講義のチェックリスト。「ノート」「きそレシ」を参照して論理の流れを整理し、過去問の出題傾向もチェックしましょう。
□権利能力
始期:出生→全部露出説
胎児についての例外→①不法行為に基づく損害賠償請求②相続③遺贈
(停止条件説 condition precedent)(解除条件 condition subsequent)
終期:死亡
同時死亡の推定
失踪宣告(普通失踪、特別失踪*、効果発生の起算点の違いに注意)
失踪宣告の取消しの効果
| (失踪の宣告)* 第30条 不在者の生死が7年間明らかでないとき、家庭裁判所は利害関係人の請求により失踪の宣告をできる。 2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死がそれぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも前項と同様とする。 (失踪の宣告の効力) 第31条 前条第一項の規定により失踪宣告を受けた者は同項の期間が満了した時(7年)、同条第二項の規定により失踪宣告を受けた者はその危難が去った時に死亡したものとみなす。 (失踪の宣告の取消し) 第32条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡した証明があったとき、家庭裁判所は本人又は利害関係人の請求により失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合、その取消しは失踪の宣告後取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。 2 失踪の宣告によって財産を得た者はその取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみその財産を返還する義務を負う。 第六節 同時死亡の推定 第32条の2 数人の者が死亡した場合、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないとき、これらの者は同時に死亡したものと推定する。 |
| 「みなす」「推定する」の違い |
|---|
| みなす: 本来異なるものを、一定の法律関係につき法令上同一のものとして認定する 。 推定する: 当事者間に別段の取り決めがないか反証がない場合,ある事柄について法令が一応こうであろうと判断する。 |
□法人
- 権利能力なき社団(社団法人と同様の組織を有する団体で法人格が認められていない団体、同窓会・町内会など)を中心に確認。組合: 合有、権利能力なき社団: 総有
- ノートの図をもとに、共有の性質の違いからくる帰結を理解
| (共有物の使用) 第249条 各共有者は共有物の全部についてその持分に応じた使用ができる。 2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。 3 共有者は善良な管理者の注意をもって共有物を使用しなければならない。 |
□意思能力
★条文新設 通説を条文化。
| 第1節 権利能力 第3条 私権の享有は出生に始まる。 2 外国人は法令又は条約の規定により禁止される場合を除き私権を享有する。 第2節 意思能力 第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったとき、その法律行為は無効とする。 第3節 行為能力 (成年) 第4条 年齢18歳をもって成年とする。 (未成年者の法律行為) 第5条 未成年者が法律行為をするにはその法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為はこの限りでない。 2 前項の規定に反する法律行為は取り消すことができる。 3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産はその目的の範囲内において未成年者が自由に処分できる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも同様とする。 |
□行為能力
【前提】
民法は私的自治の原則により自由に意思決定できることが前提。行為結果を弁識できない意思無能力者のした法律行為は無効となる。
しかし、意思能力がないことを証明することは難しい。そこで、民法はあらかじめ能力が無いものを類型化して各規定を置くことで保護を図った。それが制限行為能力者制度である。
□制限行為能力者
- 各制度の違いを押さえる
- 特に保護者の権限の違い(制度趣旨、対象者の能力の違いからくる保護の程度の差)
| (後見開始の審判) 第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。 (成年被後見人及び成年後見人) 第8条 後見開始の審判を受けた者は成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。 (成年被後見人の法律行為) 第9条 成年被後見人の法律行為は取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為についてはこの限りでない。 |
| (未成年後見人の指定) 第839条 未成年者に対し最後に親権を行う者は遺言で未成年後見人を指定できる。ただし、管理権を有しない者はこの限りでない。 2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないとき、他の一方は前項の規定により未成年後見人を指定できる。 (未成年後見人の選任) 第840条 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも同様とする。 2 未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は必要があると認めるときは前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で更に未成年後見人を選任できる。 3 未成年後見人を選任するには未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときはその事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。 (成年後見人の選任) 第843条 家庭裁判所は後見開始の審判をするとき、職権で成年後見人を選任する。 2 成年後見人が欠けたとき、家庭裁判所は成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で成年後見人を選任する。 3 成年後見人が選任されている場合も、家庭裁判所は必要があると認めるとき、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により又は職権で更に成年後見人を選任できる。 4 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときはその事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。 (後見人の辞任) 第844条 後見人は正当な事由があるとき、家庭裁判所の許可を得てその任務を辞することができる。 (辞任した後見人による新たな後見人選任の請求) 第845条 後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたとき、その後見人は遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。 (後見人の解任) 第846条 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見任務に適しない事由があるとき、家庭裁判所は後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求又は職権によりこれを解任できる。 (後見人の欠格事由) 第847条 次に掲げる者は後見人となることができない。 一 未成年者 二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 三 破産者 四 被後見人に訴訟をし又はした者並びにその配偶者及び直系血族 五 行方の知れない者 |
