「一茶句集」新年試作20240106

この「一茶句集」は長野郷土史研究会小林一郎会長の編集になる「一茶発句全集」(新年・春・夏・秋*の季語ごとに整理し公開中)をもとに、同研究会の了解をいただき、スマホやPCで手軽に一茶の句を読めるように句番号とルビを加えて載せています。

「一茶発句全集」の凡例をページ末尾に転載しましたので、ご参照ください。*秋(植物)・冬・雑は未公開

no小林一郎編「一茶発句全集」新年
1元日やさらに旅宿りょしゅくとおもほへず
西国紀行 寛7 「へ」→「え」
2だいだいやいつも律義りちぎに三ツの朝
玉の春 寛9
3元日にかわいや遍路へんろ門に立
西国書込 寛中 「わ」→「は」
4元日の寝そべる程は曇る也
文化句帖 化1
5元日もここらは江戸の田舎いなか
文化句帖 化4
6さながらのみちの悪<る>さよ日の始
文化句帖 化5
7いしずえや元日しまの巣なし鳥
化三―八写 化6
8元日や我のみならぬ巣なし鳥
化五六句記 化6
(出)『文化三―五句日記写』
9家なしも江戸の元日したりけり
七番日記 化7
10牛馬も元日顔の山家やまが
書簡 化7
(出)『発句鈔追加』
11さとや馬も元日いたす顔
七番日記 化7
12例の通[り]梅の元日いたしけり
七番日記 化8
13あれ小雪さあ元日ぞ/\
七番日記 化11
14彼らにも元日させんはとすゞめ
七番日記 化11
(出)『発句鈔追加』
15元日をするやそろふ[て]小田のかり
七番日記 化14 「ふ」→「う」
16小菜畠おなばたけ元日さへをしたりけり
七番日記 化14
17ぬく/\と元日するや寺の縁
七番日記 化14
18やりにやり大元日の通り哉
七番日記 化14
19我門は昼過からが元日ぞ
七番日記 化14
(異)同日記(化14)上五「我庵は」
20元日も立のまゝなる屑家くずや
八番日記 政4
(出)『発句鈔追加』 (異)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『文政版』遺稿 中七「立のまんまの」
21元日も別条のなき屑屋哉
八番日記 政4
(出)『発句鈔追加』
22元日やどちら向ても花の娑婆しゃば
八番日記 政4
(異)同日記(政4)中七「日本ばかりの」『梅塵八番』中七「日本ばかり」『発句鈔追加』『梅塵抄録本』中七「我等ぐるめに」
23元日に曲眠きょくねむりする美人哉
文政句帖 政6
24元日や目出度めでた尽し旅の宿
文政句帖 政7
25元日はむりに目出度旅寝哉
政七草稿 政7
26世の中をゆり直すらん日の始
文政句帖 政7
27元日やいおりの玄関の仕拵しごしら
文政句帖 政8
28元日やくらいうちから猫の恋
文政句帖 政8
29元日に十念仏のゆきゝ哉
文政句帖 政8
30苦にやんだ元日するや人並に
文政句帖 政8
(異)『発句鈔追加』前書き「旅」とあり 中七「元旦すむや」
31元日
元日の日向ひなたぼこする屑屋かな
発句鈔追加
32元日や上々吉の浅黄あさぎ
浅黄空
(出)『自筆本』『俳諧寺抄録』『文政版』『希杖本』遺稿 真蹟
33昼頃に元日になる庵かな
発句鈔追加
34年立や日の出を前の舟の松
文化句帖 化2
35あら玉のとし立かへるしらみ
文化句帖 化5
(出)『発句題叢』『浅黄空』『自筆本』『嘉永版』『発句鈔追加』『希杖本』『発句類題集』
36あら玉の春早々の悪日哉
文政句帖 政4
37新家賀
年立や雨おちの石へこむ迄
文政句帖 政5
(出)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『文政版』遺稿 (異)『あつくさ』上五「新宅や」
38年立やもとのが又愚にかへる
文政句帖 政5
39あら玉や江戸はへぬきの男松
文政句帖 政6 「へ」→「え」
40梅さくや先あら玉の御制札ごせいさつ
文政句帖 政6
41遊民/\とかしこき人に叱られても今更せんすべなく 
又ことし娑婆塞しゃばふさぎぞよ草の家
文化句帖 化3
(出)『発句題叢』『希杖本』 (異)『発句鈔追加』中七下五「娑婆塞なり草の庵」
42又ことし娑婆塞なる此身哉
七番日記 化11
(出)『希杖本』(異)『発句鈔追加』下五「茶の煙り」
43神々や今年も頼む子二人
七番日記 政1
44六十二のとし 
ことしから丸もふけ也娑婆の空
梅塵八番 政3 「もふ」→「まう」
45ことしから手左り笠[に]小風呂敷
八番日記 政4
46去十月十六日中風に吹掛されて有に比邙の夕の忌み/\しき虫となりしを此正月一日はつ鶏[に]引越されてとみ[に]東山の地の旭のみがき出せる玉の春を迎ひるとは、我身を我めづら しく生れ代りてふたゝび此世を歩く心ちなん 
ことしから丸もうけぞよ娑婆遊び
八番日記 政4 
前書き「掛」→「倒」「有」→「直」「比」→「北」「越」→「起」「迎ひる」→「迎ふる」 (出)書簡 (異)『発句鈔追加』上五「これからが」
47ことしからまふけ遊びぞ花の娑婆
八番日記 政4 「ふ」→「う」
(異)『浅黄空』『自筆本』下五「日和笠」
48正月の子供に成て見たき哉
西紀書込 寛中
(出)『樗堂俳諧集』前書き「即興」
49正月やよ所に咲ても梅の花
文化句帖 化1
50正月のけしきになるや泥に雪
 文化句帖 化2
51鳥なくや野老ところ畳もお正月
文化句帖 化2 「老」→「郎」マゝ
52長閑のどけしや梅はなく[と]もお正月
文化句帖 化3
53亀の身の正月も立日也けり
文化句帖 化4
54正月[や]猫の塚にも梅の花
文化句帖 化5
55正月や村の小すみの梅の花
化五六句記 化5
56古羽織ふるばおりながの正月も過にけり
文化句帖 化5
57正月がへる夜/\のかすみかな
古今綾嚢 化6
58正月はあとの祭りや春の風
化五六句記 化6
59正月の町にするとや雪がふる
七番日記 化8
(出)『我春集』
60正月や外はか程のおん月夜
七番日記 化8
61正月ややっこひげのなささうに
七番日記 化8
62正月も廿日はつか過けりはをり客
七番日記 化9 「を」→「お」
63正月や梅のかはりの大吹雪おおふぶき
七番日記 化10
(出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』
64並の正月もせぬしだら哉
七番日記 化10
(異)『志多良』『終焉記』上五「人並の」、『句稿消息』上五「君が代の」
65正月や辻の仏も赤頭巾ずきん
七番日記 化11
66正月やゑたの玄関も梅の花
七番日記 政1
67正月や夜は夜とて梅の月
七番日記 政1
(出)『おらが春』(異)『発句鈔追加』下五「梅の花」
68正月や貸下駄げた並ぶ日陰ひかげ
八番日記 政2
69北国や家に雪なきお正月
八番日記 政3
(異)同日記(政3)上五「たのもしや」
70初雨はつさめや北国本のお正月
八番日記 政3
(出)『浅黄空』『自筆本』
71道ばたの土めづらしやお正月
八番日記 政3
72正月が二つありとや浮寝鳥うきねどり
八番日記 政4
(出)『浅黄空』(異)『自筆本』『希杖本』上五「正月の」、書簡 中七「二つあるとや」
73正月の二つもなまけ始かな
八番日記 政4
(異)『浅黄空』『自筆本』中七「二つは」
74後のゝは正月ぞともいはぬ也
文政句帖 政5
75正月も二つは人のあきる也
文政句帖 政5
76二つあれば又三つほしやお正月
文政句帖 政5
77二つでもつかひではなしお正月
文政句帖 政5
(異)同句帖(政5)中七「欲には足らず」
78正月の二つふたつとなまけけり
だん袋 政6
(出)『発句鈔追加』
79正月や店をかざれる番太郎ばんたろう
文政句帖 政6
80正月や目につく下司げすの一寸戸
文政句帖 政7
(出)『浅黄空』『自筆本』
81閏のありけるとし
正月が二日有ても皺手しわて
遺稿
82正月や現金酒の通ひ帳
浅黄空
(出)『自筆本』
83猫塚[に]正月させるごまめ哉
浅黄空
(出)『自筆本』
84寛政五年元日 肥後八代正教寺にありて
花じやぞよ我もけさから卅九さんじゅうく
浅黄空 寛5 「じ」→「ぢ」
(出)『自筆本』 『俳諧寺抄録』(異)真蹟 上五「花じやもの」『七番日記』(化10)上五下五「花じやもの・・・廿九」
85おいが身の値ぶみをさるゝけさの春
七番日記 化7
86けさの春四十九じやものこれも花
七番日記 化8 「じ」→「ぢ」
87けさ程やちさい霞も春じやとて
七番日記 化8 「じ」→「ぢ」
88口べたの東烏とうがらすもけさの春
七番日記 化9
(出)『浅黄空』『自筆本』
89みどり子や御箸おはしいたゞくけさの春
七番日記 化9
90骨つぽい柴のけぶるをけさの春
七番日記 化11
(類)『七番日記』(化10)中七下五「柴のけぶりをけさの花」
91影ぼしもまめ息才そくさいでけさの春
七番日記 化14 「才」→「災」
(出)『浅黄空』『自筆本』(異)『俳諧寺抄録』上五「影法師と」『発句鈔追加』下五「御慶かな」
92二つ子にいふ
へ笑へ二つになるぞけさからは
七番日記 政1
