
処女作『祐介』が芥川賞候補作に選ばれた尾崎世界観(36)のインタビュー記事で、彼が芥川賞などの賞を獲得することを<勝ち負け>と捉えていると知り、新鮮な驚きを覚えた。周囲の人々の発表を待つ間と発表後の動揺やショックを見て「求めてた刺激はこれ」だったのか、と納得する感覚がうらやましい。こういうのを若さというのかもしれない。
自らを<外来種>と捉え、文学賞にまつわる人々の営みを<業界>として把握する観察眼に旧来の<業界人>にない新鮮さを感じる。同じ日の新聞に、あるノーベル文学(翻訳)賞の受賞者が手書き原稿を母校に寄贈したという記事が載っているが、遠い昔のことのように思えた。