| 第二款 後見監督人 (未成年後見監督人の指定) 第848条 未成年後見人を指定できる者は、遺言で未成年後見監督人を指定できる。 (後見監督人の選任) 第849条 家庭裁判所は、必要があると認めるとき、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる。 (後見監督人の欠格事由) 第850条 後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人になれない。 (後見監督人の職務) 第851条 後見監督人の職務は次のとおりとする。 一 後見人の事務を監督すること。 二 後見人が欠けた場合に遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。 三 急迫の事情がある場合に必要な処分をすること。 四 後見人又はその代表者と被後見人の利益相反行為について被後見人を代表すること。 |
| (保佐開始の審判) 第11条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をできる。ただし、第7条に規定する原因がある者はこの限りでない。 (被保佐人及び保佐人) 第12条 保佐開始の審判を受けた者は被保佐人とし、これに保佐人を付する。 (保佐人の同意を要する行為等) 第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには保佐人の同意を得なければならない。ただし第9条ただし書に規定する行為はこの限りでない(日用品の購入、日常生活に関する行為)。 一 元本を領収し又は利用すること。 二 借財又は保証をすること。 三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。 四 訴訟行為をすること。 五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法第2条第一項に規定する仲裁合意)をすること。 六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。 七 贈与申込み拒絶、遺贈を放棄、負担付贈与申込み承諾又は負担付遺贈を承認すること。 八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。 九 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。 十 前各号の行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第一項の審判を受けた被補助人をいう)の法定代理人としてすること。 2 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であっても保佐人の同意を得なければならない旨の審判をできる。ただし、第9条ただし書に規定する行為はこの限りでない。 3 保佐人の同意を得なければならない行為について保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないとき、家庭裁判所は被保佐人の請求により保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。 4 保佐人の同意を得なければならない行為であってその同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは取り消すことができる。 |
| (短期賃貸借) 第602条 処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合、次の各号に掲げる賃貸借はそれぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は当該各号に定める期間とする。 一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年 二 前号の賃貸借以外の土地の賃貸借 5年 三 建物の賃貸借 3年 四 動産の賃貸借 6ヵ月 |
| (保佐の開始) 第876条 保佐は保佐開始の審判によって開始する。 (保佐人及び臨時保佐人の選任等) 第876条の2 家庭裁判所は保佐開始の審判をするとき職権で保佐人を選任する。 2 第843条第二項から第四項まで及び844条から847条までの規定は保佐人に準用する。 3 保佐人又はその代表者と被保佐人との利益が相反する行為について保佐人は臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合はこの限りでない。 (保佐監督人) 第876条の3 家庭裁判所は必要と認めるとき、被保佐人その親族若しくは保佐人の請求により又は職権で保佐監督人を選任できる。 2 644、654/655、843第4項、844、846/847、850/851、859の2/859の3、861第2項及び862の規定は保佐監督人について準用する。この場合に851第4号の「被後見人を代表する」は「被保佐人を代表し又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替える。 (保佐人に代理権を付与する旨の審判) 第876条の4 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する審判をできる。 2 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには本人の同意がなければならない。 3 家庭裁判所は、第一項に規定する者の請求により同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。 (保佐の事務及び保佐人の任務の終了等) 第876条の5 保佐人は、保佐の事務を行うに当たって被保佐人の意思を尊重し、かつその心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。 2 644、859の2、859の3、861第2項、862及び863の規定は保佐の事務について、824ただし書の規定は保佐人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。 3 654/655、870/871及び873の規定は保佐人の任務が終了した場合、832の規定は保佐人又は保佐監督人と被保佐人の間において保佐に関して生じた債権について準用する。 |
