□債権総論
債権とは特定人が人に対して一定の給付を請求する権利 ⇔物権
□特定物債権
目的物の個性に着目し、その目的物の引渡しを目的とする債権のこと
たとえば、世界に1個しかない「この絵」の売買契約をした場合、
売主は特定物を引き渡す債務を負い、買主は特定物を引き渡させる債権を有することになる。
善管注意義務発生
現状の引渡し
所有権移転
□種類債権
目的物の個性に着目しない種類物の引渡しを目的とする債権のこと
たとえば、米10キロ、ビール1ダース
品質の定めのないときは、中等の品質を給付
特定されるまで調達義務を負う
目的物が特定したときに所有権移転
制限種類債権
種類債権のうち、対象となる種類物が特定されているもの
たとえば、Aの倉庫にある魚沼産コシヒカリ10キロ
→履行不能が生じる(限定されたものがなくなることがあるから)
□債務不履行
履行遅滞
履行不能
不完全履行
→それぞれ要件効果を確認
※履行遅滞と履行不能との区別は履行が可能であるか否か
この違いが要件の違いとなっている
不能概念につき、条文の要件を確認 ★改正 412条の2
※そのため、効果にも違いがある
遅れたことの賠償→遅延賠償
履行に代わる賠償→填補賠償
□安全配慮義務
雇用契約等の法律関係の付随義務として、信義則上負う義務
※本来の債権の履行(給付義務)に付随して発生する義務
□履行請求権 ★改正
414条 条文の整理
直接強制
代替執行
間接強制
→それぞれ対象債務確認
□損害賠償 ★改正
415条1項2項
要件
①債務不履行の存在
②損害の発生
③①と②の因果関係
④免責事由 →これは被告側(債務不履行を否定したい人)が、自分には帰責事由がないことを主張立証する
効果
遅延賠償・填補賠償
損害賠償の範囲
算定時期
金銭債務の特則
過失相殺
必要的
免除まで可能
⇔不法行為における過失相殺(やったら比較して記憶)
□受領遅滞 ★改正
413条 413条の2
□責任財産の保全
趣旨:総債権者のための責任財産保全
実質的には債権回収のための手段として活用されている
□債権者代位権 ★改正 423条
要件確認
①被保全債権
1、保全の必要性→∴被保全債権が金銭債権の場合には無資力要件が必要
2、被保全債権の存在
3、被保全債権の履行期が到来
4、強制執行によって実現できること
②被代位債権
1、一身専属権でないこと
2、差押え禁止権利でないこと
3、債務者が自ら権利行使していないこと
行使方法
裁判外でも可能 ⇔詐害行為取消権
効果
総債権者のための共同担保となる
ただし、債権者に直接引渡し請求可、これにより相殺ができる→事実上の優先弁済権※登記請求はできない
訴訟告知 ★改正 423条の6
債務者の処分権は消滅しない ★改正 423条の5 判例変更
転用型 ★改正 423条の7
被保全債権が金銭債権でない場合には無資力要件は不要
□詐害行為取消権 ★改正 424条
要件 ★改正 424条1項~4項な
【受益者を被告とするもの】
①債務者側の要件
1、詐害行為であること
2、債権者を害することを知っていたこと
3、財産権を目的とする行為
②債権者側の要件
1、被保全債権の存在
2、被保全債権が詐害行為前の原因に基づいたこと
3、強制執行によって実現できること
③受益者側の要件
1、悪意
【転得者を被告とするもの】★改正 424条の5
上記要件+下記要件が必要
受益者からの転得者→転得者が、転得時に債務者のした行為が債権者を害することを知っていたこと
転得者からの転得者→転得者及びその前に転得した全ての転得者が、転得時に債務者のした行為が債権者を害することを知っていたこと
詐害行為の特則規定 ★改正424条の2~4
図表を参照に処理を理解
行使方法
裁判上の請求
訴訟告知 ★改正 424条の7
効果 ★改正 425条
認容判決は、債務者及び全ての債権者に効力を有する
受益者又は転得者が、金銭の支払い又は動産の引渡しをしたときは、債務者に対する義務を免れる ★改正 424条の9
425条の2、3、も確認
※転得者に対してされた取消の効果は、転得者の前者(受益者等)には及ばない
→そのため、転得者保護規定 ★改正425の4
期間制限 ★改正 426条
債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年(主観的起算点)
行為の時から10年間(客観的起算点)
□多数当事者の債権債務
法令の規定や当事者の意思表示がない場合、原則分割債権、分割債務となる。
□不分割債権・債務
性質上、不可分である場合
例:共有物の賃貸借契約に基づき明渡請求をする場合
不可分債権
①対外的効力、②債権者の一人について生じた事由→連帯債権の規定が準用される ★改正 428条
但し、433条(更改、免除)、435条(混同)を除く
∵不可分債権は、性質上やむを得ず分けられない債権であって、性質上可分であるのに債権者が合意によって連帯の特約を結んだ連帯債権とは、異なるからである。更改、免除、混同のときにまで、絶対効とすることは適当でないから。(たとえば、債権者の一人に混同が生じたとしても、他の債権者はなお債務者に履行の請求ができる。)
不可分債務
①対外的効力、②債務者の一人について生じた事由、③求償ほか内部関係→連帯債務の規定が準用される ★改正 430条
但し、440条(混同)を除く
