제비

第1回

詩子アナ:今回は川辺であればどこでもいいということで、こんなところに来ています。

早速、歌樽先生に伺ってみましょう。今回の詩のキーとなるハングルはずばり、何でしょうか。

歌樽先生:ずばーり……難しいですね。実は同じ題の詩が二つあるんです。

詩子アナ:同じ第が2つということは、全部で4つということですか。

歌樽先生:なるほど、そういう数え方も確かにありますね。これは一本とられました。

詩子アナ:ヤッター!じゃあ、同じ題のものが一組といっていいかどうかはわかりませんが、ともかくワンセットあるということのようですね。今日は初めからなかなか出出しからいい調子、いい調子。

歌樽先生:まあ、こういうのを調子に乗るということなんでしょうね。

詩子アナ:じゃ、ワンセットではないということなんですね。

歌樽先生:そもそも、セットという概念ではないんです。それぞれ別々に作っていますから。

詩子アナ:全く別々なんですか?

歌樽先生:全く別々かといわれると、詩は詩ですし、共通点がなしという訳ではありませんから、そこはなんともいえません。

詩子アナ:歌樽先生が困っている様子をみなさんご覧になっていまーす。

歌樽先生:では、このへんで何か問題を出しておきましょう。

第1問:金素月の詩で「제비 つばめ」という同じタイトルを持つ詩が2つありますが、他にも同じタイトルの詩があります。そのタイトルは次の内どれでしょうか。

1)無題  2)有題  3)失題  4)兼題

詩子アナ:「兼題」は確か俳句で聞いたことがあるような気がします。

歌樽先生:句会に行ったことがあるようですね。

詩子アナ:いえいえ、行った事はありません。聞いたことがあるだけですが、兼題で2つ詩を作ることはない気がします。

歌樽先生:では、3つに絞られましたね。

詩子アナ:2)の有題というのは題があるわけですから、あればその題を書けばいい訳ですから、答は1)無題か、3)失題とこんな感じでしょうか。

歌樽先生:推理力が一段と冴え渡っていますね。

詩子アナ:ヤッター!そんなに誉められると、もう有頂天になりますから、困ります。

歌樽先生:ちっとも困っていないように見うけられますよ。では、どちらかに決めましょう。

詩子アナ:無題という題を付けると、それも題ですから、少なくとも無題ではないということで排除すると、3番の「失題」だと思いますが、いかがでしょうか。

歌樽先生:無敵ですね。

第1問:正解は3)失題です。

詩子アナ:それはどんな詩ですか。

歌樽先生:一つのほうは易しくて、いいのですが、もう一つは理解するのがとても難しい詩です。

詩子アナ:では、易しいほうを少しだけ紹介してください。

歌樽先生:では、少しだけということで。タイトルは「失題」と漢字で書かれています。

  • 동무들 보십시오 해가 집니다  
  •  みんなごらんよ 陽が沈む
  • 해지고 오늘날은 가노랍나다   
  •  沈めば 今日とはお別れさ
  • 웃옷을 잽시빨리 입으십시오   
  •  何か羽織って さあ早く
  • 우리도 산마루로 올라갑니다   
  •  僕らもお山に 登ろうよ

詩子アナ:はい、分かりました。こんな感じということで、理解したことにして、今回扱う「つばめ」という詩のキーとなる部分を「ずばーり」指摘してください。ではお願いします。

歌樽先生:「몸」でしょうかね。

詩子アナ:ずばーり、「몸」、いただきました!さて、今回の詩のキーハングル「몸 体」の入った詩とはどんな詩でしょうか。

第2回

詩子アナ:まず、詩の紹介をお願いします。

歌樽先生:短い詩です。タイトルは「제비 つばめ」です。

  • 하늘로 날아다니는 제비의 몸으로도
  • 一定한 깃을 두고 돌아오거든 !
  • 어찌 섧지 않으랴, 집도 없는 몸이야 !

詩子アナ:これは短い詩のようですが、何か深い意味があるのですか。

歌樽先生:いかに深い詩かということはだんだん分かっていくでしょう。しっかり学べばね。

詩子アナ:はい、しっかり学びます。

歌樽先生:では、まず『海潮音』という詩集からこの歌とよく似た詩を探しなさい。

詩子アナ:あの、ちょっとレベルが高すぎるのですが、もっとゆっくりやっていただけると番組的にもありがたいのですが。

歌樽先生:なるほど、番組的にといわれると、私もすみませんというしかありませんね。

詩子アナ:いえいえ、そういうつもりではありませんので、あの、すこしお手柔らかくという感じで。

歌樽先生:では、初めからゆっくりということで、やさしい問題を出しましょう。

第2問:『海潮音』は西欧の詩人の詩を訳した詩集ですが、誰が訳したでしょうか。

1)高村光太郎  2)上田敏  3)堀口大学  4)北原白秋

詩子アナ:『海潮音』『海潮音』、ありました。スマホで調べました。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#4

第2問:答は2)上田敏です。

歌樽先生:では、上田敏の翻訳した詩に関するものです。

第3問:上田敏訳の有名な詩を次の中から選んでみましょう。

1)山のあなた  2)海のあなた  3)空のあなた  4)雲のあなた

詩子アナ:えー、あなた、あなた、ありました。目次の最後の行にありました。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#16

第3問:答は1)山のあなた、です。

歌樽先生:調べてでてくるものは、それが正しければ正しい分だけわかりますね。詩の内容は知っていますか。

詩子アナ:知りません。

歌樽先生:では、どんな詩か調べてみましょう。

詩子アナ:はい、ありました。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#74

歌樽先生:「山のあなた」は覚えてもらうことにして、次に行きましょう。

第4問:この『海潮音』の詩集のなかで、金素月の「つばめ」と似ている詩をさがしましょう。

詩子アナ:えー、ありました。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#15

第4問:1ページの「燕の歌」

歌樽先生:残念でした。違います。

詩子アナ:では、159ページの「鷺の歌」。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#18

歌樽先生:残念でした。違います。詩のタイトルだけではわかりません。詩を読んでいかないとだめですね。

詩子アナ:分かりました。少し時間をいただければ、探します。

歌樽先生:では、捜す前に、「제비:つばめ」という詩のおよその内容をまず押さえておきましょう。

ということで、まず、直訳でいいですから、「제비:つばめ」を訳してみましょう。

詩子アナ:わかりました。およそということで、やってみます。

3

詩子アナ:詩訳ではありません。意味だけ一語、一語訳してみます。

  • 하늘로 날아다니는 제비의 몸으로도
  •  空を飛びまわるツバメの体でも
  • 一定한 깃을 두고 돌아오거든 !
  •  一定の敷き藁を置き帰ってくるんだ!
  • 어찌 섧지 않으랴, 집도 없는 몸이야 !
  •  どうして悲しくないだろうか、家もない体なんだ!