(出)『おらが春』『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』(異)『発句鈔追加』下五「けふからは」
93鶯のいな鳴やうも今朝けさの春
八番日記 政2
(出)『嘉永版』
94弥陀仏みだぶつをたのみに明て今朝の春
真蹟 政3
95けさの春別な村でもなかりけり
八番日記 政4
96先以まずもって別条はなしけさの春
文政句帖 政5
97小便もうかとはならずけさの春
文政句帖 政6
98散雪ちるゆきも行義正しやけさの春
文政句帖 政6 「義」→「儀」
(異)同句帖(政7)上五「散雪の」
99行灯あんどんのかたつぴらよりけさの春
発句鈔追加
(異)『文政句帖』(政8)下五「明の春」
100草の戸やいづち支舞じまいの今朝の春
発句鈔追加
101けさ春とくまねしたりひとり坊
発句鈔追加
102四十年ぶりにて古郷に入
ふしぎ也生れた家でけさの春
浅黄空
(出)『俳諧寺抄録』(異)『自筆本』前書き「五十年ぶりで古郷に入」真蹟 下五「けふの春」
103乞食こつじき護摩酢ごますむらん今日[の]春
西国紀行 寛7  
104あばら家や其身其まゝあけの春
八番日記 政2
(異)『嘉永版』上五「あばら家の」
105屋根/\の窓や一度に明の春
八番日記 政4
106武士町ぶしまちやしんかんとして明の春
文政句帳 政6
107行灯の片つぴらより明の春
文政句帳 政8
(異)『発句鈔追加』下五「けさの春」
108善光寺やかけ念仏で明の春
文政句帳 政8
109五十年ぶりで古郷に入
ふしぎ也生れた家でけふの春
自筆本
(出)真蹟(異)『浅黄空』前書き「四十年ぶりにて古郷に入」『俳諧寺抄録』下五「けさの春」
110我宿もうたゝあるさまや御代みよ[の]春
文化句帖 化3
111さかゆきに神の守らん御代の春
文化句帖 化4 
112日の本や金も子をうむ御代の春
文政句帖 政7
(出)同句帖(政8)(異)『自筆本』中七「金が子をうむ」
113へらさぎも万才聞か君が春
文化句帖 化3  
114拙者せっしゃ義も異義なくそうろう君が春
文政句帖 政5 「義」→「儀」
115こけるなよ土こんにやくも玉の春
八番日記 政4
116青空にきず一つなし玉の春
文政句帖 政7
(出)『俳諧寺抄録』『自筆本』 (異)『発句集続篇』上五「大空に」、『浅黄空』中七「くも一つなし」 
117象潟きさがたもけふはうらまず花の春
千題集 寛1
118頭巾とる門はどれ/\花の春
享和句帖 享3
119身じろぎのならぬ家さへ花の春
享和句帖 享3
120又土になりそこなうて花の春
文化句帖 化1
121君が世やよの膳にて花の春
文化句帖 化3
122薮並やぶなみや貧乏草も花の春
文化句帖 化5
123朝笑いくらにかうか花の春
化五六句記 化6
124家なしの身に成て見る花[の]春
化五六句記 化6  
125大江戸[や]芸なし猿も花の春
七番日記 化7
126下京やくらいうちから花の春
七番日記 化7
127身一つも同じ世話也花の春
七番日記 化7
128我庵わがいおや菜の二葉より花の春
七番日記 化7
129おのれやれ今や五十の花の春
七番日記 化9
(出)『株番』
130五十年あるも不思儀ぞ花の春
七番日記 化9 「儀」→「議」
131すりこ木のやうな歯茎も花の春
七番日記 化10
132大雪の我家なればぞ花の春
七番日記 化12
133こんな身も拾ふ神ありて花[の]春
七番日記 化13
(異)『自筆本』上五「塵の身も」、真蹟 上五中七「塵の身を拾ふ神あり」
134吹風の上にやどれる境界もけさは人並に餅を祝
ちりの身のふはり/\も花の春
句稿消息 化13
(出)『自筆本』(異)『浅黄空』『俳諧寺抄録』真蹟 中七「ふはり/\と」
135何なくと生れた家ぞ花の春
七番日記 化13
136ちり/\に居てもする也花の春
七番日記 化14
137じいが世や枯木も雪の花の春
文政句帖 政8 
138門口や自然生じねんばえなる松の春
八番日記 政4
139とてもならみろくの御代を松の春
自筆本
(出)真蹟
140引窓の一度にあくや江戸の春
文政句帖 政5
141家根やねの窓一度に引や江戸の春
文政句帖 政5
142雑煮ぞうにいはふ吾も物かは旅の春
寛政句帖 寛6
143出て見れば我のみならず初旅寝
西国紀行 寛7
144くつさめは我がうはさか旅の春
文政句帖 政5
145むさしのや大名衆も旅の春
文政句帖 政8
146うぐいすのくる影ぼしも窓の春
八番日記 政3
147山家
鶯のぐな鳥さへも窓の春
文政句帖 政5
(異)『希杖本』中七「ぐな鳥影も」 草庵二句
148庵の春寝そべる程は霞なり
嘉永版
(出)『発句題叢』『希杖本』(異)『発句鈔追加』下五「霞けり」
149わが春は竹一本に柳哉
文化句帖 化1
150わが春やたどん一つに小菜おな
文化句帖 化2
151我春も上々吉よ梅の花
七番日記 化8
(出)『自筆本』前書き「はつ春」 (異)『随斎筆紀』『発句題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』中七「上々吉ぞ」
152わが春も上々吉よけさの空
七番日記 化11
153(「おらが春序文)
目出度さもちう位也おらが春
おらが春 政2
(出)『発句鈔追加』
154しづけしや春を三島のほかけ舟
西国紀行 寛7  
155なべ一つ柳一本も是も春
文化句帖 化1
156欠鍋かけなべあさひさす也是も春
文化句帖 化2
157はつ春も月夜となるや顔のしわ
文化句帖 化2
(異)『発句鈔追加』『発句題叢』『希杖本』『発句類題集』中七下五「月夜になるや人の皺」
158初春も月夜もよ所に伏家ふせや
文化句帖 化2
159はつ春やけぶり立るも世間むき
文化句帖 化4
(出)『七番日記』
160我門わがかどや芸なしばとも春を鳴
文化句帖 化4
161貧乏ぐさめでたき春にあいにけり
文化句帖 化5
162家なしの此身も春にふ日哉
化五六句記 化6
(出)『文化三-八年句日記写』
163ふがいない身となおぼしそ人は春
七番日記 化10 「ふがい」→「ふがひ」
164世[の]中の梅よ柳よ人は春
志多良 化10
165男風今や吹らん島の春
七番日記 化11
(出)『浅黄空』『自筆本』真蹟
166狼も上下かみしもで出よいぬの春
七番日記 化12 「上下」→「裃」
167初春のけりは我[と]雀かな
八番日記 政4
(出)『自筆本』『発句鈔追加』
168一面にろくな春也かどの雪
文政句帖 政5
169大雪のど[こ]がどこまでろくな春
文政句帖 政5
170小ばくちは蚊のまじないや里の春
文政句帖 政8
171富士の画に
初春や千代のためしに立給ふ
遺稿
(出)『文政版』
172春立といふばかりでも草木哉
享和句帖 享3
173春立や十三年人の飯
文化句帖 化1
174両国橋上看紫曙
春立や見古みふるしたれど筑波山
文化句帖 化1
(出)『七番日記』『発句集続篇』前書き「窓前」、『発句題叢』『発句鈔追加』『希杖本』
175春立やよしのはおろか人の顔
文化句帖 化1
176ちぐはぐの下駄げたから春は立にけり
文化句帖 化2
177春立や草さへ持たぬかどに迄
文化句帖 化2
178不二賛
けぶりさへ千代[の]ためしや春の立
文化句帖 化4
(類)真蹟 前書き「不二山」、『発句鈔追加』「我国はけぶりも千代のためし哉」
179沙汰さたなしに春は立けり草屋敷
文化句帖 化4
180春立やかゝる小薮こやぶもうぐひすと
文化句帖 化4  
181春立といふより見ゆる壁の穴
文化句帖 化5
182春立とさるも袖口見ゆる也
文化句帖 化5
183春立や我家の空もなつかしき
文化句帖 化5
184門/\の下駄の泥より春立ぬ
七番日記 化7
185春立と申もいかゞ上野山
七番日記 化7
(出)『嘉永版』
186春立や夢に見てさへ小松原
七番日記 化8
187春立やこももかぶらず五十年
七番日記 化9
(異)同日記(化9)中七「先人間の」
188春立やみろく十年たつの年
七番日記 化9
189春立やうしにも馬にもふまれずに
七番日記 化14 「午」→「牛」
190足元に鳥が立也春も立
七番日記 政1
191春立や弥太郎あらため一茶坊
七番日記 政1
(異)『八番日記』(政2)下五「はいかい寺」
192春もはや立ぞふ三ケの月
七番日記 政1
193春たちて磯菜いそなも千代のためし哉
八番日記 政3
(異)『梅塵八番』中七「磯菜の千代の」
194春立や二軒つなぎの片住居ずまい
八番日記 政3
195春立や庵の鬼門きもんの一り塚
八番日記 政4
(出)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『発句鈔追加』
196春立や切口上きりこうじょう門雀かどすずめ
八番日記 政4 (出)『発句鈔追加』
197ろくな[春]立にけらしな門の雪
文政句帖 政5
198春立やの上に又愚にかへる
文政句帖 政6
(出)『文政版』遺稿(異)『自筆本』中七「愚の上を又」 蓬来
199春立や米の山なるひとつ松
文政句帖 政7 「来」→「莱」?
