まもなく没後二百年を迎える小林一茶の句をもっと身近に――そんな思いから長野郷土史研究会の小林一郎会長編「一茶発句全集」(季語別・作句年順 2005年)をもとに句番号とルビを加え、縦書き文庫版「一茶発句全集」として掲載しています。元資料の使用をご快諾くださった同研究会および文庫版の校閲者橋本信明氏に心より感謝いたします。文庫版は長野郷土史研究会の小林一郎氏編「一茶発句全集」をもとに作成しています。ルビの誤り等は文庫版作成者のサイト宛にご連絡いただければ幸いです。
2286 三月廿六[日]江戸をうしろになしておぼつかなくも立出る 雉鳴て梅に乞食の世也けり 寛政三紀行 寛3
2287 雷に鳴あはせたる雉哉 文化句帖 化1
2288 雉鳴て飯買ふ家も見ゆる也 文化句帖 化1
2289 雉なくや千島のおくも仏世界 文化句帖 化1
2290 あさぢふは夜もうれしや雉なく 文化句帖 化2
2291 雉なくやきのふは見へぬ山畠 文化句帖 化2 「へ」→「え」
2292 雉なくや立草伏し馬の顔 文化句帖 化2
2293 草山や顔おし入て雉のなく 文化句帖 化2
2294 足がらの片山雉子靄祝へ 文化句帖 化3
2295 丘の雉鷺の身持をうらやむか 文化句帖 化3
2296 雉鳴て小藪がくれのけぶり哉 文化句帖 化3
2297 昼比やほろ〳〵雉の里歩き 文化句帖 化3
2298 むさしのゝもどりがけかよなく雉子 文化句帖 化3
2299 山陰も畠となりてなく雉子 文化句帖 化3
2300 馬の呑水になれたる雉哉 文化句帖 化4
2301 雉鳴て姥が田麦もみどり也 文化句帖 化4
2302 小金原 雉なくやきのふ焼れし千代の松 文化句帖 化4 (出)『文政版』
2303 雉子なくや気のへるやうに春の立 文化句帖 化4
2304 ぬけうらを雉も覚る御寺哉 文化句帖 化4
2305 坊が素湯雉は朝から鳴にけり 文化句帖 化4
2306 痩臑にいさみをつける雉哉 文化句帖 化4
2307 うそ〳〵の雉の立添ふ垣根哉 文化句帖 化5
2308 雉なくや彼梅わかの涙雨 花見の記 化5 (出)『発句鈔追加』
2309 尻尾から月の出かゝる雉哉 文化句帖 化5
2310 ちる花をかまはぬ雉の寝ざま哉 文化句帖 化5
2311 のゝ雉の隠所の庵哉 文化句帖 化5
2312 むさい野に寝た顔もせぬ雉子哉 文化句帖 化5
2313 木母寺は暮ても雉の鳴にけり 文化句帖 化5
2314 山寺や雪隠も雉の啼所 文化句帖 化5
2315 夕雨や寝所焼かれし雉の顔 文化句帖 化5
2316 我門や何をとりえに雉の鳴 文化句帖 化5
2317 庵崎や古き夕を雉の鳴 化五六句記 化6 (類)『花見の記』『発句鈔追加』下五「春の雨」
2318 雉鳴やこき棄らるゝ菜大根 化五六句記 化6
2319 むら雨を尾であしらひし雉哉 化五六句記 化6
2320 青山を拵へてなく雉哉 七番日記 化7
2321 蟻程に人は暮れしぞ雉の鳴 七番日記 化7
2322 酒桶や雉の声[の]行とゞく 七番日記 化7
2323 鳴く雉や尻尾でなぶる角田川 七番日記 化7 (類) 同日記(化10) 上五中七「蜻蛉の尻でなぶるや」
2324 我庵のけぶり細さを雉の鳴 七番日記 化7
2325 我夕や里の犬なく雉のなく 七番日記 化7
2326 うす墨の夕暮過や雉の声 七番日記 化8
2327 小社や尾を引かけて夕雉 七番日記 化8
2328 祠から顔出して鳴きゞす哉 七番日記 化8
2329 夕やけや夕山雉赤鳥居 七番日記 化8
2330 夕山や何やら咄す夕雉子 七番日記 化8
2331 雉うろ〳〵〳〵門を覗くぞよ 七番日記 化9 (異)『株番』中七「うろ〳〵庵を」
2332 雉と臼寺の小昼は過にけり 七番日記 化9 (出)『株番』
2333 雉鳴や関八州を一呑に 七番日記 化9
2334 雉なくやてん〳〵天下大平と 七番日記 化9 「大」→「太」
2335 雉なくや見かけた山のあるやうに 七番日記 化9 (出)『株番』『発句題叢』『発句鈔追加』『嘉永版』『発句集続篇』(異)『希杖本』中七「見置た山の」
2336 走る雉山や恋しき妻ほしき 七番日記 化9
2337 かい曲り雉の鳴也大座敷 句稿消息 化10 (異) 同消息 上五「真中に」
2338 雉鳴やきじの御山の子守達 七番日記 化10
2339 きじ鳴や汁鍋けぶる草の原 七番日記 化10
2340 雉鳴や先今日は是きりと 七番日記 化10 (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『希杖本』(異)『自筆本』中七「先今日が」
2341 野社の赤過しとやきじの鳴 七番日記 化10
2342 昼ころや雉の歩く大座敷 七番日記 化10 (出)『志多良』『希杖本』
2343 焼飯は烏とるとやきじの鳴 七番日記 化10
2344 夕雉の寝[所]にしたる社哉 七番日記 化10
2345 夕きじの走り留りや草と空 七番日記 化10 (異) 同日記(化10) 下五「鳰の海」
2346 夜の雉折〳〵何におそはるゝ 七番日記 化10
2347 朝寝坊が窓からのろり雉哉 七番日記 化11
2348 五百崎や雉を鳴かする明俵 七番日記 化11 (出)『自筆本』 (異) 同日記(政1) 中七下五「雉子の出て行炭俵」『浅黄空』中七下五「雉の出て行すさ俵」
2349 石川をざぶ〴〵渡る雉哉 七番日記 化11 (出)『浅黄空』『自筆本』
2350 大声はせぬ気で雉の立りけり 七番日記 化11
2351 大莚雉を鳴せて置にけり 七番日記 化11
2352 大屋根の桶の中から雉哉 化11
2353 かけ抜て爰迄来いときじや鳴 七番日記 化11
2354 立臼に片尻かけてきじの鳴 七番日記 化11
2355 野ゝ雉起給へとや雉の鳴 七番日記 化11
2356 花のちる〳〵とてきじの夜鳴哉 七番日記 化11 (異)『発句鈔追加』上五「花がちる」
2357 髭どのを伸上りつゝきじの鳴 七番日記 化11
2358 一星見つけたやうにきじの鳴 七番日記 化11 (類)『句稿消息』下五「なく蛙」
2359 びんずるの御膝に寝たる雉哉 七番日記 化11 「ず」→「づ」
2360 本堂に首つゝ込んで雉の鳴 七番日記 化11 (異)『発句鈔追加』下五「雉子の声」
2361 身をつんでしれや焼野ゝきじの声 七番日記 化11
2362 藪尻や蓑の子がなく雉が鳴 七番日記 化11 (異)『句稿消息』上五「山畠や」『希杖本』中七「蓑に子鳴」
2363 山雉のけんもほろゝもなかりけり 七番日記 化11 (異)『発句集続篇』上五「雉子の声」
2364 山きじの妻をよぶのか叱るのか 七番日記 化11
2365 山の雉あれでも妻をよぶ声か 七番日記 化11
2366 雉の声人を人とも思ぬや 七番日記 化12
2367 野談義や大な口へ雉の声 七番日記 化13
2368 山雉子袖をこすつて走りけり 七番日記 化13
2369 上野 御通りや下[に]〳〵と雉の声 七番日記 政1 (異)『文政版』上五「黒門や」「黒門の」
2370 加賀どの[ゝ]御先をついと雉哉 七番日記 政1
2371 雉なくや臼と盥の間から 七番日記 政1
