초혼[招魂](下)

第12回

詩子アナ:「ヤー・シンカー」ですか、変化球は得意ではありません。

歌樽先生:これは失礼しました。では、1連目をつなげてみましょう。

詩子アナ:はい、つなげてみます。

  • 산산이 부서진 이름이여!
    •  粉々に砕けた名前よ
  • 허공중에 헤어진 이름이여!
  •  虚空にバラバラになった名前よ
  • 불러도 주인 없는 이름이여!
  •  呼んでも主人なき名前よ
  • 부르다가 내가 죽을 이름이여!
  •  死ぬまで私が呼ぶ名前よ

歌樽先生:では、訳に少し手をいれてみてください。

詩子アナ:どんな感じでやればいいんでしょうか。

歌樽先生:2連、3連以降もありますから、気楽に訳してみましょう。

詩子アナ:まずは思うままにやってみます。

  • 離れ離れの姓と名よ!
  • 虚空に散けた姓と名よ!
  • 呼べど主のいない名よ!
  • 果てるまで我叫ぶ名よ!

歌樽先生:姓と名が二つに分離した感じを受けますね。ほかのものも考えてみましたか。

詩子アナ:こんな感じですが。

  • ちぢに砕けしナ・マ・エ!
  • 虚空に散りしナ・マ・エ!
  • 呼べど応えぬナ・マ・エ!
  • 果てるまで呼ぶナ・マ・エ!

歌樽先生:これはなかなかの変化球のようですね。なにか応援団の掛け声のような気もしますが。色々試みたということで、第2連に移りましょう。

詩子アナ:はい、ストレートに読んでみます。

  • 심중에 남아 있는 말 한 마디는
  • 끝끝내 마저 하지 못하였구나.
  • 사랑하던 그 사람이여!
  • 사랑하던 그 사람이여!

歌樽先生:第2連の1行目の粗訳を考えてみましょう。

第25問:「심중에 남아 있는 말 한 마디는」の訳としてよいものはどれでしょうか。
1)心に残る一言は 2)心に残った一言は
3)心に秘める一言は 4)心に秘めた一言は

詩子アナ:あの、「심중」というのは「心の中」のことですか?

歌樽先生:「心の中」というより、「心の奥」といったほうが近いでしょうね。

詩子アナ:続きをみてみないと訳が決まりませんが。

歌樽先生:なるほど、それはそうですね。では続きを見てみましょう。

詩子アナ:はい。「끝끝내 마저 하지 못하였구나.」ですから、「しまいまで残らず言うことは出来なかったよ」という内容です。

第25問:正解は、4)心に秘めた一言は、です。

歌樽先生:そうですね、「心に残る一言」とか「心に残った一言」というのは人から言われたり、教わったり、感銘を受けたりした言葉の場合ですから、ここで言っている内容とは違いますね。では、続きをみてみましょう。

詩子アナ:「사랑하던 그 사람이여!」が繰り返されています。

歌樽先生:これはどんな意味ですか。

詩子アナ:「愛していたその人よ!」ですか?

歌樽先生:直訳するとそうなりますが、「その人」とか「あの人」は詩の日本語の訳語としては疑問が残りますね。では関連した問題を出しましょう。

第26問:この「그 사람」と最も関連のある言葉は次の内どれでしょうか。

1)이름 2)허공 3)심중 4)말

詩子アナ:「사랑:愛」は選択肢にないのですか。

歌樽先生: 皐復(고복)儀式であることを思い出しましょう。

詩子アナ:ああ、なるほど。そういうことですか。

13回

歌樽先生:分かったようですね。

詩子アナ:分かりました。完璧です。

第26問:正解は、1)이름(名前)、です。

歌樽先生:理由は?

詩子アナ:第1連では「名前」を、第2連では自分との関係を詠っていて、「이름:名前」とは「愛していた人」で、同じ人のことを言っているからです。

歌樽先生:「ちぢに砕けしナ・マ・エ!」と訳した意味がここで出てきましたね。ここで第2連の粗訳をしておきましょう。

詩子アナ:はい。

  • 심중에 남아 있는 말 한 마디는 
  •  心にしまいし言葉は
  • 끝끝내 마저 하지 못하였구나.  
  •  最後まで言えぬまま
  • 사랑하던 그 사람이여!           
  •  愛しき君よ!
  • 사랑하던 그 사람이여!           
  •  愛しき君よ!

歌樽先生:ほかの訳も考えてみましたか。

詩子アナ:創作もあるのですが、、、

心に秘めし一言は
最後まで我胸の中。
愛し愛しや君恋し!
愛し愛しや君恋し!

