第二部のリード文を書き替えました。第一部と第三部は主人公のメモやせりふが「である体」で、それを補足する文が「ですます体」ですが、第二部だけはそれが逆になっています。それを説明する文を以下のとおりに修正しました。
第三部の末尾で主人公と筆者の領域が曖昧になりますが、その伏線として第二部の文体変換が必要だったと考えています。執筆中はあまり考えないので、読み返しながら、いつも引っかかったのです。これで、読者もスムーズに読めるかと思います。
第二部の時期は一九九〇年夏から二年ほどで、場所は北米です。凭也( ヒョーヤ) はH市で体験したことを繰り返し話しました。列車の車窓から見た光景と彼の心象風景が交錯するようすは明らかに認知症の症状を示しています。筆者は彼の話を記録しながら、いつしか自分の経験だと錯覚していたふしがあります。第二部で地の文を「ですます体」にし、凭也の独白部分を「である体」にしたのは、そのような錯覚に陥らないためです。