2372 雉鳴や坂本見えて一里鐘 七番日記 政1 (異)『浅黄空』前書き「臼井坂下る」上五「夕雉や」『自筆本』上五「山雉や」
2373 雉なくや座頭が橋を這ふ時に 七番日記 政1
2374 雉鳴や寺[の]座敷の真中に 七番日記 政1
2375 雉鳴や道灌どのゝ馬先に 七番日記 政1
2376 三声程つゞけて雉の仕廻けり 七番日記 政1
2377 藪雉やいつもの所にまかり有と 七番日記 政1
2378 山きじや何に見とれてけろりくわん 七番日記 政1 (出)『自筆本』(異)『浅黄空』上五「夕雉や」
2379 雉鳴や是より西は庵の領 八番日記 政3
2380 さをしかのせなかをかりて雉の鳴 八番日記 政3 (出)『梅塵八番』中七下五「背中借てや雉の声」
2381 野仏の袖にかくれてきじの鳴 八番日記 政3
2382 駕先に下にの声と雉の声 八番日記 政4 (異)『梅塵八番』上五「駕籠先や」『だん袋』前書き「東叡山」『発句鈔追加』上五中七「駕先や下に〳〵と」
2383 下に〳〵の口まねや雉子の声 八番日記 政4 (異)『梅塵八番』中七「ととぎれより」
2384 関守の口真似するや雉の声 八番日記 政4
2385 あさる雉馬の下腹くゞりけり 文政句帖 政5
2386 寝た馬に耳づたうとや雉の声 文政句帖 政5 「う」→「ふ」
2387 夕雉の寝にもどるとや大声に 文政句帖 政5
2388 金の蔓でも見つけたか雉の声 文政句帖 政6
2389 引明や鶏なき里の雉の声 文政句帖 政6
2390 雉なくや藪の小脇のけんどん屋 文政句帖 政7
2391 中川や通れの迹を雉の声 文政句帖 政7
2392 寝た牛の腹の上にて雉の声 文政句帖 政7
2393 我庵にだまつて泊れ夜の雉 文政句帖 政7
2394 をれ[を]見るや雉伸上り〳〵 浅黄空 「をれ」→「おれ」 (出)『自筆本』
2395 枯藪に目くじり立て雉子の鳴 発句鈔追加
2396 雉鳴くやころり焼野の千代の松 浅黄空 (異)『自筆本』上五「山雉や」
2397 山雉を鳴せて置や大莚 希杖本
2398 山寺や座敷の中にきじの声 発句集続篇
2399 新鳩よ鷹気を出してにくまれな 八番日記 政3
2400 観音の鳩にとくなれ馬屎鷹 八番日記 政3
2401 夕暮の松見に来しをかへる雁 享和二句記 享2 (異) 同句日記 中七「松見に来れば」
2402 雨だれの有明月やかへる雁 享和句帖 享3 (出)『完来歳旦帖』(異)『文化句帖』(化1) 中七「有明や」同句帖(享3) 上五中七「雨だれは月よなり」
2403 行灯で飯くふ人やかへる雁 享和句帖 享3
2404 一度見度さらしな山や帰る雁 享和句帖 享3
2405 小田[の]雁一[つ]となりて春いく日 享和句帖 享3
2406 かへる雁駅の行灯かすむ也 享和句帖 享3
2407 帰る雁何を咄して行やらん 享和句帖 享3
2408 帰る雁北陸道へかへる也 享和句帖 享3
2409 鴻雁 帰る日も一番先や寡雁 享和句帖 享3 (異)『文化句帖』(化1) 上五中七「立時もおくれはせじな」
2410 門口の行灯かすみてかへる雁 享和句帖 享3 (異)『文化句帖』(化1) 中七「灯かすみて」
2411 草の雨松の月よやかへる雁 享和句帖 享3 (異) 同句帖(享3)
2412 下五「十五日」 行雁や更科見度望みさへ 享和句帖 享3
2413 朝雨を祝ふてかへれ小田の雁 文化句帖 化1 「ふ」→「う」
2414 跡立は雨に逢ひけりかへる雁 文化句帖 化1 「跡」→「後」
2415 いたづらに日は人にかへる雁 文化句帖 化1
2416 近江のや雁のかへりも松の月 文化句帖 化1
2417 かへる雁翌はいづくの月や見る 文化句帖 化1
2418 帰雁見知ておれよ浮御堂 文化句帖 化1 「お」→「を」
2419 帰る日もしらぬそぶりや小田[の]雁 文化句帖 化1
2420 門の雁立日となりぬ日となりぬ 文化句帖 化1 (出)『七番日記』『発句鈔追加』
2421 是式の窓にも雁のなごり哉 文化句帖 化1
2422 叱られてそらから直にかへる雁 文化句帖 化1 「そら」→「そこ」
2423 立雁のぢろ〴〵みるや人の顔 文化句帖 化1 「ぢ」→「じ」
2424 田の雁のかへるつもりか帰らぬか 文化句帖 化1
2425 田の人の笠に糞してかへる雁 文化句帖 化1
2426 兀山も見知ておけよかへる雁 文化句帖 化1
2427 一つでも鳴て行也かへる雁 文化句帖 化1
2428 人よりも朝きげん也かへる雁 文化句帖 化1
2429 三とせ見し梢の雨やかへる雁 文化句帖 化1
2430 行雁に呑せてやらん京の水 文化句帖 化1
2431 行雁やきのふは見へぬ小田の水 文化句帖 化1 「へ」→「え」
2432 行な雁廿日[も]居れば是古郷 文化句帖 化1
2433 我恋はさらしな山ぞかへる雁 文化句帖 化1
2434 菜の花がはなれにくいか小田[の]雁 文化句帖 化2
2435 げつそりと雁はへりけりよしづ茶屋 文化句帖 化3「づ」→「ず」
2436 玉川や臼の下よりかへる雁 文化句帖 化3 (出)『七番日記』遺稿 真蹟
2437 見知られし雁もそろ〳〵立田哉 文化句帖 化3
2438 行は〳〵江戸見た雁が見た雁が 文化句帖 化3
2439 芣苢のつや〳〵しさを帰雁 文化句帖 化4
2440 雁立てさば〳〵したる浦辺哉 文化句帖 化4
2441 雁行て人に荒行草葉哉 文化句帖 化4
2442 立雁が大きな糞をしたりけり 文化句帖 化4
2443 藪蕎麦のとく〳〵匂へかへる雁 文化句帖 化4
2444 行雁がつく〴〵見るや煤畳 文化句帖 化4
2445 行雁や人の心もうはの空 文化句帖 化4
2446 雁にさへとり残されし栖哉 文化句帖 化5
2447 便りない我家を捨てかへる雁 文化句帖 化5
2448 のう〳〵と山も立らんかへる雁 文化句帖 化5
2449 雁立た迹を見に行小松哉 化五六句記 化6
2450 雁立て青くも成らぬ垣ね哉 化五六句記 化6
2451 大切の廿五日やかへる雁 化五六句記 化6
2452 木母寺の明り先より帰るかり 化五六句記 化6
2453 行雁や我湖をすぐ通り 化五六句記 化6
2454 有明や念仏好の雁も行 七番日記 化7
2455 いかに人雁も別は告るぞよ 七番日記 化7
2456 いざゝらば〳〵と雁のきげん哉 七番日記 化7(出)『浅黄空』『自筆本』遺稿
2457 帰雁我をかひなき物とやは 七番日記 化7
2458 雁行な今錠明る藪の家 七番日記 化7「明」→「開」
2459 念仏をさづけてやらん帰雁 七番日記 化7
2460 はんの木のはら〳〵雁の別哉 七番日記 化7
2461 卅日なき里があるやら帰雁 七番日記 化7 (異)『我春集』中七「所があるやら」
2462 京をばかれも嫌ひか帰雁 七番日記 化7
2463 夕暮や雁の上にも一人旅 七番日記 化7