| (補助開始の審判) 第15条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者について家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により補助開始の審判をできる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者はこの限りでない。 2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには本人の同意がなければならない。 3 補助開始の審判は17条第1項又は876条の9第1項の審判とともにしなければならない。 (被補助人及び補助人) 第16条 補助開始の審判を受けた者は被補助人とし、これに補助人を付する。 (補助人の同意を要する旨の審判等) 第17条 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により被補助人が特定の法律行為にはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をできる。ただし、その審判によりその同意を得なければならない行為は第13条第1項に規定する行為の一部に限る。 2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには本人の同意がなければならない。 3 補助人の同意を得なければならない行為について補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないとき、家庭裁判所は被補助人の請求により補助人の同意に代わる許可を与えることができる。 4 補助人の同意を得なければならない行為で、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは取り消すことができる。 |
| (補助の開始) 第876条の6 補助は、補助開始の審判によって開始する。 (補助人及び臨時補助人の選任等) 第876条の7 家庭裁判所は補助開始の審判をするとき、職権で補助人を選任する。 2 843第2項から第4項まで及び844から847までの規定は補助人について準用する。 3 補助人又はその代表者と被補助人との利益相反行為について、補助人は臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、補助監督人がある場合はこの限りでない。 (補助監督人) 第876条の8 家庭裁判所は、必要があると認めるとき、被補助人、その親族若しくは補助人の請求により又は職権で補助監督人を選任できる。 2 644、654、655、843第4項、844、846、847、850、851、859条2、859の3、861第2項及び862の規定は補助監督人について準用する。この場合、851第4号の「被後見人を代表する」は「被補助人を代表し又は被補助人がこれに同意する」と読み替える。 (補助人に代理権を付与する旨の審判) 第876条の9 家庭裁判所は第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により被補助人のため特定の法律行為について補助人に代理権を付与する審判をできる。 2 第876条の4第二項及び三項の規定は前項の審判について準用する。 |
□相手方保護の制度
| (心裡留保) 第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り又は知ることができたときはその意思表示は無効とする。 2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は善意の第三者に対抗できない。 (虚偽表示) 第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする。 2 前項の規定による意思表示の無効は善意の第三者に対抗できない。 (錯誤) 第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができる。 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤 2 前項第二号の規定による意思表示の取消しはその事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限りすることができる。 3 錯誤が表意者の重大な過失による場合、次の場合を除き第一項の規定による意思表示の取消しができない。 一 相手方が表意者の錯誤を知り、又は重過失によって知らなかったとき。 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。 4 第一項の規定による意思表示の取消しは善意で過失がない第三者に対抗できない。 (詐欺又は強迫) 第96条 詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる。 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り又は知ることができたときに限りその意思表示を取り消すことができる。 3 前二項の規定の詐欺による意思表示の取消しは善意で過失がない第三者に対抗できない。 |
| (意思表示の効力発生時期等) 第97条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。 2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。 3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し意思能力を喪失し又は行為能力の制限を受けたときであってもそのためにその効力を妨げられない。 (公示による意思表示) 第98条 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。 2 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。 3 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。 4 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。 5 裁判所は、表意者に公示に関する費用を予納させなければならない。 (意思表示の受領能力) 第98条の2 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後はこの限りでない。 一 相手方の法定代理人 二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方 |
□私権変動の仕組み
法律要件→法律効果
□法律要件
法律行為は法律要件のひとつで、意思表示を要素とするもの
□法律行為
①単独行為 ②契約 ③合同行為
□ 意思表示
- 動機→内心的効果意思→表示意思→表示行為
- 動機を除く一連の流れを意思表示という。
- 表示行為に対応する内心的効果意思が無い→意思の不存在
- 表示行為と内心的効果が外形上は一致するが、その形成過程に傷がある→瑕疵ある意思表示
□心裡留保
原則有効、例外無効(相手方が悪意有過失の場合)
※立証責任の所在 [相手方の悪意・有過失→意思表示の無効を主張する表意者側に立証責任]
★条文新設 第三者保護規定(通説を条文化)
□通謀虚偽表示
無効
第三者保護規定→94条2項
第三者とは、虚偽表示の当事者及びその包括承継人以外の者で虚偽表示に基づいて新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者。
この定義のどの文言に触れているかに留意し、具体例を記憶していくこと
- 「第三者」に当たる者
- 「第三者」に当たらない者
94条2項の善意の第三者
- →善意=当該意思表示が虚偽表示であることを知らないこと
- →対抗要件(登記)不要
∵虚偽表示の当事者と第三者は前主後主の関係に立つから
□94条2項類推適用
趣旨:外観法理
要件
- ①虚偽の外観の存在
- ②虚偽の外観を作出した権利者の帰責性
- ③第三者の信頼=善意で足りる
無過失まで要求する場合(判例)??