歌樽先生:こういう風にいろいろと考えてみることが大切ですね。

詩子アナ:ということは、なかなかいい線をいっていると考えていいんでしょうか?

歌樽先生:いい線かどうかは全体を見ないとなんともいえませんね。実は石川啄木が同じような心情を詠っていますね。

第27問:啄木は言えなかった言葉を「何の言葉」と言っているでしょうか。

1)愛の言葉   2)告白の言葉 3)大切の言葉  4)大事な言葉

詩子アナ:「考えてみることが大切」とのことですが、ここは文明の利器を利用して、すぐ捜してみます。

歌樽先生:そんなにすぐ捜せるのですか。

詩子アナ:ええ、まあ、かなり早いほうです。ええと、ありました。

http://www.asahi.com/travel/traveler/TKY200707060273.html

かの時に言ひそびれたる 大切の言葉は今も 胸にのこれど

第27問:正解は、3)大切の言葉、です。

歌樽先生:なかなかジーンとくる歌ですね。『一握の砂』の「忘れがたき人人」の歌ですね。ここでは「大切の言葉」と抑えた表現になっていますね。愛というものはこうでなくてはいけません。

詩子アナ:さきほど「大切」というヒントをくださっていたんですね。「あなたが私にとってとても大切な人です」とか「好意を持っています」とか言う機会がなかったわけではないのに、そういう言葉は言えなかったんですね。

歌樽先生:ストレートにはなかなか言えない時代でしたからね。

詩子アナ:啄木が「かの時に言ひそびれたる」と言っている相手の人は「智恵子」さんなんですか。

歌樽先生:「橘智恵子」さんですね。

詩子アナ:智恵子さんって、ほかの智恵子さんもいましたよね。

歌樽先生:高村光太郎の『智恵子抄』がありますね。詩子アナもいろいろと知っていることが多いですね。感心しました。『智恵子抄』で、何か心に残っている言葉がありますか?

詩子アナ:いえ、急にいわれても・・・

歌樽先生:では、軽い気持ちでやってみましょう。

第28問:『智恵子抄』のなかで、智恵子は東京に何がないといっていますか。

1)空   2)山   3)川    4)湖

詩子アナ:ええと、これは読んだことがあります。

14回

詩子アナ:どこにでもあって、ないものを捜せばいいようですね。

第28問:正解は1)空、です。

歌樽先生:なかなかすばらしいですね。

詩子アナ:いえいえ、とんでもありません。褒められた後が恐いですから。

歌樽先生:では、3連に移りましょう。

詩子アナ:はい、いよいよ第3連です。読んでみます。

붉은 해는 서산 마루에 걸리었다.
사슴의 무리도 슬피 운다.
떨어져 나가 앉은 산 위에서
나는 그대의 이름을 부르노라.

今回の詩のキーワード、「떨어져 나가 앉은 산 위에서」がこの3連に入っていますが。

歌樽先生:そうですね。まず、第3連の1行目の「붉은 해는 서산 마루에 걸리었다」の「서산(西の山)」ですが、他の言葉といろいろ関わりあっています。そこで

第29問:第3連で「서산(西の山)」との関わりをもつ言葉の関連図を描いてみましょう。

詩子アナ:関連図ですか?関連図というと相関図のようなものですか。

歌樽先生:相関図が描ければいいですね。

詩子アナ:「서산(西の山)」とのかかわりで関連図を描くということは、「서산(西の山)」という言葉がキーワードになってもいいくらいですね。直訳すると「붉은 해는:赤い太陽は」、「서산 마루에:西の山の背に」、「걸리었다:かかった」となりますが、、、

歌樽先生:では、気のついたものから一つずつ記してみましょう。

詩子アナ:「서산(西の山)」ですから、まず、西に山を中心に書き入れてみます。

第29問:下の図のように関連図を書いてみました。

사슴의 무리(鹿の群)  ― 슬피(悲しく) ― 운다(啼く)

붉은 해(赤い太陽)  ― 서산(西の山) – 마루(山の背) ― 걸리었다(かかった)

떨어져 나가 앉은 (離れ出て座った) 산 위에서(山の上で)

나는(私は) 그대의(あなたの)
이름을(名前を) 부르노라(呼ぶのだ)

歌樽先生:「떨어져 나가 앉은 산 위에서」と西山との関係はどうなっていますか。

詩子アナ:よく分かりません。あー、それでこれが今回の詩のキーワードになっている訳ですね。

歌樽先生:「西山」と「떨어져 나가 앉은 산」を線で結んでみましょう。

詩子アナ:「西山」が「떨어져 나가 앉은 산」なんですか?なるほど、そのように考えてみると、第3連の全てが「西山」と繋がりますね。でも、「離れ出て座った山」がどうして「西山」になるのですか。