2464 閏二月廿九日といふ日、雨漸をこたりなれば朝とく[頭]陀袋首にかけて足ついで角田堤にか ゝる。すでに東はほの〴〵しらみたれど小藪小家はいまだ闇かりき。しかるに近〴〵ならせ給ふにや川の方幽に天地丸赤〳〵とたゞよひ田中は新に道を作り溝川こと〴〵く板をわたしておの〳〵御遊をまつと見えたり。まことに心なき草木も風に伏して目出度御代をあふぐとも覚へ侍る。「をこたりなれ」→「おこたりぬれ」「覚へ」→「覚え」 五百崎や御舟をがんで帰る雁 七番日記 化8 (出)『文政版』(前書きに小異あり)
2465 三月や卅日になりて帰雁 七番日記 化8 (出)『発句集続篇』
2466 青柳も見ざめ[の]してや帰る雁 株番 化9 (異)『浅黄空』『自筆本』上五「青柳に」
2467 有明の雁になりたや行雁に 七番日記 化9 (出)『浅黄空』『自筆本』
2468 帰雁人はなか〳〵未練也 七番日記 化9
2469 雁行や迹は本間の角田川 七番日記 化9 (異) 同日記(化9) 上五「行雁や」
2470 さつぱりと雁はいなして姫小松 七番日記 化9
2471 行がけの駄ちんに鳴や天つ雁 七番日記 化9 (異)『株番』下五「けさの雁」『版本題叢』下五「小田の雁」
2472 行雁や迹は野となれ山となれと 七番日記 化9 (異) 同日記(化9) 下五「花となれと」
2473 思ふさま寝てはこして帰雁 志多良 化10 (出)『浅黄空』『希杖本』(異)『句稿消息』中七「鳴てはこして」 真蹟 中七「寝てはこをして」
2474 帰雁あれも一人はなかりけり 七番日記 化10
2475 かしましや江戸見た雁の帰り様 七番日記 化10 (出)『志多良』『句稿消息』『発句題叢』『浅黄空』『自筆本』『文政版』『希杖本』真蹟 前書き「中山道板橋」
2476 善光寺も直ぐ通りして帰雁 七番日記 化10 (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』『希杖本』真蹟
2477 それがしも連にせよやれ帰雁 七番日記 化10 (出)『句稿消息』
2478 人丸の筆の先より帰雁 志多良 化10 (出)『希杖本』(類)『七番日記』(化12) 下五「時鳥」
2479 又かとて鹿の見るらん帰雁 志多良 化10 (出)『句稿消息』『希杖本』
2480 行な雁どつこも茨のうき世ぞや 句稿消息 化10
2481 辛崎の松はどう見た帰雁 七番日記 化11 (出)『希杖本』
2482 金りんざい来ぬふりをして雁立ぬ 七番日記 化11
2483 武蔵北なし〳〵とや帰雁 七番日記 化11 (異)『八番日記』(政2) 「雁行や武蔵北なし〳〵と」
2484 行雁や夜も見らるゝしなの山 七番日記 化11
2485 我顔にむつとしたやら帰雁 七番日記 化11 (出)『希杖本』
2486 朝もやの紛に雁の立にけり 七番日記 化12
2487 小田の雁長居はおそれ〳〵とや 七番日記 化12
2488 かしましき雁はいに風立にけり 七番日記 化12
2489 立際に花を降らして帰雁 七番日記 化12
2490 釣人のぼんの凹より帰る雁 七番日記 化12 (出)『浅黄空』『自筆本』
2491 どこへなと我をつれ[て]よ帰雁 七番日記 化12
2492 泣な〳〵それ程まめで帰る雁 七番日記 化12 (出) 同日記(化12)『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』『希杖本』『栗本雑記五』書簡 (異)『詩宇耳隣通』中七「それほど無事で」
2493 念仏がうるさいとてや雁帰る 七番日記 化12
2494 はや立は親のありてや帰雁 七番日記 化12 (出)『発句集続篇』
2495 帰らねばならぬうき世か一つ雁 七番日記 化13
2496 帰雁浅間のけぶりいく度見る 七番日記 化13
2497 帰雁花のお江戸をいく度見た 七番日記 化13
2498 雁ども[も]帰る家をば持たげな 七番日記 化13 (異)『希杖本』前書き「雲水にありし時」 中七下五「帰る家をぞ持たぬやら」
2499 雁よ雁いくつのとしから旅をした 七番日記 化13
2500 立際になるやさつさと帰雁 七番日記 化13
2501 連もたぬ雁もとぼ〳〵帰りけり 七番日記 化13 (出)『発句鈔追加』(異)『句稿消息』上五「連のない」 上五中七「連のない雁もさつさと」『浅黄空』中七「雁くつくと」『自筆本』上五中七「連のない雁ややつさと」『随斎筆紀』中七「雁がさつさと」真蹟 上五中七「連のない雁がとぼ〳〵」
2502 どこでどう正月をした帰雁 七番日記 化13 (出)『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』(異)『句稿消息』真蹟 中七「正月をして」
2503 名所[を]けつちらかして帰る雁 七番日記 化13 (異)『希杖本』上五中七「名所の田を蹴ちらして」
2504 一組は千住留りか帰雁 七番日記 化13
2505 一つ雁よ帰らでもすむ事ならば 七番日記 化13
2506 一つ雁よ行でかなはぬ事なるか 七番日記 化13 (異) 同日記(化13) 「一つ雁よく〳〵行でかなはぬか」
2507 まてしばし御供申さん帰雁 七番日記 化13
2508 夫婦雁話して行ぞあれ行ぞ 七番日記 化13
2509 木母寺の念仏さづかりて帰雁 七番日記 化13 (出)『浅黄空』『自筆本』『希杖本』
2510 我家を置ざりにして帰雁 七番日記 化13
2511 我門やおぞげふるつて帰雁 七番日記 化13 (出)『浅黄空』(異)『自筆本』上五「我門に」
2512 わやくやは若い同士よ帰雁 七番日記 化13 (異)『句稿消息』中七「若い同士か」『浅黄空』『自筆本』中七「若い同士や」『あつくさ』上五中七「わや〳〵と若い同士の」
2513 けふ迄はようし[ん]ぼした門の雁 七番日記 化14 (異)『浅黄空』「けふ迄のしんぼ強さよ帰る雁」『発句鈔追加』中七下五 「よく辛抱した雁よ雁よ」 真蹟 前書き「庵前」 中七下五「よくしんぼして帰る雁」
2514 恥かゝぬうちについ〳〵帰雁 七番日記 化14
2515 夜伽してくれたる雁も帰りけり 七番日記 化14
2516 外ケ浜 雁鳴や今日本を放るゝと 七番日記 「放」→「離」 (出)『自筆本』『発句鈔追加』遺稿 真蹟(異)『浅黄空』上五中七「鳴雁や大日本を」
2517 大雨やずつぷり濡て帰雁 七番日記 政1
2518 高梨むら 帰り度雁は思ふやおもはずや 七番日記 政1 (出)『だん袋』『発句鈔追加』 前書き「墨坂新十郎といふものゝ工みなる雁鴨の牢屋にて」、『浅黄空』『自筆本』
2519 帰雁細い烟を忘るゝな 七番日記 政1
2520 雁にさへ袖引雨は降にけり 七番日記 政1 (出)『発句集続篇』
2521 雁行な小菜もほちや〳〵ほけ立に 七番日記 政1
2522 こんな日も旅立よしか帰雁 七番日記 政1
2523 しよぼ濡の雁が帰るぞ九十川 七番日記 政1
2524 尻くらへくわん音山や帰雁 七番日記 政1
2525 松の木を置去[に]して帰雁 七番日記 政1
2526 行雁やおえどはむさしうるさしと 七番日記 政1
2527 我村はいく日に通る帰る雁 七番日記 政1 (出)『浅黄空』前書き「下総にありて」
2528 雁行やためつすがめつ角田川 八番日記 政2 (異)『発句鈔追加』真蹟 上五「行雁や」