94条2項、110条類推適用
| (心裡留保) 第93条 意思表示は表意者がその真意でないことを知ってしたときでも、その効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り又は知ることができたとき、その意思表示は無効とする。 2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は善意の第三者に対抗できない。 (虚偽表示) 第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする。 2 前項の規定による意思表示の無効は善意の第三者に対抗できない。 (錯誤) 第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができる。 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤 2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限りすることができる。 3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。 4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。 (詐欺又は強迫) 第96条 詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる。 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り又は知ることができたときに限りその意思表示を取り消すことができる。 3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは善意無過失の第三者に対抗できない。 |
| (代理権授与の表示による表見代理等) 第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者はその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為についてその責任を負う。ただし、第三者がその他人に代理権が与えられていないことを知り又は過失によって知らなかったときはこの限りでない。 2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。 (権限外の行為の表見代理) 第110条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。 (代理権の消滅事由) 第111条 代理権は次に掲げる事由によって消滅する。 一 本人の死亡 二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。 2 委任による代理権は前項各号に掲げる事由のほか委任の終了によって消滅する。 (代理権消滅後の表見代理等) 第112条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときはこの限りでない。 2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたとき、第三者がその行為についてその他人に代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為について責任を負う。 |
□錯誤
- 動機の錯誤 条文新設
- 効果の変更
- 第三者保護規定新設
要件確認
表示の錯誤
- ①意思表示に対応する意思を欠く錯誤
- ②重要なものであること ※「重要なもの」判例の定義確認
- ③表意者に重過失がないこと
動機の錯誤(★)
- ①基礎事情に錯誤があり、それが表示されていること ※黙示も含む
- ②重要なものであること ※「重要なもの」判例の定義確認
| 第95条 意思表示は次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができる。 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤 2 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。 3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをできない。 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。 4 第1項の規定による意思表示の取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗できない。 |
③表意者に重過失のないこと
- 効果(★)
- 取消すことができる
- 第三者保護規定(★)
- 善意無過失の第三者に対抗できない(95条4項)
□詐欺
要件
- ①欺罔行為
- ②①により錯誤に陥ったこと
- ③因果関係
- ④詐欺の故意
効果
- 取り消すことができる
- 第三者の保護規定(★善意から善意無過失へ要件変更)
- 善意無過失の第三者に対抗できない(96条3項)
第三者
- 取消前に新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者
- 登記 → 不要
- ※取消後第三者 → 177条で決する ∵対抗関係
第三者詐欺
★相手方悪意から悪意有過失へ要件変更
□強迫
詐欺との違いに留意
| (詐欺又は強迫) 第96条 詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる。 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り又は知ることができたときに限りその意思表示を取り消すことができる。 3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは善意無過失の第三者に対抗できない。 (不動産に関する物権変動の対抗要件) 第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗できない。 |
□代理制度
私的自治の拡張及び補充

任意代理と法定代理の違い
代理行為 要件
①代理権の存在
②権限の範囲内
③顕名
①②が欠けると無権代理
③が欠けるとその契約の効果は本人ではなく代理人に発生する
代理行為の瑕疵 代理人を基準とする ∵代理行為は代理人が意思表示を行うから
- ①代理人が相手方に対して意思表示をした場合 101条1項
- ②相手方が代理人に対して意思表示をした場合 101条2項 ★条文新設
| (代理行為の瑕疵) 第101条 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が、意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合、その事実の有無は代理人について決する。 2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が、意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合、その事実の有無は代理人について決する。 3 特定の法律行為を委託された代理人がその行為をしたとき、本人は自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張できない。本人が過失により知らなかった事情についても同様とする。 |