第6問で「名前をどこで呼ぶのでしょうか。」の答は「3)屋根の上」でしたから、「離れ出て座った山」の「西山」の上で名前を呼ぶことはできないと思うのですが。

歌樽先生:屋根の上にいながらにして、同時に西山の上で死者の名を呼ぶことが出来る状況を考えてみましょう。

詩子アナ:そんな忍者のようなことができるんですか。

歌樽先生:それが出来るのが、「素月マジック」ですね。

詩子アナ:素月はマジシャンでもあるのですか。

歌樽先生:マジシャンといえばマジシャンですね。普通の人がなかなか出来ないことをなんでもないようにやってのけるのですから。

15回

詩子アナ:なかなか手ごわいキーワードですね。「떨어져 나가 앉은」という表現は他の詩でも使われているのですか。

歌樽先生:使われていますよ。「나의 집(俺の家)」という題の詩があるのですが、この詩は「들가에 떨어져 나가 앉은 메 기슭의(野辺に座したる山裾の)」という文で始まっています。

詩子アナ:「鹿の群れが悲しく啼く」とありますが、鹿の鳴き声は悲しいんですか。

歌樽先生:悲しいですね。鹿の群れが一斉にあちこちで啼き始めると、平常心では聞いていられないくらいです。

詩子アナ:えっ!私、奈良公園で鹿の啼くのを聞いたことがありますが、そんなにすごいものとは思いませんでしたが。4択でどんな声か問題を出してもらえると助かるのですが。

歌樽先生:難しい問題を出されてしまいましたね。では、なんとかやってみましょう。

詩子アナ:それでこそ、独断と偏見の歌樽先生の独壇場です‼

歌樽先生:独壇場ではなくて、何でしたっけ?

詩子アナ:独壇場ではなくて、ええと、「独擅場(どくせんじょう)」です。

歌樽先生:以前、「オンマヤ、ヌナヤ」の第7回でやりましたね。

第30問:鹿が啼く声とはどんな音でしょうか、次のなかから近いものを選びましょう。

1)ガー   2)ギー  3)グー  4)ゴー

詩子アナ:聞こえ方は人によって違うかもしれませんから、当てずっぽうでやります。

歌樽先生:当てずっぽうでいいですよ。鹿にも個性がありますし、歳によっても違いますから。

何でも正解にしますから、気軽に答えてください。

詩子アナ:鹿の鳴き声を調べてみます。

歌樽先生:で、決まりましたか?

詩子アナ:はい。決めました。形容し難い鳴き声ですね。

第30問:2)ギー。

ともかく悲しい啼き声というのは分かりました。この鹿の声と、屋根の上にいながらにして、同時に西山の上で死者の名を呼ぶことが出来る状況は関係があるのですか。

歌樽先生:では、それを考えてみましょう。

第31問:「皐復(고복)儀式」をしている人の左耳はどちらを向いていますか。

1)東   2)西   3)南   4)北

詩子アナ:北を向いて名前を呼んでいるわけですから、左耳は・・・

第31問:2)西、です。

歌樽先生:では、次です。

第32問:「皐復(고복)儀式」をしている人の左手はどこにありますか。

1)東   2)西   3)南   4)北

詩子アナ:これも北を向いて名前を呼んでいるわけですから、左手は・・・

第32問:2)西、です。

歌樽先生:では、足についてみておきましょう。

第33問:「皐復(고복)儀式」をしている人の左足はどこにありますか。

1)東   2)西   3)南   4)北

詩子アナ:左足ですか、それはもちろん・・・

第33問:2)西、です。

なるほど、西が「素月マジック」の秘密なんですね。

歌樽先生:やっと気がつきましたね。

詩子アナ:西山の太陽は、時間の経過と現在の時刻を示すだけでなく、鹿を登場させて、死を悼みつつ、稜線を働かせたという訳ですか、なるほど。屋根の上にいながらにして、同時に西山の上で死者の名を呼ぶことが出来る状況のマジック、解けました!!

歌樽先生:では、「떨어져 나가 앉은 산 위에서」を説明してみましょう。

詩子アナ:はい。やっと詩の核心部分に触れることができた気がします。

歌樽先生:なかなかすばらしい洞察力ですね。

詩子アナ:でも、これで違っていたら目も当てられませんから、もう一度整理してみます。

歌樽先生:はい、ではそうしましょう。

16回

詩子アナ:なかなか関連図を描くのは難しいのですが、書き直してみました。

④사슴의 무리(鹿の群)  ― ⑤슬피(悲しく) 운다(啼く)

①붉은 해(赤い太陽)  ⇒ ②서산 마루 (西の山の背) ― 걸리었다(かかった)
⇓ ③ (西の山の影)
⑥떨어져 나가 앉은 산 (離れ出て座った山 )⑦위에서(~の上で) =

나는(私)=(⑧屋根の上の西山の影の上)は
⑨그대의(あなたの) 이름을(名前を) 부르노라(呼ぶのだ)

歌樽先生:今度は分かりやすい図になっていますね。

詩子アナ:ヤッター‼ 分かりやすいとのお言葉、感謝なのであーる!