200はる立や門の雀もまめなかほ
発句鈔追加
201葎家むぐらやも春になりけり夜[の]雨
文化句帖 化2
202うつくしき春に成しけり夜の雨
七番日記 化2
203あつさりと春は来にけり浅黄空
七番日記 化11
(出)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『発句鈔追加』『希杖本』真蹟
204御傘おかさめす月から春は来たりけり
七番日記 化11
205湯けぶりも月夜の春となりにけり
七番日記 化11
206ひへ餅にあんきな春が来たりけり
七番日記 政1 「へ」→「え」
207今春が来たよふす也たばこぼん
八番日記 政2 「よふ」→「やう」
208さればこそろくな春なれ門の雪
文政句帖 政5
209まんろくの春こそ来れ門の雪
文政句帖 政5
210まんろくの春と成りけり門の雪
文政句帖 政5
211ろくな春とはなりけり門の雪
文政句帖 政5
212草の戸やどの穴からも春の来る
発句集続篇
213門松立ず煤はかず
春来ても別条のなき草家くさやかな
真蹟
214召仕めしつかい新しき哉小正月
西国紀行 寛7
215鶏鐘とりがねの鳴りしづまつて初日哉
辛亥遍覧 寛3
216松竹の行合ゆきあいの間より初日哉
寛政句帖 寛4
217中々にかざらぬ松の初日哉
其日庵歳旦 享1
218首上て亀も待たる初日哉
享和句帖 享3
219唐詩伝心借
我々が顔も初日や御代の松
享和句帖 享3
(出)『文化句帖』
220上段じょうだんの代の初日哉旅の家
文化句帖 化1
221上段の代の先あふ初日哉
文化句帖 化1
222みいらともなりたがりてやはつ日の出
七番日記 化9
223朝雫あさしずく皺手しわてにつたふ初日哉
七番日記 政1
(出)『発句集続篇』  
224内中うちじゅうにてら/\くわの初日哉
七番日記 政1
(異)『浅黄空』上五「家内中」、『自筆本』上五「家内に」
225隠家かくれがは昼時分さす初日哉
七番日記 政1
226はつあさひ鍬もおがまれ給ひけり
七番日記 政1  
227土蔵どぞうからすじかいにさすはつ日哉
八番日記 政2「すじかい」→「すぢかひ」
(出)『嘉永版』
228ぬかるみにキョウつつ張てはつ日哉
八番日記 政2
(異)『梅塵八番』中七「杖突張て」  
229心から大きく見ゆる初日哉
八番日記 政3
(異)『梅塵八番』上五「心がら」
230神とおもふかたより三輪みわの日の出哉
遺稿
231初日
よその蔵からすじかひに初日哉
浅黄空 「じ」→「ぢ」
(出)『自筆本』
232壁の穴や我初空はつぞらもうつくしき
七番日記 化8
(異)『我春集』上五「節穴や」  
233初空へさし出す獅子ししかしら
七番日記 化8
(異)『我春集』『発句題叢』『浅黄空』 『嘉永版』『発句鈔追加』『希杖本』『しきなみ』下五「あたま哉」
234初空をこしらへているけぶり哉
七番日記 化8 「い」→「ゐ」
(異)『我春集』中七「今拵へる」
235初空にならんとすらん茶のけぶり
七番日記 化8
236初空の色もさめけり人の顔
七番日記 化8
237初空のはづれの村も寒いげな
七番日記 化8
238初空のはな/\し[さ]をいおり
七番日記 化8
239初空のもやうに立るけぶり哉
七番日記 化8
(異)『自筆本』中七下五「もやうに立や茶の煙」
240初空のはゞかりながら茶のけぶり
七番日記 化8
241初空や緑の色の直さむる
七番日記 化8
242うす墨の夕ながらもはつ空ぞ
七番日記 化11
243うす墨のやうな色でも初空ぞ
七番日記 化11
244塀合へいあいや三尺ばかりはつ空[ぞ]
七番日記 化11
245松間まつあいや少ありてもはつ空ぞ
七番日記 化11
246松並や[の]/\のはつ空ぞ
七番日記 化11
247あつらえの通り浅黄のはつ空ぞ
七番日記 化14
(出)『自筆本』
248草枕雨のない日が初空ぞ
七番日記 化14
249初空をはやしこそすれ雀迄
七番日記 化14
250初空を夜着のそでから見たりけり
七番日記 化14
251はつ空にはやきず付るけぶり哉
七番日記 化14
(出)『発句集続篇』
252はつ空の祝義しゅうぎや雪のちら/\と
七番日記 化14 「義」→「儀」
253初空の行留ゆきどまり也上総かづさ
七番日記 化14
254西方のはつ空拝む法師ほっし
八番日記 政2
255初空やさい銭投るにぎし先
八番日記 政2
256旅に降られて
雨のない日が初空ぞあすも旅
浅黄空
(出)『自筆本』真蹟
257はつ空をこしらへる也茶のけぶり
浅黄空
258御降おさがりや草の庵ももりはじめ
八番日記 政2
259大雨や元日早々に降り給ふ 八番日記 政3
(異)『梅塵八番』中七「春早/\と」
260御降おさがりの祝義に雪もちらり哉
八番日記 政3 「義」→「儀」
261ござつたぞ正月早々春の雨
八番日記 政3
(異)同日記(政3)上五「ござりけり」、『梅塵八番』中七「正月早く」
262まんべんに御降おさがり受る小家哉
八番日記 政3
263御降おさがりをたんといたゞく屑屋哉
希杖本
(出)『発句集続篇』前書き「元日雨」
264大吹雪おおふぶき今やあざりの御帰か
七番日記 化11
265我笠ぞ雁は逃るな初霞
化五六句記 化6
266吾恵方わがえほうまいりは正月ざくら哉
西国紀行 寛7
267寝勝手ねがってに梅の咲けり我恵方
文化句帖 化5
268あばら家も年徳神としとくじんの御宿哉
七番日記 化7
269よは足を又年神としがみの御せは哉
七番日記 化11 「よは」→「よわ」「せは」→「せわ」
270年神や又も御世話に成りまする
七番日記 化12
271うらの戸や北より三があきの方
七番日記 化14
272足の向く村が我らが恵方哉
七番日記 政1
(異)同日記(政1)中七「村を我らが」
273うぐいすや折戸半分明の方
七番日記 政1
274大雪や出入の穴も明の方
七番日記 政1
(異)『八番日記』『発句集続篇』中七「出入の穴を」、『発句集続篇』前書き「在柏原」
275おくさがや恵方に出し杖の穴
七番日記 政1
(異)同日記(政1)上五「畠縁や」 『自筆本』上五「大原や」、『浅黄空』上五中七「大原や兄方に向し」
276とし棚のともしに鍬の後光ごこう
七番日記 政1
277とし棚や闇い方より福鼠ふくねずみ
七番日記 政1
278吾庵わがいおまがったなりに恵方棚
七番日記 政1
279雪降や夜盗やとうも鼻を明の方
八番日記 政2
280すゝけても年徳神としとくじんの御宿哉
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』上五「煤びても」
281年神に御任おまかせ申五体哉
八番日記 政4
282とぶ工夫くふう猫のしてけり恵方棚
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』中七「猫がしにけり」
283呑連のみづれじょう恵方也上かん屋
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』上五「春連の」
284こね土の百両包や兄方えほう
文政句帖 政6
(出)同句帖(政7)『浅黄空』『自筆本』
285紙張りのえのこも口を明の方
文政句帖 政7
(出)『浅黄空』『自筆本』
286下駄はいてはたけ歩くや兄方詣えほうまいり
文政句帖 政7
287線香を雪につゝさす兄方えほ
文政句帖 政7
(出)『浅黄空』『自筆本』
288とし棚やこんな家にも式作法しきさほう
文政句帖 政8 
289とし神やことしも御世話下さるゝ
自筆本
(異)同句集 下五「たてまつる」
290御忌ごき参りするも足品あしじな手品てじな
八番日記 政4
291それそこの梅も頼むぞふごおろし
文化句帖 化5
(異)『七番日記』(政1)中七「梅を[も]添よ」
292引下ひきおろふごの中より雀哉
七番日記 政1
293梅の花まけにこぼすや畚下し
希杖本  
294三日月や畚引上る木末こずえから
希杖本
295垢瓜あかうりなずなの前もはづかしき
七番日記 化10 「瓜」→「爪」
(出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『文政版』『希杖本』遺稿  