| (権限の定めのない代理人の権限) 第103条 権限の定めのない代理人は、次の行為のみをする権限を有する。 一 保存行為 二 代理の目的の物又は権利の性質を変えない範囲内でその利用又は改良を目的とする行為 |
| (代理権の濫用) 第107条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方がその目的を知り又は知ることができたとき、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなす。 |
| (代理権の消滅事由) 第111条 代理権は次に掲げる事由によって消滅する。 一 本人の死亡 二 代理人の死亡、代理人が破産手続開始の決定、後見開始の審判を受けたこと。 2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。 |
効果 本人に効果帰属
代理権の範囲 103条確認
代理権の消滅 111条確認
図表(p. 39)は「消滅しない」理由とともに確認。任意代理は本人の後見開始によって代理権は消滅しない。法定代理は本人の後見開始ならびに破産によっても代理権は消滅しない。
代理と使者 意思表示できるか否かの違い
復代理 任意代理 → 原則選任不可 ∵その人に頼みたいから代理契約した
例外 本人の許諾又はやむをえない場合
代理人の責任 → 債務不履行責任 ★
復代理 法定代理 → 常に選任可 全面的な責任を負う
例外 → やむをえない事由により選任した場合、選任監督のみ責任を負う
代理人の権限濫用 107条 ★条文新設
原則 有効 例外 相手方が知っていたか知ることができた場合は無権代理とみなす
- 判例法理(93条但し書きの類推適用説を採用)を明文化
- 93条の効果は無効なので「無効」とされていたが、明文化に当たり無権代理とみなすとされた。これにより権限濫用の効果として無権代理制度が適用される。
代理権の制限 自己契約 双方代理 ★禁止からみなし規定へ変更
利益相反行為 108条2項 ★条文新設
→ 代理人は本人のために働かなければいけない、それができないおそれがある
∴本人の許諾がある場合、債務の履行・履行に準ずべき場合は無権代理行為とみなされない。
| (代理権の濫用) 第107条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方がその目的を知り又は知ることができたとき、その行為は無権代理の者の行為とみなす。 (自己契約及び双方代理等) 第108条 同一の法律行為について相手方の代理人又は当事者双方の代理人としてした行為は代理権のない者の行為とみなす。ただし、債務履行、本人が許諾した行為はこの限りでない。 2 前項本文に規定するもののほか代理人と本人の利益が相反する行為は代理権のない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りでない。 |
| (無権代理人の責任) 第117条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。 2 前項の規定は次に掲げる場合には適用しない。 一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。 二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約した者が自己に代理権がないことを知っていたときはこの限りでない。 三 他人の代理人として契約した者が行為能力の制限を受けていたとき。 |
□無権代理
- ①権限が全くない場合 ②代理権の範囲を超えた場合
- 効果 本人に効果が帰属しない
- 本人が取り得る手段 ①追認権、②追認拒絶権
- 相手方が取り得る手段 ①催告権 →悪意も可、②取消権 →善意、③表見代理→善意無過失、④無権代理人の責任追及
- →善意無過失(117条2項1号2号)
- →無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合、有過失でも可 ★117条2項2号 条文新設
- 効果 履行または損害賠償(履行利益)
□無権代理と相続
- 無権代理人→本人を単独相続(無権代理行為)当然有効
- 無権代理人→本人を共同相続 共同相続人が共同して追認権を行使しない限り無効
- 本人が死亡前に追認又は追認拒絶→本人の意思を尊重し相続人は確定した効果を承継する
- 本人→無権代理人を相続 本人として追認拒絶→無権代理人として無権代理人の責任は負う
- 相続人が無権代理人を相続後に本人を相続 無権代理人→本人(単独/共同)相続と同じ
□表見代理
- 権利外観法理の現れ
- ①虚偽の外観が存在し、②その外観作出につき本人に帰責事由があり、③当該虚偽の外観を信じて取引に入ったこと(相手方の善意無過失)の要件が求められる。
- 代理権授与表示による表見代理 109条★2項新設(110条重畳適用の判例法理を明文化)
| 要件 |
|---|
| (代理権授与の表示による表見代理等) 第109条 第三者に対し他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について責任を負う(相手方に立証責任)。ただし、第三者がその他人に代理権がないことを知り又は過失によって知らなかったときはこの限りでない(本人に立証責任)。 2 第三者に対し他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたとき、第三者がその行為についてその他人に代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限りその行為について責任を負う。 |
| (権限外の行為の表見代理) 第110条 前条第一項本文の規定は代理人がその権限外の行為をした場合、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときに準用する。原告(相手方)に主張立証責任 |
| (代理権消滅後の表見代理等) 第112条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後その代理権の範囲内でその他人が第三者との間でした行為について代理権消滅を知らなかった第三者に対し責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときはこの限りでない。 2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後その代理権の範囲内でその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたとき、第三者がその行為についてその他人に代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為について責任を負う。 |
- ①代理権授与表示
- ②表示された代理権の範囲内の代理行為
- ③相手方の善意無過失
- ①②は109条を主張する原告(相手方)が主張立証 109条1項本文
- ③は被告である無権代理行為をされた本人が主張立証 109条1項但書
