2018年は「日韓共同宣言-21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」(金大中・小渕共同宣言)が発表されて20周年になる年です。共同宣言は1998年10月8日に発表されています。
この宣言において、日本は韓国に対し初めて過去の植民地支配に関する反省と謝罪を行いました。そして、韓国は戦後の日本が国際社会の発展に貢献したことを評価しました。その土台の上に立って、両国が将来のために協力を強化していくことを宣言した歴史的な文書です。
ここ数年、日韓関係が歴史認識をめぐる対立で悪化していたことは否めません。そんな状況のなか、朝鮮半島をめぐる情勢の急変に伴い、両国が協力する必要性が増大している現在、宣言の歴史的な意義と価値が改めて注目されていると思われます。
共同宣言20周年を機に、日韓の友好協力関係を再構築しようという両国の政府ほか、政界・学界・市民社会などにおける動きが、ことし下半期に入って活発になっています。去る9日、安倍晋三首相も東京で開かれた記念シンポジウムに参加し、チーズトッポッキとK-POPを取り上げて「第3の韓流ブーム」に言及しました。
12日、大阪総領事館も京都の立命館大学において、韓国政治学会(会長: ソウル大学政治外交学部の金義英教授)と日本政治学会(理事長: 早稲田大学政治経済学部の齋藤純一教授)と合同で記念学術会議を開催しました。
「急変する東アジア情勢と新しい日韓関係」をテーマに約5時間、急変する東アジア情勢を分析し(セッション1)、共同宣言以後における日韓関係を評価して(セッション2)、価値観や課題の共有を通じて新しい日韓関係を模索する(セッション3:ラウンドテーブル)意欲的な試みでした。
北東アジア情勢を見る観点などに関して、日韓の違いも浮彫りになり、大変有意義な議論と考察が交差する場になったと思われます。最大の意義は、日本のなかで韓国と最も縁の深い関西地域において質の高い日韓の知的交流が行われたことです。従来、関西地域は、韓国に対する関心の深さに比べ、日韓の知的交流の流れから疎外されてきたといっても過言ではないからです。
そんな知的な渇望があったからでしょうか、聴衆の集中力は感嘆に値するものでした。また、両国を代表する政治学者たちの集まりである二つの政治学会が組織的に結束して会議を開催した意味も大きいと思われます。このような営みが継続され、将来定例化する可能性もみえてきました。
日韓関係の専門家だけでなく、米国・中国・欧州などの地域政治、政治思想、政治理論など、さまざまな分野の専門家が参加したことも有意義だったと思います。グローバル時代において日韓関係の諸問題を解決するためには、日韓の二国間関係だけに固執していてはならないからです。
なお、会議の運営について、多くの学者が概念的に同意するのがむずかしい「価値観の共有」より、意見を集めやすい実際的な「テーマの共有」を中心に協力を模索するよう提案した経緯があります。現実的な提案であったと思います。
このような作業が地道に積み重ねられることで、日韓友好に貢献する可能性が大きい関西地域が、日韓友好の先端的な発信基地として覚醒し、両国の関係をリードする一翼を担うことを願ってやみません。