第1回
詩子アナ:今回は漢江(한강)や鴨緑江(압록강)など今と昔の川にまつわる写真や資料の展示会に来ています。お年寄りもいますし、中高生や大学生たちもいます。会場にはレコードも準備されていて、昔の歌も聞けるようです。
歌樽先生:まず、写真を見ておきましょう。
詩子アナ:写真には「京城」とありますから、これは「日韓併合」後に漢江(ハンガン)に架けられた橋のようですね。
歌樽先生:漢江の鉄橋の竣工は1900年ですから、「日韓併合」の1910年の10年前にできています。この写真は1897年の起工式(写真上)と鉄橋建設中(写真下)のものですね。
上: (특집)한국 최초의 경인철도|아주경제(ajunews.com) 下: https://blog.daum.net/chobso/37
詩子アナ:「日韓併合」前に漢江鉄橋ができていたんですか。驚きました。
歌樽先生:このころの歴史は学校でもあまり教えませんから、よく知らない人も多いでしょう。
詩子アナ:はい。「朝鮮五大江の一つの漢江」とありますが、一番長い川は何という川ですか。
歌樽先生:では、これを問題にしてみましょう。
第1問:朝鮮半島で最も長い川は次の内、どれでしょうか。
1)漢江(한강) 2)洛東江(낙동강) 3)鴨緑江(압록강) 4)大同江(대동강)
詩子アナ:これらの4つは「五大江」に入っているんですか。
歌樽先生:入っていますね。もう一つは「豆満江(두만강)」です。
詩子アナ:有名な「豆満江」の歌がありましたね。「トゥマーンガーン」というところと「クリウン ネーニミヨー」のところが耳に残っていますが。
第2回
歌樽先生:「눈물 젖은 두만강:涙に濡れた豆満江」という歌ですね。あちらのコーナーに「豆満江」関連の資料がありますから、ちょっと行ってみましょう。歌が聞けそうですね。
김정구 눈물젖은 두만강 1987 – Bing video
詩子アナ:感情が伝わってきますね。こちらにもありますよ。ちょっと若い人のようですが。
불후의명곡 Immortal Songs 2 – 송소희 – 눈물 젖은 두만강.20180825 – Bing video
歌樽先生:송소희さんは小学生の頃から民謡の天才歌手と言われていましたが、歌唱力のレベルが違いますね。ジーンと来て、涙ぐむ人もたくさんいますね。
詩子アナ:そうですね。長くて大きな川ですから、それぞれの川にそれぞれの歌や伝説があっても不思議ではないですね。金素月はこの歌を聴いていたのですか。
歌樽先生:素月は1932年に亡くなっています。この歌は1938年にできていますから、聴いていません。
詩子アナ:あの、実はどこにどんな川があるのか、よく分からないのですが。
歌樽先生:ああ、なるほど。それでは答えにくいでしょうね。では、あちらに大きい地図がありますから、先に見ておきましょう。
詩子アナ:助かります。
歌樽先生:この図で長さを正確に測るのは難しいですね。
詩子アナ:そこは何とか勘と推理でやります。白頭山(백두산)は一番高い山ですから、ここに降った雨が西に東にと流れて、西は鴨緑江、東は豆満江へ流れると推理して、豆満江は選択肢にないので、ここは勘で結論を出しました。
第1問:答は、3)鴨緑江(압록강)です。
歌樽先生:なかなかはじめから順調ですね。正解です。
詩子アナ:おお、素晴らしき勘と推理で完遂しました!
第3回
歌樽先生:それほど難しい問題ではなかったようですね。鴨緑江の長さは800㎞ほどで、漢江と洛東江は約500㎞、大同江は430㎞ほどですから、群を抜いて鴨緑江は長いですね。
詩子アナ:ということは、鴨緑江にも歌や詩があるということでしょうか。
歌樽先生:もちろんたくさんありますよ。では、順に見て行きましょう。
詩子アナ:こちらに「持ち主のいない大同江を売れ!」と書いてあるポスターがありますが。
歌樽先生:映画の宣伝用のポスターですね。この映画のストーリーの主人公は誰でしょうか。
詩子アナ:ノーヒントですか。
歌樽先生:あまりにも有名な話なので、知っているかと思って。ではこんな問題にしましょう。
第2問:この映画の主人公は次の内、誰でしょうか。
1)金先達(김선달) 2)洪吉童(홍길동) 3)李夢龍 (이몽룡) 4)沈鶴圭 (심학규)
詩子アナ:これも、勘と推理で当てようと思います。
歌樽先生:ということは、当たりですね。
詩子アナ:まだ、答えていませんが。
歌樽先生:「勘と推理で当てよう」と思った理由を考えてみると、当たりしかないという訳です。
詩子アナ:もう、読まれてしまっていますね。
歌樽先生:はい、読み切りました。
詩子アナ:それでは、仕方ありません。もう、答えるしかありません。
第2問:答は1)金先達、です。
歌樽先生:正解です。
詩子アナ:いえいえ、先生が正解です。「大同江の水を売った人」は知らないけれど、他の人はおよそ分かるので、消去法でやりました。
歌樽先生:これも問題が易しすぎたようですね。
詩子アナ:洪吉童は「洪吉童伝」、李夢龍は「春香伝」、沈鶴圭は「沈清伝」で、いずれも大同江とは関係がないようなので。
歌樽先生:金先達は?