歌樽先生:意味は抑えられたようですね。

詩子アナ:詩になってなくて、すみません。

歌樽先生:いえいえ、これからですから、大丈夫ですよ。では、この詩の内容に似ている詩をさきほどの『海潮音』から探してみましょう。

詩子アナ:短い歌から探してみます。

歌樽先生:なるほど。なかなかいい方法ですね。

詩子アナ:先生、今日は誉めすぎじゃありませんか。なにか気になりますが。

歌樽先生:この詩は何か気になるところがあると感じるところから出発する必要がありますから、なにか気になるというのはとてもいい出だしですよ。

詩子アナ:やっぱり何かあるんですね。2ページ以内と思われるものを目次から挙げてみます。

「わすれなぐさ」(p108)「山のあなた」(p109)「春」(p111)「秋」(p113)「わかれ」(p115)「水無月」(p117)「花のをとめ」(p119)「春の朝」(p132)「法の夕」(p163)「白楊」(p240)「故国」(p241)「海のあなたの」(p242)「解悟」(p242)「篠懸(すゞかけ)」(p244)「海光」(p246)

「な、や、も、け、わ、こ、た、と、ら、こ、う、た、し、こ」

歌樽先生:2ページ以上のものが入っていますよ。

詩子アナ:もう一度チェックしてみます。後ろの詩のページの差が2ページ以内で探したのですが、こうなると一つ一つ調べてみるしかありませんね。

歌樽先生:目次と詩の内容を比べてチェックしながら見るといいですね。

詩子アナ:あの、違ってました。これ「法(のり)の夕(ゆふべ)」と読むのですか、知りませんでした。後ろの詩の「水(みづ)かひば」は168ページでした。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#101

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#104

「海のあなた」はなくても「海のあなたに」という詩はあったんですね。

歌樽先生:詩子さんもこの詩を読んでいれば昭和の国民の常識に近づけたかもそれませんね。

詩子アナ:それが、さっきの「山のあなた」ですか。

歌樽先生:その通りです。お母さんかお父さんに訊いてごらんなさい。「やまのあなたのそらとおく」と言えば、すぐに「さいわいすむとひとのいう」と言ってくれると思いますよ。訳詩では「幸」を括弧でくくって「さいはい」とルビを振ってあります。「いう」も昔の訳ですから「いふ」となっています。これで、比べるもののリストができましたから、読んでいきましょう。

詩子アナ:そうすれば「つばめ」と似た詩を探せるわけですね。

歌樽先生:そういうことです。

詩子アナ:ああ、大変だ。

歌樽先生:大変なことは何もありません。まだ「つばめ」の入り口にも入っていないんですから。

詩子アナ:あー、一取られてしまった!

歌樽先生:このあたりでうろうろしていては先に進めませんので、第4問はあとにしましょう。

第5問:対象になった詩の14の訳詩の一文字目の初めの音の母音を多い順に並べると上位2つの並び方は次のうちのどれでしょうか。

1)あい  2)うえ  3)あお  4)おい

第4回

 詩子アナ:「な、や、も、け、わ、こ、た、と、ら、こ、う、た、し、こ」だから、ええと、「あ」が「な、や、わ、た、ら、た」で6つ、「い」が「し」で1つ、「う」が1つ、「え」が「け」1つ、「お」が「も、こ、と、こ、こ」で5つだから、、分かりました。

第5問:答は3)あお

歌樽先生:この「あお」がヒントです。

詩子アナ:「つばめ」という語がタイトルには付いていないんですね。

歌樽先生:タイトルに燕のあるものは「燕の歌」だけですね。それから、「ヰリアム・シェイクスピア」さんの「花くらべ」が「燕も来ぬに水仙花」で始まっていますね。

詩子アナ:ということは、「つばめ」ではないが、意味が大切ということですかね。

歌樽先生:ちなみに、この歌は当時とても有名で、こんなふうに理解されていたようです。

새 새끼마저 제 깃이 그립다거던
하물며 푸른 하늘, 고국땅이여
내가 자라난 마을 파라타이스。

『(増補版)素月詩鑑賞』張萬榮・朴木月(博英社)1957(pp. 77-78)

詩子アナ:じゃあ、これを訳せばわかりますね。大ヒント、いただきました!

「푸른 하늘:青い空」、さっきのヒントの「あお」つまり「青空」があるのを探せば正解が目に見えているようですね。「3行詩、青空」で完璧です。

歌樽先生:では、正解を。

詩子アナ:ええと、少し、お時間を。

第4問:「故国」です。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#140

歌樽先生:正解です。

詩子アナ:時間はかかりましたが、正解と聞いて、安心しました。読んでみます。

[ここく]
故国
[ことり         す  こひ]
小鳥でさえも巣は恋し、
[          あをそら    くに]
まして青空、わが国よ、
[                 さと  パライソウ]
うまれの里の波羅葦増雲
(オオバネル)

歌樽先生:「波羅葦増雲」というのは「パラダイス」です。

詩子アナ:さっきの韓国語訳にあった「파라타이스」と同じですね。

歌樽先生:そうですね。

詩子アナ:でも、このオオバネルの「故国」と素月の「つばめ」がどういう関係にあるのですか。

歌樽先生:それをじっくり考えていこうという訳です。

詩子アナ:金素月はこの詩を知っていたのですか。

歌樽先生:知っていたというより、研究したのだと思いますね。そうでないと「제비 つばめ」という詩は出来ていなかったでしょうからね。

詩子アナ:そんなことが分かるんですか。

歌樽先生:3行詩といえども侮れませんよ。

第6問:なぜパラダイスを「波羅葦増雲」と訳したのでしょうか。

詩子アナ:ヒントは?

