「文學界」4月号に掲載される新人賞の候補作に選ばれなかったとき、それを受け入れられるだろうか。候補作に入ることを願うあまり、中間発表を待つあいだに、いつしか選ばれることしか考えなくなった。そんな自分をいじらしくも惨(みじ)めに思う。
何かにとり憑(つ)かれたかのように、変な自信に包まれてしまったのはなぜだろう。候補作に入らない不安よりも根拠のない過信のほうが怖(こわ)いかもしれない。いや、ただの過信だったら、それが打ち砕かれるだけの話で恐れるには及ばない。
候補者にはもう通知があったに違いない。小説の主人公である凭也(ヒョーヤ)が嗤(わら)うかのように川面(かわも)にさざ波が立っている。
「候補作に選ばれなかった…」という文章を書いたことで、数ヵ月こだわってきた何かが打ち砕かれた。砕かれてしまえば何でもない、ただの瓦礫(がれき)だった。さあ、これから「いつか名もない魚(うを)になる」をどうやって公開しようか。
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自作の主人公に嗤われるとは、うれしいような悲しいような
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中間発表を受け入れるためにもがいているようすが克明に記録されていて我ながらおもしろい。これに比べ、某国家試験に対する姿勢はまったく真剣味に欠ける、どこまでも他人事なのだ。
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