民法: 第三者


(外国法人の登記)

第37条 外国法人(第35条第1項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ)が日本に事務所を設けたときは、3週間以内にその事務所の所在地において次に掲げる事項を登記しなければならない。

  •  外国法人の設立の準拠法
  •  目的
  •  名称
  •  事務所の所在場所
  •  存続期間を定めたときは、その定め
  •  代表者の氏名及び住所

 前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、3週間以内に変更の登記をしなければならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。

 代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

 前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。

 外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者はその法人の成立を否認することができる。

 外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては3週間以内に移転の登記をし、新所在地においては4週間以内に第1項各号に掲げる事項を登記しなければならない。

 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。

 外国法人の代表者がこの条に規定する登記を怠ったときは50万円以下の過料に処する。


(心裡留保)

第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときはその意思表示は無効とする

 前項ただし書の規定による意思表示の無効善意の第三者に対抗することができない


(虚偽表示)

第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする。

 前項の規定による意思表示の無効は善意の第三者に対抗することができない


(錯誤)

第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができる

  •  意思表示に対応する意思を欠く錯誤
  •  表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限りすることができる

 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない

  •  相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
  •  相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

 第1項の規定による意思表示の取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない


(詐欺又は強迫)

第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる

 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない


(代理行為の要件及び効果)

第99条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

 前項の規定は、第三者代理人に対してした意思表示について準用する。


(復代理人の権限等)

第106条 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。

 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。


(代理権の濫用)

第107条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなす


(代理権授与の表示による表見代理等)

第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者がその他人が代理権を与えられていないことを知り又は過失によって知らなかったときはこの限りでない

 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば、前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。


(権限外の行為の表見代理)

第110条 前条第1項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


代理権消滅後の表見代理等)

第112条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときはこの限りでない

 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う


(無権代理行為の追認)

第116条 追認は、別段の意思表示がないときは契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


強制執行等による時効の完成猶予及び更新

第148条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6ヵ月を経過するまでの間は時効は完成しない

  •  強制執行
  •  担保権の実行
  •  民事執行法(昭和54年法律第4号)第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
  •  民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続

 前項の場合には、時効は同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。


債権等の消滅時効

第166条 債権は次に掲げる場合には時効によって消滅する。

  •  債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  •  権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは時効によって消滅する

 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者はその時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる


不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない


動産に関する物権の譲渡の対抗要件)

第178条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ第三者に対抗することができない


(混同)

第179条 同一物について所有権及び他の物権が同1人に帰属したときは、当該他の物権は消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときはこの限りでない

 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同1人に帰属したときは、当該他の権利は消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

 前二項の規定は占有権については適用しない。


(指図による占有移転

第184条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じその第三者がこれを承諾したときは、その第三者は占有権を取得する


代理占有権の消滅事由)

第204条 代理人によって占有をする場合には、占有権は次に掲げる事由によって消滅する

  •  本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと
  •  代理人が本人に対して、以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと
  •  代理人が占有物の所持を失ったこと

 占有権代理権の消滅のみによっては消滅しない


(地下又は空間を目的とする地上権)

第269条の2 地下又は空間は工作物を所有するため上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては設定行為で地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる

 前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるとき設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない


一般の先取特権の効力)

第335条 一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受けなお不足があるのでなければ不動産から弁済を受けることができない

 一般の先取特権者は、不動産についてはまず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない

 一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない

 前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない


(一般の先取特権の対抗力)

第336条 一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対してはこの限りでない


質権の内容)

第342条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつその物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する


動産質の対抗要件)

第352条 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない


債権を目的とする質権の対抗要件)

第364条 債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む)は、第467条の規定に従い、第三債務者にその質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない


抵当権の内容)

第369条 抵当権者は、債務者又は第三者占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する

 地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができる。この場合においてはこの章の規定を準用する。


代価弁済

第378条 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する


(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)

第398条の4 元本の確定前において根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる債務者の変更についても同様とする。

 前項の変更をするには後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない

 第1項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときはその変更をしなかったものとみなす


根抵当権の消滅請求

第398条の22 元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合においてその払渡し又は供託は弁済の効力を有する

 第398条の16の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは消滅する。

 第380条及び第381条の規定は、第1項の消滅請求について準用する。


第三者の選択権)

第409条 第三者が選択をすべき場合には、その選択は債権者又は債務者に対する意思表示によってする

 前項に規定する場合において第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないとき選択権は債務者に移転する


(選択の効力)

第411条 選択は債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


(登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権)

第423条の7 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。この場合においては、前三条の規定を準用する。


(債権の譲渡性)

第466条 債権は譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という)をしたときであっても、債権の譲渡はその効力を妨げられない。