歌樽先生:ありません。

第5回

詩子アナ:ノーヒントは辛いですね。

歌樽先生:上田敏が直接書いているところがありますね。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#141

詩子アナ:ああ、ここですか。

オオバネルは、ミストラル、ルウマニユ等と相結で、十九世紀の前半に近代プロヷンス語を文藝に用ゐ、南歐の地を風靡したるフェリイブル詩社の翹楚なり。         パライソウ

「故国」の譯に波羅葦増雲とあるば、文禄慶長年間葡萄牙語より轉じて一時、わが日本語化したる基督教法に所謂天國の意なり。

歌樽先生:難しい字もありますが、おおよそ意味はとれますか。

詩子アナ:いえ、分からないことだらけです。

歌樽先生:ミストラルはノーベル文学賞を受賞していますね。、

詩子アナ:そんなに有名な方なんですか。

歌樽先生:序文の初めの部分もこの際、読んでおきましょうか。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#6

詩子アナ:ちょっと読めない字もありますから、まず書いてみます。


巻中収むる所の詩五十七章、詩家二十九人、伊太利亜に三人、英吉利に四人、独逸に七人、プロヷンスに一人、而して佛蘭西には十四人の多きに達し、曩の高踏派と今の象徴派とに屬する者其大部を占む。

歌樽先生:序文の最後に「明治三十八年初秋 上田敏」とありますから、1905年ですね。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#14

詩子アナ:ここに天国を「波羅葦増雲」と訳したヒントがあるんですね。

歌樽先生:はい、その通りです。よく考えましょう。

詩子アナ:プロバンス地方は確か南フランスだと思いますが、ここはフランスとは別の国として書かれているようですね。

歌樽先生:それはいい所に気が付きましたね。ということはどういうことでしょうか。

詩子アナ:今はフランス、昔はそうでなかった、つまりフランスになっちゃったというか、フランスにされてしまったということですか。

歌樽先生:そこで?

詩子アナ:そこで、プロヷンスに一人と書いてあるこの一人がオオバネルで、プロヷンスが危ないという訳で、「十九世紀の前半に近代プロヷンス語を文藝に用ゐ」たため、フランス語と違うやや遠いポルトガル語で天国を「波羅葦増雲」と訳したんですね。それではよく分からないから、「文禄慶長年間葡萄牙語より轉じて一時、わが日本語化したる基督教法に所謂天國の意なり。」という説明をつけた、、、こんな感じでしょうか。

歌樽先生:ちなみに「文禄慶長年間」の「文禄慶長の役」もあとで調べておいてください。

詩子アナ:はい、ということはこれも関連が深いんですね。

歌樽先生:では、もう一度同じ質問をしましょう。

第6問:なぜパラダイスを「波羅葦増雲」と訳したのでしょうか。

詩子アナ:まとめるのが難しいですが、やってみます。

第6問:オオバネルが祖国を思う気持ちを配慮して、フランス語ではないことを示すためにポルトガル語でかつて訳されたことのある「波羅葦増雲」を天国の訳に当てた。

歌樽先生:こうしてオオバネルと金素月のこころが繋がったのでしょう。

第7問:オオバネルと金素月のこころが繋がったことを示す部分を「朔州龜城 삭주구성」という金素月の詩から探しましょう。

第6回

詩子アナ:「朔州龜城」のここのところですか。

第7問:答。삭주 구성(朔州龜城)

(前略)
서로 떠난 몸이길래 몸이 그리워
님을 둔 곳이길래 곳이 그리워
못 보았소 새들도 집이 그리워
남북으로 오며가며 아니합디까
(後略)
http://hompi.sogang.ac.kr/mkyang/music/poems/p015006.htm

歌樽先生:素月の生まれた地を詠った詩です。

詩子アナ:「새들도 집이 그리워:鳥たちも巣が恋し」とあるのが、オオバネルの「祖国」の中の「小鳥でさえも巣は恋し」とそっくりですね。

歌樽先生:素月にとって「生まれの里」は「朔州龜城」、素月は「祖国」という言葉を使わずに、オオバネル「祖国」への思いと同じものを表わそうと考えたのです。

詩子アナ:なぜ、「祖国」の語を使わないで、オオバネル「祖国」への思いと同じものを表わそうと思ったのですか。

歌樽先生:そんなことをすればすぐに捕まってしまいますからね、書けなかったんですよ。

詩子アナ:捕まるのですか。

歌樽先生:韓国の独立を叫んだとして捕まるでしょうね。事実、韓国の独立のための運動は弾圧を受けましたし、犠牲者もたくさん出ましたからね。素月の叔母の桂熙永さんの書いた『私の育てた素月』(章文閣)の「はじめに」には

「彼の中心の詩は全て倭警に押収されて燃やされてしまった。今残っている詩はその当時に思想的に問題がないと認定され、許可されたいわゆる純情の詩だ」と書かれています。

また、金素月は何度も警察の呼び出しを受けてほとほと困っていた様子も桂熙永さんが同じ本の第7章で証言しています。

詩子アナ:そういう時代だったのですか。

歌樽先生:そういう時代でしたね。そこで、金素月が天才振りを発揮したのが、「제비:つばめ」という短い詩です。

詩子アナ:どういうことですか。

歌樽先生:オオバネルの「祖国」という詩は上田敏の訳で日本で有名になった。特に「日韓併合」によって国を失った韓国の人はオオバネルの「祖国」を読んで心を打たれたことでしょう。でも、このままだとプロヷンスの詩なので、同じ気持ちだといっても、プロヷンスを思う詩に終わってしまう。これを何とかして自国を失った詩にしたい、こう思って、ある方法を思いついたようです。