歌樽先生:どうやら調子が出てきたようですね。では、「素月マジック」を説明してみましょう。

詩子アナ:まず①の「赤い太陽」が②の「西の山」にかかると、③西の山の影が東側に延びて来ます。

こうしているうちに山の方から④鹿の群れが⑤悲しく啼くのが聞こえてきます。③の西の山の頂の影は山からどんどん離れていきます。そして、屋根の上に山影が到達すると、⑥の「離れ出て座った山」として再び登場し、⑦その上で、つまり⑧の屋根の上の西山の影を踏んで、⑨の「あなたの名を呼ぶ」ことになります。

歌樽先生:流れは掴んだようですね。では、

34問:「素月マジック」の真髄はどこにありますか?

詩子アナ:真髄といえるかどうか分かりませんが・・・

34問:西の山にかかった太陽と山の背と自分の立っている屋根とを光と影で一直線で結んだところです。横からみると山の影と自分の影が相似形になっています。「悲しみよ!天に届け」といわんばかりの迫力で迫ってきます。ここがポイントなので、「떨어져 나가 앉은 산 위에서(離れ出て座った山の上で)」が今回の詩のキーハングルになっているのだと思います。

歌樽先生:なるほど。相似形という発想はどこからでてきたのですか?

詩子アナ:以前、素月の成績表を見たおりに確か数学の成績が良かったことを思い出しました。

歌樽先生:「山有花13回」のところでしたね。国語講読が100点、漢文講読98点、歴史90点、地理90点、幾何90点、三角98点、物理95点、化学98点、体操91点です。数学は得意ですか。

詩子アナ:得意と言うほどではありません。

歌樽先生:なかなかの実力者と見ましたが。

詩子アナ:いえいえ、そう褒められるほどできたわけではありません。

歌樽先生:素月くらいできたことにして、この部分を粗訳してみましょう。

詩子アナ:「떨어져 나가 앉은 산」が難しいですが、やってみます。

붉은 해는 서산 마루에 걸리었다.
 夕陽は西の山の背にかかり
사슴의 무리도 슬피 운다.   
 鹿の群れも悲しく啼く。
떨어져 나가 앉은 산 위에서     
 西から延びた山影に立ち
나는 그대의 이름을 부르노라.   
 我は君の名を呼ぶのだ。

歌樽先生:やや、説明的ですね。ほかの訳も考えてみましたか。

詩子アナ:こちらも創作したところがあるのですが、、、

夕日はすでに山の端に
鹿の悲しき声しきり
山影を踏み空仰ぎ
我君の名を叫ぶのみ

歌樽先生:では、鹿についてもう少し見ておきましょう。

第35問:「鹿」についての短歌か俳句かなにか思い当たるものがありますか?

17回

詩子アナ:百人一首でもいいですか。

歌樽先生:もちろん構いませんよ。

詩子アナ:確か、こんな歌だったと思います。

第35問:奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ秋は悲しき

歌樽先生:猿丸太夫の歌ですね。

詩子アナ:『古今集』秋上・215とあります。
http://www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/005.html
http://komonjyonavi.web.fc2.com/hyakunin/005.html
http://www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/083.html

歌樽先生:他にはありませんか。

詩子アナ:少々お待ちください。ありました。83番の歌です。

世の中よ道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

どちらも鹿の悲しい鳴き声が詠われているんですね。韓国では鹿の語の入った短い詩はないんですか。

歌樽先生:短い詩といえば「시조:時調」という形式があります。

詩子アナ:「詩調」ではなく「時調」なんですね。

歌樽先生:最近はあまり作られなくなったようですが、「時調」については
別の機会に譲ることにして、1936年に『시슴:鹿』という詩集を出した「백석:白石」の詩を見てみましょう。2行詩です。金素月と同じ学校を出ています。

노루(p. 52)(麞 ノロ) 『사슴』백석 1936.1.20 (鮮光印刷株式会社)

山곬에서는 집터를츠고 달궤를닦고 

山峡(やまかい)では敷地にと土を掘っては地固めし、

보름달아레서 노루고기를먹었다   

満月の下でノロの肉を食べた

詩子アナ:「ノロ」というのは鹿なんですか。

歌樽先生:「ノロジカ」といわれているようですね。鹿よりも小さくて山ではよく見かけます。夕方里に下りてくることも多いので、このノロは捕まったようですね。

詩子アナ:この詩を短歌にしてみたいのですが、いいでしょうか?