詩子アナ:知りませんでした。
歌樽先生:「鳳伊 金先達(봉이 김선달)」という2016年の映画で、ポスターの写真の下半分には「초대형 사기극 봉이 김선달(超大型詐欺劇 鳳伊 金先達 )」と書かれています。主演は兪承豪(유승호)さんですね。
詩子アナ:ポスターの下がうまく隠されていましたから、気が付きませんでした。
歌樽先生:大同江の歌がありますね。「恨多き大同江」という歌を聴いてみましょう。주현미 / 한많은 대동강 1999방송 – Bing video
第4回
歌樽先生:こちらは大同江に架けられた橋と平壌市街地の写真です。
詩子アナ:ゆったり流れていますね。この川の水を売ったという話ですか。
歌樽先生:そうです。どのように売ったのかは、勘と推理でよろしく。
詩子アナ:よろしくと言われても、そこまではなかなか届きませんが。
歌樽先生:それが出来れば、金先達レベルですからね。「洛東江」の歌が流れていますよ。
詩子アナ:こちらはクイズコーナーのようです。
第3問:諺で「洛東江(낙동강)」と最も関係の深いのは次の内どれでしょうか。
1)달걀(鶏卵) 2)오리알(アヒルの卵) 3)메추라기알(うずらの卵) 4)타조알(ダチョウの卵)
歌樽先生:こちらに、ヒントの写真がありますね。
상주 경천섬에 `낙동강 오리알`, 왜 하필?…역경이겨내자는 `역발상` – 매일신문 (imaeil.com)
詩子アナ:これは分かりやすいですね。
第3問:答は、2)오리알(アヒルの卵)です。
詩子アナ:「낙동강 오리알(洛東江のアヒルの卵)」というのはあまりいい意味ではないですよね。
歌樽先生:そうですね。独りぼっちにされるとか、イジメや村八分のような意味もありますからね。慶尚北道の尙州市長は「発想の転換で新しい名所」を作りたいと言っていますね。
詩子アナ:逆境を克服して新たな道を切り開くということのようですね。いろいろと知恵を出して地方の発展を考えているんですね。ところで、金素月と最も関連の深い川はどれですか。
第5回
歌樽先生:では、こんな問題を出してみましょう。
第4問:素月の詩の中で最も多く詠まれている川は次の内どれでしょうか。
1)漢江(한강) 2)洛東江(낙동강) 3)鴨緑江(압록강) 4)大同江(대동강)
詩子アナ:最も多く詠んでいるというところが、やや曖昧なようなのですが。一つの詩の中で複数回詠まれている場合、たとえば2回詠まれているとすると、これは1と数えるのですか、2と数えるのですか。
歌樽先生:なるほど、そういう場合がありますね。同じ川の名前が入っている詩のタイトルの数としたいので、その場合は1回と数えましょう。
詩子アナ:あのー、「天の川」はないんですか。
歌樽先生:それは参りました!
詩子アナ:参るほどのことではないと思うのですが、どの方向に行こうとしているのか、ちょっと気になったものですから。
歌樽先生:確かになかなか本流に入れていませんね。まず、「天の川」ですが、「칠석(七夕)」という詩に「은하(銀河)」が2回、「은하수(銀河水)」が2回出てきます。ただ、詩集『진달래꽃』の中には含まれていません。
詩子アナ:了解しました。当てずっぽうです。
第4問:4)の大同江、です。
歌樽先生:正解です。5つの詩で詠まれていますが、詩集『진달래꽃』では2つの詩に出てきます。勘と推理は働きましたか。
詩子アナ:根拠なき断定と結論です。大同団結という線で。ところで、今回の詩のキーワードは何でしょうか。
歌樽先生:実はこれが難しいのです。
詩子アナ:毎回難しいようですが。
歌樽先生:これは痛いところを突かれましたね。今回は以前に増して、はるかに難しいんです。
詩子アナ:「어렵고:難しくて」ということで、「압록강:鴨緑江 」かと読みましたが。
歌樽先生:「어렵고:オリョップコ」と「鴨緑江:おうりょっこう」と来ましたか。
詩子アナ:いえ、先生が「鴨緑江」の写真をじっと御覧になっていたので。
歌樽先生:なるほど、詩子アナの観察力には感心させられますね。では、写真を見てみましょう。
詩子アナ:ずいぶん長い橋ですね。
歌樽先生:900mを超えますからね。
第5問:当時、この橋の長さの単位は次のどれで表されていたでしょうか。
1)フィート(0.3048m) 2)ヤード(0.9144m) 3)尺(0.3030m) 4)鯨尺(0.3788m)
詩子アナ:メートルではないんですか。
歌樽先生:鴨緑江鉄橋ができた当時はメートル法はまだ使われていなかったんです。
詩子アナ:ヤードとか尺とかではピンときませんが。
第6回
歌樽先生:当時の学校の教科書にこの鉄橋を架けるときのことが書かれています。
詩子アナ:どう書かれているのですか。
歌樽先生:当時の教科書を覗いてみましょう。
日本統治時代の朝鮮の教科書 (nipponwomamorukai.jp)
詩子アナ:成功を危ぶんだり無謀だとか言う人もいたが、明治44年(1911)にはそうした人たちも橋を渡っているという訳ですか。教科書に鉄橋の長さも書かれているんですね。見慣れない字が書かれてありますが。
