講義のチェックリストと振り返りです。
総整理ノートときそレシを参照し、論理の流れを整理してみましょう。
該当知識がどのように過去問で出題されているかも、併せてチェックしましょう。
□権利能力
始期:出生→全部露出説
胎児についての例外→①不法行為の基づく損害賠償請求②相続③遺贈
(停止条件説)
終期:死亡
同時死亡の推定
失踪宣告(普通失踪、特別失踪、効果発生の起算点の違いに注意)
失踪宣告の取消しの効果
「みなす」と「推定する」の違い
□法人
権利能力なき社団を中心に確認
ノートの図をもとに、共有の性質の違いからくる帰結を理解
□意思能力
★条文新設
通説が条文化。
□行為能力
【前提】
民法は私的自治の原則により自由に意思決定できることが前提であるから、行為の結果を弁識することのできない意思無能力者のした法律行為は無効となる。
↓
しかし、意思能力がないことを証明することは難しい
↓
そこで、民法はあらかじめ能力が無いものを類型化して各規定を置くことで、保護を図った。
それが、制限行為能力者制度である。
□制限行為能力者
各制度の違いを押さえる
特に保護者の権限の違い
(制度趣旨、対象者の能力の違いからくる保護の程度の差)
□相手方保護の制度
□私権変動の仕組み
法律要件→法律効果
□法律要件
法律行為は法律要件のひとつで、意思表示を要素とするもの
□法律行為
①単独行為 ②契約 ③合同行為
□ 意思表示
動機→内心的効果意思→表示意思→表示行為
動機を除く一連の流れを意思表示という。
表示行為に対応する内心的効果意思が無い場合→意思の不存在
表示行為と内心的効果が外形上は一致するが、その形成過程に傷がついている場合→瑕疵ある意思表示
□心裡留保
原則有効
例外無効(相手方が悪意有過失の場合)
※立証責任の所在注意 [相手方が悪意または有過失であることについては意思表示の無効を主張する表意者側がその立証責任を負う]
★条文新設
第三者保護規定(通説を条文化)
□通謀虚偽表示
無効
第三者保護規定→94条2項
「第三者」とは、虚偽表示の当事者及びその包括承継人以外の者で、虚偽表示に基づいて新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者を言う。
この定義のどの文言に触れているかに留意し、具体例を記憶していくこと
「第三者」に当たる者
「第三者」に当たらない者
94条2項善意の第三者
→善意=当該意思表示が虚偽表示であることを知らないこと
→対抗要件(登記)不要
∵虚偽表示の当事者と第三者は前主後主の関係に立つから
□94条2項類推適用
趣旨:外観法理
要件
①虚偽の外観の存在
②虚偽の外観を作出した権利者の帰責性
③第三者の信頼=善意で足りる
無過失まで要求する場合(判例)??
94条2項、110条類推適用
□錯誤
★動機の錯誤 条文新設
★効果の変更
★第三者保護規定新設
要件確認
表示の錯誤
①意思表示に対応する意思を欠く錯誤
②重要なものであること ※「重要なもの」判例の定義確認
③表意者に重過失のないこと
動機の錯誤(★)
①基礎事情に錯誤があり、それが表示されていること ※黙示も含む
②重要なものであること ※「重要なもの」判例の定義確認
第95条 意思表示は次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができる。 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤 2 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。 3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。 4 第1項の規定による意思表示の取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。 |
③表意者に重過失のないこと
効果(★)
取消すことができる
第三者保護規定(★)
善意無過失の第三者に対抗できない(95条4項)
□詐欺
要件
①欺罔行為
②①により錯誤に陥ったこと
③因果関係
④詐欺の故意
効果
取り消すことができる
第三者保護規定(★善意から善意無過失へ要件変更)
善意無過失の第三者に対抗できない(96条3項)