296人の日やあらためがゆしいおのかゆ
七番日記 化10 「がゆし」→「がたし」
297人日本堂
人の日や本堂いづる汗けぶり
七番日記 化12
(異)『発句集続篇』前書き「善光寺」中七「御堂出て来る」
298正月は青菜あおなのかゆも祝かな
文政句帖 政6
299梅咲や地獄の門も休み札
八番日記 政3
300けふこそは地獄の衆もお正月
八番日記 政3
(出)『自筆本』(異)『希杖本』上五「けふの日や」(類)『七番日記』(化9)下五「花見哉」
301斎日さいにちもさば[娑婆]の地獄はいたりにけり
八番日記 政3
(異)『自筆本』下五「鳴りにけり」
302斎日さいにちふまるゝうすも休み哉
八番日記 政4
303斎日やぞめき出されて上野迄
希杖本
304同じ世をへら/\百疋むかで小ばん哉
七番日記 化9 「疋」→「足」
(異)『株番』前書き「猫・小判」中七「へろ~百疋」 
305三寸の胸ですむ也たなおろし
文政句帖 政6
306不士山ふじさんもかぞへ込けり店おろし
文政句帖 政6
307物陰に笑ふねずみや店おろし
文政句帖 政6
308粥杖かゆづえらるゝえだしほ山
文化句帖 化1
309左義長さぎちょうや夜も天筆てんぴつ和合楽わごうらく
七番日記 化11
310ちさいのはおれが在所ざいしょのどんど哉
七番日記 化11
(異)同日記(化13)上五中七「ちさいのがおらが在所の」
311はやされよいおの飾のけぶりざま
七番日記 化11
312山添やまぞえやはやして[も]なきどんどやき
七番日記 化11
313世[の]中はどんどゝ直るどんどかな
七番日記 化11
(異)『発句集続篇』上五「世の中が」
314かざりや焼るゝ夜にはやさるゝ
七番日記 化13
(出)『句稿消息』
315御祝義ごしゅうぎに雪も降也どんどやき
七番日記 化13 「義」→「儀」  
316下手へたもへはおれがかざりぞ/\よ
七番日記 化13 「へ」→「え」
(出)『句稿消息』
317左義長さぎちょうに月はのぼらせ給ひけり
七番日記 政1
318左義長や其上月じょうげつの十五日
七番日記 政1
319どんど焼どんどゝ雪の降りにけり
七番日記 政1
320藪入やぶいりのわざと暮れしや草の月
享和句帖 享3
(出)『七番日記』『版本題叢』『嘉永版』『希杖本』『発句類題集』『発句集続篇』遺稿 (異)『発句鈔追加』中七「わざとくらしや」、『発句題叢』下五「二月月」  
321やぶ入の先に立けりしきみおけ
文化句帖 化1
322やぶ入の残りおほがる上野哉
文化句帖 化1
323やぶ入やきのふ過たる山神楽やまかぐら
文化句帖 化1
(異)遺稿 下五「山祭り」
324やぶ入や先つゝがなき墓の松
文化句帖 化1
325藪入よ君がうたへ麦の雨
文化句帖 化1
326やぶ入の顔にもつけよ梅の花
文化句帖 化5
(異)『流行七部集』下五「もゝの花」
327やぶ入のかくしかねたる白髪しらが
文化句帖 化5
328藪入が柿のしぶさをかくしけり
化五六句記 化6
329藪入やきりの育もつい/\と
化五六句記 化6
330大原やおくれ藪入おくれ梅
七番日記 化7
331藪入や墓の松風うしろ吹
七番日記 化7
(出)『文政句帖』『文政版』『はなの』
332藪入がともを連たる都哉
七番日記 化10
(出)『志多良』『希杖本』(異)『句稿消息』上五「藪入も」、『発句集続篇』上五「藪入の」
333藪入の大輿おおぐるま?の通りけり
七番日記 化10
334藪入の供して行や大男
七番日記 化10
(出)『句稿消息』
335藪入やうらから拝む亦打山まつちやま
七番日記 化10
(類)同日記(化11)上五下五「出代や・・・日枝の山」
336淋し[さ]や逢坂あうさか過る藪入かご
七番日記 化14
337藪入がかならずたつや思案橋
七番日記 化14
338藪入が藪入の駕かきにけり
七番日記 化14
339藪入の片はなもつや奉加ほうが
七番日記 化14
340藪入や犬も見送るかすむ迄
七番日記 化14
341藪入や涙先立さきだつ人の親
七番日記 化14
342藪入や二人して見る亦打山まつちやま
七番日記 化14
343藪入や三組一つに成田道なりたみち
七番日記 化14
(出)『浅黄空』『自筆本』(異)『嘉永版』『千題集』中七「三組一所に」
344藪入やつれに別てくし仕廻しま
文政句帖 政8
345藪入りや二人並んで思案橋
浅黄空
(出)『自筆本』
346えのき迄引抜れたる[の]日哉
文化句帖 化1
347月見よと引残されし小松哉
文化句帖 化1
348相馬原そうまばら[の]日の時の松ならん
文化句帖 化5
349姫小松ひめこまつ祝義ばかりに日が伸る
七番日記 化13 「義」→「儀」
350烏帽子えぼしきてどさり寝ころぶ[の]日哉
七番日記 化14
351太刀たちはいて芝に寝ころぶ[の]日哉
七番日記 化14
352鶴の賛
人のひく小松の千代ちよやさみすらん
八番日記 政3
(出)『自筆本』『発句鈔追加』 (異)『嘉永版』中七「小まつに千代や」 『発句集続篇』前書き「鶴の絵に」上五中七「小松曳人の千代をや」
353小松ひく人とて人のおがむ也
八番日記 政4 「お」→「を」
(出)『自筆本』『文政版』遺稿(異)『梅塵八番』中七下五「人とて人をながむかな」  
354はかま着て芝にごろりとの日哉
自筆本
(出)『文政版』遺稿
355蓬莱ほうらい南無なむ/\といふわらべ
七番日記 化8
(異)『おらが春』『発句題叢』 『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』中七下五「なんむ~といふ子哉」『我春集』『版本題叢』『嘉永版』『発句集続篇』下五「子供哉」
356蓬莱に夜が明込ぞ角田川すみだがわ
七番日記 化8  
357蓬莱の下から出たるあさひかな
七番日記 化8
358蓬莱やただ三文の御代みよの松
七番日記 化8
(出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』遺稿
359蓬莱やまづ昌陸しょうりくが御代の松
七番日記 化8
360蓬莱を引とらまへて泣子なくこ
七番日記 政1
361蓬莱の天窓あたまをしやぶるおさなご
七番日記 政1
362くいつみも小隅こすみの春と成にけり
文化句帖 化5
363門松やひとりしきくは夜の雨
享和二句記 享2
364門の松おろしやえびす魂消たまげべし
文化句帖 化1
365すみの江ものべつけにして門の松
文化句帖 化1
366ちる雪に立合たちあわせけり門の松
文化句帖 化1
367門松のかげにはづるゝ我家哉
文化句帖 化5
368おりてさすこれも門松にてそうろう
七番日記 化9
(出)『発句題叢』『希杖本』(異)『版本題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』中七「それも門松」
369小一尺こいっしゃくそれも門松にて候
七番日記 化9
370わか草よわか松さまよ門の松
七番日記 化11
371犬の子やかくれんぼするかど[の]松
七番日記 政1
372から崎や門松からも夜の雨
七番日記 政1
373君が世や主なしつかもかざり松
七番日記 政1
374独寝ひとりねやはや門松も夜の雨
七番日記 政1
375よりがらもらってし[て]も門の松
七番日記 政1
376ぬしありや野雪隠のせっちんにも門の松
八番日記 政4
377門松や本町ほんまちすじの夜の雨
文政句帖 政5 「じ」→「ぢ」
378雑巾ぞうきんのほしどころ也門の松
文政句帖 政6
379敷石しきいしや欲でかためし門の松
文政句帖 政7
380かま獅子じしあごではらひぬ門の松
文政版
381赤馬あかうまの口はとゞかずかざりなわ
七番日記 政1
382赤馬や口のとゞかぬかざり縄
七番日記 政1
383輪飾わかざりや辻の仏の御首おかしら
七番日記 政1
384御地蔵おじぞう御首おくびにかける飾り哉
八番日記 政2
(類)『梅塵八番』(政3)下五「ちまき哉」
385二[つ]三[つ]やぶにかけるやあまり七五三
八番日記 政2
386又ことし七五三かけ[る]也顔のしわ
八番日記 政2
(異)『梅塵八番』中七「七五三潜るなり」
387あばら家やまがっなりに門飾
文政句帖 政8
388つんとしてかざりもせ[ぬ]やでかい家
