第11回
歌樽先生:「面」で何か思いあたるものがありますか。
詩子アナ:面といえば、凧に使う紙ですか。「방패연(防牌鳶)」は四角い形ですし。
歌樽先生:いいところを突いていますね。
第15問:では、「面」か「四角い形」と関連のあるものを探してみましょう。
詩子アナ:そういえば、「口」の形は「国」を表すんでしたね。(「제비 つばめ 10」参照)
歌樽先生:思い出しましたか。
詩子アナ:これで、もう怖いものなしです。
歌樽先生:急に元気が出てきたようですね。
詩子アナ:はい、やります! やれます! やり切ります!
第15問:「午后」の後ろの「后」の4画から6画の「口」、「市井」の「井」にできる「□」の形、それに「寂寞(적막:せきばく)」の「寞」の中の「日」に「口」の形があります。
歌樽先生:いろいろ探し出してきましたね。
詩子アナ:いえ、いえ。まだあります。「紙鳶」の「紙」の「氏」の中に「四角」があります。
歌樽先生:それは、なんともいえませんね。
詩子アナ:やりすぎ、やりいか、やりほうだいになっていますが。
歌樽先生:詩子アナは「いか」ではなく、あちこちで「引っ張りだこ」のようですから、もうここは自由にやってください。
詩子アナ:では、お言葉に甘えさせていただきます。漢字ではなくてハングルですが、「寂寞함」の「함」にパッチムの「ㅁ(ミウム)」があります。それから、「문어구」の「문」ですが、これは「문자연(門字鳶)」(第9回の図)を連想させます。初声には同じく「ㅁ(ミウム)」があります。
これまでのことを整理すると、「네 길거리」の「四辻」の「線関連」では、「凧」の「骨組み」や「構造」、「口(くち)」や「ㅁ(ミウム)」の「面関連」では「凧」の本体を連想っせるだけでなく、「国」の暗示もしています。初めに先生がおっしゃったようにずいぶん回り道をしてきた気がします。
歌樽先生:確かに回り道をしてきましたが、本当の回り道はこれからなんです。では、この勢いで、どんどん行きましょう。
詩子アナ:これからが本当の回り道ですか。あの、ここで少し休んでもいいですか。友達に何をしているか、ちょっとメールしてみます。
歌樽先生 :さっきの香織さん、沙織さん、詩織さんですか?
詩子アナ:はい。友達の名前、覚えてもらえたようですね。みんな喜ぶと思います。
歌樽先生:顔は知りませんが、名前を覚えただけで喜んでもらえるとは嬉しいことですね。昔は花子、春子、明子など子供の子の字の付く名前が多かったのですが、これも時代の移り変わりの一つなんでしょうね。
詩子アナ:両親が名前を付ける場合と祖父母が名前を付ける場合とではやはり違いがあるようですよ。私は祖父に名前を付けてもらったようです。「線」と「面」の次は「立体」ですか?
歌樽先生:何か思い当たるものはありますか。
詩子アナ:全くゼロです。凧が浮かんでいる姿しか浮かびません。
歌樽先生:揚がった凧に何を望んでいたでしょうか。
詩子アナ:凧に望むものですか。厄除けを願う「送厄迎福」がありましたね。
歌樽先生:それは旧暦の1月15日の年中行事としての凧揚げですね。
詩子アナ:何かヒントらしきものがあれば嬉しいですね。
歌樽先生:では、こんなヒントはいかがでしょうか。
第16問:この詩の中で立体的なものは次のどの行にあるでしょうか。
1) 1行目 2) 2行目 3) 3行目 4) 4行目
詩子アナ:なるほど、何行目かに立体が隠れているという訳ですね。
歌樽先生:これで分かったようですね。
第12回
詩子アナ:まず、詩を確認してみます。
- 1行目 오후(午后)의 네 길거리 해가 들었다.