歌樽先生:そこを見られては、もう答えがでましたね。
詩子アナ:小さい字ですが、なんとか読めました。
第5問:答は、1)フィート、です。漢字では「呎」と書くんですね。
歌樽先生:1尺と1フィートの長さは似ていますから、こういう表記になったんでしょうかね。では、
第6問:鴨緑江鉄橋の全長の長さを計算してみてください。
詩子アナ:橋の長さが「3098呎(フィート)」で、1フィートが「0.3048m」ですから。これを掛け算すればいいわけですね。ここは、計算機の機能をお借りしてやります。
第6問:答は、3098×0.3048= 944.2704、ですから約944mです。
歌樽先生:では、ついでといっては何ですが、こんな問題も。
第7問:橋の両側の歩道の幅も計算してみてください。
詩子アナ:両側に8フィートの歩道とありますから、電卓ですぐにできます。
第7問:答は、8×0.3048= 2.4384、ですから約2.4mです。
http://encykorea.aks.ac.kr/Contents/Item/E0035179
https://4travel.jp/travelogue/10611509
第7回
詩子アナ:橋の途中が切れているのは、橋が回るようになっているんですか。
歌樽先生:そうですね。当時は「開閉式」とよんでいて、一日に4回開けて大型船を通したようです。
詩子アナ:そういえば天橋立にもこんな橋がありましたね。
歌樽先生:天橋立の方は「廻旋橋」とよんでいますね。
詩子アナ:こちらの写真は何ですか。
https://4travel.jp/travelogue/10611509
歌樽先生:「鴨緑江断橋」と書かれていますね。
詩子アナ:「断橋」という語の意味は「橋が壊れる」という意味ですか。
歌樽先生:「通れなくなった橋」という意味と「橋を壊して敵が通行できないようにする」という意味があるりますね。朝鮮戦争の折に壊されて、鉄橋は通れなくなったので、ここはそのままにして、新たな鉄橋がその隣に作られました。壊された鉄橋は今観光地になっています。
詩子アナ:朝鮮戦争は数字で表わすのが通例でしたね。
歌樽先生:そうですね。月と日にちの数字で表される事件や運動などはたくさんありますが、こんな問題をだしてみましょう。
第8問:朝鮮戦争は次の内、どれでしょうか。
1)3・1(삼일:サミル) 2)4・19(사일구:サイルグ)
3)6・25(육이오:ユギオ) 4)8・15(팔일오:パリロ)
詩子アナ:これは大丈夫です。「3・1」は独立運動、「4・19」は学生革命、「8・15」は光復節です。
第8問:ということで、答えは3)6・25(육이오:ユギオ)、これが朝鮮戦争が始まった日です。
歌樽先生:「鴨緑江節」のレコードがありますね。歌詞の表記や表現に間違いや不適切な箇所もありますが、聴いてみましょう。
詩子アナ:歌にあるように、筏を組んで、上流から運んだようですね。
歌樽先生:それに、冬は川が凍るので、そり遊びをしていますね。
第8回
歌樽先生:こちらの歌は歌詞が少し違っていますね。
鴨緑江節 / 土取利行(唄・演奏) – Bing video
詩子アナ:歌詞の字幕の「信義州(正しくは新義州)」がこちらは「安東県」になっていましたね。
歌樽先生:「安東県」は、今は「丹東」に地名が変わっていますね。
歌樽先生:春日八郎(かすがはちろう)や東海林太郎(しょうじたろう)のものもありますよ。
鴨緑江節 – Bing video (東海林太郎)
詩子アナ:あの、私の家に春日八郎のレコードがありましたが。
歌樽先生:どんな歌ですか。
詩子アナ:「お富さん」とかいう歌だったようですが。
歌樽先生:「お富さん」はずいぶん流行りましたね。「粋な黒塀、見越しの松に・・・」若い人は知らないかもしれませんが。「別れの一本杉」という歌も大ヒットしましたね。「泣けた、泣けた、こらえきれずに泣けたっけ・・・」NHKの紅白歌合戦でも歌っていましたね。
詩子アナ:東海林太郎さんは外にどんな歌が有名ですか。
歌樽先生:一番有名なのは「赤城の子守唄」でしょう。「なくなよしよし ねんねしな・・・」
詩子アナ:金素月はこの歌を聴いていたんでしょうか。
歌樽先生:この歌は昭和9年(1934)の歌ですから、どうでしょうかね。「枯れすすき」という歌を「船頭小唄」という題に替えた歌があるのですが、この歌は素月も知っていたようですね。
詩子アナ:どんな歌ですか。
歌樽先生:東海林太郎の歌で聴いてみましょう。
詩子アナ:寂しい歌ですね。「俺は河原の枯れすすき・・・」ですか。素月がこの歌を知っていたというのはどうしてわかるんですか。
歌樽先生:「船頭小唄」を調べれば何か分かるかも知れませんね。素月は東京にいましたし、「枯れすすき」と書いたものが残っています。
第9問:「枯れすすき」という歌が流行ったころ、大変なことが起きました。それは次の内、どれでしょうか。
1)大水害 2)大地震 3)大火災 4)大空襲
詩子アナ:では、ちょっと「枯れすすき」を調べてみます。えっ!