★連帯債務の規定を準用するので、更改が生じたときは絶対効
□連帯債権 ★改正 432条以下
性質上可分
法令の規定、当事者の意思表示
①対外的効力 債権者は、単独で履行の請求ができる
②債権者の一人について生じた事由
原則:相対効 ★435条の2
例外:絶対効 請求(★432条)、更改・免除(★433条)、相殺(★434条)、混同(435条)
③内部関係 各持分割合に応じて、利益の分与請求ができる
□連帯債務 ★436条以下
性質上可分
法令の規定、当事者の意思表示による連帯の特約
①対外的効力 債権者は、債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行請求ができる
②債務者の一人について生じた事由
原則:相対効 ★441条
★履行の請求、免除、時効の完成は相対効に
例外 絶対効 弁済 更改(★438条)、相殺(★439条1項)※相殺援用をしない間は、他の債務者は負担部分についてのみ、履行拒絶(★439条2項)、混同(★440条)
③内部関係
求償権 ★442条1項
趣旨:連帯債務者相互間の公平
事前の通知
事後の通知
償還無資力者がいる場合の処理
□保証債務
総論
人的担保
∴物的担保の典型である抵当権を思い出しながら、保証に特有のものだけ押さえればよい
補充性→催告の抗弁 検索の抗弁
成立要件→書面で行うことが必要 要式契約
※財産法において要式性を要求するのはここだけ
債権者の情報提供義務 ★改正 458条
保証債務の効力
①抗弁権(対外的効力)
1、保証人の抗弁権 催告の抗弁、検索の抗弁
2、付従性に基づく抗弁
主たる債務者の抗弁 ★457条2項
主たる債務者の取消権・解除権・相殺権 ★457条3項
②主たる債務者・保証人に生じた事由の効力
1、主たる債務者に生じた事由の効力 ★457条1項 保証債務の付従性
2、保証人に生じた事由の効力
③内部関係(求償権)
1、委託を受けた保証人
事後求償権 弁済期後 ★459条1項 弁済期前 ★459条の2
事前求償権 460条
2、委託を受けない保証人
主たる債務者の意思に反しないとき ★462条1項、459条の2第1項
主たる債務者の意思に反するとき ★462条の2前段
□物上保証 ⇔保証
物上保証人には、債務はないため、事前求償権は認められない
債務者の被担保債権の承認があれば、担保権の付従性により、物上保証人が消滅時効更新の効力を否定することは許されない
□連帯保証
①対外的効力 催告の抗弁、検索の抗弁、分別の利益なし
②連帯保証人に生じた事由
1、主たる債務者に生じた事由 ★457条 保証債務の付従性により、原則、連帯保証人にも効力が生じる
2、連帯保証人に生じた事由 ★458条
原則 主たる債務を消滅させる行為以外は、相対効(主たる債務者に影響を及ぼさない)
例外 更改(★438条)、相殺(★439条1項)、混同(440条) 絶対効(主たる債務者に影響を及ぼす)
□根保証
個人根保証契約の保証人 ★465条の2
極度額(担保の上限)を定めなければ、無効
極度額を書面に記載しなければ、無効
個人貸金等根保証契約の保証人 ★465条の3
事業にかかる債務についての保証契約の特則 ★465条の6
原則 個人による根保証を無効
例外 保証意思宣明の公正証書による場合
経営者保証の場合
主たる債務者の情報提供義務 ★465条の10
□債権譲渡 ★改正 466条2項~3項
原則: 自由譲渡
例外
①性質
②法律
③意思表示(譲渡制限特約)
→譲渡制限特約に違反した債権譲渡有効(★466条2項 債権的効力説の採用)
ただし、譲渡制限特約につき、悪意又は重過失の第三者に対しては、履行を拒絶することができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務消滅事由を対抗することができる(★466条3項)
→債務者が履行拒絶権を行使すると、譲受人は債務者に履行の請求ができない。また、債権譲渡が有効であるため、譲渡人も請求できない。そこで、この場合、譲受人は、債務者に対し、相当の期間を定めて譲渡人へ履行するよう催告することができ、相当期間内に履行がされないときは、債務者は譲受人に対し、履行をしなければならない(★466条4項 膠着状態の回避)

□供託できる場合 ★466条の2
□差押えされた場合 ★466条の4
原則、債務者は対抗できない
∵私人間の契約によって、差押禁止財産をつくることはできないから
例外 悪意又は重過失の譲受人の債権者が差し押さえた場合
□預貯金債権の例外 ★466条の5
悪意重過失の譲受人に対しては、譲渡の効力が生じない
債権者はなお、譲渡人のままである
□将来債権の譲渡 ★466条の6
□債務者に対する対抗要件
通知又は承諾
通知をするのは誰か→譲渡人
代位はできない
∵譲受人からの通知を認めると、詐称譲受人から虚偽の通知がなされるおそれがあるから。
承諾をする相手は誰か→譲渡人又は譲受人
債務者の抗弁権 ★468条1項
債務者の総債権 ★469条1項
□債務者以外の第三者に対する対抗要件
確定日付のある通知又は承諾
二重譲渡の場合の優劣関係
一方のみ確定日付→確定日付ある方が優先
双方に確定日付
異時送達→先に到達した方
同時送達→いずれも全額弁済請求可能
□債務引受 ★470条以下
免責的債務引受
併存的債務引受
図を再現し、相違点を確認