文政句帖 政8
389ふけばとぶ家の世並よなみしめかざり
文政句帖 政8
390皺顔しわがおのかくれやはせん七五三飾
希杖本
391ひよ[い]/\と藪にかけるや余り注連じめ
希杖本
392福豆ふくまめ福茶ふくちゃも只の一人哉
七番日記 化10  
393お袋の福茶をくめる指南しなん
梅塵八番 政3
394正月のくせになりたる福茶哉
文政句帖 政8
395外からは梅がとび込福茶哉
文政句帖 政8
(異)書簡 上五「外ならば」
396福わらや雀が踊るとびがまふ
七番日記 化11
397福わらやとうばかりなる供奴ともやっこ
七番日記 化11
398逃しなや水いわわるゝ五十むこ
七番日記 政1
(出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』遺稿
399用捨ようしゃなく水いわひけり五十むこ
七番日記 政1 「用捨」→「容赦」 
400門の春雀が先へ御慶ぎょけい
七番日記 化10
(出)『発句鈔追加』
401大御代おおみよやからたちがき御慶帳ぎょけいちょう
七番日記 政1
402かつしかや川むかふから御慶ぎょけいいふ
七番日記 政1
403ざぶ/\と泥わらんじの御慶ぎょけい
七番日記 政1 「じ」→「ぢ」
(出)『自筆本』(異)『浅黄空』中七「泥わらんじで」
404武家丁ぶけまちやからたち藪も年始帳ねんしちょう
七番日記 政1
405巣鴨
楽な世やからたち藪の年始帳
七番日記 政1
406今しがた来た年玉で御慶ぎょけい
八番日記 政2
407年頭ねんとうに孫のわらうをみやげ哉
八番日記 政2
(異)『梅塵八番』上五「年頭の」(類)『八番日記』(政2)上五中七「何よりも孫の笑が」
408白髪はくはつ天窓あたまをふり立て御慶ぎょけい
八番日記 政2
(異)『希杖本』上五中七「白髪天窓しらがあたまふり立/\」、『梅塵八番』『発句鈔追加』上五「白髪天窓を」
409深川や川向かわむこうにて御慶ぎょけいいふ
発句題叢 政3 (出)『浅黄空』『自筆本』『希杖本』
410王子
御年初おねんしょ申入もうしいれけり狐穴きつねあな
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』上五「年始礼」
411御年初おねんしょの返事をするや二階から
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』上五「御年始の」
412堅人かたじんや一山越てから御慶ぎょけい
八番日記 政4
(異)『浅黄空』中七下五「山越して来ていふ御慶」、『自筆本』中七「山越して来て」
413門礼かどれいや片側づゝは草履ぞうり
八番日記 政4
414門礼かどれいや猫にとし玉打つける
八番日記 政4
415上下かみしもたぶらさげて御慶ぎょけい
八番日記 政4
416下駄げた持と二役するや年初ねんしょ
 八番日記 政4
(異)『梅塵八番』下五「年始道」
417直段ねだん許り見る也年初ねんしょ
八番日記 政4 「直」→「値」
(異)『梅塵八番』下五「年始帳」
418武士さむらいやいひわけ云てから御慶
八番日記 政4
419年玉をもらひに出る御慶ぎょけいかな
八番日記 政4
420年礼ねんれい下駄げた道あちは草履ぞうり
八番日記 政4
421途中にて取替にする御慶ぎょけい
八番日記 政4
(出)『浅黄空』『自筆本』
422武士村ぶしむらやからたち垣の年始状
八番日記 政4
423坊主天窓あたまをふり立て御慶ぎょけい
八番日記 政4
(出)『だん袋』『浅黄空』『自筆本』
424も一つ狐の穴へ御慶かな 八番日記 政4
425画暦えごよみのはんじくらする礼者れいじゃ哉 文政句帖 政6
426影法師かげぼうしに御慶を[申す]わらじ哉 文政句帖 政7 「じ」→「ぢ」
427むくおき[の]小便ながら御慶哉 文政句帖 政7
428親里おやざとの山へ向て御慶哉 文政句帖 政8
(出)『発句鈔追加』
429供部屋ともべやがさはぎ勝也年始酒 文政句帖 政8 「は」→「わ」
430百旦那ひゃくだんなころりころ~御慶哉 文政句帖 政8
431両方に小便しながら御慶哉 文政句帖 政8
432一人旅
影法師かげぼうしもまめ息才そくさいで御慶かな 発句鈔追加 「才」→「災」
(類)『七番日記』(化14)下五「けさの春」
433しんぼしてわらは笑ぬ御慶哉 浅黄空
(出)『自筆本』
434つぶれ家の其身其まゝ御慶哉 希杖本
435武家町 年礼としふだやからたち垣に名前札 発句集続篇 
436年も玉おんとし玉ぞまめな顔
七番日記 化11
437我庵わがいおやけさのとし玉とりに来る
七番日記 化11
(出)『句稿消息』『発句題叢』『希杖本』『嘉永版』『発句鈔追加』『発句類題集』(異)『浅黄空』『自筆本』上五「草の戸や」
438かくれ家や猫[に]も一つ御年玉おとしだま
八番日記 政2
439番丁ばんちょうや窓から投る御年玉おとしだま
八番日記 政2
440一番のとし玉ぞその豆な顔
八番日記 政4
441江戸衆や庵の犬にも御年玉おとしだま
八番日記 政4
442年玉を配るわなき庵哉
八番日記 政4
443とし玉を二人前とる小僧こぞう
八番日記 政4
444とし玉に見せ申也もうすなり豆な顔
八番日記 政4
445とし玉の上にも猫のぐる寝哉
八番日記 政4
446とし玉や留主るすの窓からほふりこみ
八番日記 政4 「ほ」→「は」
447とし玉を天窓あたまにおくやちいさい子
文政句帖 政6 「ちいさい」→「ちひさい」
448とし玉のさいそくに来る孫子まごこ
文政句帖 政6
(出)『浅黄空』『自筆本』(異)同句帖(政7)下五「小わら哉」
449年玉を犬にも投げる御寺おてら
文政句帖 政7
450年玉をおくやいなりの穴の口
文政句帖 政7
451年玉をおとして行くや留主るすの家
文政句帖 政7
452[年玉]を見せに行く也孫の顔
政七草稿 政7
453年玉やかたり猫に[ぞ]うちつける
文政句帖 政7
454[年玉]やかたる/\よくの山
政七草稿 政7
455年玉や猫の頭へすでの事
文政句帖 政7
456[年玉]やふだ張り替へてもとへ
政七草稿 政7
457年玉やふところの子も手ゝをして
文政句帖 政7
(出)同句帖(政8)
458ばか猫や年玉入れのに眠る
文政句帖 政7
459めぐり/\ととる年玉おうぎ
文政句帖 政7
(異)『自筆本』上五中七「廻り/\てもどる年玉」
460いくまわり目だぞとし玉おうぎ又もどる
浅黄空
461こりよそけへいつけて置けよお年玉
真蹟
462とし玉茶どこをまわって又もどる
浅黄空 
463書賃かきちんのみかんみい/\吉書きっしょ
八番日記 政2
(出)『希杖本』『発句集続篇』
464小坊主こぼうずが棒を引ても吉書きっしょはじめ
八番日記 政2
(異)『梅塵八番』下五「吉書哉」
465つい/\と棒を引ても吉書きっしょ
八番日記 政2
(異)同日記(政4)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』真蹟 上五「子宝が」
466わんぱくやまづてのひらに筆はじめ
八番日記 政2
(異)『希杖本』中七「先試みに」
467子宝こだからや棒をひくのも吉書きっしょ
発句鈔追加
468すりこ木と並べて張るやはつごよみ
文政句帖 政6
469どち向て酒をのむぞよはつごよみ
文政句帖 政6
470のゝでらちをあけけりはつごよみ
文政句帖 政6
(出)『浅黄空』『自筆本』
471入用いりようのおつるはつごよみ
政七草稿 政7
472砂壁すなかべや針で書てもはつごよみ
文政句帖 政7
473張壁はりかべうちつけがきのはつ暦
文政句帖 政7
(異)『自筆本』上五「荒壁や」
474古壁ふるかべ巨燵こたつむかふのはつ暦
文政句帖 政7 「巨」→「炬」
475古壁ふるかべや釘でかきたるはつ暦
浅黄空
476初夢に古郷ふるさとを見て涙哉
寛政句帖 寛6
477正夢まさゆめや春早々の貧乏神
七番日記 化8
478何のその上初夢はつゆめもなくからす
八番日記 政4
479初夢はつゆめ目出度めでたやけして夕けぶり
八番日記 政4
480初夢をこしらへて売る夜寒よさむ
文政句帖 政7
(異)『発句集続篇』下五「会所かな」
481初夢に猫も不二ふじ見る寝やう哉
文政句帖 政7