2529 小社を三遍舞て帰る雁 八番日記 政2 (異) 同日記(政3) 上五「辛崎を」
2530 寝た迹の尻も結ばず帰雁 八番日記 政2 (出)『嘉永版』
2531 早立は千住泊りか帰る雁 八番日記 政2
2532 足元の明るい内やかへる雁 八番日記 政3 (出)『浅黄空』『自筆本』(異) 同日記(政3) 中七「明るい月や」
2533 江戸方も先上首尾か帰る雁 八番日記 政3
2534 親と子の三人連や帰る雁 八番日記 政3
2535 追るゝを入にかへるや門の雁 八番日記 政3 (異)『梅塵八番』中七「入りにかゝるや」
2536 門の雁追れ序に帰りけり 八番日記 政3
2537 雁行や人のやれこれいふうちに 八番日記 政3
2538 すつぽんも羽ほしげ也帰雁 八番日記 政3
2539 闇の夜も道ある国や帰る雁 八番日記 政3
2540 我跡につき損じてや帰る雁 梅塵八番 政3 「跡」→「後」 (異)『八番日記』下五「帰る蝶」
2541 あきらめて別を鳴な門の雁 八番日記 政4
2542 なくな雁いつも別は同じ事 八番日記 政4 (出)『自筆本』
2543 大組の迹やだまつて帰る雁 文政句帖 政5
2544 大組は雁も幡して帰る也 文政句帖 政5
2545 此国のものに成る気か行ぬ雁 文政句帖 政5
2546 折角に居馴んでからかへる雁 文政句帖 政5
2547 なく[な]雁とても一度は別れねば 文政句帖 政5
2548 何事ぞ此大雨に帰る雁 文政句帖 政5
2549 ひとり身やだまりこくつて雁かへる 文政句帖 政5
2550 満月の図を抜しとや帰る雁 文政句帖 政5
2551 行かずともよくば帰るな小田の雁 文政句帖 政5
2552 雪の降る拍子に雁の帰りけり 文政句帖 政5
2553 行雁の下るや恋の軽井沢 文政句帖 政5 (出)『だん袋』『発句鈔追加』
2554 行雁や子とおぼしきを先に立 文政句帖 政5
2555 夜伽した雁もけふこそ帰るなれ 文政句帖 政5
2556 夜伽して鳴たる雁よなぜ帰る 文政句帖 政5
2557 江戸の[水]呑みおふせてやかへる雁 文政句帖 政6 「ふ」→「ほ」 (異) 同句帖(政5) 中七「呑んだ声して」
2558 朝雨や雁も首尾よく帰る声 文政句帖 政7 (出)『発句集続篇』
2559 立際の上きげん也小田の雁 文政句帖 政7
2560 痩雁や友の帰るを見てはなく 文政句帖 政7
2561 みちのくの田植見てから帰る雁 希杖本
2562 行たいか雁伸上り〳〵 浅黄空
2563 雲に鳥人間海にあそぶ日ぞ 寛政句帖 寛5
2564 涼しさは閏三月の鶴の声 西紀書込 寛中
2565 田鼠鶉人は白髪と化しけり 八番日記 政3
2566 とぶ鶉鼠の昔忘るゝな 八番日記 政3
2567 念仏せよ田鼠鶉に成たくば 八番日記 政3
2568 田鼠よ鶉にならば花の雲 八番日記 政3
2569 地虫出よ出よゆり花さゆり花 化五六句記 化6
2570 あなう世としらでや蛇の出て歩く 文政句帖 政7
2571 穴を出ておがまるゝ也神の蛇 文政句帖 政7 「お」→「を」
2572 穴を出る蛇の頭や猫がはる 文政句帖 政7
2573 大蛇やおそれながらと穴を出る 文政句帖 政7
2574 苦のさばや蛇なのりて穴を出る 文政句帖 政7
2575 けつこうな御世とや蛇も穴を出る 文政句帖 政7
2576 人鬼や蛇より先に穴を出る 文政句帖 政7
2577 今穴を出た顔もせず引がへる 文政句帖 政7 「引」→「蟇」
2578 青梅に手をかけて寝る蛙哉 寛政三紀行 寛3
2579 岩が根に蛙の眠る真昼哉 寛政句帖 寛5
2580 道連に豊前の僧の二人あれば未明に出立して途中吟 蛙鳴き鶏なき東しらみけり 西国紀行 寛7
2581 よひ闇の一本榎なくかはづ 享和句帖 享2
2582 畔ひとへ西の蛙のきこえけり 水の音 享3
2583 著 かりそめの娶入月よや啼蛙 享和句帖 享3
2584 天風姤 つるべにも一夜過ぎけりなくかえる 享和句帖 享3
2585 鳴ながら蛙とぶ也草の雨 享和句帖 享3 (異)『文化句帖』(化1) 上五「気軽げに」
2586 油火のうつくしき夜やなく蛙 文化句帖 化1
2587 蛙なくや始て寝たる人の家 文化句帖 化1
2588 鍋ずみを目口に入てなく蛙 文化句帖 化1
2589 初蛙梢の雫又おちよ 文化句帖 化1
2590 あさぢふや目出度雨になく蛙 文化句帖 化2 (異) 同句帖(化4) 中七「臼の中より」
2591 芦の鶴又おりよかし夕蛙 文化句帖 化2
2592 入相は蛙の目にも涙哉 文化句帖 化2
2593 片ひざは月夜也けり夕蛙 文化句帖 化2
2594 蛙とぶ程はふる也草の雨 文化句帖 化2
2595 草蔭にぶつくさぬかす蛙哉 文化句帖 化2
2596 草かげや何をぶつくさゆふ蛙 文化句帖 化2
2597 なく蛙此夜葎も伸ぬべし 文化句帖 化2
2598 菜の花にかこち顔なる蛙かな 文化句帖 化2
2599 葉がくれに鳴ぬつもりの蛙哉 文化句帖 化2
2600 膝ぶしへ鳴つきそうな蛙哉 文化句帖 化2 「そ」→「さ」
2601 古草のさら〳〵雨やなく蛙 文化句帖 化2 (異) 遺稿 中七「はら〳〵雨や」
2602 痩藪も己が夜也なく蛙 文化句帖 化2
2603 蛙なくやとりしまりなき草の雨 文化句帖 化3
2604 影ぼふし我にとなりし蛙哉 文化句帖 化4
2605 なく蛙夜はあつけなく成にけり 文化句帖 化4
2606 能因が雨もはら〳〵蛙哉 文化句帖 化4
2607 葉隠に年寄声の蛙哉 文化句帖 化4
2608 葉隠の椿見つめてなく蛙 文化句帖 化4
2609 昼比はくつともいはぬ蛙哉 文化句帖 化4
2610 むさい家の夜を見にござれなく蛙 文化句帖 化4
2611 夕蛙葎の雨に老をなく 文化句帖 化4
2612 我門のしはがれ蛙鳴にけり 文化句帖 化4
2613 梅の木を鳴古したる蛙哉 化五六句記 化5
2614 浦人のお飯の上もかはづ哉 文化句帖 化5
2615 ちる花を口明て待かはづ哉 文化句帖 化5
2616 昼顔にうしろの見ゆるかへる哉 化五六句記 化5
2617 山の鐘蛙もとしのよりぬべし 文化句帖 化5
2618 我を見てにがひ顔する蛙哉 文化句帖 化5 「ひ」→「い」
2619 正月を〳〵とやなく蛙 七番日記 化7
2620 花びらに舌打したる蛙哉 七番日記 化7 (出)『浅黄空』『発句鈔追加』書簡(異)『自筆本』中七「舌打をする」
2621 藪並や仕様事なしに鳴蛙 七番日記 化7
2622 夕陰や連にはぐれてなく蛙 七番日記 化7
2623 浅ぢふや歩きながらになく蛙 七番日記 化8 (出)『我春集』(異)『文化三-八年句日記写』『発句集続篇』上五「むら雨や」
2624 象潟や桜を浴てなく蛙 七番日記 化8 (出)『我春集』(異)『版本題叢』『文政版』『希杖本』『あをたづら』中七「桜をたべて」『発句題叢』中七「桜もたべて」
2625 我庵や蛙初手から老を鳴く 七番日記 化8 (出)『我春集』『発句題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』(異)『希杖本』上五「我門や」