歌樽先生:どんな風の吹き回しか分かりませんが、大歓迎です。

詩子アナ:歓迎していただけるとは思っていませんでした。では、一首。

山里に家を建てんと地を均し 捕らえしノロを月に供えぬ

歌樽先生:歌人ですね。

詩子アナ:ヤッター‼

18回

歌樽先生:今度は、俳句でなにか探してみることにしましょう。

36問:正岡子規の句で鹿の入った面白い句を探しましょう。

詩子アナ:俳句といえば、正岡子規ですからね、探してみます。ええと、100句を遥かに超えています。この中から面白い句を探すのですか。これは大変だ!

第36問:鹿老て猿の声にも似たる哉(明治25年)
わりなしや妻追ひまはす昼の鹿(明治28年)
鹿聞きに来て鹿笛をあはれがる(明治30年)

http://www.webmtabi.jp/200911/shiki_kigo/fa_ani_shika.html

歌樽先生:なかなか面白いものを探しましたね。

詩子アナ:もっと面白い句があるようですね。

歌樽先生:面白いかどうかは人によって違いますから、なんとも言えませんね。

詩子アナ:いえいえ、それはともかく、面白い句を教えてください。

歌樽先生:渋柿は馬鹿の薬になるまいか

http://www.webmtabi.jp/200911/shiki_kigo/fa_sho_kaki.html

詩子アナ:面白いですね。でも、私に言われている気がしますが。

歌樽先生:この句を見ると誰もがそう思うかもしれませんね。

詩子アナ:この句は鹿の句の中にはありませんでしたよ。

歌樽先生:では、渋柿を食べてみますか。

詩子アナ:あっ!やられてしまった‼

歌樽先生:子規は柿がとても好きだったようですね。

詩子アナ:さっきの「사슴」には柿についての詩はないのですか。

歌樽先生:ありますよ。ちょっと見ておきましょう。3行詩です。

  • 青柿(p. 41)
  • 별많은밤          
  •  星の多い夜
  • 하누바람이불어서      
  •  西風が吹いて
  • 프른감이떨어진다 개가 즞는다 
  •  青柿が落ちる 犬が吠える

詩子アナ:さっきも思ったのですが、書き方が今とはずいぶん違うようですね。

歌樽先生:そうですね。書き方だけでなく、方言が使われていますから、言葉も少し違いますね。

詩子アナ:どんな言葉が方言ですか?

歌樽先生:「하누바람」とありますが、「하늬바람」が正しい綴り字とされています。北の地方では「西北風」あるいは「北風」をいうようですが、韓国国語院では「西風」をとっています。

詩子アナ:詩に「青柿」とあるので、「北風」の冬を避けて、「西風」としてあるわけですね。

歌樽先生:なかなか鋭いところを見ていますね。

詩子アナ: いえいえ、それほどではありません。冬ならもう青柿はない訳ですから。

歌樽先生:もう詩人の境地のようですね。

詩子アナ:ああー、これは大変なことになりました。ええと、「西風や青柿落ちて犬吠える」では因果関係の説明になってしまいますし・・・

歌樽先生:「因果関係」ですか、この詩は「犬が関係」していますね。一字違いですが。

詩子アナ:おおー。「오비이락(烏飛梨落)」じゃなくて、「西風柿落」・・・、「星多き夜に西風が青柿を落としてゆくを犬吠えにけり」、叙述に終わっていますね。「星多き夜に青柿を落としたる西風責めて子犬吠えたり」、ああ、3行詩を一行で言うのは難しいですね。

歌樽先生:芭蕉十哲の一人の向井去来の「落柿舎」には「柿落花注意 柿主」という木の札が柿の木に掛けれているようですね。さあ、もう一息です。

http://morgen100.kt.fc2.com/03rakushisya/03rakushisya.htm

詩子アナ:もう一息といわれても、出来ることと出来ないことがありますから・・・・

柿落ちぬ星夜の風に子犬吠ゆ

歌樽先生:俳人ですね。こういう練習をすると詩の核になる部分に近づけますね。

詩子アナ:今日は、歌人、詩人、俳人の一人3役の大変な日なのであーる。

歌樽先生:いろいろとやってみることが大切ですからね。では、次に進みましょう。

第19回

詩子アナ:では、第4連を読んでみます。

  • 설움에 겹도록 부르노라.
  • 설움에 겹도록 부르노라.
  • 부르는 소리는 비껴 가지만
  • 하늘과 땅 사이가 너무 넓구나.