- 2行目 시정(市井)의 첫겨울의 적막(寂寞)함이여,
- 3行目 우둑히 문어귀에 혼자 섰으면,
- 4行目 흰 눈의 잎사귀, 지연(紙鳶)이 뜬다.
1行目の「네 길거리」は平面的ですし、2行目の「市井」は街のことですし、建物に焦点を当てたようには見えませんし、3行目の「문어귀」は「門」自体ではなく、その入り口部分のようですし、4行目の「紙鳶」は凧で、これも立体というより、平面的と言えそうですから、立体的なものを探すのは難しいですね。
歌樽先生:そこをもう少し考えてみましょう。
詩子アナ:これ以上、ヒントをいただくのも申し訳ありませんし、もうひと踏ん張りですね。
歌樽先生:何か見えてきましたか。
詩子アナ:ここは「独立独歩」「独立独行」でやらなければ。あっ! 光が見えました!
第16問:答は3行目です。「独立門」が浮かびました。
歌樽先生:それはどういう流れですか。
詩子アナ:「문어귀」は「門」、「혼자 섰으면」は「独り立てれば」と読めば、「独立」で「혼자」の前の「문어귀」の「門」と合わせれば、「独立門」になります。
歌樽先生:なるほど、よく見つけましたね。
詩子アナ:「連想」とおっしゃっていたのは、こういうことでしたか。素月が願っていたのは1897年の中国からの独立を記念した「独立門」ではなく、日本の支配からの「独立」ではないのですか。
歌樽先生:日本からの独立を意味することがすぐに分かるようではまずいですね。
詩子アナ:「独立」を願ってはいけないのですか。
歌樽先生:「独立」を願うことは日本の支配に反対することですから、すぐに逮捕されてしまいます。
詩子アナ:そんなに怖かったのですか。
歌樽先生:自由に思うことが言えるようになったのはつい最近のことですからね。
詩子アナ:それで「혼자 섰으면」と表現することで、連想力のある人には「独立したい」という気持ちを語っていることが分かるようにしたんですね。
歌樽先生:連想力がしっかり付いてきましたね。
詩子アナ:こういうのは「言外に匂わせる」ことなんでしょうか。
歌樽先生:言外でも言内でも「匂わせる」という意図が分かってしまえば、もうおしまいですね。
詩子アナ:では、これまで誰も気が付かなかったんですか。
歌樽先生:気が付かなかったでしょうね。
第13回
詩子アナ:漢字に目が行くようにして、実はハングルの影に「独立」という漢字を隠し入れていたとは驚きです。キーとなるハングルに「혼자 섰으면」が挙げられていましたが、こういう意味だったんですね。
歌樽先生:キーとなるハングルがもう一つありましたね。
詩子アナ:はい、「네 길거리:四辻」がもう一つのキーとなるハングルでした。
歌樽先生:何か思い当たることはありませんか。
詩子アナ:まだ、思い当たるものは何もありませんが、連想力を鍛えなければいけませんね。
歌樽先生:はい。どんどん鍛えましょう。独立といえば何を連想しますか。
詩子アナ:誰もすぐに連想できるものではだめですよね。捕まってしまいますから。何かに例えていうとどういった感じですか。
歌樽先生:例えるのも難しいのですが、敢えて例えれば、霧の中で微かに見える人影を頼りに歩くといった感じでしょうか。
詩子アナ:微妙ですね。
歌樽先生:微妙ですが、人影が見えると見えないとでは雲泥の差ですからね。素月はいろんなところに網を張っていますので、そのあたりが分かれば推測ができるのですが。
詩子アナ:網ですか、ああ、難しや、難しやの世界に入ってきましたね。
歌樽先生:では、ヒントをだしましょう。
第17問:「네 길거리:四辻」と関連の最も深いものを次の中から選びましょう。
1) 線 2) 四角 3) 三角 4) 点
詩子アナ:それは簡単です。「市井」の「井」とも関連があり、これ以外には考えられません。
第17問:2)の四角、です。