2626 かゝる世に何をほたへてなく蛙 七番日記 化9 (出)『株番』『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』
2627 からさきの松真黒に蛙かな 七番日記 化9
2628 草陰に蛙の妻もこもりけり 七番日記 化9
2629 さく花のうちに仕まへよ鳴蛙 七番日記 化9 (異)『株番』上五「花の咲く」
2630 小便の滝を見せうぞ鳴蛙 七番日記 化9 (類) 同日記(化12) 下五「来よ蛍」
2631 づう〴〵し畳 の上の蛙哉 七番日記 化9
2632 掌に居りさうなり蛙哉 七番日記 化9
2633 どち向も万吉とやなく蛙 七番日記 化9 (出)『株番』『発句鈔追加』
2634 逃足や尿たれながら鳴蛙 七番日記 化9
2635 橋わたる盲の迹の蛙哉 七番日記 化9
2636 花[の]根へ推参したる蛙哉 七番日記 化9
2637 蕗の葉に片足かけて鳴蛙 七番日記 化9
2638 ふんどしのやうなもの引蛙哉 七番日記 化9
2639 山吹の御味方申蛙かな 七番日記 化9
2640 夕空をにらみつけたる蛙哉 七番日記 化9
2641 夕不二に尻を並べてなく蛙 七番日記 化9
2642 浅草の不二を踏へてなく蛙 七番日記 化10 (出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』
2643 狗に爰迄来いと蛙哉 七番日記 化10 (異)『志多良』『希杖本』中七「爰迄ござれと」
2644 おぢ甥よいとこはどこやなく蛙 七番日記 化10 「お」→「を」
2645 川かげや大続松をなく蛙 七番日記 化10
2646 草の葉にかくれんぼする蛙哉 七番日記 化10 (出) 同日記(化12)『浅黄空』『自筆本』『希杖本』
2647 柴舟に鳴〳〵下る蛙かな 七番日記 化10
2648 ちる花に腮を並べる蛙哉 七番日記 化10
2649 なの花に隠居してなく蛙哉 七番日記 化10 (異)『句稿消息』上五「なの花へ」
2650 のさ〳〵と恋をするかの蛙哉 七番日記 化10
2651 疱瘡のさんだらぼしへ蛙哉 七番日記 化10 (異)同日記(化15)上五中七「いも神のさんだらぼしに」
2652 むき〳〵に蛙のいとこはとこ哉 七番日記 化10 (出)『文政版』(異)『浅黄空』『自筆本』上五「車座に」
2653 むだ口は一つも明ぬ蛙哉 七番日記 化10 (出)『発句集続篇』
2654 木母寺の花を敷寝の蛙哉 七番日記 化10 (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『希杖本』遺稿
2655 ゆうぜんとして山を見る蛙哉 七番日記 化10 「ゆ」→「い」 (出)『おらが春』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『希杖本』『文政版』『発句鈔追加』遺稿
2656 世[の]中は是程よいを啼蛙 七番日記 化10
2657 我杖としるやじろ〴〵なく蛙 七番日記 化10
2658 うす縁[に]ばりして逃る蛙哉 七番日記 化11 (出)『句稿消息』(異)『浅黄空』『自筆本』上五「花蓙に」
2659 草陰につんとしている蛙かな 七番日記 化11 「い」→「ゐ」 (出)『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』
2660 ちる花にのさばり廻る蛙哉 七番日記 化11 (出)『希杖本』
2661 菜畠に妻やこもりて鳴蛙 七番日記 化11 (出)『発句鈔追加』
2662 一つ星見つけたやうになく蛙 句稿消息 化11 (類)『七番日記』(化11)下五「きじの鳴」
2663 我一人醒たり顔の蛙哉 七番日記 化11 (出)『発句鈔追加』
2664 御地蔵の手に居へ給ふ蛙かな 七番日記 化12 「居へ」→「据ゑ」
2665 亀どのに負さつて鳴蛙哉 七番日記 化12 (出)『浅黄空』『自筆本』
2666 炬をはやし立てや鳴蛙 七番日記 化12 (異)『浅黄空』上五「山焼を」
2667 ちる梅をざぶりと浴てなく蛙 七番日記 化12
2668 天下泰平と居並ぶ蛙かな 七番日記 化12
2669 人を吐やうに居て鳴く蛙 七番日記 化12 (出)『浅黄空』(異)『自筆本』中七下五「所存か口を明く蛙」
2670 目出度の烟聳へてなく蛙 七番日記 化12 「へ」→「え」 (出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』
2671 山吹[に]引くるまりてなく蛙 七番日記 化12
2672 亀どのに上座ゆづりて鳴蛙 七番日記 化13
2673 来かゝりて一分別の蛙かな 七番日記 化13
2674 車座に居直りて鳴く蛙哉 七番日記 化13 (異)『発句集続篇』中七「居直つて鳴」
2675 小仏の御首からも蛙かな 七番日記 化13
2676 ことしや世がよいぞ小蛙大蛙 七番日記 化13 (出)『句稿消息』
2677 西行のやうに居て鳴蛙 七番日記 化13
2678 笹の家の小言の真似を鳴蛙 七番日記 化13 (出)『浅黄空』(異)『自筆本』下五「夕蛙」
2679 叱てもしやあ〳〵として蛙哉 七番日記 化13 (出)『八番日記』(政2)『自筆本』(異)『浅黄空』下五「居蛙」
2680 上人の口真似してやなく蛙 七番日記 化13
2681 小便を致しながらもなく蛙 七番日記 化13 (異)『浅黄空』『自筆本』中七「いたしながらや」『希杖本』中七下五「しながらもなく蛙かな」
2682 順〴〵に座につきてなく蛙哉 七番日記 化13
2683 住吉の神の御前の蛙哉 七番日記 化13
2684 同音に口を明たる蛙かな 七番日記 化13
2685 長の日を脇目もふらでなく蛙 七番日記 化13 (異)『浅黄空』『自筆本』 「長の日に脇目もふらぬ蛙かな」『発句鈔追加』「永の日に口明きくらすかはづかな」
2686 なむ〳〵と口を明たる蛙かな 七番日記 化13
2687 逃しなに何をぶつくさ夕蛙 七番日記 化13 (出)『浅黄空』『自筆本』
2688 女房を追なくしてや鳴蛙 七番日記 化13 (出)『浅黄空』『自筆本』
2689 能因の雨をはやして鳴蛙 七番日記 化13
2690 のゝ様に尻つんむけて鳴蛙 七番日記 化13 (出)『希杖本』
2691 花蓙や先へ居りている蛙 七番日記 化13 「い」→「ゐ」
2692 蛙たゝかひ見にまかる四月廿日也けり 痩蛙まけるな一茶是に有 七番日記 化13 (出)『浅黄空』前書き「たゝかひを見て」 『希杖本』前書き「むさしの国竹の塚といふに蛙たゝかひありけるに見にまかる四月廿日也けり」 真蹟 前書き「蛙たゝかひを見にまかる四月廿日也けり」「蛙たゝかひ」『句稿消息』『自筆本』
2693 山吹や先御先へととぶ蛙 七番日記 化13 (異)『自筆本』『文政版』真蹟 上五 「玉川や」『浅黄空』前書き「深川芭蕉庵の跡拝見して」 上五「古池や」
2694 夕やけにやけ起してや鳴蛙 七番日記 化13 (異)『浅黄空』上五中七「夕やけややけを起して」『自筆本』中七「やけや起して」