第8問:金素月は次のどのような方法を用いたと考えられるでしょうか。

1)序詞  2)縁語  3)掛詞  4)本歌取り

詩子アナ:金素月は和歌の技法といったものを知っていたのでしょうか。

歌樽先生:「7・5調」を用いたといって以前非難を受けたくらいですから、それはよく勉強していたと思いますね。

詩子アナ:なぜ非難を受けたのですか。

歌樽先生:支配をうけた日本の和歌の音律を使ったからというのがその理由のようです。

詩子アナ:大変な時代だったんですね。

歌樽先生:「つばめ」と「祖国」を比べるとすぐ分かると思いますが。

詩子アナ:分かりました。

第8問:4)本歌取りです。

歌樽先生:では、どのように本歌取りをしたのか、見て行きましょう。

詩子アナ:はい。では比べてみます。

第7回

詩子アナ:まず、2つの詩を並べてみます。

歌樽先生:「깃」というのは「鳥の巣」のことです。

①故国    オオバネル
小鳥でさえも巣は恋し、
まして青空、わが国よ、
うまれの里の波羅葦増雲 

②제비(つばめ)
하늘로 날아다니는 제비의 몸으로도
空を飛びまわるつばめの体でも
一定한 깃을 두고 돌아오거든 !
一定の巣を置き帰ってくるんだ!
어찌 섧지 않으랴, 집도 없는 몸이야 !
どうして悲しくないだろうか、家もない体なんだ! 

歌樽先生:二つの詩を比べて何か変だと思うところはありませんか。

詩子アナ:えっ!金素月の詩で変なところがあるんですか。

歌樽先生:変というか、何でなんだろうとおもうところと言ってもいいのですが。

詩子アナ:あまりにも似すぎていて、どこがどうとはなかなかいいにくいのですが。

歌樽先生:①の「小鳥、巣、青空」は、②の「つばめ、巣、空」に対応していますね。

詩子アナ:ああ、そういうふうに比べてみると、①には「国」があるのに、②には「国」がありませんし、①には「波羅葦増雲」があるのに、②には天国がありません。でも、国を言葉に出すと、捕まるってさっきおっしゃっていましたよね。

歌樽先生:はい、いいました。

第9問:では、「つばめ」のどこに国があるでしょうか。

詩子アナ:確か、今回の詩のキーハングルは「몸 体」ですよね。

歌樽先生:そういいましたよ。

詩子アナ:しかも「몸」は2度使われていますね。つばめの「몸」と自分の「몸」なんでしょうか。

歌樽先生:なかなかいいところを突いてきましたね。

詩子アナ:よかった。やっとゴールに向かって歩き始めた感じになってきました。ということは、、

第9問:国は「몸」に隠れている!

歌樽先生:答が合っても理由がわからないと、意味がありませんね。もう少し、考えを「もむ」ということをしてほしいですね。

詩子アナ:出てきましたね、独断と偏見の歌樽先生の真骨頂ですね。

歌樽先生:詩子さんも急に元気になりましたね。

詩子アナ:お陰様で。もう少しヒントがあればもっと元気になるんですが。

歌樽先生:そこまでいわれると、しょうがありませんね。易しすぎるのですが、大ヒントです。

第10問:「몸」の文字をしっかり見て、分かることをいいなさい。

詩子アナ:「모」の下に「ㅁ 」があります。

歌樽先生:他には?

詩子アナ:「ㅁ」と「ㅗ」と「ㅁ」があります。

歌樽先生:近づいてきましたよ。

詩子アナ:ヤッター!国に近づいて来た訳ですね。

歌樽先生:近づきすぎると見えにくくなる場合もありますよ。

詩子アナ:では、少し離れて見ます。分かりました!

第8回

歌樽先生:では、言ってみましょう。

詩子アナ:「식구:食口」の「口」が2つで、「食口」は「家族」だから、家族が集まって「国」と考えましたが、いかがでしょうか。

歌樽先生:かなり自信があるようですね。

詩子アナ:いいえ、「くにくの策」です。

歌樽先生:いい線まで来ました。もう少しです。周囲に影響されず、固くならないで、行けばもう少しでゴールでしょう。

詩子アナ:あと、どのくらいですか。

歌樽先生:どのくらいと言われても、もう何回も同じようなことを言っていますからね。

詩子アナ:何回もですか。もう一つヒントを。

歌樽先生:今までの話が全てヒントになっているはずなのですが。

詩子アナ:分かった‼

第10問:「口」です。

歌樽先生:正解です。この「構え」を日本語でなんといいますか。

詩子アナ:構え?「構え」なんですか。

歌樽先生:構えではなかったのですか。

詩子アナ:「周囲」の「周」と「囲」、「固い」の「固」、「何回」の「回」にはどれも口の字が中に入っていますから、この中の「口」の字と「몸」の「口」の字かと思いましたが。

歌樽先生:外側の「構え」のことです。

詩子アナ:構えは「国がまえ」です。えっ!「国」がここに入っていたのですか。驚きました。

歌樽先生:漢字の部首の「国構え」は「큰입구몸」といいます。

詩子アナ:えっ‼「큰입구몸」つまり「大きい口の構え」なんですか。

歌樽先生:ただ「몸」とだけ言うこともあります。

詩子アナ:「ㅁ」の形だけでも「国構え」なのに、これが2つある文字の意味が「国構え」であればもう何ともいえませんね。金素月のアイディアには呆然とするばかりです。

歌樽先生:国の字のもとの字は分かりますか。

詩子アナ:国構えの中に「或る女」の「或る」の漢字が入る「國」ですか。

歌樽先生:そうそう。それは本字ですが、有島武郎の『或る女』をよく知っていましたね。

詩子アナ:いえいえ、そう誉められても。

歌樽先生:『或る女』の登場人物、誰か思い出せますか。

詩子アナ:女の人ですか、男の人ですか。

歌樽先生:どちらでもいいですが。

詩子アナ:「葉子」ですか。

歌樽先生:ちゃんと覚えていますね。

第11問:その「葉子」の初めの夫のモデルとなったのは誰でしょうか。

1)有島武郎  2)島崎藤村  3)国木田独歩  4)志賀直哉

詩子アナ:実際の話だったんですか。有島武郎は『或る女』の作者ですから、これ以外ですね。島崎藤村は『ある女の生涯』で、これはなし。志賀直哉は『或る朝』、国木田独歩は『ある・・』がありませんね。久しぶりの四択、いただきました。

第11問:答は3)国木田独歩です。

歌樽先生:『ある・・』がないからではなく、

詩子アナ:先生、分かっていますよ、「国構え」の「国」でしょ。

歌樽先生:読まれていましたか。実は、本当の話はこれからなんですよ。

詩子アナ:えっ!!これでゴールではないのですか。もうこれで完璧だと思ったのですが。

歌樽先生:「몸」を2つ使って、こちらに注目させているような仕掛けになっているんです。

詩子アナ:では、他にも仕掛けがあるということですか。

歌樽先生:仕掛けは一つとは限りませんからね。

第12問:「몸」に当たるの漢字の秘密は?