歌樽先生:では、これを粗訳あらやくしてみましょう。

詩子アナ:えっ!すぐに訳すのですか。急に訳せといわれても・・・

歌樽先生:では、いくつか見ていきましょう。

第37問:「설움에 겹도록 부르노라」とはどんな気持ちをうたったものでしょうか。

  • 1)名前を呼びたくなる気持ち  
  • 2)いやいや名前を呼ぶ気持ち
  • 3)名前を呼ぶしかない気持ち  
  • 4)なつかかしく名前を呼ぶ気持ち

詩子アナ:悲しみが込み上げて名を呼ぶわけでしょうから・・・

第37問:正解は、3)名前を呼ぶしかない気持ち、です。

歌樽先生皐復こうふく(고복)儀式では死者の名前を呼ぶのですが、そうするしかない儀式でもありますね。

第38問:「부르는 소리는 비껴 가지만」と違う内容は次の内どれでしょうか。

  • 1) 산산이 부서진 이름이여!    
  • 2) 허공중에 헤어진 이름이여!
  • 3) 불러도 주인 없는 이름이여! 
  • 4) 부르다가 내가 죽을 이름이여!

詩子アナ:これは死者の名を呼んでも、スーっと通り過ぎて答えてくれないことを言っているので・・・つまり、本人に声が届かない訳ですから・・・

第38問:正解は、4)부르다가 내가 죽을 이름이여!、です。

歌樽先生:問題がやさしすぎたようですね。

第39問:では、ここで、頭音と脚音の母音から整理しておきましょう。

詩子アナ:はい。では頭音と脚音を確認して整理してみます。

(陽母音:아/오 中性母音:이   陰母音:その他)

第1連第2連第3連第4連第5連
頭/脚音 頭/脚音 頭/脚音 頭/脚音 頭/脚音
산陽/
여陰
심中/
는陰
불陰/
다陽
서陰/
라陽
선陰/
도陽
허陰/
여陰
끋陰/
나陽
사陽/
다陽
서陰/
라陽
부陰/
여陰
불陰/
여陰
사陽/
여陰
떠陰/
서陰
부陰/
만陽
사陽/
여陰
부陰/
여陰
사陽/
여陰
나陽/
라陽
하陽/
나陽
사陽/
여陰
第1連第2連第3連第4連第5連
頭音2種
3同
3種
2同
2種
2同
2種
3同
2種
2同
脚音1種
4同
2種
3同
2種
3同
1種
4同
2種
3同

第39問:以上、整理すると、頭音は2種3同が2つ、2種2同が2つ、3種2同が1つ、脚音は1種4同が2つ、2種3同が3つです。頭脚音10の内、2種3同が5つで半分です。

2種3同とか一種4同といっても、母音の場合は陽母音、陰母音、中性母音の3種ですから、子音を5つに分ける五行の場合と全く同じように見る訳にはいかないかも知れませんが、金素月の特徴は出ているように思いました。(2種3同:「山有花7回」参照)

歌樽先生:そうですね。特に「이름이여!」「사람이여!」などの同音の反復技法が際立っていますね。

詩子アナ:この詩では「산산이」「사람」「사랑」など「ㅅ(シオット)」の音も目に付きますが。

歌樽先生:それらは後でまた調べてみることにしましょう。

詩子アナ:脚音20の内、「여」が9回使われていますが、これがこの詩の強烈なイメージを作り出しているように思うのですが。

歌樽先生:そう言っていいでしょうね。ただ、原本では「이름이어!」「사람이어!」となっていて、実は「여」とは書かれていないんです。でも、読むときは[이르미여][사라미여]と読むので、今はどの本にも「이름이여!」「사람이여!」と表記されているのです。

詩子アナ:原本と現在の表記と違うところは他にもあるのですか。

歌樽先生:ずいぶんありますね。分かち書きも入れると、全ての行で今の表記法とは違った書き方になっています。

詩子アナ:えっ、大変だー!