2695 我庵に用ありさうな蛙哉 七番日記 化13 (異)『自筆本』『希杖本』中七下五 「用ありさうに来る蛙」『句稿消息』『浅黄空』「我庵や用ありさうに来る蛙」
2696 我門へしらなんで這入る蛙哉 七番日記 化13
2697 足下の月を見よ〳〵鳴蛙 七番日記 政1
2698 有明や火を打まねを鳴蛙 七番日記 政1
2699 庵崎や亀の子笊になく蛙 七番日記 政1 (出)『八番日記』(政2)
2700 江戸蛙一寸も迹へ引ぬかや 七番日記 政1
2701 大蛙から順〴〵に座どりけり 七番日記 政1 (異) 同日記(政1) 「座どりけり大蛙から順〴〵に」
2702 江州に片手をかけて蛙哉 七番日記 政1
2703 散花を奪とりがちになく蛙 七番日記 政1
2704 爪先は夜に入にけり鳴蛙 七番日記 政1
2705 名乗かや是から田子の蛙とて 七番日記 政1 (異) 同日記(政1) 中七下五「是より田子の蛙ぞと」
2706 寅ノエド大火 火の粉追ふ声のはづれや鳴蛙 七番日記 政1
2707 蕗の葉を引かぶりつゝ鳴蛙 七番日記 政1 (出)『浅黄空』『自筆本』
2708 降る火の粉のり越はね越鳴蛙 七番日記 政1
2709 弁天の御前に並ぶ蛙哉 七番日記 政1 (異) 同日記(政1)中七下五「前に並んでなく蛙」
2710 三ヶ月を白眼つめたる蛙哉 七番日記 政1(類)『八番日記』(政3)下五「とんぼ哉」
2711 夕不二[に]手をかけて鳴蛙哉 七番日記 政1 (異)『文政九・十年句帖写』(政9)『発句鈔追加』『発句集続篇』前書き「諏方湖」 中七「片足かけて」
2712 独座 おれとして白眼くらする蛙かな 梅塵八番 政2 (出)『おらが春』『浅黄空』『自筆本』『文政版』書簡 真蹟 (異)『八番日記』(政2) 中七「かゞみくらする」
2713 親分と見へて上座に鳴蛙 八番日記 政2 「へ」→「え」 (出)『嘉永版』
2714 入相の尻馬にのる蛙哉 文政句帖 政5
2715 御座の面〳〵のうしろに蛙哉 文政句帖 政5
2716 田堺やひの図をよつて鳴蛙 文政句帖 政5
2717 古戦場真ゝの井 「ゝ」→「間」 散花をはつたとにらむ蛙哉 文政句帖 政5 (出)『浅黄空』『自筆本』『花百句』
2718 とは申ながらとや又とぶ蛙 文政句帖 政5
2719 鳴出して五分でも引かぬ蛙哉 文政句帖 政5 (出)『浅黄空』『自筆本』
2720 なむ〳〵と蛙も石に並びけり 文政句帖 政5
2721 なむ〳〵と田にも並んでなく蛙 文政句帖 政5
2722 向合て何やら弁をふる蛙 文政句帖 政5 (出)『浅黄空』前書き「田堺を争ひて久しく出て居し村を通りて」『自筆本』
2723 芦の家の仏に何か夕蛙 文政句帖 政7
2724 五百崎や庇の上になく蛙 文政句帖 政7 (出)『浅黄空』『自筆本』
2725 いぼ釣てあちら向たる蛙哉 文政句帖 政7 (出)『浅黄空』前書き「信濃言」『自筆本』(異)『方言雑集』「大蛙いぼを釣るやらあちらむく」
2726 大形をしてとび下手の蛙哉 文政句帖 政7
2727 親蛙ついと横座に通りけり 文政句帖 政7
2728 仙人の膝と思ふか来る蛙 文政句帖 政7
2729 そこらでも江戸が見ゆるか鳴蛙 文政句帖 政7 (出) 同句帖(政8)
2730 散花に首を下る蛙哉 文政句帖 政7
2731 掌に蛙を居るらかん哉 文政句帖 政7
2732 天文を考へ顔の蛙哉 文政句帖 政7 (出)『浅黄空』『自筆本』(異) 同句帖(政8)中七「心得顔の」
2733 鳥井からえどを詠る蛙哉 文政句帖 政7 「井」→「居」 (出)『発句集続篇』前書き「三廻」
2734 野仏の手に居へ給ふ蛙哉 文政句帖 政7 「へ」→「ゑ」 (出)『浅黄空』『自筆本』
2735 昼過や地蔵の膝になく蛙 文政句帖 政7
2736 蕗の葉にとんで引くりかへる哉 文政句帖 政7 (出)『浅黄空』
2737 名〳〵に鳴場を座とる蛙哉 文政句帖 政7 「名」→「銘」
2738 吉原やさはぎに過て鳴かはづ 文政句帖 政7 「さはぎ」→「さわぎ」
2739 じつとして馬に鼾るゝ蛙哉 文政句帖 政8 「鼾」→「嗅」 (出)『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』『梅塵抄録本』『発句集続篇』遺
2740 ちさ蛙こしやくな口をたゝく也 文政句帖 政8 (出)『発句鈔追加』
2741 どつさりと居り込だる蛙哉 文政句帖 政8
2742 三巡り 傍杭に江戸を詠る蛙哉 文政句帖 政8 「傍」→「棒」 (異)『自筆本』上五「きつとして」
2743 豊年の図にのつてなく蛙哉 文政句帖 政8
2744 山吹へ片手で下る蛙哉 文政句帖 政8 (異) 同句帖(政9)『文政九・十年句帖写』上五「山吹に」『発句鈔追加』中七「片手でぶらり」
2745 芦の葉に達磨もどきの蛙哉 文政句帖 政9
2746 じくなんで茨をくゞる蛙哉 文政句帖 政9
2747 今の間に一喧嘩して啼かはづ 希杖本
2748 薄縁やどさり居て鳴く蛙 浅黄空 (出)『自筆本』
2749 大榎小楯に取て啼かはづ 希杖本
2750 御地蔵の膝にすはつてなく蛙 発句鈔追加 「は」→「わ」
2751 御社へじくなんで入るかはづ哉 浅黄空 (出)『自筆本』
2752 けふ明し窓の月よやなく蛙 遺稿
2753 供部屋にさはぎ勝なり蛙酒 発句鈔追加 「は」→「わ」
2754 鳴蛙花の世の中よかるべし 遺稿
2755 寝た牛の頭にすはるかはずかな 発句鈔追加 「すはる」→「すわる」 「ず」→「づ」
2756 星の歌よむつらつきの蛙哉 書簡 (出)『自筆本』
2757 桑つむや負れし柿も手を出して 享和句帖 享3
2758 細腕に桑の葉しごく雨夜哉 享和句帖 享3
2759 二三日はなぐさみといふ蚕哉 文化句帖 化2
2760 大蚤の中にばた〴〵蚕哉 七番日記 化11
2761 さまづけに育られたる蚕哉 七番日記 政1 (出)『だん袋』『文政版』『自筆本』真蹟 (異)『八番日記』(政3) 中七「育て上たる」
2762 たのもしや棚の蚕も喰盛 七番日記 政1
2763 人並に棚の蚕も昼寝哉 七番日記 政1
2764 村中にきげんとらるゝ蚕哉 七番日記 政1 (出)『だん袋』(異)『自筆本』上五「内中に」『文政版』上五「惣々に」
2765 家うちして夜食あてがふ蚕哉 七番日記 政1
2766 蚕医者〳〵はやる娘かな 八番日記 政3 (異)『梅塵八番』中七「蚕医者する」
2767 末の子も別にねだりて蚕かな 文政句帖 政5
2768 門〳〵に青し蚕の屎の山 文政句帖 政7
2769 虻蜂やよしさゝれても京の山 七番日記 化10
2770 それ虻に世話をやかすなせうじ窓 七番日記 化14 「せ」→「しや」 (異)『文政版』真蹟 下五「明り窓」
2771 又虻に世話をやかすぞ明り窓 七番日記 化14
2772 此方が庵の道とや虻がとぶ 八番日記 政3
2773 道連の虻一つ我も一人哉 八番日記 政3
2774 山道の案内顔や虻がとぶ 八番日記 政3
2775 山道や斯う来い〳〵と虻が飛 八番日記 政3 (出)『発句鈔追加』