 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者はその債務の履行を拒むことができ、かつ譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる

 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については適用しない


第466条の3 前条第1項に規定する場合において譲渡人について破産手続開始の決定があったとき譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る)は譲渡制限の意思表示がされたことを知り又は重大な過失によって知らなかったときであっても債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。この場合においては同条第2項及び第3項の規定を準用する。


(譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え)

第466条の4 第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者はその債務の履行を拒むことができ、かつ譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。


(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)

第466条の5 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる

 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては適用しない


(将来債権の譲渡性)

第466条の6 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は発生した債権を当然に取得する

 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第1項)の規定を適用する。


(債権の譲渡の対抗要件)

第467条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む)は、譲渡人が債務者に通知をし又は債務者が承諾をしなければ債務者その他の第三者に対抗することができない

 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ債務者以外の第三者に対抗することができない


併存的債務引受の要件及び効果)

第470条 併存的債務引受の引受人は債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。

 併存的債務引受は債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。

 併存的債務引受は債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は債権者が引受人となる者に対して承諾をした時にその効力を生ずる。

 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。


第三者の弁済)

第474条 債務の弁済は第三者もすることができる

 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときはこの限りでない

 前項に規定する第三者債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときはこの限りでない

 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し若しくは制限する旨の意思表示をしたときは適用しない


(弁済として引き渡した物の消費又は譲渡がされた場合の弁済の効力等)

第476条 前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し又は譲り渡したときは、その弁済は有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは弁済をした者に対して求償をすることを妨げない


受領権者としての外観を有する者に対する弁済

第478条 受領権者債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ過失がなかったときに限りその効力を有する


(債権者による担保の喪失等)

第504条 弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても、同様とする。

 前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。


相殺の要件等)

第505条 2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者はその対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときはこの限りでない

 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる


更改

第513条 当事者が従前の債務に代えて新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は更改によって消滅する

  •  従前の給付の内容について重要な変更をするもの
  •  従前の債務者第三者と交替するもの
  •  従前の債権者第三者と交替するもの

債権者の交替による更改)

第515条 債権者の交替による更改は、更改前の債権者更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる

 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない


(更改後の債務への担保の移転)

第518条 債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

 前項の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。


第520条 債権及び債務が同1人に帰属したときは、その債権は消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときはこの限りでない。


第三者のためにする契約)

第537条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する

 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。

 第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する


第三者の権利の確定)

第538条 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者はこれを変更し、又は消滅させることができない

 前条の規定により第三者の権利が発生した後債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方はその第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない


(債務者の抗弁)

第539条 債務者は第537条第1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる


第539条の2 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは契約上の地位はその第三者に移転する


(解除の効果)

第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。

 第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。

 解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない。


担保責任を負わない旨の特約

第572条 売主は、第562条第1項本文又は第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利についてはその責任を免れることができない


買戻しの特約の対抗力

第581条 売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは第三者に対抗することができる

 前項の登記がされた後に第605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は、その残存期間中1年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときはこの限りでない


借主による使用及び収益

第594条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従いその物の使用及び収益をしなければならない

 借主は、貸主の承諾を得なければ第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない

 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は契約の解除をすることができる


不動産賃貸借の対抗力)

第605条 不動産の賃貸借は、これを登記したときはその不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる


(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)

第605条の4 不動産の賃借人は、第605条の2第1項*に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。

  •  その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
  •  その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
*(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第605条の2 前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位はその譲受人に移転する
 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

第612条 賃借人は賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し又は賃借物を転貸することができない

 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたとき賃貸人は契約の解除をすることができる


使用者の権利の譲渡の制限等)

第625条 使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない

 労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない

 労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は契約の解除をすることができる


(寄託物の使用及び第三者による保管)

第658条 受寄者は寄託者の承諾を得なければ寄託物を使用することができない

 受寄者は寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ寄託物を第三者に保管させることができない

 再受寄者は寄託者に対して、その権限の範囲内において受寄者と同一の権利を有し義務を負う。


(受寄者の通知義務等)

第660条 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。ただし、寄託者が既にこれを知っているときはこの限りでない。

 第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。ただし、受寄者が前項の通知をした場合又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときはこの限りでない

 受寄者は、前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであってもその賠償の責任を負わない


(業務の決定及び執行の方法)

第670条 組合の業務は組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する

 組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、1人又は数人の組合員又は第三者に委任することができる

 前項の委任を受けた者(以下業務執行者」という)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し各業務執行者がこれを執行する