歌樽先生:そうですね。
第18問:では「오후의 네 길거리 해가 들었다」とイメージ的に最も近いのは次のどれですか。
1) 線と四角 2) 四角と四角 3) 三角と四角 4) 点と四角
詩子アナ:おおよその見当がついてきましたが、その先がどうなっているのかが気になります。
歌樽先生:この問題で何か見通しらしきものがついてきたようですね。
詩子アナ:ハングルに三角があったのですか。
歌樽先生:昔はありました。今はこの「△(반시옷(半シオッ)」の音が無くなっています。
詩子アナ:いろんな音があったんですね。「해가 들었다」の「해:太陽」はハングルでは「・」で表していますので、
第18問:答は、4)点と四角、です。サイコロの1のようなイメージです。
歌樽先生:なるほど。なかなかいいイメージができたようですね。
詩子アナ:そう褒められても、歯がゆいのですが、このイメージと独立門との関連を連想によって結び付けるという方向がぼんやりと見えてきましたが。
歌樽先生:では、独立門についての問題を出してみましょう。
第19問:移転前の独立門のあったところには以前別の門がありました。それは何門でしょうか。
- 1) 入城門(입성문): 城に入る門
- 2) 出城門(출성문): 城から出る門
- 3) 肅靖門(숙정문): 四大門の1つの北門
- 4) 迎恩門(영은문): 中国の使者を迎える門
詩子アナ:四大門は南大門、東大門、西大門に北大門ですか。
歌樽先生:四大門は本来は숭례문(崇禮門)、흥인지문(興仁之門)、돈의문(敦義門)、숙정문(肅靖門)と呼ばれていましたね。
詩子アナ:独立門のあったところはソウルの北というより西側のようですから、分かりました。
第19問:答は4) 迎恩門(영은문)です。
歌樽先生:正解です。
第14回
詩子アナ:どんな風に中国からの使者を迎えたんですか。
歌樽先生:その様子を描いた絵が残されていますね。
詩子アナ:大変な大行事だったようですね。つまり、中国から独立したので、使者を迎える門が必要なくなり、そこに独立門を建てたという訳ですね。
歌樽先生:ここでもう一度独立門を見ておきましょう。
詩子アナ:「독립문」「独立門」とハングルと漢字で書かれていますね。
歌樽先生:左の写真は移転後の西大門独立公園です。以前あった場所からここに移されました。
詩子アナ:移転といいますと、引っ越しですか。
歌樽先生:はい。距離は100メートル足らずですが、以前の位置よりも北側に移っています。
第20問:なぜ「独立門」を移転することになったのでしょうか。
- 1) 風水学上、門の位置が悪いから
- 2) 高架道路を作るのに障害となったから
- 3) 独立門公園を新たに作るため
- 4) 独立門の下に金鉱が見つかったから
詩子アナ:独立門の後ろに高架道路のようなものが見えますね。ということは、独立公園を作るために独立門を移動させたのか、道を作る必要があって独立門を移動させ、その移動先に公園を作ったかといった選択のようですね。
第15回
歌樽先生:移転に当たってはそれほど単純な話ではなかったようですよ。1979年の独立門の引っ越しのときはひと悶着ありましたしね。
詩子アナ:素月の時代とはまた違った問題があったということですね。
第20問:答は、2)高架道路を作るのに障害となったから、です。ひと悶着に一番ぴったりした理由のように思います。
歌樽先生:都市化の過程で生じた問題といってもいいでしょう。この高架道路は延世大学校と梨花女子大学校に抜ける「金化(금화)トンネル」に繫がっているのですが、立退きを迫られた近隣住民もたくさんいたようですね。
詩子アナ:ところで、素月はこの「紙鳶」という詩を書くときに、独立門の前にいたんですか。
歌樽先生:独立門の前にはいなかったでしょう。「섰으면」というのは「立ちたい」「立てれば」という願望や希望を示していますからね。