流行歌の曲名。野口雨情(うじょう)作詞、中山晋平(しんぺい)作曲。1919年(大正8)楽譜出版。演歌師が歌い始めたが、22年のレコード化(第一号は京都・東洋蓄音器か)によって流行の端緒が開ける。そこで松竹蒲田(かまた)撮影所は、伊藤大輔(だいすけ)脚本、池田義信(よしのぶ)監督により、この歌に基づいた映画『船頭小唄(こうた)』を製作し、23年1月、東京・麻布松竹館で封切ったところ大当り。
「小唄映画」のはしりとなり、また主演女優栗島(くりしま)すみ子のレコードが10万枚以上ヒットするなど、ここに歌の流行が決定づけられた。しかし卑弱哀傷の詞曲のため、関東大震災の起こる原因になったとうわさされた。(『日本大百科全書』) 枯れすすきとは – コトバンク (kotobank.jp)
これは、大変、大大変!!
第9問:答は2)大地震、です。
歌樽先生:関東大震災が起きて、素月は実家に戻るのですが、祖父の反対で再度の渡日は出来ませんでした。
詩子アナ:ところで、今回の詩のキーとなるハングルをまだ伺っていないんですけど。
歌樽先生:そうでしたね。実は同じタイトルの詩ですが、1925年の1月1日に東亜日報に発表したものと、同じ年の12月26日発行の詩集『つつじの花』の詩とでは内容が微妙以上に異なっているんです。
詩子アナ:「微妙以上に」というのは全く違うという意味ですか。
第9回
歌樽先生:全く違うとは言いにくいところもあるのですが、ともかく違っています。
詩子アナ:詩のタイトルは何ですか。
歌樽先生:タイトルは「남의 나라 땅:他国の地」です。
詩子アナ:「他国」というのが中国であれば、ここで鴨緑江が出てくるのは自然の流れのようにも思えますが、そうだとすると、どこがポイントになるのでしょうか。
歌樽先生:まずは歩道です。
詩子アナ:8フィート、約2.4mの歩道ですか。それがキーとなるハングルなんですね。
歌樽先生:いえいえ、詩の中には歩道という言葉は出てきません。
詩子アナ:キーとなるハングルではないけれど、しかもその言葉は詩には出てこなくて、詩のポイントになるものが「歩道」という理解でいいですか。
歌樽先生:はっきりそれだとは断定しかねるところもあって、だからこれまで以上に難しいんです。
詩子アナ:これは今までにないパターンですね。では、キーとなるハングルではなく、歩道の2.4mとの関連を断定しかねるハングルというのは、なんでしょうか。
歌樽先生:そのように直接結びつけられると、短絡的だという非難を受けはしないかと心配なのですが、ともかくそういうことは覚悟のうえで、キーとなるハングル、やってみましょう。
詩子アナ:ここでようやく今回の詩のキーとなるハングル、いただけそうです。では、どうぞ!
歌樽先生:「얼결에」です。
詩子アナ:では、確認をしておきましょう。歩道の2.4mとの関連を断定しかねるとはいえ、詩を理解する上ではポイントになる今回の詩のキーとなるハングル「얼결에」、いただきました! こう長いと調子が出ませんね。どんな詩でしょうか。
歌樽先生:2つの詩を並べてみましょう。並べてみると、違いが一目瞭然ですが、似ていると言えば似ているところもあって、気を抜いてはいけませんよ。
A: 『東亜日報』 1925.1.1 |
タイトル: 남의나라땅 |
1行目: 돌아다 보이는 무쇠다리 |
2行目: 얼결에 뛰어 넘어오니 |
3行目: 숨그르고 발 놓는 남의 나라 땅. |
B: 詩集『진달래꽃』1925.12.26 |
タイトル: 남의나라땅 |
1行目: 돌아다 보이는 무쇠다리 |
2行目: 얼결에 띄워 건너서서 |
3行目: 숨그르고 발 놓는 남의 나라 땅. |
詩子アナ:気を抜くなということですが、しっかり見てもあまり違いが分からないのですが。
歌樽先生:どこかに違いがあります。問題にすれば、気を抜くわけにはいかないでしょう。
第10問:上の2つの詩のどこが違うでしょうか。
1)タイトル 2)「보이는」の後ろ 3)「얼결에」の後ろ 4)「발」の後ろ
詩子アナ:あの、「後ろ」ってどこまでですか。
歌樽先生:すぐ後ろの一語にしましょう。
詩子アナ:一語ですか。
歌樽先生:分かったようですね。
第10回
詩子アナ:いえ、いえ、少々おまちください。Aの二行目は「넘어오니: 越えてきたので」で、Bの方は「건너서서: 渡って立ち」ですから、これははっきり違いますね。目がちかちかしますが、わかりました。先ほどいただいたキーとなるハングルをすっかり忘れていました。もう、大丈夫です。
第10問:3)「얼결에」の後ろです。Aは「뛰어」、Bは「띄워」でよく似ていますが、違います。
歌樽先生:では、「띄워」の原形はなんでしょうか。
詩子アナ:ノーヒントは少しきついですね。
歌樽先生:ではこうしましょう。