効果
- 本人は効果帰属を拒めない
- 権限外の行為の表見代理 110条
要件
- ①基本代理権の存在
- ②代理人による権限外の行為
- ③第三者の正当理由(善意無過失)
- ①②③110条を主張する原告(相手方)に主張立証責任
⇔白紙委任状のような代理権授与表示を行ったことで無権代理行為をされた本人(109条)と基本代理権の範囲を超えて無権代理行為をされた本人(110条)では帰責性の程度が異なる。そのため、相手方と本人の保護バランスを衡量し主張立証責任を転換している。主張立証する要件は少ないほど負担が減る=保護される。
基本代理権 法定代理との関係 判例-夫婦の日常家事の判例理論
(きそレシ01 p. 19 の流れを確認)
代理権授与表示による表見代理 112条★2項新設(110条重畳適用の判例法理を明文化)
- ①かつて代理権があり消滅したこと
- ②かつての代理権の範囲内の行為であること
- ③第三者の善意無過失
□無効・取消・追認
121条の2 原状回復義務 ★条文新設 それぞれの意義を確認
…取消しは意思表示により遡って無効となる
| (原状回復の義務) 第121条の2 無効な行為に基づく債務履行として給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負う。 2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務履行の給付を受けた者は給付を受けた当時それが無効であること(給付を受けた後に前条規定により初めから無効であったとみなされた行為は、給付を受けた当時その行為が取り消すことができること)を知らなかったとき、その行為によって現に利益を受けている限度において返還義務を負う。 3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力がなかった者はその行為により現に利益を受けている限度で返還義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者も同様とする。 |
| (条件成就の妨害等) 第130条 条件成就によって不利益を受ける当事者が故意にその条件成就を妨げたとき、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる。 2 条件成就によって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたとき、相手方はその条件が成就しなかったものとみなすことができる。 |
| (時効の援用) 第145条 時効は当事者(消滅時効は保証人、物上保証人、第三取得者ほか権利の消滅につき正当な利益を有する者を含む)が援用しなければ裁判所は裁判できない。 |
□条件・期限
条件と期限の違い
★130条2項 条文新設 判例法理明文化
停止条件・解除条件確認
確定期限・不確定期限確認
□時効制度の趣旨
- 永続した事実状態の尊重、立証の困難性の救済、権利の上に眠る者は保護しない
- 時効の援用 145条 ★括弧書き新設(145条「当事者」の判例法理を一部明文化)
- 時効の完成によって当然に権利の得喪は生じず、援用によってはじめて権利の得喪が生じる。
- 不確定効果説=停止条件説→当事者が援用するまで時効完成の効果は止まっているとする見解(通説判例)援用があってはじめて時効の効果が生じる ∵当事者の意思尊重
□時効の援用権者
145条 ★括弧書き新設(判例法理を明文化)
- 「当事者」の定義確認 消滅時効は保証人・物上保証人・第三取得者その他権利消滅について正当な利益を有する者を含む
- 援用を肯定する者、否定する者 確認
- 否定される「当事者」は、直接利益を受ける者に該当せず、援用を認められない
借地上の建物の賃借人は、建物賃貸人(土地賃借人)の土地取得時効について直接利益を受ける者には当たらないため援用を否定される(最判昭和44年7月)。
□時効利益の放棄
時効完成前の放棄は認めれられない
- ∵立場の弱い債務者が放棄を強制される等不利益を受けるおそれがあるから
- ➜時効完成後の放棄は許される
効果 相対効
【時効完成後の債務承認】時効完成を認識せずに行った債務承認は、時効利益の放棄に当たらない。ただし、時効完成後に債務承認がなされると、債権者は債務者が時効援用しないと期待する。この期待を保護するため、判例は信義則により時効援用を制限している。

□時効の完成猶予・更新
147条 149条以下 ★改正
★改正ポイント
- ①用語の変更
- 中断・停止から更新・完成猶予へ
中断は一度止まって再び進行という誤解を与えるので更新に改め、停止も完成猶予に改めた。
- ②判例法理を一部条文化
- 更新や完成猶予事由につき従来の判例法理を取り込み、条文を再編成
- ③協議を行う旨の合意による時効の完成猶予制度を新設
□時効の完成猶予の事由
①権利行使型
- [更新事由一体型]
- ㋐裁判上の請求等 147条
- ㋑強制執行等 148条
- [更新事由非一体型]
- ㋒仮差押え・仮処分 149条
- ㋓催告 150条
- ㋔協議を行う旨の合意 151条
②権利行使困難型
- ㋕未成年者又は成年被後見人 158条
- ㋖夫婦間 159条
- ㋗相続財産 160条
- ㋘天災等 161条
| (時効の援用) 第145条 時効は当事者(消滅時効は保証人・物上保証人・第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む)が援用しなければ、裁判所が裁判することができない。 |
| (裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新) 第147条 次の事由の場合、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一効力を有する権利確定なしにその事由の終了時から6ヵ月経過まで)まで時効は完成しない。 一 裁判上の請求 二 支払督促 三 民事訴訟法第275条の和解又は民事調停法・家事事件手続法による調停 四 破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加 2 前項の場合、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するもので権利が確定したとき、時効は同項各号の事由が終了した時から新たにその進行を始める。 (強制執行等による時効の完成猶予及び更新) 第148条 次の事由の場合、その事由が終了する(申立て取下げ又は法律規定に従わないことによる取消しでその事由の終了時から6ヵ月経過まで)まで時効は完成しない。 一 強制執行 二 担保権の実行 三 民事執行法第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売 四 民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続 2 前項の場合、時効は同項各号に掲げる事由の終了時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しでその事由が終了した場合はこの限りでない。 (仮差押え等による時効の完成猶予) 第149条 次の事由の場合、その事由の終了時から6ヵ月経過するまで時効は完成しない。 一 仮差押え 二 仮処分 (催告による時効の完成猶予) 第150条 催告があったときはその時から6ヵ月を経過するまで時効は完成しない。 