2776 草の葉に虻の空死したりけり 梅塵八番 政4
2777 虻おふな花を尋て来たものを 文政句帖 政5
2778 馬の虻喰くたびれ[て]寝たりけり 文政句帖 政5
2779 馬の尾にそら死したり草の穴 文政句帖 政5 「穴」→「虻」
2780 神風や虻が教へる山の道 文政句帖 政5 (出)『文政九・十年句帖写』前書き「奉納」 真蹟 前書き「是より東大日本国」『浅黄空』『自筆本』『文政版』
2781 斯来いと虻がとぶ也草の道 文政句帖 政5
2782 とぶ虻に任せて行ば野茶屋哉 文政句帖 政5
2783 山虻や人待てとび待てとび 文政句帖 政5 (出)『浅黄空』
2784 藪の蜂来ん世も我にあやかるな 文化句帖 化4
2785 巣の蜂のくつとも云ぬくらし哉 七番日記 化7 (異) 同日記(化7)『浅黄空』上五「軒の蜂」
2786 山住や蜂にも馴て夕枕 七番日記 化7
2787 山蜂も軒の主はしりにけり 七番日記 化7 (異)『浅黄空』上五「熊蜂も」
2788 山蜂や鳴〳〵抜る寺座敷 七番日記 化10 (異)『志多良』中七下五「鳴〳〵通る大ざしき」
2789 夜〳〵や荒熊蜂も子に迷ふ 七番日記 化10
2790 一畠まんまと蜂に住れけり 七番日記 化11 (異)『句稿消息』上五「むまい菜は」
2791 みよしのへ遊びに行や庵の蜂 七番日記 化11 (出)『文政句帖』(政5)『句稿消息』 (異)『発句鈔追加』上五「吉野まで」『浅黄空』前書き「下市に泊りて」中七「かせぎに行や」
2792 大蜂の這出る木の目袋哉 七番日記 化13 「目」→「芽」
2793 隠家を蜂も覚て帰る也 七番日記 政1
2794 辻堂の蜂の威をかる雀哉 七番日記 政1
2795 野みやげや風呂敷とけば蜂[の]声 七番日記 政1
2796 蜂鳴て人のしづまる御堂哉 七番日記 政1
2797 蜂の巣[や]地蔵菩薩の御肱[に] 七番日記 政1
2798 屎虫や蜂と成てもきらわるゝ 八番日記 政3 「わ」→「は」
2799 熊蜂も軒端を知て帰りけり 八番日記 政3
2800 いくたり[も]役介も[の]や夫婦蜂 八番日記 政4 「役」→「厄」
2801 親蜂や蜜盗まれてひたと鳴 八番日記 政4
2802 子もち蜂あくせく蜜を[か]せぐ也 八番日記 政4
2803 蜂の声をふささうじや合点坂 八番日記 政4 「をふ」→「おう」「じ」→「ぢ」
2804 蜂の巣の隣をかりる雀哉 八番日記 政4
2805 蜂の巣に借しておいたる柱哉 文政句帖 政5 「借」→「貸」
2806 蜂の巣のぶらり仁王の手首哉 文政句帖 政5
2807 蜂の巣やぶんともいはぬ御法だん 文政句帖 政5
2808 山蜂もしたふて住や人の里 文政句帖 政5 「ふ」→「う」
2809 我にによ〳〵とて蜂のおせは哉 文政句帖 政5 「は」→「わ」
2810 正直の門に蜜蜂やどりけり 文政句帖 政7
2811 蜂逃て狙はきよろ〳〵眼哉 文政句帖 政7
2812 蜂の巣にかしておくぞよ留主の庵 文政句帖 政7
2813 みつ蜂や隣に借せばあばれ蜂 文政句帖 政7 「借」→「貸」
2814 うつるとも花見虱ぞよしの山 七番日記 化8
2815 おのれらも花見虱[で]候よ 七番日記 化12 (出)『栗本雑記五』(異) 遺稿 上五「おのれさへ」
2816 痩虱花の御代にぞ逢にけり 七番日記 化12 (異)『発句鈔追加』上五中七「やよ虱花の御代にも」
2817 のさ〳〵とさし出て花見虱かな 文政句帖 政5
2818 白魚のしろきが中に青藻哉 西国紀行 寛7
2819 白魚と申もしばし角田川 文化句帖 化1
2820 白魚に松の旭のいら〳〵し 文化句帖 化1
2821 白魚舟一つへりてもおぼろ也 文化句帖 化1
2822 江戸川に気づよく見へぬ白魚哉 文化句帖 化5 「へ」→「え」
2823 白魚に大泥亀も遊びけり 文化句帖 化5
2824 白魚のどつと生るゝおぼろ哉 文化句帖 化5 (出) 遺稿
2825 白魚やきのふも亀の放さるゝ 文化句帖 化5
2826 白魚や蝶が立てもおそはれし 文化句帖 化5
2827 入相や桜のさはぐ鮎さわぐ 七番日記 化7 「は」→「わ」
2828 心して桜ちれ〳〵鮎小鮎 七番日記 化7
2829 笹陰を空頼みなる小鮎哉 七番日記 化7
2830 ちる花の足を詠る小鮎汲 七番日記 化7
2831 花の散る拍子に急ぐ小鮎哉 七番日記 化7
2832 花の世や親は滝とび子は小鮎 七番日記 化7
2833 わか鮎は西へ落花は東へ 七番日記 化7
2834 鮎迄もわか盛也吉の川 七番日記 化12 (出)『発句集続篇』(異)『浅黄空』『自筆本』中七「わか盛りぞよ」
2835 いざさはげわか盛りぞよ吉の鮎 七番日記 化12 「は」→「わ」
2836 逃るやら遊ぶやら鮎小鮎哉 七番日記 化12
2837 わか鮎やとらるゝ穴を逃所 七番日記 化12 (出)『浅黄空』『自筆本』
2838 首出して身寄虫見るらん巣なし鳥 文政句帖 政7
2839 捨家に大あんどする身寄虫哉 文政句帖 政7
2840 住みづらい里はないとや身寄虫どの 文政句帖 政7
2841 すめば住む世とや身寄虫の拾ひ家 文政句帖 政7
2842 一寸寝てするべつたりの身寄虫哉 文政句帖 政7
2843 一寸寝るふりをしている身寄虫哉 文政句帖 政7 「い」→「ゐ」
2844 うたかたや淡の波間の平家蟹 寛政句帖 寛4
2845 旧懐の俳諧して浦辺を逍遥して にな蟹と成て女[に]嫌れな 西国紀行 寛7
2846 平家蟹昔はこゝで月見船 西国紀行 寛7
2847 蟹となり藻となり矢島守かや 享和句帖 享3
2848 海のなき国をおもひきる田にし哉 西国紀行 寛7
2849 三ヶ月や田螺をさぐる腕の先 文化句帖 化2
2850 青芝ぞ爰迄ござれ田にし殿 七番日記 化9
2851 大山も作るべう也田にし殻 七番日記 化9
2852 小盥や今むく田螺辷あそぶ 七番日記 化9 (異)『発句集続篇』下五「辷り合」
2853 さゞ波や田螺がにじる角大師 七番日記 化9
2854 尋常に引つかま[る]ゝ田にし哉 七番日記 化9
2855 六道 鳴田螺鍋の中ともしらざるや 七番日記 化9
2856 寝たり〳〵天下大平の田にし哉 七番日記 化9 「大」→「太」
2857 木母寺や花見田にしとつくば山 七番日記 化9
2858 地獄 夕月や鍋の中にて鳴田にし 文政版 (出)『ほと拍子』『九日』
2859 蛤の芥を吐する月夜かな 七番日記 化7
2860 蛤や在鎌倉の雁鴎 自筆本
2861 蜆さへ昔男のゆかりにて 文化句帖 化2
2862 鳩の藪雀の垣やから蜆 七番日記 化13 (異)『自筆本』下五「蜆殻」
2863 陽炎にぱつかり口を浅蜊哉 七番日記 化11 (出)『句稿消息』『浅黄空』(異)『自筆本』中七「ぱつくり口を」
2864 芽芒や寒祭りも今の事 七番日記 化7
2865 山の草芽出す[と]直に売られけり 七番日記 化7
2866 門の草芽出すやいなやむしらるゝ 八番日記 政2
2867 芽出しから人さす草はなかりけり 八番日記 政2 (出)『自筆本』『男草紙一』『椎柴』真蹟