第11問:「띄워」はある語の使役形ですが、その語は次のうちどれでしょうか。
1)띄다 2)띠다 3)뛰다 4)뜨다
詩子アナ:これはもう辞書の力を借りなくては。
歌樽先生:ええ、どんどん借りてください。
詩子アナ:まず、意味から、「띄다:目に付く」「띠다:帯びる」「뛰다:走る」「뜨다:浮く」ですから、これらの使役形を探せばいい訳ですよね。やっと燃えてきました。
歌樽先生:そうですね。燃えてくればすぐに分かりますよ。ここでユンシネさんの「열애(熱愛)」を聴いてみましょう。
열애 – 윤시내(1982.08.14) [가요 힛트쏭] | Yoon Si-nae [K-Pop Legend] – YouTube
詩子アナ:何度聴いても、「♪ 태워도 태워도 ♪」のところが胸にジーンと来ますね。
歌樽先生:正解が見えてきたようですね。
詩子アナ:はい。お陰様で。
第11問:答は4)뜨다です。「뜨다」の使役形は「뜨+이우+다」で「띄우다」です。
歌樽先生:よく分かりましたね。
詩子アナ:「燃えてくればすぐに分かりますよ」のヒントで分かりました。「타다:燃える」の使役形は「태우다:燃やす」で、「타+이우+다」となっていますから。
歌樽先生:じつはこの「띄워:浮かせて、浮かべて」が見かけは「뛰어:走って、駆けて」とよくにていて、Bの12月26日発行の詩集『진달래꽃』のこの詩では「띄워」となっていますが、これをAの『東亜日報』 (1925.1.1)に発表された「뛰어」と理解しているものも見受けられるくらいです。例えば崇文社『素月詩集 진달래꽃』(1951)でも「뛰어」を取っています。
詩子アナ:ところで、今回のキーとなるハングルは紆余曲折はありましたが、「얼결에」ということでしたね。どんな意味ですか。
歌樽先生:「얼결에」は「얼떨결에」の形で使われることが多いのですが、辞書には「うっかり、どさくさまぎれに」などの訳がついています。「つい、思わず、なにがなんだか分からないうちに」といった訳がピッタリな場合もあります。
詩子アナ:日本語にはなかなか訳しづらい語のようですね。
歌樽先生:訳語というのはその語のもつ一部の意味や用法を表しているので、完全ではありませんね。例えば、私もよく「うっかり」寝過ごしたり、寝違えてしまったりすることがありますが、こういう時は「얼떨결에」とは言いません。「얼떨결에」には、自分の思いや意志が入っていません。ですから、失敗したりうまく行かなかったといったニュアンスもありません。
詩子アナ:言葉というのは難しいですね。
歌樽先生:それもそうですが、実は当時はとても難しい時代でしたね。
詩子アナ:何かあったのですか。
第11回
歌樽先生:ともかく大変な年でした。その大変さによって素月が1月のA「뛰어」から12月のB「띄워」に変えざるを得なかったのでしょう。
第12問:素月の詩集は1925年の12月に出たのですが、その年に何があったでしょうか。
- 1) 第1次世界大戦
- 2) 3・1運動
- 3) 関東大震災
- 4) 治安維持法の制定
詩子アナ:大変な年というだけあって、どれも本当に大変そうですね。第一次世界大戦は確か1914年で、3・1運動は1919年、関東大震災は1923年ですから、分かりました。
第12問:答は、4)治安維持法の制定、です。これはどんな法律ですか。
歌樽先生:では、当時の「官報」を見ておきましょう。
詩子アナ:大正14年(1925)4月22日の官報ですか。初めて見ました。旧字体で書かれていますね。
歌樽先生:第1条を新漢字に、カタカナもひらがなに直しておきましょう。
第一条 国体を変革しまたは私有財産制度を否認することを目的として結社を組織しまたは情を知りてこれに加入したる者は十年以下の懲役または禁固に処す。前項の未遂罪はこれを罰す。
第13問:「国体」とはどんな意味を表しているでしょうか。次の中から選びましょう。
- 1) 国民主体の国家
- 2) 天皇が統治する国家
- 3) 国会中心の国家
- 4) 軍人中心の国家
詩子アナ:これは、もうこれしかありません。
第13問:時代が時代ですら、答は、2)天皇が統治する国家、です。
歌樽先生:ちょっと易しかったですね。当時は天皇機関説や社会主義運動など天皇の統治する国家に批判的な流れがあり、こうした動きを封じ込めるために多くの学者を集めて「国体」つまり、天皇が治する国家の正当性を明確にしたかったのでしょう。
詩子アナ:いろいろと分からないことが多いのですが、「国体を変革しまたは・・・したる者は十年以下の懲役または禁固に処す」という語句から推察して、反対勢力を法律の名ですぐに弾圧できるような気がしますが。
歌樽先生:こういう時代が長く続いて民族の独立を願う運動も弾圧を受けたり、逮捕されたりしましたね。