 前項の規定にかかわらず、組合の業務については、総組合員の同意によって決定し、又は総組合員が執行することを妨げない

 組合の常務は、前各項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。


組合員の持分の処分及び組合財産の分割

第676条 組合員は組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。

 組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない

 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない


終身定期金契約

第689条 終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生ずる。

責任無能力者監督義務者等の責任

第714条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときはこの限りでない

 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。


使用者等の責任

第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときはこの限りでない

 使用者に代わって事業を監督する者も前項の責任を負う

 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない


注文者の責任

第716条 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときはこの限りでない


(正当防衛及び緊急避難)

第720条 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない

 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する


夫婦間の契約取消権

第754条 夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない


夫婦財産契約対抗要件


第756条 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない

財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件)

第759条 前条の規定又は第755条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない


日常の家事に関する債務連帯責任

第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方はこれによって生じた債務について連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合はこの限りでない


(認知の効力)

第784条 認知は出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない


第829条 前条ただし書の規定*は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときはその財産についてはこれを適用しない

*(財産の管理の計算)
第828条 子が成年に達したときは、親権を行った者は遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用はその子の財産の収益と相殺したものとみなす

第三者が無償で子に与えた財産の管理)

第830条 無償で子に財産を与える第三者親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は父又は母の管理に属しないものとする

 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する

 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも前項と同様とする。

 第27条から第29条までの規定*は前二項の場合について準用する。

*(管理人の職務)
第27条 前二条の規定**により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は不在者の財産の中から支弁する。
 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

*(管理人の権限)
第28条 管理人は、第103条***に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも同様とする。

*(管理人の担保提供及び報酬)
第29条 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
**(不在者の財産の管理)
第25条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

(管理人の改任)
第26条 不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
***(権限の定めのない代理人の権限)
第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
 保存行為
 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(財産の目録の作成前の権限)

第854条 後見人は、財産の目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない


(未成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)

第857条の2 未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。

 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は職権で、その一部の者について財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる

 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は職権で財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる

 家庭裁判所は、職権で前二項の規定による定めを取り消すことができる。

 未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示はその1人に対してすれば足りる


成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)

第859条の2 成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は職権で、数人の成年後見人が共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。

 家庭裁判所は職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。

 成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示はその1人に対してすれば足りる。


被後見人の財産等の譲受けの取消し)

第866条 後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは、被後見人はこれを取り消すことができる。この場合においては、第20条の規定を準用する。

 前項の規定は第121条から第126条までの規定の適用を妨げない。


(共同相続における権利の承継の対抗要件)

第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定*により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない

 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定*により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

*(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は次の各号の定めるところによる。
 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は各二分の一とする。
 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は三分の二とし、直系尊属の相続分は三分の一とする。
 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は四分の一とする。
 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは各自の相続分は相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

(代襲相続人の相続分)
第901条 第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について前条の規定に従ってその相続分を定める
 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

(遺言による相続分の指定)

第902条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

 被相続人が、共同相続人中の1人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。


(相続分の取戻権)

第905条 共同相続人の1人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。

 前項の権利は1箇月以内に行使しなければならない


(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

第908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができる


(遺産の分割の効力)

第909条 遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるただし第三者の権利を害することはできない


(不動産についての財産分離の対抗要件)

第945条 財産分離は、不動産については、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


遺贈の物上代位

第999条 遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。

 遺贈の目的物が、他の物と付合し、又は混和した場合において、遺言者が第243条から第245条までの規定により合成物又は混和物の単独所有者又は共有者となったときは、その全部の所有権又は持分を遺贈の目的としたものと推定する。


(遺言執行者の指定)

第1006条 遺言者は、遺言で1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

 遺言執行者の指定の委託を受けた者は遅滞なくその指定をして、これを相続人に通知しなければならない。

 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。


(遺言の執行の妨害行為の禁止)

第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

 前項の規定に違反してした行為は無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。


(遺言執行者の復任権)

第1016条 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従う。

 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。


(配偶者による使用及び収益)

第1032条 配偶者は従前の用法に従い善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分についてこれを居住の用に供することを妨げない

 配偶者居住権は譲渡することができない

 配偶者は居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない

 配偶者が第1項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をしその期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる


(配偶者短期居住権)

第1037条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という)を有する。ただし、配偶者が相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第891条の規定*に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときはこの限りでない。

  •  居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日
  •  前号に掲げる場合以外の場合 第3項の申入れの日から6箇月を経過する日

 前項本文の場合においては、居住建物取得者は第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。

 居住建物取得者は、第1項第1号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。

*(相続人の欠格事由)
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために刑に処せられた者
 被相続人の殺害されたことを知ってこれを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときはこの限りでない。
 詐欺又は強迫によって被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
 詐欺又は強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

(配偶者による使用)

第1038条 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ)は従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって居住建物の使用をしなければならない

 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ第三者に居住建物の使用をさせることができない

 配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる

Shaws and Goolees

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