20回

歌樽先生:なにをそんなに慌てているのですか。

詩子アナ:さっき、頭音と脚音の母音の整理をしましたが、表記が変わるとこちらもまた変わるのではないかと思いまして。

歌樽先生:頭音と脚音の場合は大丈夫だいじょうぶですよ。

詩子アナ:頭音と脚音は大丈夫だと聞いて安心しました。

歌樽先生:安心したところで、次に行きましょう。

第40問:では、頭音と脚音の子音を整理しておきましょう。

詩子アナ:子音は五行に分けるので、さっきの母音と同じようにやってみます。

五行 五音   対応子音
① 木:牙音    ㄱ/ㅋ
② 火:舌音   ㄴ/ㄷ/ㄹ/ㅌ
③ 土:喉音    ㅇ/ㅎ
④ 金:歯音   ㅅ/ㅈ/ㅊ
⑤ 水:脣音   ㅁ/ㅂ/ㅍ

第1連第2連第3連第4連第5連
頭/脚音 頭/脚音頭/脚音頭/脚音頭/脚音
산金/
여土
심金/
는火
불水/
다火
서金/
라火
선金/
도火
허土/
여土
끋木/
나火
사金/
다火
서金/
라火
부水/
여土
불水/
여土
사金/
여土
떠火/
서金
부水/
만水
사金/
여土
부水/
여土
사金/
여土
나火/
라火
하土/
나火
사金/
여土
第1連第2連第3連第4連第5連
頭音3種
2同
2種
3同
3種
2同
3種
2同
2種
3同
金1土1水2金3木1水1金1火2金2水1土1金3水1
脚音1種
4同
2種
2同
2種
3同
2種
3同
2種
3同
土4火2
土2
火3
金1
火3
水1
火1
土3

第40問:以上、整理すると、頭音は2種3同が2つ、3種2同が3つ、脚音は1種4同が1つ、2種3同が3つ、2種2同が1つです。頭音と脚音合わせて10の内、2種3同が
5つでこちらも半分を占めています。

歌樽先生:では、もう1つ、やっておきましょう。

41問:1連から5連の初めの音と終わりの音にも注目して整理しましょう。

詩子アナ:はい。1連は初めの音が「산」で「金」、終わりの音は「여」で「土」です。

各連の初めの音を初音、終わりの音を終音として整理してみます。

初終音第1連第2連第3連第4連第5連
初音산 金심 金불 水서 金선 金
終音여 土여 土라 火나 火여 土

第41問:初声は5つの内、「金4、水1」、終音は5つの内、「土3、火2」です。

歌樽先生:それで、なにか分かりましたか。

詩子アナ:仮にですが、4連までとすれば、初音は2種3同、終音は2種2同、また第4連を5連と入れ替えてみると、初音は1種4同、終音は2種3同となります。

歌樽先生:ということは?

詩子アナ:つまり・・・、詰まってしまいました。ええと・・・

歌樽先生:ここで詰まっては、つまりませんね。

詩子アナ:つまり、頭音も脚音もそうですが、より大きくみると初音も終音もいんというものを考えて、詩作をしていたということになります。あー、疲れた!

歌樽先生:おおきいスケールでみられるようになりましたね。お疲れさまでした。

21回

歌樽先生:では、詩の本文の方に移りましょう。

第42問:「하늘과 땅 사이가 너무 넓구나」とあります。天と地の間があまりに広いと感じた理由は何でしょうか。

詩子アナ:もともと天と地の間は広いというか、広すぎるように思うのですが・・・

歌樽先生:確かにそうですね。広い方を見れば遥かに遠いのですね。でも、近い方を見るとそれほど遠くない場合もあるんじゃいでしょうかね。

詩子アナ:近い方と言うと?

歌樽先生:キャッチボールをしているときのボールは、地を離れて浮いている訳ですが、これは地と空の間にあると言ってもいいし、高いボールだと空にあると言ってもいいようですね。

詩子アナ:ああ、そういうことなら、シャボン玉なんかもすぐそこにあるようで、でも、空にあるとも言えますね。

歌樽先生:では、ヒントをだしましょう。

第42問続:天と地の間があまりに広いと感じた理由は次の内どれでしょうか。

  • 1) 呼ぶ声が本人に届かないから  
  • 2) 天と地があの世とこの世を暗示するから
  • 3) 鹿が悲しくいているから  
  • 4)「天地玄黃、宇宙洪荒」だから

詩子アナ:まず、後ろからですが、4)の「天地玄黃てんちげんこう宇宙洪荒うちゅうこうこう」は千字文せんじもんの一番初めの言葉で、「天はくろく地は黄色い。宇宙は果てしなく広い。」という意味ですから、これは感じた理由ではなく、事実をそのまま言っているように思います。3)も鹿が死者を知っているかどうか分かりませんし、鹿が悲しく啼いていることが天と地の広さを感じさせるとは思えません。

歌樽先生:なるほど。鹿の啼き声は死者とのかかわりがなくても、もともと悲しいものですからね。

詩子アナ:1)と2)は同じことを言っているようにも思えるのですが、この2つは別のことを言っているのですか。

歌樽先生:同じような面もあるし、別の面もあるようですね。よく考えてみましょう。

詩子アナ:天があの世で地がこの世だとしても、招魂しょうこんの儀式ですから、まだ完全にあちらの世界、つまりにあの世に行っているという訳ではないように思うんですが、これは合っていますか。