(出)『文政版』遺稿
482初夢の不二ふじの山うるみやこ
文政句帖 政7
483寄下女恋
初夢も御座ござに出されぬ寝言ねごと
文政句帖 政7
(異)同句帖(政8)上五中七「はつ夢の御座へ出されぬ」
484片乳かたちちを握りながらやはつ笑ひ
文政句帖 政6
(出)『浅黄空』『自筆本』
485乞食こつじきやもらひながらのはつ笑ひ
文政句帖 政6
486ひとはなに猫がいねつむ座敷ざしき
文政句帖 政6
(出)『自筆本』(異)『浅黄空』上五「一番に」 
487うぐいすあとをつけゝりうたはじめ
文政句帖 政6
488ひざの子も口をなりはつうたひ
文政句帖 政6
489いっぱいにはれきる山の弓始ゆみはじめ
享和句帖 享3
490江戸住えどずみは我々しき[も]若湯わかゆ
八番日記 政2
491湯始ゆはじめ注連しめとらまえてたつ子哉
希杖本  
492去年より銭湯の始れば
人の世は此山陰やまかげ若湯わかゆ
希杖本
493百福ひゃくふくの始るふいごはじめ
文政句帖 政8
494ゆあみして旅のしらみを罪始つみはじめ
寛政句帖 寛5
495きそはじめ山のふくろう笑ふらん
文化句帖 化5
496◆釈迦どのにいくつの兄ぞ着そ始
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』上五中七「釈迦どのゝいくつの年ぞ」  
497雪車引や揃小みのゝ着そ始
文政句帖 政7
498無衣
明ぼのゝ春早々に借着かりぎ
享和句帖 享3
499三崎野中の井は遊女ゆうじょ柏木がかたみ也
わか水のよしなき人にくまれけり
文化句帖 化5
(出)『文政版』遺稿
500わか水[や]見たばかりでも角田川すみだがわ
七番日記 化11
(出)『発句集続篇』
501かつしか
茶けぶりやわがわか水も角田川すみだがわ
七番日記 政1
502名代みょうだいのわか水あびる雀哉
七番日記 政1
(異)『八番日記』下五「烏かな」、『おらが春』『発句鈔追加』上五下五「名代に・・・烏かな」  
503よくどしくわか水つかふ女哉
七番日記 政1
504若水わかみず白髪しらが吹かせて自慢哉
七番日記 政1
505わか水も隣のおけ仕廻しまいけり
七番日記 政1
506わか水や並ぶすずめもまめな顔
七番日記 政1
507若水やまづは仏のしきみ桶
七番日記 政1
508いおもけさ若水と呼れけり
八番日記 政2
(出)『発句鈔追加』(異)『希杖本』中七下五「けさ若水に汲れけり」
509◆三文が若水あまる庵哉
八番日記 政2
(異)『希杖本』上五下五「三文の・・・我家哉」
510新桶は同じ水でもわか/\し
文政句帖 政5
511石川やわか水といふも一盛
文政句帖 政5
512ちとの間[に]はやわか水でなかりけり
文政句帖 政5
513一桶をわか水わか湯わか茶哉
文政句帖 政6
514わか水[や]わらが浮ても福といふ
文政句帖 政6
515小さい子やわか水汲も何番目
文政句帖 政7
516目覚し[に]わか水見るや角田川
文政句帖 政7
517わか水の歯に染[し]のもむかし哉
文政句帖 政7
518わか水や土瓶一つに角田川
文政句帖 政7
519若水やそうとつき込梅の花
『嘉永版』
520とし男とし女にもひとり哉
文政句帖 政6
(出)同句帖(政7) 
521手まり唄一ひ二ふ御代の四谷哉
七番日記 政1
522鳴く猫に赤ん目と云手まり哉
八番日記 政3
(異)同日記(政4)『自筆本』『文政版』中七「赤ん目をして」
523柴門やけまり程でも手まり唄
文政句帖 政5
524猫の子にかして遊ばす手まり哉
書簡
525つく羽を犬が加へて参りけり
七番日記 政1 「加」→「咥」
(異)同日記(政1)下五「もどりけり」
526つく羽の落る際也三ヶの月
七番日記 政1
(異)同日記(政1)中七「下る際也」 『発句鈔追加』中七「下りぎはなり」、『発句集続篇』中七「落る際より」  
527つく羽の転びながらに一つかな
七番日記 政1
(異)『発句鈔追加』中七「転びながらも」
528家飛/\凧も三つ四つふたつ哉
西国紀行 寛7
529凧青葉を出つ入つ哉
西国紀行 寛7
530浦輪を逍遥して
遠かたや凧の上ゆくほかけ舟
西国紀行 寛7
531日でり雨凧にかゝると思ふ哉
西国紀行 寛7
532日の暮の山を見かけて凧
享和二句記 享2
533家二つ三つ四つ凧の夕哉
文化句帖 化2
534凧今木母寺は夜に入るぞ
文化句帖 化2
(出)『七番日記』遺稿(異)『自筆本』中七「はや木母寺は」、『浅黄空』下五「夜に入かゝる」
535山かげや藪のうしろや凧
文化句帖 化2
536けふも/\風引かゝる榎哉
文化句帖 化4 「風」→「凧」
537狙引は猿に持せて凧
文化句帖 化4
538機音は竹にかくれて凧
文化句帖 化4
539凧麦もか程の世也けり
七番日記 化7
(異)同日記(化7)中七「麦もケ様な」
540朔日や一文凧も江戸の空
七番日記 化7
541今様の凧上りけり小食小屋
七番日記 化8 「小食」→「乞食」
(異)『発句題叢』『文政版』上五「美しき」
542今様の凧の上りし山家哉
我春集 化8
543里しんとしてづんづと凧上りけり
七番日記 化8 「づんづ」→「ずんず」
544辻諷凧も上ていたりけり
七番日記 化8 「い」→「ゐ」
(異)『我春集』下五「居りにけり」
545番町や夕飯過の凧
七番日記 化8
(出)『我春集』
546人の親凧を胯で通りけり
七番日記 化8 「胯」→「跨」
547凧臼井の外は春じやげな
七番日記 化10 「臼井」→「碓氷」「じ」→「ぢ」
548大凧や上げ捨てある亦打山
七番日記 化10
(出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』
549京辺や凧の上もむつかしき
七番日記 化10
550山寺や翌そる児の凧
七番日記 化10
(出)『句稿消息』『希杖本』
551大凧のりんとしてある日暮哉
七番日記 化11
552凧の尾を追かけ廻る狗哉
七番日記 化11
553山陰も市川凧の上りけり
七番日記 化11
554生神[の]凧とり榎たくましや
七番日記 化12
555切凧や脇よれ/\といふ先へ
七番日記 化12
556凧きれて犬もきよろ/\目哉
七番日記 化12
557人真似や犬の見て居る凧
七番日記 化12
558反故凧[の]あたり払て上りけり
七番日記 化12
(出)同日記(化13)
559おはむきに犬もかけるぞ凧
七番日記 化13
(異)同日記(化13)『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』『発句集続篇』書簡 中七「犬もかけるや」
560気につれて凧もかぶりをふりにけり
七番日記 化13
561背[中]から狙が引也凧の糸
七番日記 化13
562大名の凧も悪口言れけり
七番日記 化13
563凧上てゆるりとしたる小村哉
七番日記 化13
(出)『句稿消息』『文政版』書簡
564凧抱たなりですや/\寝たりけり
七番日記 化13
565凧のかぶり猿が守りする日也けり
七番日記 化13
566何がいやでかぶりふりけり凧
七番日記 化13
567寝たいやらかぶりふりけり凧
七番日記 化13
568一とろに御代の大凧小凧哉
七番日記 化13
569反古凧や隣は前田加賀守
七番日記 化13
570本町の行留り也凧の糸
七番日記 化13
571むつどのゝ凧とくらべて自慢哉
七番日記 化13
572門前の凧とり榎千代もへん
七番日記 化13
573親よぶ[や]凧上ながら小順礼
八番日記 政2
574西山や今剃児の凧
八番日記 政2
575乞食子や歩ながらの凧
八番日記 政3
(異)『浅黄空』『自筆本』中七「貰ひながらの」
576小順礼もらひながらや凧
八番日記 政4
577すゝけ紙まゝ子の凧としられけり
文政句帖 政5
578凧上ていかにもせまき通り哉
文政句帖 政5
579凧の糸引とらまへて寝る子哉
文政句帖 政5
580凧の尾を咥て引や鬼瓦
文政句帖 政5
581駿河台
日の暮に凧の揃ふや町の空
文政句帖 政5
582まゝつ子やつぎだらけなる凧
文政句帖 政5
583赤い凧引ずり歩くきげん哉
文政句帖 政7
(異)『浅黄空』『自筆本』上五「赤凧を」
584あそこらがえどの空かよ凧