第9回

詩子アナ:「몸」にあたる漢字ですか。詩に用いられた漢字は「一定」の2文字だけですよ。

歌樽先生:そこのところをしっかり見てみましょう。

詩子アナ:そこのところといわれても、そこがよく分かりませんが。

歌樽先生:金素月は何を習っていましたか。

詩子アナ:それは、いろいろと学んでいたと思いますが。「千字文」を九九を暗唱するように、習ったというのは以前教わりましたが。

歌樽先生:では「千字文」で「一」に当たる文字はどこにありますか。

詩子アナ:「一」ではなくて、「一」に当たる文字ですか。

歌樽先生:昔は「一」は「壹」という字を書いていましたし、「1円札」はこの「壹」でしたよ。

http://matome.naver.jp/odai/2133498493901597301

詩子アナ:お札にね、そうですか。「千字文」を調べてみます。

http://ameblo.jp/n-kujoh/entry-11279861186.html

歌樽先生:そこの部分を書いてみましょう。

詩子アナ:千字文16

<意味>「遐邇壹體、率賓歸王」…かじたいをいつにし、そっぴんおうにきす

遠きも近きも身を一つにして、四海の限り国内の果てまでも、聖王に従う

歌樽先生:何か分かりましたか。

詩子アナ:いえ、なかなかはっきりしません。「広い国土のあちこちから帰属、臣服する人たちが、名君のもとに我も我もと一団となってやってくる」という説明がありますが。

http://www.seikeikai.net/senji/date_06-28-2009.html

歌樽先生:「壹體」の「壹」は「一」、「體」は「体」ですから、つまり「体」という漢字が「一」と繋がっているんです。

詩子アナ:「一定」の「一」が、「一体」の「体」に繋がるというのは、どういうことですか。

歌樽先生:「一定」と「一体」が一体どうなっているのかを聞きたい訳でしょ。

詩子アナ:ええ、そういうことになるでしょうか。

歌樽先生:ここまでの流れをもう一度たどってみると、一向に分からないということはないと思うのですが。

詩子アナ:「一度」「一向」ですが、まず、「一」ですね。「一」という漢字は覚えるまでもありませんが、「한늘 천」の覚え方だとどうなるのですか。

歌樽先生:いいところに気が付きました。もう大丈夫でしょう。

詩子アナ:えっ?

歌樽先生:「한 일」です。

詩子アナ:「한: 一つの일: 一」ですか、「한: 韓 일: 日」と発音が同じですね。

歌樽先生:では「定」は?

詩子アナ:「定 정할 정」。

歌樽先生:では「一定」は?

詩子アナ:「일정」、「日政:일정」とは「日政時代」ですから、日韓併合にことをいっている訳ですか。深いですね。

歌樽先生:「壹體」は?

詩子アナ:「體」はどう覚えるのですか。

歌樽先生:「體 몸 체」です。「遐邇壹體、率賓歸王」も踏まえてのことでしょう。

詩子アナ:なるほど、これで分かりました。「一定」は「日政」、「千字文」によると「壹體」が熟語になっていて、「일체」で「日體」、「體」は「몸」で、これが国構えを示している。

つばめでも帰るところがあるのに、「日韓併合」のため国を失い、帰ることろがないと訴えている歌になっている、といった理解でいいのでしょうか。

そういうことで「一定」だけが漢字で書かれていた訳ですね。何か変だと思うところはありませんかというのは、ここだったんですか。

歌樽先生:では、詩の音の特徴がいくつかあります。ということで、

第13問:この詩の音の特徴を挙げてみましょう。

第10回

詩子アナ:まず、詩をもう一度書いてみます。

 하늘로 날아다니는 제비의 몸으로도
一定(일정)한 깃을 두고 돌아오거든 !
어찌 섧지 않으랴, 집도 없는 몸이야 !

ハングルを見ていると、「몸」と「몸」が国、国、国、国と叫んでいるようですね。そういえば、私も国という文字を略して「口」と書いたことが子供の頃ありましたよ。こういう略した書き方は昔はなかったのですか。

歌樽先生:もともと「口」は「圍(かこむ)」と「國(くに)」の字の「古字」でしたから、国の意味で使われていたようですね。

詩子アナ:先生、音のことじゃないんですけど、私、すごいことを発見しました。

歌樽先生:それは大変だ。切符を切らなくては。

詩子アナ:切符ですか、違いますよ。ハングルに丸がたくさんあります。

歌樽先生:では、数えてみてください。

詩子アナ:1行目4つ、2行目6つ、3行目7つで17個もありますよ。

歌樽先生:原本はそうなっていないでしょう。こちらで数えてごらんなさい。

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詩子アナ:「하늘」が「하눌」となってますよ。

歌樽先生:表記法がずいぶん違っていますから、いろいろと発見がありますね。

詩子アナ:1行目は3つ、2行目も3つ、3行目は5つで、合計11箇所。6つも少なくなりました。

歌樽先生:しかし、なかなか鋭い指摘ですよ。

詩子アナ:「하」「일」「어」のどれもが同じ「土」のグループの音です。これは春でも夏でも秋でも冬でもない、つまり四季がない、国がないんだから、それどころではないのであーる。

歌樽先生:これはまた、好調の「であーる」節がでましたね。

14問:オオバネルが祖国を思う気持ちを上田敏が天国を「波羅葦増雲」と訳したわけですが、この「天国」は「つばめ」では、どこにいったでしょうか。

詩子アナ:えっ!天国はなかったんじゃないんですか。以前、出てきた気がしますが。

歌樽先生:以前はなかったのですが、今回は出てきたのです。

詩子アナ:なかったのに出てきたんですか?!

