同時履行の抗弁
第533条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償債務の履行を含む)を提供するまでは自己の債務履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときはこの限りでない

竹内民法03