歌樽先生:合っているとも言えますし、違っているとも言えますね。

詩子アナ:微妙ですね。

歌樽先生:「天と地があの世とこの世を暗示するから」と考えている人も多いようですが、これは一般論で、名前を呼ぶ立場から考えると、天と地があの世とこの世を暗示するしないにかかわらず、名を呼ぶという行為をせざるをえない訳ですから、これは「あまりに広い」と感じさせる理由とは思えませんね。

詩子アナ:ということは、分かりました。答を聞いてしまって申し訳ないのですが・・・

第42問:1)呼ぶ声が本人に届かないから、です。

歌樽先生:あー、誘導訊問ゆうどうじんもんに引っ掛かってしまいましたね。詩ですから、必ずこう考えなくてはいけないというのはないので、自分で別の答を考えたり、問題自体を新たに作るということもできるといいですね。では、4連を粗訳してみましょう。

詩子アナ:では、軽めにやってみます。

  • 설움에 겹도록 부르노라.    
  •     悲しみつのり名前呼ぶ。
  • 설움에 겹도록 부르노라.    
  •     悲しみつのり名前呼ぶ。
  • 부르는 소리는 비껴 가지만  
  •     呼ぶ声届くところなく
  • 하늘과 땅 사이가 너무 넓구나. 
  •  あまりに離れし天と地よ。

歌樽先生:やや、直訳的ですね。ほかの訳も考えてみましたか。

詩子アナ:こちらも勝手に創作したところがあるのですが、、、

  • 呼べば悲しや、ああ悲し。
  • 呼ばねば悲し、なお悲し。
  • 呼ぶ声さまよう当てもなく
  • 天地あまりに離れをり。

歌樽先生:いろいろな訳を試みたということで次に進みましょう。

22回 

詩子アナ:では、第5連を読んでみます。

  • 선 채로 이 자리에 돌이 되어도
  • 부르다가 내가 죽을 이름이여!
  • 사랑하던 그 사람이여!
  • 사랑하던 그 사람이여!

歌樽先生:この詩では「망부석(望夫石))」が思い出されますね。

詩子アナ:「망부석(望夫石)」ですか。確か、済州島に行ったときに聞いたような気がします。夫を待っているうちに石になったという伝説のようでしたが。

망부석  http://blog.daum.net/01088299945/8608839

歌樽先生:「망부석(望夫石)」の説話はいくつかあるようですね。

43問:では、5連を粗訳してみましょう。

詩子アナ:はい、やってみます。

第43問:初めは気軽にやります。

  • 선 채로 이 자리에 돌이 되어도
  •  立ったままこの場で石になろうとも
  • 부르다가 내가 죽을 이름이여! 
  •   果てるまで我叫ぶ名よ!
  • 사랑하던 그 사람이여!     
  •  愛していたあの人よ!
  • 사랑하던 그 사람이여!     
  •  愛していたあの人よ!

歌樽先生:やや、直訳的で、説明的ですね。ほかの訳も考えてみましたか。

詩子アナ:こちらも勝手に作ってしまいましたが・・・

  • 立ちしまま石となるとも
  • 我果てるまで叫ぶ名よ!
  • 愛し愛しや君恋し!
  • 愛し愛しやなほ恋し!

歌樽先生:なかなか、工夫しましたね。

詩子アナ:ヤッター!

歌樽先生:工夫がいいかどうかは別にして、リズムをかなり考えられようになりましたね。

詩子アナ:リズム一番、内容二番とこんな感じでいいのでしょうか。

歌樽先生:いつも言っていますが、一番大切なのはどういう方針で訳詩をするかということです。

詩子アナ:どういう方針で訳詩をすればいいのですか?

歌樽先生:それは人によって違っていいと思います。自分で決めてください。

詩子アナ:では、「千々ちぢに砕けしナ・マ・エ」のようにしてもいいんですか?

歌樽先生:そうなれば詩子アナの「独擅場どくせんじょう」ですね。

詩子アナ:独断と偏見の歌樽先生のお言葉ですから、そのお言葉に甘えて、訳詩をさせていただきましょう。

歌樽先生:なかなか威勢がよくなってきましたね。独創的な訳を期待していますよ。

詩子アナ:でも、質は保証できませんが・・・

歌樽先生:しつこいようですが、質も、しっかりやりましょう。では、大川まで足を伸ばして、夕陽ゆうひを見て帰りましょう。

わきびとたち

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