京都の龍谷大学は安重根義士が獄中で揮毫した4幅の遺墨を保管しています。
安義士が獄死直前に揮毫した「敏而好學不耻下門」(敏にして学を好み下問を恥じず)など、3幅の遺墨ほか関連資料が1997年に龍谷同大学に寄贈されました。浄土真宗本願寺派が同学を運営していますが、同じ宗派に属す岡山県備中里組の浄心寺住職で龍谷大学の卒業生、津田康道氏が所有していたものを大学図書館に寄託したものです。
2013年4月1日、龍谷大学はこれを契機に社会科学研究所附属機関、安重根東洋平和研究センター(李洙任教授センター長)を発足し、安重根義士に関する研究と学術交流を活発に行っています。これに先立つ2011年3月には、韓国の安重根記念館と学術交流協定を結びました。2015年には遺墨「獨立(独立)」が広島の源船寺(設楽正純氏)から寄贈され、二度に渡って寄贈された安義士の遺墨4幅が、龍谷大学における安重根研究の契機となったのです。
11月2日、京都の龍谷大学響都ホールで第6回の日韓国際学術会議が開かれました。2014年から韓国と日韓で交互に安重根義士をテーマに開催されている日韓国際会議です。今回のテーマは<欧州連合と安重根義士の東洋平和論の関連性>です。韓国から安重根社会崇慕会の金滉植理事長をはじめ関係者が、日本から北東アジアの歴史和解および世界の平和運動に力を入れている小松電機産業の小松昭男代表、東郷和彦前オランダ大使などが主題発表と討論者として参加し、2日と3日の2日間意見交換を行いました。
主催者の招待を受け、私は2日の会議に出席し、次のようにあいさつしました。
日韓関係が難局にあるなか、安重根義士をテーマとする学術会議が6年間継続して行われていることに大きな意義があります。このようりますに困難なときこそ、東洋平和論を提唱した安義士の意思は一層注目される価値があります。今回の学術会議が安義士の未完成の東洋平和論を完成するための貴重な一過程になることを願い、冷えきった日韓関係に温かい風を吹き込む席になるよう願います。