2 催告によって時効が完成猶予されている間にされた再度の催告は前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。 (協議を行う旨の合意による時効の完成猶予) 第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたとき次に掲げる時のいずれか早い時まで時効は完成しない。 一 その合意があった時から1年経過した時 二 その合意において当事者の協議期間(1年未満)を定めたときはその期間を経過した時 三 当事者の一方から相手方に対し協議続行を拒絶する通知が書面でされたとき、その通知の時から6ヵ月経過した時 2 前項の規定により時効の完成猶予中の再度の同項合意は、同項規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は時効の完成猶予がなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。 3 催告によって時効完成が猶予されている間にされた第一項の合意は同項規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項規定による時効の完成猶予中の催告も同様とする。 4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたとき、その合意は書面によってされたものとみなし、前三項の規定を適用する。 5 前項の規定は第一項第三号の通知について準用する。 (承認による時効の更新) 第152条 時効は、権利の承認があったとき、その時から新たにその進行を始める。 2 前項の承認をするには相手方の権利処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。 |
| (未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予) 第158条 時効の期間満了前6ヵ月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないとき、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6ヵ月を経過するまでその未成年者又は成年被後見人に対し時効は完成しない。 2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父母又は後見人に対して権利を有するとき、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から6ヵ月を経過するまでの間はその権利について時効は完成しない。 (夫婦間の権利の時効の完成猶予) 第159条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利は、婚姻解消の時から6ヵ月を経過するまで時効は完成しない。 (相続財産に関する時効の完成猶予) 第160条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6ヵ月を経過するまで時効は完成しない。 (天災等による時効の完成猶予) 第161条 時効期間の満了時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第147条第一項各号又は第148条第一項各号に掲げる事由に係る手続をできないとき、その障害が消滅した時から3ヵ月経過するまで時効は完成しない。 |
| (所有権の取得時効) 第162条 20年間所有の意思をもって平穏にかつ公然と他人の物を占有した者はその所有権を取得する。 2 10年間所有の意思をもって平穏にかつ公然と他人の物を占有した者は、その占有開始の時に善意でかつ過失がなかったときはその所有権を取得する。 |
□時効の更新事由
- ①権利行使型
- ㋐裁判上の請求等 147条
- ㋑強制執行等 149条
- ②権利承認型 152条
きそレシ01 pp. 21-22の図表を参考に条文を確認
□取得時効
対象となる権利 所有権及び所有権以外の財産権
要件
①所有の意思 自主占有、推定規定あり(186条1項)
②平穏かつ公然 推定規定あり(186条1項)
③他人物 自己物であっても時効取得可
④占有の継続 前後の2つの時点の占有を立証→その間の継続を推定(186条2項)
⑤時効期間の満了 善意無過失 10年 善意は推定される(186条1項)無過失は推定されない、それ以外 20年
※占有の承継があった場合、前主の占有を併せた主張も可、ただし、前主の瑕疵も承継する。
| (時効の効力) 第144条 時効の効力はその起算日にさかのぼる。 |
| (債権等の消滅時効) 第166条 債権は、次に掲げる場合には時効によって消滅する 一 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき 二 権利を行使できる時から10年間行使しないとき 2 債権又は所有権以外の財産権は権利を行使できる時から20年間行使しないときは時効によって消滅する 3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のためにその占有開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者はその時効更新のためいつでも占有者の承認を求めることができる。 (人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効) 第167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用は同号の10年間を20年間とする。 |
| (占有の態様等に関する推定) 第186条 占有者は所有の意思をもって善意で平穏にかつ公然と占有するものと推定する。 2 前後の両時点において占有した証拠があるとき、占有はその間継続したものと推定する。 |
| (不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合は時効によって消滅する。 一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。 二 不法行為の時から20年間行使しないとき。 |
| (人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用は、同号の3年間を5年間とする。 |
□消滅時効 ★改正
★改正の重要ポイント
- 消滅時効の期間と起算点について客観的起算点と主観的起算点の二重の消滅時効期間を導入
- 生命身体の侵害による損害賠償請求について債務不履行に基づく請求と不法行為に基づく請求が同一の消滅時効期間に統一(客観的起算点から20年、主観的起算点から5年)
対象となる権利
- 債権及び所有権以外の財産権
- 所有権・占有権・所有権に基づく物権的請求権は消滅時効にかからない
要件
- 一般債権
- 主観的起算点 166条1項 債権者が権利を行使できることを知った時から5年
- 客観的起算点 166条2項 権利を行使できる時から10年
- 各債権の起算点も確認
特則 2つ
- 1. 人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権