詩子アナ:見た目ではアジア人はどの民族か分かりにくいと思うのですが、どうやって区別していた のですか。
歌樽先生:なかなか区別が付きにくい場合が多いですね。
第12回
詩子アナ:なにか対策はあったのですか。
歌樽先生:朝鮮独立運動の取り締まりを目的とした「三矢協定」が、1925年に中国側の警務処処長の「于珍」と日本側の朝鮮総督府警務局長の「三矢宮松」との間で交わされました。そして、朝鮮の独立運動家を識別するための対策が準備されました。
詩子アナ:「識別」ですか。これはおだやかではありませんね。
歌樽先生:捕まえるための対策ですからね。
第14問:識別の基準として挙げられていないものは次の内どれでしょうか。
- 1) 万年筆の所持
- 2) 煙管(キセル)の所持
- 3) ハングルの判子の所持
- 4) 時計の所持
詩子アナ:いつも持っているとはいえなものもあるようですが。
歌樽先生:服装とか肌の艶とか、日焼けや手のひらの柔らかさとか総合的に判断したようですから、一つ二つなくても識別には差し支えなかったようですよ。
詩子アナ:当てずっぽうでやってみます。
第14問:答は、2) 煙管(キセル)の所持、です。1970年代に韓国で外国たばこを吸うと逮捕されると聞いたことがあります。だからタバコ関連のものは所持しないのではないかと思いました。
歌樽先生:当時は紙に刻みたばこを巻いて吸っていたようで、煙管は使われていなかったそうです。
詩子アナ:答はあっていても、理由が違っていましたね。残念!
詩子アナ:鴨緑江の鉄橋を渡るときに検問のようなものはなかったのですか。
歌樽先生:ありましたが、そこをうまくすり抜ける人もいたようです。
詩子アナ:どうやってすり抜けるのですか。
歌樽先生:ここで登場するのが「얼결에」ということでしょうね。
詩子アナ:えっ!「얼결에」は今回のキーとなるハングルでしたね、すっかり忘れていましたが、意志のないとっさの反応といった感じで捉えればいいのですか。
歌樽先生:なかなかいい理解だと思います。よしやるぞという積極性のある反応ではなく、受け身的な動きとしての反応と言っていいでしょう。
詩子アナ:少し褒められた感じがして、久しぶりに嬉しい気持ちです。でも、鴨緑江の鉄橋は簡単にひょいと越えるいった風に渡る訳にはいかないんじゃないんですか。
歌樽先生:長さも900m越えていますし、橋の上の歩道部分は幅が2.4mしかありませんし、検問所もありますし、さっき見たように独立運動をしているものはいないかとあちこちで見張っていますし、簡単に鉄橋を渡ることはできなかったでしょうね。
詩子アナ:「돌아다 보이는 무쇠다리」とはどのような気持ちと捉えればいいんですか。
歌樽先生: なにかしっくりこないようですね。
第15問:では、橋を前にした気持ちは次のどれに譬喩できるでしょうか。
- 1) 滑り台の前
- 2) 飛び込み台の前
- 3) 跳び箱の前
- 4) バンジージャンプ台の前
詩子アナ:慣れていなければ、どれもドキドキしますが、逮捕されるかもしれないという状況を考えると、これしかありません。
第15問:私の場合、4)バンジージャンプ台の前、です。
歌樽先生:泳げるようですね。
詩子アナ:水泳の選手ではありませんでしたが、遠泳などもしましたから。
歌樽先生:バンジージャンプはしたことがありますか。
詩子アナ:いえ、ありません。見たことはあります。
歌樽先生:跳ぶ前の気持ちを表すと、どんな言葉が浮かびますか。
詩子アナ:「えい、ままよ」という感じでしょうか。これでは自分の選択的行為の部分が含まれているようですから、素月が言いたかったこととはやや距離があるような気がします。
歌樽先生:実は「돌아다보이는 무쇠다리」と言う言い方が普通ではないのです。
詩子アナ:「돌아다보면 무쇠다리: 振り返れば鉄橋」という意味ではないのですか。
歌樽先生:意味はそうですが、「돌아다보면」だと自分の方からすすんで橋をみることになりますね。
第13回
詩子アナ:自分の方から橋を見たくて見るというのはダメなんですか。
歌樽先生:そのあたりを考えてみましょう。素月自身は鴨緑江鉄橋まで行って詩にしています。
詩子アナ:橋の上はこんな風だったんですか。のんびり歩いているようにもみえるのですが、
歌樽先生:手前が安東側、今の丹東側からの写真ですね。「箱根の関所」とか「兵隊さんが鉄橋を守備」などの文字がみえますね。
詩子アナ:ところで、素月の詩にはどんな風に書かれているのですか。
歌樽先生:タイトルは「봄과 봄바람과 봄비(春と春風と春雨)」です。途中にこんな内容があります。이곳은 國境, 朝鮮은 新義州, 鴨綠江鐵橋, (ここは国境、朝鮮は新義州、鴨緑江鉄橋、)鐵橋위에 나는 섰다. 分明치 못하게? 分明하게? (橋の上に我立てり。ひっそりと?堂々と?)