文政句帖 政7
(異)『発句集続篇』上五中下「あそこから江戸の空かと」
585江戸凧の朝からかぶり/\哉
文政句帖 政7
586江戸凧もこも/\上る山家哉
文政句帖 政7
587おとらじと一文凧も上りけり
文政句帖 政7
588順礼や貰ひながらの凧
文政句帖 政7
589大名のかすみが関や凧
文政句帖 政7
590まゝ子凧つぎのいろ/\見へにけり
文政句帖 政7 「へ」→「え」
591大凧やりんとうごかぬ角田川
希杖本
592切凧のくる/\舞やお茶の水
浅黄空
(出)『自筆本』
593芝浦や上げ捨てある凧
浅黄空
(出)『自筆本』
594凧抱て直ぐにすや/\寝る子哉
浅黄空
595万歳よも一つはやせ春の雪
享和句帖 享3
596万歳のまかり出たよ親子連
文化句帖 化1
597万歳のけふも昔に成りにけり
文化句帖 化5
598大声や廿日過ての御万歳
七番日記 化8
(出)『我春集』『版本題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』(異)『発句題叢』中七「廿日過て」
599万歳や馬の尻へも一祝
七番日記 化8
(出)『句稿消息』
600万ざいや門に居ならぶ鳩雀
七番日記 化8
(出)『発句集続篇』
601万ざいや汝が梅はどの位
七番日記 化8
602万ざいや麦にも一つ祝ひ捨
七番日記 化8
603万才や五三[の]桐の米袋
七番日記 政1
604万才や東風にふかるゝ餅袋
七番日記 政1
605鉄下戸であのけんまくや万ざい楽
八番日記 政4
606誰目[に]も下戸とは見へず万ざい楽
八番日記 政4 「へ」→「え」
607万歳のははりにしやべる雀哉
八番日記 政4 「ははり」→「かはり」
(異)真蹟 前書き「けさの春」、『文政句帖』(政5)中七「通りにしやべる」
608万才の下戸とはさらに見へざりき
八番日記 政4 「へ」→「え」
609我門や乞食万歳にていはふ
八番日記 政4
610万歳や面もかぶらずほゝやれと
八番日記 政7
611雨の日や狙起[さ]るゝ猿まはし
西国紀行 寛7
612舞扇猿の涙のかゝる哉
七番日記 化7
(異)『発句類題集』下五「かゝる也」
613舞猿も草臥顔はせざりけり
七番日記 化13
614我国は猿も烏帽子をかぶりけり
七番日記 化13
615我国は猿も祈祷をしたりけり
七番日記 化13
(異)『八番日記』(政8)上五「幣とつて」
616わか狙が見い/\舞や赤い袖
七番日記 化13
617御座敷や菓子を見い/\猿が舞
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』下五「猿の舞」
618親狙がをしへる舞の手品かな
八番日記 政4
619舞猿や餅いたゞきて子にくれる
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』中七「餅いたゞいて」
620矢の先や子を[背]負ひつゝ猿廻
政七草稿 政7
621乞食も福大黒のつもり哉
七番日記 化10
622舞込だ福大黒と梅の花
七番日記 化10
623獅子舞や大口明て梅の花
七番日記 化8
624門獅子やしゝが口から梅の花
希杖本
625乞食の春駒などもかすみ哉
七番日記 化10
626春駒の歌でとかすや門の雪
七番日記 化13
627春駒は竹でしてさへいさみけり
八番日記 政3
(出)書簡『梅塵八番』(政2)下五「いたみけり」
628春駒や人が真似てもいさましき
文政句帖 政5
629春駒を人のしてさへいさみけり
希杖本
630君が世や旅にしあれど笥の雑煮
寛政句帖 寛5
631雑煮餅深山榊もおり添よ
享和二句記 享2
632無造作に春は来にけり粟雑煮
七番日記 化10
633八丁堀貧乏町に春をむかへる
我庵や元日も来る雑煮売
七番日記 化14
(異)『浅黄空』『自筆本』上五「窓先や」
634神の代はおらも四角な雑煮哉
七番日記 政1
635金時も十面作る雑煮哉
七番日記 政1
636目出度といふも二人の雑煮哉
七番日記 政1
637しん/\とすまし雑煮や二人住
八番日記 政4
638捨人もけさは四角にざうに哉
八番日記 政4 「う」→「ふ」
(異)『梅塵八番』中七「今朝は四角な」
639最う一度せめて目を明け雑煮膳
真蹟 政4
640もと/\の一人前ぞ雑煮膳
文政句帖 政6
641わか餅やざぶとつき込梅の花
発句題叢 政3
(出)『発句鈔追加』『希杖本』 
642お袋が福手をちぎる指南哉
八番日記 政2
(異)『おらが春』『発句鈔追加』中七「お福手ちぎる」
643十一日石太郎没
かゞみ餅祝ひしかひもなく烏
八番日記 政4
644かざり餅仏の膝をちよとかりる
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』下五「ちとかりる」
645歯固にかんといはする小粒哉
八番日記 政2
646歯固の歯一枚もなかりけり
八番日記 政2
647台所の爺に歯固勝れけり
八番日記 政4
(出)『自筆本』(異)『浅黄空』下五「勝れたり」
648人並に歯茎などでもかためしか
八番日記 政4
649人真似に歯茎がための豆麩哉
文政句帖 政6 「麩」→「腐」
650かたむべき歯は一本もなかりけり
希杖本
651歯固は猫に勝れて笑ひけり
希杖本
652とぢ蓋もけふは福鍋/\ぞ
文政句帖 政5
653福俵よい事にして猫ざれる
浅黄空
654よい事に猫がざれけり福俵
自筆本
655とそ酌もわらじながらの夜明哉
さらば笠 寛10 「じ」→「ぢ」
(出)『題葉集』  
656朝不二やとそのてうしの口の先
七番日記 政1
657御関やとその銚子の不二へむく
七番日記 政1
658月代にとそぬり付て出たりけり
七番日記 政1
659ぬれ色やほの/\明のとそ袋
七番日記 政1
660皺面にとそぬり付るわらひ哉
八番日記 政4
661とそ銚子あゝ真似するも嘉例哉
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』中七「つぐ真似するも」
662俵から俵の上やとそてう子
文政句帖 政6
(異)同句帖(政8)中七「俵へとるや」
663とそ袋釣しておくや鉢の松
文政句帖 政6
664鬼ばゝと呼れてとその祝ひ哉
文政句帖 政8
665霞む日も寝正月かよ山の家
文化句帖 化2
666正月を寝てしまひけり山の家
文化句帖 化3
667正月を寝て見る梅でありしよな
文化句帖 化4
668正月やごろりと寝たるとつとき着
文政句帖 政5
669七草の音に負じと烏かな
西国紀行 寛7
670七草を敲き直すや昼時分
文化句帖 化1
671七種やとんともいはぬ藪の家
七番日記 化12
672七草を打てそれから寝役哉
七番日記 化14
(出)『浅黄空』『自筆本』
673青ひ物ない七草もいはひ哉
八番日記 政4 「青ひ」→「青い」
(出)『文政句帖』
674七草やだまつて打も古実顔
八番日記 政4 「古」→「故」
675七草を内/\に打寝坊哉
文政句帖 政6
676七草や夜着から顔を出しながら
文政句帖 政6
677七草は隣のおとで置にけり
文政句帖 政6
678しろしめせや民の心苦も若菜摘
寛政句帖 寛5 「心」→「辛」
679きのふ迄毎日見しを若菜かな
我泉歳旦 寛12
(出)『浅黄空』『自筆本』
680茜うら帯にはさんでわか菜[摘]
享和句帖 享3
681匪風
釜粥を洗ふて待や野はわか菜
享和句帖 享3 「ふ」→「う」
682切株は御顔の際やわかな摘
享和句帖 享3
683竹かごにすこしあるこそわかな哉
享和句帖 享3
684細腕の日の大きさよ朝わか菜
享和句帖 享3
685三足程旅めきにけり野はわか菜
享和句帖 享3
686わかなつみわかなつみ/\誰やおもふ
享和句帖 享3
687わか菜摘袂の下や角田川
享和句帖 享3
688雨だれの名ごりおしさよ花わかな
文化句帖 化1 「お」→「を」
689あらためて鶴もおりるか初わかな
文化句帖 化1
690こて/\と鍋かけしわか菜哉
文化句帖 化1
691三足程旅めきぬ朝わか菜
文化句帖 化1
692一桶は如来のためよ朝わかな
文化句帖 化2
693みぞるゝもにくゝやはあらじわかな売
文化句帖 化2
694夕空ののゝ様おがめわかなつみ