- 主観的起算点 166条1項1号 債権者が権利を行使できることを知った時から5年
- 客観的起算点 167条 権利を行使できる時から20年
- 2. 人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権
- 主観的起算点 166条1項1号 被害者又は法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年 724条の2
- 客観的起算点 167条 不法行為の時から20年
- 効果 起算点に遡及 144条
≪物権≫
□物権法総説
物権の直接支配性と排他性
一物一権主義
物権の消滅事由
□物権の混同
原則と例外確認
例外として混同しない場合の共通点は、第三者の権利の目的になっている場合
□物権的請求権
妨害排除、妨害予防、返還
占有訴権と比較しつつ、要件を確認
□物権的請求権の相手方
原則、現に目的物の支配を妨げている者
判例は登記名義人に対する請求も認めている
□物権変動
物権変動の時期 契約時 意思主義(176条)
□公示の原則と公信の原則
不動産→公信の原則なし 第三者保護は94条2項類推適用にて
| (虚偽表示) 第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする。 2 前項の規定による意思表示の無効は善意の第三者に対抗できない。 |
| (物権の設定及び移転) 第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによってその効力を生ずる。 (不動産に関する物権変動の対抗要件) 第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従い、その登記をしなければ第三者に対抗できない。 |
□177条の第三者
当事者若しくはその包括承継人以外の者であって登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者
□第三者に当たらないもの
- ①実質的無権利者
- ②不法行為者・不法占拠者
- ③不動産登記法5条所定の者
- ④転々譲渡の前主
- ⑤差押えをしていない一般債権者
- ⑥背信的悪意者
相対的構成 きそレシ p. 25

□善意者ないし単純悪意者からの譲受人が背信的悪意者の場合
絶対的構成(通説: 判例ない) 第二譲受人が第三者にあたるとき、登記のない第一譲受人は所有権取得を第二譲受人に対抗できない。ただし、背信的悪意者は第三者に含まれない。第二譲受人が背信的悪意者と認められるとき、第一譲受人は登記なくして所有権取得を第二譲受人に対抗できる。
□中間省略登記
- 原則 許されない
- 例外 登記名義人及び中間者の同意
□第三者との関係
- ~と登記では、常に第三者がいつ登場したか、という視点で考える
- 事例は、ノート若しくはレシピ pp. 26-27 を参照。
□取消しと登記
- 取消前第三者登場→96条3項 ∵96条3項は取消しの遡及効を制限し善意無過失の第三者を保護するための規定だから。
- 取消後第三者登場→177条 ∵取消しによって復帰的物権変動が生じ(巻き戻し)、Bを起点とする二重譲渡事例と同視し得るため、両者は対抗関係となるから。
| (詐欺又は強迫) 第96条 詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる。 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。 3 前二項規定による詐欺による意思表示の取消しは善意で無過失の第三者に対抗できない。 |
| (物権の設定及び移転) 第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによってその効力を生ずる。 (不動産に関する物権変動の対抗要件) 第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従い、その登記をしなければ第三者に対抗できない。 |
| (解除の効果) 第545条 当事者の一方がその解除権を行使したとき、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。 2 前項本文の場合、金銭を返還するときはその受領の時から利息を付さなければならない。 3 第一項本文の場合、金銭以外の物を返還するときはその受領の時以後に生じた果実も返還しなければならない。 4 解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない。 |
| (遺産分割方法の指定及び遺産分割の禁止) 第908条 被相続人は遺言で遺産分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができる。 2 共同相続人は5年以内の期間を定め、遺産の全部又は一部について分割しない旨の契約をできる。ただし、その期間の終期は相続開始の時から10年を超えることができない。 3 前項の契約は5年以内の期間を定めて更新できる。ただし、その期間の終期は相続開始の時から10年を超えることができない。 4 前条第二項本文の場合に特別の事由があるときは、家庭裁判所は5年以内の期間を定めて遺産の全部又は一部について分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は相続開始の時から10年を超えることができない。 5 家庭裁判所は5年以内の期間を定めて前項の期間を更新できる。ただし、その期間の終期は相続開始の時から10年を超えることができない。 (遺産分割の効力) 第909条 遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 (遺産分割前における預貯金債権の行使) 第909条の2 各共同相続人は遺産に属する預貯金債権のうち相続開始時の債権額の三分の一に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度)について単独でその権利を行使できる。この場合に当該権利の行使をした預貯金債権は当該共同相続人が遺産の一部の分割により取得したものとみなす。 |
□解除と登記
解除前第三者登場→545条1項但書 ∵同条は解除の遡及効を制限し第三者を保護するための規定だから。第三者の善意悪意は問わないが、権利保護資格要件としての登記が必要(判例は対抗要件としての登記としている)。
解除後第三者登場→177条 ∵解除により復帰的物権変動が生じ(巻き戻し)、Bを起点とする二重譲渡事例と同視し得るので対抗関係として処理できるから。
□取得時効と登記
- 時効完成前第三者登場→譲受人は当事者なので、対抗関係にない。
- 時効完成後第三者登場→177条 ∵時効完成により譲渡人(元所有者)を起点とする二重譲渡事例と同視し得るので、両者は対抗関係として処理される。
□相続と登記
共同相続(共同相続人が勝手に単独登記した場合)→自己の持分につき登記なくして主張可能
遺産分割
- (遺産分割前に共同相続人が自己の持分を第三者に処分、その後単独相続の協議をした場合)→909条但書 ∵同条は遺産分割の遡及効を制限し、第三者を保護するための規定だから。
- (遺産分割後に共同相続人が自己の持分を第三者に処分した場合)→177条 ∵遺産分割によって新たな権利変動が生じ、共同相続人を起点とする二重譲渡事例と同視し得るから。