第11回

歌樽先生:今回出てきたのがヒントですが。

詩子アナ:なかったのに出てきたのですね。

歌樽先生:そうですね。

詩子アナ:ということは、原本に秘密があるんですね。

歌樽先生:さすがもう仙人の領域に入りましたね。

詩子アナ:「날아」が「나라」、つまり「国」ですから、「하눌로 나라」が空の国、すなわち天国で、オオバネルの「波羅葦増雲」をそのまま受けて、この「つばめ」を作った、、

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第14問:「하눌로 나라」が天国、パラダイスを示しています。

歌樽先生:素晴らしい!もう一つ考えてみましょう。

第15問:つばめと関連のある語をもう一つ探しなさい。

詩子アナ:もう、どこまでも探しますが、こんなに入り組んで、いろんな仕掛けがあるのなら、誰かがもうすでに指摘をしているんではないのですか。

歌樽先生:詩子さんが初めてだと思いますよ。

詩子アナ:私が始めてなんて、そんな、恥ずかしいです。ホホホ。

歌樽先生:恥ずかしいよりも嬉しいようですね。

詩子アナ:「제비의 몸」の「제비」を漢字でかくと「燕」ですが、これは確か、昔の中国の国の名前にありましたね。

歌樽先生:ありましたね。

詩子アナ:あまり興味がないようですね。

歌樽先生:「つばめ」といえば、、、

詩子アナ:「つばめ返し」「燕尾服」、関係ありませんね、これは。ここでヒントが一つあれば、ありがたいですね。

歌樽先生:「つばめ」の仲良しは?

詩子アナ:すずめ、、ですか。

歌樽先生:大正解!

詩子アナ:えっ!「すずめ」が大正解ですか。

歌樽先生:「すずめ」と「つばめ」、つまり、「つばめ」と「すずめ」です。

詩子アナ:この詩の中に、「すずめ」がいるのですか?私には「つばめ」しか見えませんか。

歌樽先生:どうして、「つばめ」しか見えないのですか。

詩子アナ:では、「すずめ」を捜してみましょう。「燕(つばめ)」に「雀(すずめ)」を足して、「燕雀」を入れて、調べてみましょう。

歌樽先生:何か出てきましたか。

詩子アナ:でてきました。完璧です。完全解決。「完決」です。

第15問:燕雀(えんじゃく)安(いずく)んぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや
http://kanbun.info/koji/enjaku.html

歌樽先生:完璧とはいえませんが、半分は完璧ですね。

詩子アナ:えっ?完璧ではなく「半璧」ですか。

歌樽先生:すずめが詩には出てきませんから、燕と雀を結びつける言葉が必要ですね。

第16問: 燕と雀を結びつける言葉を探しなさい。

詩子アナ:そんな接着剤のような言葉があるんですか。

歌樽先生:気持ちを落ち着けて、隅々までしっかりみてみましょう。

詩子アナ:「落ち着いて、隅々しっかり」ですか。

歌樽先生:はい、もう少しですね。

詩子アナ:何回目の「もう少し」か分かりませんが、、、

第12回

歌樽先生:接着剤というのはなかなか着想がすばらしいですよ。

詩子アナ:えっ!どうして、、「落ち着いて」なので、、

第16問:「어찌」、これ隅にありますし。

歌樽先生:正解です。

詩子アナ:ヤッター‼ 久しぶりに、大ヤッターとなりました。

歌樽先生:なぜ「어찌」か説明してみてください。

詩子アナ:次から次の質問で、おちおちできませんね。

歌樽先生:やっと、余裕ができたようですね。

詩子アナ:余裕とまではいきませんが。いろいろ見てみましたから。

http://blog.naver.com/thoughguy83/220273255260

「어찌」が「いずくんぞ」で「いずくんぞ」といえば、「燕雀(えんじゃく)安(いずく)んぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」、つまり「小人には英雄の気持ちは分からない」とかいった意味で、この言葉を言った「陳勝」が反乱の指導者となり、蓁の国の滅亡のきっかけをつくったから。これは『広辞苑』にも出ていました。

歌樽先生:なるほど、ほぼ完璧です。

詩子アナ:「ほぼ完璧」は完璧に限りなく近いということで、理解しましょう。

歌樽先生:今回はその理解でいいでしょう。

詩子アナ:大ヤッターですね、大大ヤッターといってもいいくらい!!ところで、「いずくんぞ」というのはどんな意味ですか。

歌樽先生:「安んぞ」とも「焉んぞ」とも書きますが、「どうして・・・であろうか」といった形で使われます。後ろに疑問や反語が来る用法です。「いずくにぞ」の音便形です。

詩子アナ:ここにも「国」がありますね、「いずくにぞ」ですから。

歌樽先生:なるほど、そこは考えていませんでした。

詩子アナ:大ヤッターを超えています。この「つばめ」は詩全体が「故国」となっていますね。この内容で「故国」とか「祖国」というタイトルなら、確かに捕まっているでしょうね。

歌樽先生:そこまで分かれば、完璧としましょう。この詩をオオバネルの「故国」と似ている点を指摘しながら、「(金素月が)真似たとは思いたくない」(『(増補版)素月詩鑑賞』張萬榮・朴木月(博英社)1957(p78)という意見もありますが、これは「本歌取り」の真髄を全く理解していないとしかいいようがありません。フランス語にオマージュ(hommage:敬意。特に、芸術作品などで作家が別の作家の模倣することで表する敬意を示す。)という語があります。http://ejje.weblio.jp/content/hommage

中国の古典の翻訳がよくて、西欧の詩の翻訳や日本の詩の翻訳が非難される理由はどこにもありません。

詩子アナ:先生、力が入り過ぎているようですよ。ともかく、こうした技法は何かあたたかく、有り難い気がしますね。

歌樽先生:上田敏の『海潮音』の役割は大きいですね。

詩子アナ:オオバネルの「故国」の「波羅葦増雲」つまり「パラダイス」を「하눌로 나라다니는」(空を飛び交う)」と詠ませて「하늘 나라:天国」で受けて詩を始めているところも驚きでしたが、「몸」と「国」、さらには「いずくんぞ」の「燕雀」のところは感激です。

歌樽先生:だんだん何をいっているのか分からなくなってきたようですが、そろそろ詩子さんのやることが迫ってきていますが。

詩子アナ:えっ!これらを踏まえて訳詩をするのですか?!