詩子アナ:なるほど。連想力が求められている訳ですね。うずうずしてきました。
歌樽先生:何か連想できそうですか。
詩子アナ:出来そうなのですが、気になる語句があります。「흰 눈의 잎사귀」が気になります。「눈」には「雪」の他に「目、芽」などの意味がありますが、「雪」以外の意味の可能性はないのですか。
歌樽先生:「흰(白い~)」に続きますから、「目、芽」の可能性はありませんね。
詩子アナ:では、「흰 눈의 잎사귀:白雪の葉っぱ」とは何のことですか。
歌樽先生:これは意見が分かれるところですね。表の意味と裏の意味がありますから。
詩子アナ:表の意味と裏の意味ですか? 例えば、「문어귀에 혼자 섰으면」の表の意味は「門に独り立てれば」ですが、裏の意味は「独立門」というふうに考えるということですか。
歌樽先生:それは一例で、素月はいくつかの表現法を考えたようですね。
詩子アナ:では、ほかにもこれに類した表現法を使っているということですね。まずは表の意味を考えてみます。
歌樽先生:表の意味ということで、こんな問題を考えてみましょう。
第21問:「흰 눈의 잎사귀:白雪の葉っぱ」とは何を形容しているでしょうか。
1) 紙鳶(凧) 2) 木の葉 3)雪 4) 街
詩子アナ:これは、もうこれしかありません。
第21問:答は、1) 紙鳶(凧)、です。
歌樽先生:携帯がチリンと鳴りましたよ。
詩子アナ:香織さんからラインの返事がきました。『赤毛のアン』を読み終えたようです。
歌樽先生:『赤毛のアン』は子供の頃に読みましたね。
詩子アナ:子供の宿題だそうです。最後の「神は天にあり、世はすべてよし」という言葉を娘に説明するのが難しいとのことです。
歌樽先生:詩子さんは『赤毛のアン』読みましたか。
詩子アナ:小学生の時に読まされた記憶がありますが。
歌樽先生:読書感想文ですか。
詩子アナ:そうだったようですが、あまり覚えていません。
歌樽先生:素月もその言葉は知っていたと思いますよ。
詩子アナ:えっ?『赤毛のアン』を読んでいたんですか。
歌樽先生:それは分かりませんが、おそらく「神、そらに知ろしめす。すべて世は事も無し。」という上田敏の訳で読んでいたと思われます。
詩子アナ:また、どうして上田敏がでてくるのですか。
歌樽先生:素月が上田敏の訳詩集『海潮音』を読んでいたお話を覚えていますか。
詩子アナ:そういうお話、ありましたっけ?
第16回
歌樽先生:素月の「燕」という詩とテオドル・オオバネルの「故國」という詩を以前比べたことがありましたね。
詩子アナ:はい、確かに比べてみました。思い出しました。
歌樽先生:「神、そらに知ろしめす。すべて世は事も無し。」は「故國」という詩と同じ上田敏の訳詩集の『海潮音』に出ている「春の朝」と題された詩の最後の部分なんです。
詩子アナ:詩人ですから、この明治時代に出た『海潮音』の詩はすべて読んでいるでしょうね。
歌樽先生:そうですね、何度も何度も声に出して暗唱するくらい読んだでしょうね。あっ!また、チリンと音がしていますよ。
詩子アナ:こんどは沙織さんからの返事です。『海潮音』や素月とはあまり関係がないでしょうが、こんな画像が送られてきました。今、『新世紀エヴァンゲリオン』を読み終えたそうです。
歌樽先生:これにも葉っぱがありますね、赤い葉っぱが。一つは上下が逆のようですね。
詩子アナ:「エヴァンゲリオン」に出てくる「ネルフ」という国連の特務機関の二種類のロゴです。テレビのアニメでもやっていましたが。
歌樽先生:漫画もテレビもあまり見ませんから、分かりませんが、英文が書かれていますね。
詩子アナ:小さくて見づらいですね。少し大きくしてみます。
GOD’S IN HIS HEAVEN. ALL’S RIGHT WITH THE WORLD.