詩子アナ:なるほど。「分明치 못하게? 分明하게?」は他にどんな訳が可能ですか。
歌樽先生:「俯いて?胸張って?」「我いづこ?我ここに?」「知られぬように?知られるように?」こんなところでしょうか。
詩子アナ:新義州の側から鉄橋に立ったという詩ですね。あの、一つ気になることがあるのですが、鴨緑江の橋を渡るときに、捕まった人はどうなるのですか。
歌樽先生:捕まると取り調べられて、罪となれば、刑に服さなければなりませんね。
詩子アナ:捕まらない工夫というのはないのですか。
歌樽先生:工夫はいろいろとあったようです。
第16問:鴨緑江を渡る際、捕まらないための工夫にはどんなものがあったでしょうか。
詩子アナ:えっ! ちょっと荷が重いのですが。ヒントがあればなんとか考えられるかも知れませんが、全くお手上げです。
歌樽先生:ヒントですか。詩子さんはどこの出身ですか。
詩子アナ:京都ですが、ああ、そういうことですか。
歌樽先生:ヒントになったようですね。
詩子アナ:大ヒントです。日本人か中国人であれば捕まらないという前提ですが、
第16問:京都弁で話す。
歌樽先生:なるほど。それは一つの答えですね。京都弁ができれば、なんとかなるでしょう。
詩子アナ:Oh! 「おおきに!」では、江戸っ子という感じでもなんとかなりますか。
歌樽先生:なんとかなった場合もあるようですね。「てやんでぃ、べらぼうめ。こちとら江戸っ子でぃ」といって、難を逃れたという話を直接伺ったことがあります。
詩子アナ:ほかにもあるのですか。
歌樽先生:いろいろあったようですが、検挙数は鴨緑江の検問所が一番多かったとも言われています。
詩子アナ:それは、大変ですね。日本語が上手でない人もいるでしょうし。汽車の屋根の上というのはあったんでしょうか。
歌樽先生:汽車の屋根の上よりももっと危険なやり方があったようですよ。
詩子アナ:では、汽車の下に張り付いていくのはどうでしょうか。
第14回
歌樽先生:汽車の下に張り付くのは難しいでしょうね。「007」の映画のようになってきましたが、動いている列車に跳び乗った人もいたようですし、老人や行商人に変装したり、二重底になった舟で密航したり、冬には川が凍りますので、監視の目の届かないところを渡ったりしたようです。
詩子アナ:そういうお話を聞くだけでも、胸がドキドキしてきます。そういうことがあったということが分かるような訳詞でないとだめでしょうね。
歌樽先生:この詩にある「무쇠다리:鉄の橋」とタイトルの「よその国:남의 나라 땅」と言っただけで、当時の状況は分かりますから、そこのところを忘れずに訳詞できれば十分です。
詩子アナ:でも、すぐ捕まるようではいけませんね。
歌樽先生:そうですね。捕まらないようにしている訳ですから、渡る前も渡ってからも捕まらないようにしなければなりませんね。「돌아다보면 무쇠다리」ではなく、「돌아다보이는 무쇠다리」とした理由がわかりましたか?
詩子アナ:はい。「돌아다보이는 무쇠다리」であれば、自分で見たのではなく、見えた訳ですから、なぜ見たのかという問いが成立しませんね。渡ってきた橋をまた見ていると、捕まるかもしれないという恐れもあるでしょうし。
歌樽先生:そうですね。こういう流れで、「얼결에 뛰어 넘어오니」を考えてみましょう。
第17問:なぜ「얼결에」という語が選ばれているのでしょうか。
詩子アナ:これはもう、完璧です。
第17問:3) 橋を渡った意図を明らかにしないため、です。「民族独立運動をしたり、中国で一旗揚げようなどというつもりなどもともとなく、ただ何かの弾みで、つい来ちゃったんです」という感じです。
歌樽先生:解説つきで、分かりやすくなりましたね。この「뛰어 넘어오니(走って橋を越えたので)」は1925年の1月1日付の「東亜日報」のもので、同じ年の12月26日発行の詩集『진달래꽃』では、そこのところが「얼결에 띄워 건너서서」となっています。詩語を変更した理由はなんでしょうか。
詩子アナ:先ほどの「治安維持法」や「三矢協定」などで、民族の独立を訴えたり、そのための運動をする側にとっては大きな痛手を受けて、鴨緑江の鉄橋を歩いて渡ること自体、ほぼ不可能になったからではないかと思います。
歌樽先生:そうですね。鴨緑江鉄橋を駆け抜けることは現実的に不可能になったために、鉄橋の上ではなく、その下を船か筏かヨットかを浮かべて渡るという風に詩の内容を変えたものと思われます。当時の鉄橋の絵葉書が残っていますから、見ておきましょう。
詩子アナ:鴨緑江鉄橋の近くにいろんな船が浮かんでいますね。
第15回
歌樽先生:「얼결에 띄워 건너서서」では何を浮かべて渡ったのかについては書いていないのですがこれはなぜでしょうか。
詩子アナ:船と書くと船が、ヨットと書くとヨットが取り締まりの対象になるかも知れないので、それとなく何かで向こう岸に渡ったことが分かればいいと思ったからでしょう。それから、「얼결에」ですから、何かバタバタしていて、何でなければいけないということもないでしょうから。