第三者
取消前に新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者
登記→不要
※取消後第三者→177条で決する ∵対抗関係
第三者詐欺
★相手方悪意から、悪意有過失へ要件変更
□強迫
詐欺との違いに留意
□代理制度
私的自治の拡張及び補充

任意代理と法定代理の違い
代理行為 要件
①代理権の存在
②権限の範囲内
③顕名
①②が欠けると無権代理
③が欠けるとその契約の効果は、本人ではなく代理人に発生する
代理行為の瑕疵 代理人を基準とする
∵代理行為は、代理人が意思表示を行うものだから
①代理人が相手方に対して意思表示をした場合 101条1項
②相手方が代理人に対して意思表示をした場合 101条2項 ★条文新設
(代理行為の瑕疵) 第101条 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。 2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。 3 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。 |
効果
本人に効果帰属
代理権の範囲
103条確認
代理権の消滅
111条確認
図表に関しては、消滅しない場合を「なぜ消滅しないのか」の理由とともに確認
代理と使者
意思表示ができるか否かの違い
復代理
任意代理→原則選任不可
∵その人に頼みたいから代理契約をしたのだから
例外 本人の許諾又はやむをえない場合
代理人の責任→債務不履行責任 ★
法定代理→常に選任可
全面的な責任を負う
例外→やむをえない事由により選任した場合には、選任監督についてのみ責任を負う
代理人の権限濫用 107条 ★条文新設
原則 有効
例外 相手方が知っていたか知ることができた場合には、無権代理とみなす
判例法理(93条但書類推適用説を採用したもの)を明文化
93条の効果は無効なので、これまでは「無効」とされていたが、明文化に当たり「無権代理とみなす」とされた。
これにより、権限濫用の効果として無権代理制度が適用される。
代理権の制限
自己契約 双方代理 ★禁止からみなし規定へ変更
利益相反行為 108条2項 ★条文新設
→代理人は本人のために働かなければいけないのに、それができないおそれがあるから
∴本人の許諾がある場合、債務の履行及び履行に準ずべきものの場合には、無権代理行為とみなされない。
□無権代理
①権限が全くない場合 ②代理権の範囲を超えた場合
効果
本人に効果不帰属
本人が採り得る手段
①追認権
②追認拒絶権
相手方が取り得る手段
①催告権 →悪意でも可
②取消権 →善意
③表見代理→善意無過失
④無権代理人の責任追及
→善意無過失(117条2項1号2号)
→無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合には、有過失でも可能 ★117条2項2号 条文新設
効果 履行または損害賠償(履行利益)
□無権代理と相続
無権代理人→本人単独相続
(無権代理行為)当然有効
無権代理人→本人共同相続
共同相続人が共同して追認権を行使しない限り無効
本人が死亡前に追認又は追認拒絶をしている場合
本人の意思を尊重し、相続人は確定した効果を承継する
本人→無権代理人相続
本人として追認拒絶
無権代理人として無権代理人の責任は負う
相続人が無権代理人相続後本人を相続
無権代理人→相続と同じ
□表見代理
権利外観法理の現れ
そのため、①虚偽の外観が存在し、②その外観作出につき本人に帰責事由があり、③当該虚偽の外観を信じて取引に入ったこと(相手方善意無過失)の要件が求められる。
代理権授与表示による表見代理 109条 ★2項新設(110条重畳適用の判例法理を明文化)
要件
①代理権授与表示
②表示された代理権の範囲内の代理行為
③相手方善意無過失
①②は109条を主張する原告(相手方)が主張立証 109条1項本文
③は被告である無権代理行為をされた本人が主張立証を負う 109条1項但書
効果
本人は効果帰属を拒めない
権限外の行為の表見代理 110条
要件
①基本代理権の存在
②代理人の権限外の行為
③第三者の正当理由(善意無過失)
①②③110条を主張する原告(相手方)が主張立証責任を負う