歌樽先生:これは偶然ですね。なるほど。
詩子アナ:何が偶然で、なるほどなんですか。
歌樽先生:ロバート・ブラウニングの詩です。この英文を訳してみると分かりますよ。
詩子アナ:直訳すると、「神は彼の天国にいる。すべては世界と共に正しい。」、つまり『赤毛のアン』の「神は天にあり、世はすべてよし」ですか!
歌樽先生:そうですね。この英語の原文と上田敏の訳文を見ておきましょう。
- The year’s at the spring 時は春、
- And day’s at the morn; 日は朝(あした)、
- Morning’s at seven; 朝(あした)は七時、
- The hill‐side’s dew‐pearled; 片岡(かたをか)に露みちて、
- The lark’s on the wing; 揚雲雀(あげひばり)なのりいで、
- The snail’s on the thorn; 蝸牛(かたつむり)枝に這(は)ひ、
- God’s in his heaven ― 神、そらに知ろしめす。
- All’s right with the world! すべて世は事も無し。
詩子アナ:これが「春の朝」という詩ですか。
歌樽先生:「春の朝」という題は原文にはありません。『Pippa Passes』という劇詩の中の詩です。
Pippa’s Song by Robert Browning (Memorization Song) – YouTube
第22問:上の詩で朝の時間が7時となっているのはなぜでしょうか。
- 1) 毎朝早く起きていたから
- 2) 朝の7時が穏やかな時間だから
- 3) 雲雀の活動する時間だから
- 4)「そら(heaven)」に韻を合わせるため
第17回
詩子アナ:これは私にも分かります。
歌樽先生:易しかったようですね。
詩子アナ:脚韻を「heaven」に合わせるためには「seven」か「eleven」ですが、11時は朝のすがすがしさがありません。それで「seven」にしたようです。
第22問:答は、4)「そら(heaven)」に韻を合わせるため、です。
歌樽先生:韻を踏んでいる訳ですね。
詩子アナ:はい。外にも「spring-wing」「morn-thorn」「pearled-world」と韻を踏んでいます。
「紙鳶」と「春の朝」は何かが似ていますね。
歌樽先生:似ていると言えば似ていますし、違うと言えば違いますし。これはヒントになりますね。
詩子アナ:ヒントになるということで、ピーンときました! 風景が全く違うのに、よく似ているということは、不思議、不思議の摩訶不思議ですね。
歌樽先生:気合が入ってきましたね。
詩子アナ:カラ元気のようなカラ気合ですが、入れないよりはましかと思いまして。
歌樽先生:では、その調子で。
詩子アナ:まず、「春の朝」と「紙鳶」の臨時訳(第2回)を比較してみます。
지연(紙鳶) | 凧(臨時訳) |
---|---|
午后(오후)의 네 길거리 해가 들었다. | 午後の四辻に陽が射した。 |
市井(시정)의 첫겨울의 寂寞(적막)함이여, | 街の初冬の静かさよ、 |
우둑히 문어귀에 혼자 섰으면, | ぷらりと門(かど)に独り立てれば、 |
흰 눈의 잎사귀, 紙鳶(지연)이 뜬다. | 白雪の木の葉、凧浮かぶ。 |
– | 春の朝 | 紙鳶 |
---|---|---|
1 | 時 → 春 | 時 → 初冬 |
2 | 日 → 朝 | 日 → 午後 |
3 | 朝 → 七時 | 午後 → 2~3時頃? |
4 | 片岡 → 露 | 街 → 静か |
5 | 揚雲雀 → なのりでる | 凧 → 浮かぶ |
6 | 蝸牛 → 這う | 独り → 立つ |
7 | 神 → そらに | 無 |
8 | 世 → 事無し | 無 |
歌樽先生:遠回りのような気もしますが、比べて、何か分かりましたか。
詩子アナ:いろいろ分かってきました。これで完璧、パーフェクトの領域に入りました。
何なりとお尋ねくださーれ!!
