「手のひらを見つめる」とはスマホを見続ける状態をいい、広くスマホ依存症や自閉症などの現代病者を意味します。「手のひらを見つめる人々」はすななわち「隠れンヴィーニ」であり、いずれも小説のテーマそのものですが、ンヴィーニという造語より小説のタイトルとして理解しやすいだろうと考えて変更しました。
第三部に「手のひらを見つめる人々」という見出しの一節があり、次の記述があります。
…人々は睡眠を除くほとんどの時間、手のひらを見て過ごした。歩くとき、電車や地下鉄の到着を待つとき、電車の車内、エスカレータに乗っているとき、便座にすわっているとき、食事中、時間つぶしなど、家にいるときも外出先でも、いつも手のひらを見つめていた。車を運転するときや自転車に乗るときも手のひらを見ることをやめなかった。
…歩くとき、人々は手のひらを自分に向け肘を九十度曲げて歩いた。電車の車内や駅構内の至るところで、手のひらを見ながら歩かないように注意したが、それを守る者はいない。