歌樽先生:するどい深読みが出来るようになりましたね。
詩子アナ:Oh!ヤッター。褒められるとは思っていませんでした。当時は本来考えなくてもいいようなところで神経をすり減らしていたんですね。
歌樽先生:そういう時代でしたから、何もかも大変でしたね。
詩子アナ:3行目の「숨그르고」はどんな意味ですか。
歌樽先生:「숨 가누다:息を整える」の平安道の方言だそうです。これで、2つの「남의 나라 땅」というタイトルの詩を訳す準備ができたようですね。
詩子アナ:あの、一つ気になっていたのですが、「枯れすすき」の歌の歌詞のところは日本語のままなんですか。
歌樽先生:ああ、「忍従」という詩ですね。原文は「船頭小唄」の出だしの部分を日本語のまま「オレハ河原ノ枯ススキ」と書いてあります。朗読では韓国語に訳したものを使っています。聴いてみましょう。
인종(忍從) (김소월 詩) : 네이버 블로그 (naver.com)
詩子アナ:「나는 냇가의 마른 갈대」と訳していましたね。
歌樽先生:「나는 냇가의 시들어 버린 갈대」と訳したものもあります。素月のこの詩では文脈からこれが歌であることがよく分かるように書かれています。
第18問:「枯れすすき」は「船頭小唄」というタイトルで有名になりましたが、素月のこの歌についての評価は次の内、どれでしょうか。
1) 優 2) 良 3) 可 4) 不可
詩子アナ:さっき聴いた「忍従」という詩の中に、こんな歌、歌うんではないといったニュアンスの内容があったようですので。
第18問:答は、4)不可、です。
歌樽先生:そうですね。「私たちには私たち祖先の歌がある」とも言っていますね。
詩子アナ:ススキは「갈대(葦:あし)」ではなくて、「억새(薄:すすき)」ではないのですか。
歌樽先生:河原だから、水辺ということで「갈대」だと考えたのでしょう。韓国の年配の人であれば歌手の朴一男(박일남)といえば「갈대의 순정:葦の純情」とすぐ出て来ます。テレビではこの歌の背景に葦が映し出されることが多いのですが、実は葦か薄どちらかよく分かりません。ちょっと聴いてみましょう。
추억의 노래 #갈대의純情/♬박일남♬(1966年) #Aegisub Effect – YouTube
詩子アナ:いろんな葦が画面にでてきますが、「갈대(葦:あし)」は白くないようですね。素月の詩の「엄마야 누나야(オンマヤ ヌナヤ:母さん、姉さん)」に「갈잎의 노래(葦の葉の歌)」という歌詞がありますが、これを「억새:ススキ」に読み替える訳にはいきませんね。
歌樽先生:「アシ」と「ススキ」はよく似ていますが、イメージはずいぶん違いますね。この違いを知りたいようですね。
詩子アナ:そういう訳ではないのですが、友達から「엄마야 누나야(母さん、姉さん)」の詩碑の写真が送られてきまして、ちょっと気になっていましたので。
第16回
歌樽先生:では、アシとススキを比べてみましょう。
第19問:ススキとアシの写真が2枚ずつあります。どの組み合わせがススキでしょうか。写真: koreasanha.net/infor/theme_11_2.htm
1) a, b 2) b, c 3) c, d 4) d, a
詩子アナ:a, c と b, d の‘組み合わせがないのですが、このどちらかがアシの組み合わせということですね、きっと。
歌樽先生:あまり、考えないで組み合わせを作りましたが。
詩子アナ:アシは水辺、ススキは丘というふうに覚えていますから、これを生かして、丘らしく見えるbの入った、a, b か b, c の二択に絞りました。ススキは下から撮った方がススキらしいので、決めました。
第19問:答は、2) b, c 、です。
詩子アナ:「枯れすすき」の歌のことですが、韓国の人はこの歌を知っているのですか。
歌樽先生:「船頭小唄」ですか。これを知っている人はもうほとんどいないでしょう。長らく日本語の歌は禁止されていましたし、若い人が日本語を学んでもこの歌に会うことはまずないでしょうから。金素月の曾孫娘の김상은(金サンウン)さんが「オンマヤ ヌナヤ」を歌っていますので、聴いてみましょうか。
엄마야 누나야 (김소월 증손녀가 부른) Song 김상은 Produced by 이권희 – Bing video
詩子アナ:どこか悲しく、澄んだ声で、心も現われるようで、素月の詩のイメージと重なってしまうのですが。
歌樽先生:曲調にもよるんでしょうね。あかるい感じで歌っている歌もありますよ。
왕십리(往十里) 김소월 시 김상은 노래 Produced by 이권희 – YouTube
詩子アナ:これも金素月の詩ですか。
歌樽先生:そうです。「往十里(왕십리:ワンシムニ)」という詩で、往十里駅前の公園に詩碑が立てられています。