⇔基本代理権の範囲を超えて無権代理行為をされてしまった本人(110条)と、たとえば白紙委任状のような代理権授与表示を行ったことを奇貨として無権代理行為をされてしまった本人(109条)とは、帰責性の程度が異なる。
そのため、相手方と本人の保護のバランスを衡量し、主張立証責任を転換している。
(主張立証する要件は、少ないほど負担が減る=保護される)
基本代理権 法定代理との関係
判例-夫婦の日常家事の判例理論
(きそレシの流れを確認しましょう。)
代理権授与表示による表見代理 112条 ★2項新設(110条重畳適用の判例法理を明文化)
①かつて代理権があり、消滅したこと
②かつての代理権の範囲内の行為であること
③第三者の善意無過失
□無効・取消・追認
121条の2 原状回復義務 ★条文新設
それぞれの意義を確認
…取消しは、意思表示によって遡って無効となる
□条件・期限
条件と期限の違い
★130条2項 条文新設 判例法理明文化
停止条件・解除条件確認
確定期限・不確定期限確認
□時効
時効制度の趣旨
永続した事実状態の尊重、立証の困難性の救済、権利の上に眠る者は保護しない
時効の援用 145条 ★括弧書き新設(145条「当事者」の判例法理を一部明文化)
時効の完成によって当然に権利の得喪は生じず、援用によってはじめて権利の得喪が生じる。
不確定効果説-停止条件説(説の名前や他説は不要)
→当事者が援用するまでは、時効完成の効果は止まっていると考える見解(通説判例)
この見解によれば、援用があってはじめて時効の効果が生じる
∵当事者の意思の尊重
□時効の援用権者
145条 ★括弧書き新設(判例法理を明文化)
「当事者」の定義確認
援用を肯定する者、否定する者 確認
否定される者は「当事者」の定義である「直接利益を受ける者」に該当しないため、援用を認められていない
たとえば、借地上の建物の賃借人は、建物賃貸人(土地の賃借人)の土地の取得時効について、「直接利益を受ける者」には当たらないため、援用を否定されている(最判昭和44年7月15日)。
□時効利益の放棄
時効完成前の放棄は認めれられない
∵立場の弱い債務者が放棄を強制される等不利益を受けるおそれがあるから
➜時効完成後の放棄は許される
効果 相対効
時効完成後の債務の承認
時効の完成を認識せず行った債務の承認は、時効利益の放棄には当たらないが、時効完成後に債務の承認がなされると、債権者は債務者がもはや時効の援用をしないことを期待するので、この期待を保護するため、判例は信義則によって時効の援用を制限している。
□時効の完成猶予・更新
147条 149条以下 ★改正
★改正ポイント
①用語の変更
・中断から更新へ
・停止から完成猶予へ
従来の「中断」は、文言上一度止まる(その後再度進行する)という誤解を与えかねないことから、よりわかりやすいものとするため用語が改められました。これに合わせて、「停止」も改められました。
②判例法理を一部条文化
・更新や完成猶予事由につき、従来の判例法理を取り込み、条文を再編成
③協議を行う旨の合意による時効の完成猶予制度を新設
□時効の完成猶予事由
①権利行使型
[更新事由一体型]
㋐裁判上の請求等 147条 ㋑強制執行等 148条
[更新事由非一体型]
㋒仮差押え・仮処分 149条 ㋓催告 150条 ㋔協議を行う旨の合意 151条
②権利行使困難型
㋕未成年者又は成年被後見人 158条
㋖夫婦間 159条
㋗相続財産 160条
㋘天災等 161条
□時効の更新事由
①権利行使型
㋐裁判上の請求等 ㋑強制執行等
②権利承認型
㋙承認 152条
きそレシの図表を参考に、条文の確認をしてみてください。
□取得時効
対象となる権利 所有権及び所有権以外の財産権
要件
①所有の意思
自主占有
推定規定あり(186条1項)
②平穏かつ公然
推定規定あり(186条1項)
③他人物
自己物であっても時効取得可
④占有の継続
前後の2つの時点での占有を立証すればその間の継続が推定される(186条2項)
⑤時効期間の満了
善意無過失 10年 善意は推定される(186条1項)無過失は推定されない
それ以外 20年
※占有の承継があった場合、前主の占有を併せた主張も可
ただし、この場合前主の瑕疵も承継する
□消滅時効 ★改正
★改正の重要ポイント