2868 草の芽よ斯う枯るとてあひらしく 八番日記 政4 「ひ」→「い」 (異)『浅黄空』『自筆本』上五下五「草のめや・・・あいらしき」
2869 萩の芽や人がしらねば鹿が喰 希杖本
2870 二葉から水向草は紛れぬぞ 七番日記 化7 (出) 遺稿
2871 うつくしや貧乏蔓もまだ二葉 七番日記 化9
2872 三葉二葉貧乏蔓もうつくしき 七番日記 化11
2873 寝転んで若草摘る日南哉 寛政句帖 寛5
2874 柳にもやをらまけじ[と]葎哉 文化句帖 化1
2875 東叡山 わか草に出当し日也寛永寺 文化句帖 化1
2876 巣兆の婦人例ならぬとて乙二、道彦とおなじく千住 におもぶく かへるさ穏坊の家をよ所に見なして 「穏」→「隠」 わか草や誰身の上の夕けぶり 文化句帖 化1 (異) 同句帖(化1) 上五中七「わか草と見るもつらしや」 同句帖(化1) 中七「わが身ならねど」
2877 上野にて わか草に御裾引ずり給ひけり 文化句帖 化2
2878 若草に冷飯すゝむ伏屋哉 文化句帖 化3
2879 わか草に夜も来てなく雀哉 文化句帖 化3
2880 わか草や油断を責る暮の鐘 文化句帖 化3
2881 わか草に我もことしの袂哉 文化句帖 化5
2882 わか草や我と雀と遊ぶ程 文化句帖 化5
2883 わか草に引かけ給ふ[裳]裾かな 化五六句記 化6
2884 草〴〵もわかいうちぞよ村雀 七番日記 化7
2885 世につれて庵の草もわかいぞよ 七番日記 化9 (異) 同日記(化11) 中七下五「門の葎もわかやぐぞ」
2886 わか草や町のせどのふじの山 七番日記 化9
2887 わか草やわざとならざる松に鶴 七番日記 化10
2888 当帰のやうにつや〳〵しき草を世俗に馬芹とよぶ。此 里人、此馬芹食して直に死きとなんも、おそろしく。 毒草のそぶりも見へぬわか葉哉 七番日記 化11 「へ」→「え」 (異)『希杖本』中七 「そふとも見えぬ」『発句集続篇』前書き「当帰のやうにしてつや/\しき草を世俗に馬芹とよぶ。此里人、馬ぜりを喰して直に死したりとなん。おそるべし〳〵」 中七「そぶりも見せぬ」
2889 わか草にどた〴〵馬の灸かな 七番日記 化11
2890 わか草に勇に負たる庵かな 七番日記 化11 「勇に」→「勇み」
2891 わか草ののう〳〵とする葉ぶり哉 七番日記 化11 (出)『句稿消息』
2892 わか草の待かね顔のそよぎ哉 七番日記 化11 (異)『希杖本』中七下五「待かね顔にそよぐなり」
2893 かくれ家や日〳〵草は若くなる 七番日記 化13 (異)『句稿消息』中七「草は日に〳〵」
2894 わか草に笠投やりて入る湯哉 七番日記 化13
2895 わか草や追ふ事ならぬ雁烏 七番日記 化13
2896 門の草生始からうとまるゝ 七番日記 政1 (出)『八番日記』(政2)『発句集続篇』
2897 門畠憎くまれ草もわか〳〵し 七番日記 政1
2898 わか草に背をこする野馬哉 七番日記 政1
2899 わか草よやがて野守ににくまれん 七番日記 政1
2900 若ければ野藪の草もつまれけり 七番日記 政1
2901 うちはぐみ人さす草でなかりけり 八番日記 政2
2902 竹の葉につれて葎もわか葉哉 八番日記 政2
2903 わか草や北野参りの子ども講 八番日記 政2 (出)『嘉永版』(異) 真蹟 中七「北野へ曲る」
2904 わか草が此世の明り見るやいな 八番日記 政4
2905 草蔓や向ふの竹へつひ〳〵は 文政句帖 政5 「ふ」→「う」 「ひ」→「い」 「は」→「と」
2906 わか草と名乗やいなや踏れけり 文政句帖 政5 (出)『発句集続篇』
2907 わか草と呼れず仕廻ふ家陰かな 文政句帖 政5
2908 わか草と呼ればそよぐ葎哉 文政句帖 政5
2909 わか草にべたりと寝たる袴哉 文政句帖 政5
2910 わか草やついとほけたる町の縁 文政句帖 政5
2911 わかくてもでも葎とはしられけり 文政句帖 政5
2912 若ければ貧乏蔓でなかりけり 文政句帖 政5
2913 古郷は家根のわか草つみにけり 文政句帖 政6
2914 わか草と云はるゝうちも少かな 文政句帖 政7
2915 愛相やのべの草さへ若盛り 文政句帖 政8 「相」→「想」
2916 若草をむざ〳〵ふむや泥わらぢ 文政句帖 政8 (出)『発句鈔追加』
2917 わか草の扨もわかい〳〵ぞよ 文政句帖 政8
2918 わか草やとも〴〵引立姫小松 文政句帖 政8
2919 若草 人つきの有や草ばもわか盛 文政句帖 政9 (出)『希杖本』
2920 人つきや野原の草も若盛り 書簡
2921 真丸に若草ほける御寺かな 発句鈔追加
2922 若草で足拭ふなり這入口 発句鈔追加
2923 若草や今の小町が尻の迹 希杖本 (異)『発句集続篇』下五「足の跡」
小林一郎氏編「一茶発句全集」凡例
『一茶全集』第一巻(発句)を底本にして『一茶大事典』『一茶新攷』(矢羽勝幸氏著)、『全註一茶七番日記』(丸山一彦氏編)、長野郷土史研究会機関誌「長野」等を参照し、私見を加えて補訂した。一茶の発句を季語によって整理し、作句年次順に配列した。同一年のものは五十音順とした。
季語の配列順序は『一茶全集』第一巻(発句)にならったが、私見により新たに季語を立てた場合がある。
上から、発句、出典、作句年次、補注の順に記載した。
片仮名は平仮名に改めた。旧漢字、異体字などは現行の漢字に改めた。
脱字は[ ]として補入した。衍字はをつけて示した。
作句年次の元号は一字に省略した。 天(天明1781-89)、 寛(寛政1789-1801)、享(享和1801-04)、化(文化1804-18)、政(文政1818-30)
誤字の訂正、歴史的仮名遣いへの書き換えは「 」→「 」として示した。
同一句形で他に出典のあるものは(出)として、異なる句形の出典は(異)として示した。類似句は(類)とした。
『嘉永版一茶発句集』は『文政版一茶発句集』を増補したものである。『嘉永版一茶発句集』で増補された発句は出典を『嘉永版』とし、両者ともに掲載する発句は『文政版』とした。
出典書名が五字を越える場合は以下のように省略した。
・寛政三年紀行(寛政三紀行)
・与州播州雑詠(与播雑詠)
・父の終焉日記(終焉日記)
・享和二年句日記(享和二句記)
・文化三-八年句日記写(化三-八写)
・文化五-六年句日記(化五六句記)
・句稿消息断片(句稿断片)
・文化十年句文集(化十句文集)
・一茶自筆句集(自筆本)
・「文政句帖」文政七年十二月分草稿(政七草稿)
・「文政句帖」文政八年五・六・七月分草稿(政八草稿)
・文政九・十年句帖写(政九十句写)
・文政版一茶発句集(文政版)
・嘉永版一茶発句集(嘉永版)
・一茶発句集続篇(発句集続篇)
・一茶発句鈔追加(発句鈔追加)
・希杖本一茶句集(希杖本)
・一茶園月並裏書(月並裏書)
・梅塵本八番日記(梅塵八番)
・西国紀行余白書込(西紀書込)
・一茶翁終焉記(終焉記)
・近世発句類題集(発句類題集)
・発句題葉集(題葉集)
・其日庵歳旦帳(其日庵歳旦)
・辛亥元除遍覧(辛亥遍覧)
・甲子元除遍覧(甲子遍覧)
・発句二葉草寅巻(二葉草寅巻)
・斗入法師句帖(斗入句帖)