文化句帖 化2 「お」→「を」
695わかな摘鷺も淋しく思ふやと
文化句帖 化2
696わかなのや一葉摘んでは人をよぶ
文化句帖 化2
697けふはとて垣の小すみもわかな哉
文化句帖 化4
698こよろぎや磯さまたげに摘わかな
文化句帖 化4
699ちる雪をありがたがるやわかなつみ
文化句帖 化4
700朝陰や親ある人のわかなつみ
七番日記 化7
(出)『発句集続篇』
701鶯に一葉とらするわかな哉
七番日記 化10
(出)『発句集続篇』
702一人前こぼして走るわかな哉
七番日記 化10
703江戸芥の山をゑりはりわかな哉
七番日記 化11 「ゑりはり」→「えりわり」
704負た子が先へ指[さ]すわかな哉
七番日記 化11
705出序にひんむしつたるわかな哉
七番日記 化12
(異)『句稿消息』上五「お序に」『浅黄空』上五中七「お序に引んむしつても」、『自筆本』中七「引んむしつても」 書簡 中七「ひんむしらるゝ」、『鶴巣日記』中七「ひんむしりたる」『蛙水歳旦帖』中七「三葉程つむ」、『栗本雑記五』下五「初若菜」
706わかなつむ手つきも見へて角田川
七番日記 化14 「へ」→「え」
(出)『自筆本』
707翌からは初わか菜[と]ははやされじ
七番日記 政1
708温石のさめぬうち也わかなつみ
七番日記 政1
(出)『発句集続篇』
709おのれ老人なれば
女衆に出し抜れつゝつむわかな
七番日記 政1
(異)『浅黄空』『自筆本』中七下五「出しぬかれけりわかなつみ」『自筆本』中七下五「出しぬかれたるわかなつみ」
710鶴形の雪のちよぼ/\わかなつみ
七番日記 政1
711二葉三葉つみ切て来るわかな哉
七番日記 政1
712四五軒で一把[を]分るわかな哉
八番日記 政2
713手のごひで引かついだるわかな哉
八番日記 政2
714竈の門に置するわかな哉
八番日記 政2
715朝わかなつむや社参のもどりがけ
八番日記 政4
716大原や人留のある若菜つみ
八番日記 政4
717かすむ程たばこ吹つゝ若菜つみ
書簡 政4
718小坊主に行灯もたせて若なつみ
八番日記 政4
719鶏に一葉ふるまふわかな哉
八番日記 政4
(異)『発句集続篇』中七「初を振廻ふ」
720一引はたばこかすみやわかなつみ
八番日記 政4
(出)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』
721転んでも目出度いふ也わかなつみ
文政句帖 政5
722爺が家のぐるりもけふはわかな哉
文政句帖 政5
723畠の門錠の明けりわかなつみ
文政句帖 政5
724髭どのに叱られにけりわかなつみ
文政句帖 政5
725姫君の御手にふれしわかな哉
文政句帖 政5
726脇着の柄にかけたるわかな哉
文政句帖 政5 「着」→「差」
727童に刀持たせてわかなつみ
文政句帖 政5
728江戸へ出て皺の寄たる若な哉
文政句帖 政7
(出)同句帖(政8)
729刀さす供めしつれてわかなつみ
文政句帖 政7
(出)『浅黄空』『自筆本』
730尻餅の迹は小町がわかなつみ
文政句帖 政7
731二葉三葉たばこの上に若な哉
文政句帖 政7
(異)『発句集続篇』中七「たば粉の上の」
732三葉程つみ切て来若な哉
文政句帖 政7
733脇差の柄にぶら下る若な哉
文政句帖 政7
(出)『浅黄空』『自筆本』(異)同句帖(政8)『嘉永版』中七「柄にぶら/\」
734不断見る野[の]なりながらわかな哉
文政句帖 政8
735わかなつむ小じりの先の朝日哉
遺稿 
736あの藪に人の住めばぞ薺打
文化句帖 化1
737わかい衆や庵の薺も唄でつむ
七番日記 化11
(出)『句稿消息』
738夜着の袖から首出して薺哉
七番日記 化14
739君が代を鶏も諷ふや餅の臼
享和句帖 享3
740君が世の鶏となりけり餅の臼
享和句帖 享3
741初鶏に神代の臼と申べし
享和句帖 享3
742君が代の鶏諷けり餅むしろ
甲子遍覧 化1
743餅臼に鶏諷ひけり君が代と
七番日記 化14
744門の木のあはう烏もはつ音哉
七番日記 化8
(出)『句稿消息』(異)『七番日記』(化11)『句稿消息』『発句鈔追加』真蹟 下五「初声ぞ」『希杖本』上五下五「門先の・・・はつ声ぞ」
745だまつても行ぬやけさの遅烏
七番日記 化8
746さあ春が来たと一番烏哉
七番日記 化11
747馬引もからす烏帽子や初烏
八番日記 政4
748杜[の]陰しかも出がけのはつ烏
八番日記 政4
(異)『梅塵八番』上五「藪の陰」
749提灯もちらりほらりやはつ烏
文政句帖 政7
750大武家の飯すみ切てはつ烏
文政句帖 政8
(異)同句帖(政8)中七「飯日は過ぬ」「飯は過けり」 
751赤下手の初鶯や二つ迄
七番日記 化11
(異)同日記(化10)『自筆本』中七「鶯鳴や」
752うら窓やはつ鶯もぶさた顔
七番日記 政1
(異)『自筆本』中七「初鶯の」 
753有合の鳥も初声上にけり
八番日記 政4
754初声はあはう烏でなかりけり
文政句帖 政6
755ちま/\と住すましたり梅わか菜
享和二句記 享2
756空錠と人には告よ磯菜畑
文化句帖 化2
(類)『其日庵歳旦』下五「田打人」
757いさら井や磯のわかなの水かゞみ
文化句帖 化3
758某も世に有さまのわかな哉
七番日記 化7
759岩がねや塵をし分て福寿草
寛政句帖 寛6 「を」→「お」
760大雪をかぶつて立や福寿草
文政句帖 政7
761川添や金が子[を]うむ福寿草
政七草稿 政7
762小さくても上殿す也福寿草
文政句帖 政7 「上」→「昇」  
763帳箱の上に咲けり福寿草
文政句帖 政7
(異)同句帖(政8)上五「帳面の」
764神国や草も元日きつと咲
文政句帖 政8
(出)『自筆本』 
https://www.janis.or.jp/users/kyodoshi/issaku-01.htm
小林一郎氏編「一茶発句全集」凡例
『一茶全集』第一巻(発句)を底本にして、『一茶大事典』『一茶新攷』(矢羽勝幸氏著)、『全註一茶七番日記』(丸山一彦氏編)、長野郷土史研究会機関誌「長野」等を参照し、私見を加えて補訂した。一茶の発句を季語によって整理し、作句年次順に配列した。同一年のものは五十音順とした。
季語の配列順序は『一茶全集』第一巻(発句)にならったが、私見により新たに季語を立てた場合がある。
左から、発句、出典、作句年次、補注の順に記載した。
片仮名は平仮名に改めた。旧漢字、異体字などは現行の漢字に改めた。
脱字は[ ]として補入した。衍字は< >をつけて示した。
作句年次の元号は一字に省略した。 天(天明1781-89)、 寛(寛政1789-1801)、享(享和1801-04)、化(文化1804-18)、政(文政1818-30)
誤字の訂正、歴史的仮名遣いへの書き換えは「 」→「 」として示した。
同一句形で他に出典のあるものは(出)として、異なる句形の出典は(異)として示した。類似句は(類)とした。
『嘉永版一茶発句集』は『文政版一茶発句集』を増補したものである。『嘉永版一茶発句集』で増補された発句は出典を『嘉永版』とし、両者ともに掲載する発句は『文政版』とした。
出典書名が五字を越える場合は以下のように省略した。
・寛政三年紀行(寛政三紀行)
・与州播州雑詠(与播雑詠)
・父の終焉日記(終焉日記)
・享和二年句日記(享和二句記)
・文化三-八年句日記写(化三-八写)
・文化五~六年句日記(化五六句記)
・句稿消息断片(句稿断片)
・文化十年句文集(化十句文集)
・一茶自筆句集(自筆本)
・「文政句帖」文政七年十二月分草稿(政七草稿)
・「文政句帖」文政八年五・六・七月分草稿(政八草稿)
・文政九・十年句帖写(政九十句写)
・文政版一茶発句集(文政版)
・嘉永版一茶発句集(嘉永版)
・一茶発句集続篇(発句集続篇)
・一茶発句鈔追加(発句鈔追加)
・希杖本一茶句集(希杖本)
・一茶園月並裏書(月並裏書)
・梅塵本八番日記(梅塵八番)
・西国紀行余白書込(西紀書込)
・一茶翁終焉記(終焉記)
・近世発句類題集(発句類題集)
・発句題葉集(題葉集)
・其日庵歳旦帳(其日庵歳旦)
・辛亥元除遍覧(辛亥遍覧)
・甲子元除遍覧(甲子遍覧)
・発句二葉草寅巻(二葉草寅巻)
・斗入法師句帖(斗入句帖)