・消滅時効の期間と起算点について、客観的起算点と主観的起算点の二重の消滅時効期間を導入
・生命身体の侵害による損害賠償請求について、債務不履行に基づく請求と不法行為に基づく請求が同一の消滅時効期間に統一(客観的起算点から20年、主観的起算点から5年)
対象となる権利
債権及び所有権以外の財産権
所有権、占有権、所有権に基づく物権的請求権は消滅時効にかからない
要件
・一般債権
主観的起算点 166条1項
債権者が権利を行使することができることを知った時から5年
客観的起算点 166条2項
権利を行使することができる時から10年
各債権の起算点も確認
特則 2つ
・人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権
主観的起算点 166条1項1号
債権者が権利を行使することができることを知った時から5年
客観的起算点 167条
権利を行使することができる時から20年
・人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権
主観的起算点 166条1項1号
被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年 724条の2
客観的起算点 167条
不法行為の時から20年
効果
起算点に遡及 144条
≪物権≫
□物権法総説
物権の直接支配性と排他性
一物一権主義
物権の消滅事由
□物権の混同
原則と例外確認
例外として混同しない場合の共通点は、第三者の権利の目的になっている場合
□物権的請求権
妨害排除、妨害予防、返還
占有訴権と比較しつつ、要件を確認
□物権的請求権の相手方
原則、現に目的物の支配を妨げている者
判例は、登記名義人に対する請求も認めている
□物権変動
物権変動の時期 契約時 意思主義(176条)
□公示の原則と公信の原則
不動産→公信の原則なし 第三者保護は94条2項類推適用にて
□177条の第三者
当事者若しくはその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者
□第三者に当たらないもの
①実質的無権利者
②不法行為者・不法占拠者
③不動産登記法5条所定の者
④転々譲渡の前主
⑤差押えをしていない一般債権者
⑥背信的悪使者
□背信的悪意者から善意者ないし単純悪意者が譲り受けた場合
相対的構成
□善意者ないし単純悪意者からの譲受人が背信的悪意者の場合
絶対的構成(通説※判例はない。)
□中間省略登記
原則 許されない
例外 登記名義人及び中間者の同意
□第三者との関係
~と登記では、常に第三者がいつ登場したのか、という視点で考えること
事例は、ノート若しくはレシピを参照。
□取消しと登記
取消前第三者登場→96条3項 ∵96条3項は取消しの遡及効を制限し、善意無過失の第三者を保護するための規定だから。
取消後第三者登場→177条 ∵取消しによって復帰的物権変動が生じ(巻き戻し)、あたかもBを起点とする二重譲渡事例と同視し得るため、両者は対抗関係となるから。
□解除と登記
解除前第三者登場→545条1項但書 ∵同条は解除の遡及効を制限し、第三者を保護するための規定だから。第三者の善意悪意は問わないが、権利保護資格要件としての登記が必要(判例は、対抗要件としての登記としている)。
解除後第三者登場→177条 ∵解除により復帰的物権変動が生じ(巻き戻し)、あたかもBを起点とする二重譲渡事例と同視し得るので、対抗関係として処理できるから。
□取得時効と登記
時効完成前第三者登場→譲受人は当事者であるので、対抗関係にない
時効完成後第三者登場→177条 ∵時効完成により、あたかも譲渡人(元所有者)を起点とする二重譲渡事例と同視し得るので、両者は対抗関係として処理される。
□相続と登記
共同相続(共同相続人が勝手に単独登記を行った場合)→自己の持分につき、登記なくして主張可能
遺産分割
(遺産分割前に共同相続人が自己の持分を第三者に処分し、その後単独相続の協議が行われた場合)→909条但書
∵同条は遺産分割の遡及効を制限し、第三者を保護するために規定だから。
(遺産分割後に、共同相続人が自己の持分を第三者に処分した場合)→177条
∵遺産分割によって新たな権利変動が生じ、共同相続人を起点とする二重譲渡事例と同視し得るから。