歌樽先生:これは大きく出ましたね。では、素月の「紙鳶」にはなぜブラウニングの詩の「春の朝」にある「神は天にあり、世はすべてよし」の部分がないのでしょうか。
詩子アナ:それは素月が「この世は理不尽だ」と思っていたからだと思います。
歌樽先生:なるほど。
第23問:では、素月が「この世は理不尽だ、住みにくい!」と詠った詩を挙げましょう。
詩子アナ:何かあったような気がします。
歌樽先生:「何なりとお尋ねくださーれ!」ということなので、こんな問題を出してみましたが。
第18回
詩子アナ:「とかくに人の世は住みにくい」で思い出しました。
第23問:「樹芽」のところでやった「楽天(낙천)」です。
살기에 이러한 세상이라고 | それもこれも世の定め |
맘을 그렇게나 먹어야지 | まことそうとも思わねば |
살기에 이러한 세상이라고 | それもこれも世の定め |
꽃 지고 잎 진 가지에 바람이 운다. | 風も涙す裸木の枝 |
(수아 樹芽(木の芽) 第14回) |
歌樽先生:理不尽さを詠ったものはいくつもありますね。では、これを問題にしてみましょう。
第24問:素月はなぜ凧揚げを詩の題材に選んだのでしょうか。
- 1) 国の独立を願っていたから
- 2) 伝統的な凧作りを愛していたから
- 3) 独立門の前に立ちたかったから
- 4) 旧暦1月15日の行事を継承したかったから
詩子アナ:これは大ヒントですね。
歌樽先生:何のヒントですか。
詩子アナ:いえ、あの、こちらの話です。何でもありません。
第24問:独立門の前に立ちたかったのは、実はハングルと漢字で書いた「独立門」の文字ではなく、その両側の「太極旗」のことを連想させたかったからなんですね。ということで、
答は1) 国の独立を願っていたから、です。
歌樽先生:そうですね。分かる人には分かり、そうでない人には分からないままでも時が来れば分かる人が出てくるというのが素月のスタンスだったようですから、このあたりまで連想が及べば素月としては十分だったのかも知れませんね。
詩子アナ:いえ、先生、この先があるんです。
歌樽先生:この先というと?
詩子アナ:太極旗の旗の色です。沙織さんが送ってくれた写真が一枚逆になっていましたが、凧も舞い上がるまでに何度か上下が逆になりますよね。「紙鳶(지연)」が逆さまになると「연지」つまり「臙脂(えんじ)」になるんです。「えんじ色」というのは赤系統の色ですから、太極の「赤」がここに隠されています。
歌樽先生:なるほど、それで青は?
詩子アナ:これも青とは少し違うのですが、「흰 눈의 잎사귀(白雪の木の葉)」の葉っぱが青系統の色で、「白雪」が地の色の白になっています。
歌樽先生:「太極旗」に近づいては遠のき、遠のいては近づいているような感じを受けますが。
詩子アナ:私もそんな気がします。でも、このあたりの近づいたり遠のいたりする距離感が素月の絶妙なところだと納得しました。
歌樽先生:私も「心打つ言葉は時代を越えて語り掛ける」ということを教えられましたね。
詩子アナ:ロバート・ブラウニングの詩が「赤毛のアン」にも、素月にも、「エヴァンゲリオン」にも繋がっているんです。今回は「持つべきものは友」だということを実感しました。で、夕食はもちろん「たこ焼き」ですよね。
歌樽先生:タコかイカかの選択は難しいですね。今「タコ揚げ」といっているのは、昔は「イカのぼり」と言っていましたし、タコはソウルでは「낙지」ですが、平壌では「오징어」です。イカはソウルでは「오징어」で、平壌では「낙지」と言っています。
詩子アナ:タコとイカが逆になっていますね。
歌樽先生:ですから、「낙지볶음 たこ炒め」か「오징어볶음 イカ炒め」にしましょう。食べながら「紙鳶」の訳詩を考えてみましょう。