第三部は第一部二部と違って、主人公と筆者の交錯を想定しているので書きにくい。筆者の目線が前面に出ないようにしなければならないからだ。さらに最後まで、小説のなかの筆者イコール執筆者であってはいけないと考えると余計にむずかしい。
第三部はまた、人々の死と葬儀について書いているからむずかしい。また、十年後の未来を描くのは簡単だと考えていたが、現在のことを書くよりむずかしい。というわけで、第一部と第二部を修正したあと簡単に修正できると考えていた第三部が最もむずかしいということを、今さらながら感じている。
70歳の処女作、なかなか難産です。しばらく落ち着いていたタイトルも <隠れンヴィーニと老人>から<手のひらを見つめる人々>に仮に変更しました。