歌樽先生:いろいろと分かったことが多いようですし、感激もしたようですから、忘れないうちになんとかまとめておいたほうがいいでしょうね。

詩子アナ:まとめるとか、そんな単純な問題ではないように思うのですが。

歌樽先生:そういうことが分かってきたということはずいぶん進歩してきたということでしょう。私はちっとも心配はしていませんよ。

詩子アナ:詩子いずくんぞ歌樽先生の志を知らんや。

第13回

歌樽先生:訳詩をしてほしいとは言っていないんです。

詩子アナ:ああ、やはり「燕雀(えんじゃく)安(いずく)んぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」ですね。そういえば、「忘れないうちになんとかまとめておいたほうがいい」とおっしゃっていて、訳詩をしなさいとはおっしゃっていないんですね。

歌樽先生:「つばめ」が「故国」の本歌取りであれば、これをもう一度訳すというのはあまり意味がありませんね。

詩子アナ:では、なにをまとめればいいんですか。

歌樽先生:それが分かればもう終わったようなものですが。

詩子アナ:もう一度、初めから見てみます。

歌樽先生:それがいいですね。上田敏が訳したもとの詩を探してみましょう。

詩子アナ:探しました。William Sharpさんが英語に訳詩したものを使ったようですね。

http://www.kohnokai.com/member/isoda_koh/isoda_koh_402.html

Every little bird loves its nest.
Our blue sky, our little country, are Paradise for us.
[故国   Théodore Aubanel]

小鳥でさへも巣は恋し、
まして青空、わが国よ、
うまれの里の波羅葦増雲。(パライソウ)
テオドル・オオバネル 詩
[上田敏訳「海潮音」より]

http://leonocusto.blog66.fc2.com/blog-entry-1507.html?sp

Every little bird loves its nest [transl. by William Sharp]

歌樽先生:パライソウの部分は英訳では Paradiseとなっていますね。

詩子アナ:オオバネルの「故国」の本文では「波羅葦増雲」(p241)となっていますが、

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#140

その解説では「波羅葦増雲」ではなく「波羅韋増雲」(p243)となっています。

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00030.html#141

歌樽先生:なるほど、するどいところを突いてきましたね。

詩子アナ:ここが、するどいということは、ここから何か始まるということでしょうか。

歌樽先生:自由に考えてもらって結構ですよ。

詩子アナ:でも、もうほとんど出尽くしていて、これから何かを新たにしようというのは至難の業のように思えますが。

歌樽先生:指南をするほうも、至難の業ですね。

詩子アナ:それはまた何かあるということのようですね。

歌樽先生:あるともないとも言えませんが、もしかしたらということで、昔のものを少し調べてみましょうか。

詩子アナ:どれくらい昔ですか。

歌樽先生:遥か昔です。じゃあ、久しぶりに4択の問題を出しましょう。

第17問:編年体で書かれた古代朝鮮の歴史書は次の内どれでしょうか。

1)輿地圖書  2)三國史記  3)三國遺事  4)高麗圖經

詩子アナ:難しい字がありますね。こういうときには取って置きの技があります。

歌樽先生:では、その技を使ってもらいましょう。

詩子アナ:かしこまりました。

第17問:答は2)三國史記です。

歌樽先生:さすがはすごい技ですね。正解です。

詩子アナ:画数が一番少ないのを選びました。

歌樽先生:それでは、単なる当てものですね。では、もう一つ。

第18問:三国史記で書かれている三国とは次の内どれでしょうか。

1)新羅・百済・渤海  2)新羅・百済・伽倻
3)新羅・百済・金海  4)新羅・百済・高句麗

詩子アナ:新羅と百済の2つは決定で、あとの一つは何かという問題のようですね。

第14回

歌樽先生:これはやさしい問題ですから、迷うことはないでしょう。

詩子アナ:はい、これはすぐに分かりました。

第18問:答は、4)新羅・百済・高句麗です。

歌樽先生:では、関連質問です。『三国史記』ではこの三国の歴史が書かれていますが、どのような順序で三国が書かれているでしょうか。

第19問: 

  • 1)新羅・百済・高句麗  
  • 2)新羅・高句麗・百済
  • 3)高句麗・百済・新羅  
  • 4)高句麗・新羅・百済

詩子アナ:新羅が先か高句麗が先かという問題のようですね。

第19問:2)新羅・高句麗・百済です。

歌樽先生:正解です。

詩子アナ:久々の大ヒットが続いています。

歌樽先生:では、「葦」とかかわりのある国はどこでしょうか。

詩子アナ:「葦」とかかわりがある国ですか。ちょっと調べさせてください。『日本書紀』と『古事記』に「葦原中国(あしはらのなかつくに)」の記事があります。

http://www.seisaku.bz/search3/searchn.php?word=%E8%91%A6%E5%8E%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD&mode=%E6%A4%9C%E7%B4%A2

http://www.seisaku.bz/search4/searchk.php?word=%E8%91%A6%E5%8E%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD&mode=%E6%A4%9C%E7%B4%A2

あしはらのなかつくに(葦原中国) https://kotobank.jp/word/%E8%91%A6%E5%8E%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD-25324

とよあしはらのなかつくに【豊葦原中国】

https://kotobank.jp/word/%E8%B1%8A%E8%91%A6%E5%8E%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD-343548

