6月28〜29日、大阪で主要20ヵ国(G20)首脳会議が開催されます。大阪市内は今その準備で忙しくしています。日本全国津々浦々からやって来た警官が道路をふさいで安全点検をしたり、主要施設などをパトロールする姿を目にします。
ムン・ジェイン大統領もこの会議に出席するため来阪します。2011年、イ・ミョンバク前大統領が京都で野田佳彦首相と首脳会談した後、大阪に短時間立ち寄って在日コリアンと懇談会を催して以来、8年ぶりの韓国大統領の大阪訪問です。大阪に滞在するのは1998年の故キム・デジュン大統領以来21年ぶりのことです。
よく知られているように大阪は韓国と縁が深い地域です。日本で在日コリアンが最も多く集住し、韓国人観光客が世界で最も訪ねたいところ、最も多く来訪するところであり、歴史的には古代から韓国との文化交流が盛んなところです。
このような観点からも、今回のムン大統領の大阪訪問は意義深いものです。日韓においては政府間の関係が歴史問題などによって冷え切った状態にあり、ムン大統領の今回の訪問に対する関心が高まっています。
ムン大統領の大阪訪問を前に、私が1年余り関西地域を回って感じた日韓の新たな潮流について<京郷新聞>に寄稿し、21日付け同紙に掲載されました。ご一読いただければ幸いです。
【京郷新聞への呉泰奎(オテギュ)氏の寄稿(翻訳)】2019.6.20.
過去の枠組みでは捉えられない日韓の新潮流
最近の日韓関係は「1965年の日韓協定の締結以来最悪」という言説が日韓の上空を転回しています。昨年10月末の韓国最高裁における強制動員労働者に対する日本企業の慰謝料支払い判決をきっかけに、日本の官僚や政治家、学者、メディアが提起し始めた、このような主張が韓国内にも広がっているようです。
政府間の関係だけをみると、最悪とまではいかないにせよ、かなりよくないのは事実です。ただし、政府間を超えた民間や地方自治体にまで視野を広げると、以前とはまったく違った様相が見えてきます。
僅か数年前までは、日韓関係は政府間の関係が冷え込むと、民間交流も地方自治体の交流も中断されることが不文律のようになっていました。ところが、最近は政府間関係が冷えても民間までは冷えずに温かい、「官冷民温」ともいうべき現象が起きています。「日韓関係は最悪論」はこのような潮流を見落としているといえます。
昨年、日韓の人的交流が史上初めて1千万人を超えました。日本から韓国に行った人295万人、韓国から日本に来た人754万人です。過去の枠組みでみれば、最高裁判決があった昨年10月末を起点に韓国を訪問する日本人の数が急落するのが常でした。イ・ミョンバク前大統領が2012年に独島を訪問した翌13年から訪韓日本人数が急落したようにです。しかし、韓国観光公社の統計によれば、訪韓日本人は昨年11月と12月に前年同期比でそれぞれ45%、33.5%増加しました。ことしも5月まで月平均約28%増え続け、3月の訪韓日本人は375,119人を数え、月間訪問者数の過去最高を記録しました。
大阪市生野区には100年前から在日コリアンが集住し、かつては全人口の約4分の1が在日だったといいます。全長500mほどのみゆき通りに面したコリアタウン商店街の両側にはキムチ、Kポップスターのグッズ、チーズホットドッグ、トルネードポテト、韓国化粧品を扱う店や韓国料理店が120店ほど軒を連ねています。曜日に関係なく10代20代の日本の若者が韓国の大衆文化と味覚を楽しもうとして押し寄せ、通行が困難なほどです。商店街が満杯状態となり、トイレの処理能力が追いつかない、と店主たちは悲鳴をあげています。
先月28日、大阪市付近の豊中市にある韓国語教育が盛んな専門学校を訪問しました。この学校は15年前に僅か4人の受講生で韓国語科を開始したそうですが、いまや6つの専攻科目を有する学年定員300人に対して、1年生は全体の60%、2年目は40%が韓国語科の学生になっています。ことしは韓国語科の志願者10人ほどが施設収容能力のため入学できなかったほど、韓国語の人気が年々高まっているというのです。かつて韓国語を学ぼうとする学生は親を説得するのが難かしかったのに、今はそんな親は稀だと学校の関係者は説明しています。
地方自治体の関係者も異口同音に政府間の関係が悪い時期だからこそ自治体の交流を強化しようと言います。このような現象は、明らかに以前とは質的に異なった日韓交流の新たな潮流です。既存の官僚や政治家、メディアや学者たちには捉えられない水面下で、大衆文化と双方に対する多様な好奇心に根ざし、確たる価値観を持った若者たちが、もはや逆流しようのない双方向の交流を作り出しているのです。その間口があまりに広くて深く多様なため、全貌を把握するのさえ難しい状況にあります。
日韓の新たな潮流
もちろん「民温だから官冷のままでよい」と言うのではありません。官は、これらの潮流がさらに進展するように支援しなければなりません。今月 28〜29日に大阪で開催される主要20ヵ国(G20)首脳会議にムン・ジェイン大統領が出席します。韓国大統領として8年ぶりに訪問する大阪は、日本で在日コリアンが最も多く住む地域であり、日韓交流の歴史が最も古く、韓国人観光客数が最も多いところです。両国政府が日韓交流の中心地・大阪において新潮流に沿った新たな友好協力の里程標を打ち立てることを期待してやみません。
同じ記事について、元朝日新聞ソウル特派員の波佐場清氏がブログで紹介している。
https://hasabang.blogspot.com/?m=1
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