テーマはいくつかありますが、もっとも重きを置いているのは認知症患者における記憶のありよう(態様)です。それを時間軸と風景の関係のずれに注目して描こうとしているのですが、むずかしい。
認知症の患者を他者の目線で描くことは多く行われていますが、患者本人の立場で描くのは不可能だろうという暗黙の了解があるように思います。認知症(かつて痴呆症といわれた)の患者はまともではないから、その者に描けるはずはないという考え方にもとづいているのですね。
二人の老人、あるいは同一の老人に対する渇仰と不安、一時的にではあれ、それを解消させる女性との恋愛、老人たちと女性たちのあいだの関係を知ろうとして、私はこの文章を書き続けています。