でも、これでは『三国史記』とはかかわりがわかりませんが。

歌樽先生:国とのかかわりがあるということで、次に行きましょう。

詩子アナ:次はどこに行けばいいのでしょうか。

歌樽先生:『三国史記』にもどりましょう。

詩子アナ:『三国史記』で「葦」ですか。

歌樽先生:「葦」ではありませんが、「蘆(あし)」の記述がありますね。

詩子アナ:探しました。「高句麗本紀」の巻17に「乃以蘆葉揷冠」とありますが。

http://www001.upp.so-net.ne.jp/dassai/sangokushiki/koukuri/170515gen.htm

歌樽先生:はい。ゆっくり読んでみてください。蘆の葉を冠に挿しこむことが国づくりと関わっているところがポイントです。

詩子アナ:つまり、蘆(あし)が国という認識があったということなんですか。

歌樽先生:あったでしょうね。『三国史記』に目を通していなくても、蘆といえば「葦原中国(あしはらのなかつくに)」ですから、「葦」や「蘆」が出てくると、国を連想することは容易なことではなかったでしょうかね。

詩子アナ:でも、「蘆」や「葦」が国だとしてそれがどうしてそんなに重要なんですか。

歌樽先生:根本的な質問に入って来ましたね。どうやらこれで本筋に戻れるようです。

詩子アナ:ははー。来るべき時がきたようですね。私の力の発揮場所を教えてください。

歌樽先生:分かりました。お教えしましょう。「葦」と「蘆」の漢字の中で、口をそれぞれ数えてみましょう。

詩子アナ:え?!また、口ですか。

歌樽先生:とやかく言わずに、捜してみましょう。

詩子アナ:「蘆」は「田」があるので4つ、その下の「皿」の字は3つで合計7つです。あのー、外の大きいのは数えていません。「葦」は上から3つです。

歌樽先生:では「波羅葦増雲」は?

詩子アナ:なるほど、そういう仕掛けだったんですか。「蘆」や「葦」と見せかけて、「波羅葦増雲」に戻るという訳でしたか。

歌樽先生:やっと、気がついたようですね。

20問:「波羅葦増雲」の役割を説明しなさい。

詩子アナ:言葉の意味ではなくてですね?

第15回

詩子アナ:先生、分かりましたよ。今回は一本!とスッキリ決めさせていただきます。

歌樽先生:元気がでてきましたね。

詩子アナ:やらせていただきましょう。

第20問:「波羅葦増雲」には、口が「羅」に6つ、「葦」に3つ、「増」に6つ、外枠を入れればもっとたくさんあるのですが、ともかく、口に目がいくようになった訳文になっています。

歌樽先生:なるほど。「増」は「增」ですから、いまの字体とは違いますよ。

詩子アナ:そのくらいの違いはなんでもないです。これでどうだ!という切り札がありますから。

日韓併合の前の朝鮮の国号は「大韓帝国」で、「韓」に字に口が5つあるだけでなく、「葦」の文字に「韓」の字の右側がそっくりそのまま入っています。口の数が問題なのではなく、「葦」だけを見てすでに国を思う気持ちが雲が一気に増える如く燃え上がってきた!とこんな感じではないでしょうか?

歌樽先生:オオバネルの訳のタイトルが「故國」ですから、なるほどーですね。

詩子アナ:そうですよねー。それだけではなく、「波羅葦増雲」を「パライソウ」と読むと…

歌樽先生:その前に、「故國」の詩の中の語をもう一度見ておいたほうがいいんじゃないですかね。

詩子アナ:はー、はい。言おうと思っていました。「小鳥」「巢」「靑」「里」にも口がありますね。口が国ということであれば、もう「波羅葦増雲」だけでなく、確かに全部が国、国といっているようですね。これが、「몸」「몸」に繋がっている!

歌樽先生:なるほど。

詩子アナ:驚かないのですか?

歌樽先生:いえいえ、驚いていますよ。

詩子アナ:では、もっと驚かせなくては。

歌樽先生:ええ、どんどん驚かせてくださって構いませんよ。

詩子アナ:「ツバメ」の詩の「하늘로 날아다니는(空を飛び交う)」には「하늘 나라:天国」の「パラダイス」と自分の国の「날아→나라」の意味を込めている!

歌樽先生:なるほど。「天国」の話は以前、「波羅葦増雲」のパラダイスを受けて「하늘로 날아다니는」につながっているとることは指摘しましたね。

詩子アナ:来ました!来ました!先生、ここからなんです。

歌樽先生:ほほう。それで…

詩子アナ:「パラダイス」の「パラ」も「波羅葦増雲」の「パラ」も「바라」つまり「바라다 望む・願う」に通じているんです。

歌樽先生:で、何を願っているのですか?

詩子アナ:それはもちろん「葦」、つまり国ということ、「故国」なんです。

歌樽先生:独断と偏見の私を超えてきましたね。

詩子アナ:ヤッター! 詩子、ついに先生を超える‼

歌樽先生:ここまでですか?

詩子アナ:先生を超えるのですから、ここで終わるわけにはいきません。

歌樽先生:では、どのへんで終わりますか。

詩子アナ:川辺ですから、「엄마야 누나야(母さん、姉さん)」を歌って終わりにしましょうかね。

歌樽先生:これはいいところに気が付きましたね。

詩子アナ:えっ!先生、気づいていたんですか。

歌樽先生:まあ、そんなところですかね。

詩子アナ:「엄마야 누나야」の「갈잎의 노래(葦の葉の歌)」でなければならないのは、「故国」の歌だったからです。「ツバメ」と「母さん、姉さん」は一連の国を思う歌シリーズなんです。

歌樽先生:なるほど、どこでこんな風に考えるようになったのですか?

詩子アナ:私が「波羅葦増雲」ではなく「波羅韋増雲」(p243)となっていますといったところ、するどいところを突いてきましたねと先生がおっしゃったんです。

歌樽先生:そんなことがありましたか。

詩子アナ:ありましたよ。短い詩ですが、いろいろな思いが込められている詩なんですね。川辺からの中継をこれで終わりたいと思います。ツバメが飛んで来ましたね。

歌樽先生:では、そのあたりで「スンデ」でも食べてかえりましょう。

詩子アナ:先生、今回は「あし」がでてもいいですよね?

わきびとたち

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