방 정웅さんがこれまでに書きためた小説を集め『白い木槿』と題して出版しました。版元は図書出版「新幹社」です。「おめでとうございます」、旧正月の喜びが伝わってくるようです。在日総合誌「抗路(八号)」(抗路舎2021年3月)に掲載された「湊川高校・朝鮮語教師の物語」へのリンクも張りました。
『白い木槿』あとがきより |
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在日コリアンとして日本に生まれ、生きていく中で気がつくと「くすぶった思い」を持ち続けている自分がいました。しかし日々の生活に追われ、いつもの日常が過ぎていきます。くすぶった思いの昇華の手段として「小説」に向かったのは、小説世界に入ることで救われた思いが幾度かあったからです。 |
高校教員生活を終え、意を決して「大阪文学学校」の扉を恐るおそる開けました。今まで生きてきた在日コリアンとしての思いを、素朴な庶民の視点から喜び悲しみを淡々と描きたい、そんな希望を持って入っていった「文学の森」の道は険しく、進むことも戻ることもできない時期が何度かありました。同じ思いを持った仲間に救われ、今に至っています。 |
この間書き綴った中短編の中から四編を選びました。幸いなことに「文学賞」と名のつくささやかなご褒美も何度かいただき、それが砂漠で水を与えられたように歩み続ける励みともなりました。 |
「くすぶり」はそう簡単には消えそうもありません。それがある限り「このまま死ねるか」と、自分の胸だけにそっと仕舞い、これからも精進していきたいと思っています。 |
author profile | |
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name | 방정웅 方政雄(パン・ジョンウン) |
birth | 1951 年神戸生まれ |
identity | 在日韓国人二世 |
job | 元兵庫県立湊川高等学校教員 |
author | 『ボクらの叛乱』(兵庫県在日外国人教育研究協議会) |
co-author | 『教育が甦る―生きること学ぶこと』(国土社) 『阪神大震災 2000 日の記録』(神戸新聞総合出版センター) 『多文化・多民族共生教育の原点』(明石書店) 『韓国語・朝鮮語教育を拓こう』(白帝社) ほか |
activities | 伊丹市民祭り、出会いのひろば「伊丹マダン」代表。地域の多文化共生を深める活動を続けている。 |
Author profile を編集しながら、著者が在日韓国人二世であるとするのは彼の国籍というより identity であると考えた。だとすると、僕の identity は何だろうか。在京日本(愛知/群馬県)人三世だろうか。単に日本人だろうか。彼のように明確な identity を持っていないのだろうか。日本島人あるいは本州人だろうか。70歳を過ぎて、いったい何を言っているんだ、愚か者めが。
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本書に収められている短編のひとつを読んだ。「淡々とした」文体が在日というアイデンティティに裏打ちされた著者の強靭な意思を伝えている。1914年に起きた神戸水道のトンネル工事事故に遭遇した朝鮮人たちの忘れ去られた墓を発見し、彼ら犠牲者を弔う鎮魂の文章ともいえる。かつて工事関係者で賑わい、いまはひっそりと暮らす山あいの温泉宿の老女が、その母から聞いた当時の話を語る手法も効果的だ。老女の孫娘が曾祖母の姿を彷彿とさせる。登場人物それぞれの描写が山あいを通る風のように爽やかなのは文体のせいだろうか。新任教師の서경자がほかの人々と協働してどんな教材を作ったのか読んでみたい。
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