民法: 担保

(管理人の担保提供及び報酬)

第29条 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。


(法定追認)

第125条 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

  •  全部又は一部の履行
  •  履行の請求
  •  更改
  •  担保の供与
  •  取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
  •  強制執行

(条件の成否未定の間における権利の処分等)

第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。


(期限の利益の喪失)

第137条 次に掲げる場合には債務者は期限の利益を主張することができない。

  •  債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
  •  債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
  •  債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき

(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)

第148条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は時効は完成しない。

  •  強制執行
  •  担保権の実行
  •  民事執行法(昭和54年法律第4号)第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
  •  民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続

 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。


(占有保全の訴え)

第199条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。


(分割における共有者の担保責任)

第261条 各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。


(留置権者による留置物の保管等)

第298条 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。


(担保の供与による留置権の消滅)

第301条 債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。


(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲)

第315条 賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。


(一般の先取特権の効力)

第335条 一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。

 一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。

 一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。

 前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。


(一般の先取特権の対抗力)

第336条 一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。


(質権の内容)

第342条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。


(質権の被担保債権の範囲)

第346条 質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。


(物上保証人の求償権)

第351条 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。


(設定行為に別段の定めがある場合等)

第359条 前三条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法第180条第2号に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ)の開始があったときは、適用しない。


(抵当権の内容)

第369条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章(第10章 抵当権)の規定を準用する。


第371条 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。


(抵当権の被担保債権の範囲)

第375条 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。

 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の2年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して2年分を超えることができない。


(抵当権の処分)

第376条 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。

 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。


(共同抵当における代価の配当)

第392条 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。

 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。


(抵当建物使用者の引渡しの猶予)

第395条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

  •  競売手続の開始前から使用又は収益をする者
  •  強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者

 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。


(抵当権の消滅時効)

第396条 抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しない。


(根抵当権)

第398条の2 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という)の担保すべき不特定の債権の範囲は債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して定めなければならない。

 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権(電子記録債権法(平成19年法律第102号)第2条第1項に規定する電子記録債権をいう。次条第2項において同じ)は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。


(根抵当権の被担保債権の範囲)

第398条の3 根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。

 債務者との取引によらないで取得する手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。

  •  債務者の支払の停止
  •  債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
  •  抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え

(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)

第398条の4 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。

 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。

 第1項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。


(根抵当権の元本確定期日の定め)

第398条の6 根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。

 第398条の4第2項の規定は、前項の場合について準用する。

 第1項の期日はこれを定め又は変更した日から5年以内でなければならない。

 第1項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。


(根抵当権の被担保債権の譲渡等)

第398条の7 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。

 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。

 元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、第472条の4第1項の規定にかかわらず、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができない。

 元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、第518条第1項の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とする。


(根抵当権者又は債務者の相続)

第398条の8 元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。

 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。

 第398条の4第2項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。

 第1項及び第2項の合意について相続の開始後6箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。


(根抵当権者又は債務者の合併)

第398条の9 元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。

 元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。

 前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。

 前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。

 第3項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から2週間を経過したときは、することができない。合併の日から1箇月を経過したときも、同様とする。


(根抵当権者又は債務者の会社分割)

第398条の10 元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。

 元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。

 前条第3項から第5項までの規定は前二項の場合について準用する。


(根抵当権の処分)

第398条の11 元本の確定前においては、根抵当権者は、第376条第1項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。

 第377条第2項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。


(共同根抵当)

第398条の16 第392条及び第393条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。


(共同根抵当の変更等)

第398条の17 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。

 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。


(根抵当権の元本の確定請求)

第398条の19 根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する。

 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。

 前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。


(根抵当権の元本の確定事由)

第398条の20 次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。

  •  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第372条において準用する第304条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る
  •  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき
  •  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したとき
  •  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき

 前項第3号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第4号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは担保すべき元本は確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときはこの限りでない。


(根抵当権の消滅請求)

第398条の22 元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。

 第398条の16の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。

 第380条及び第381条の規定は、第1項の消滅請求について準用する。


(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)

第424条の3 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

  •  その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第1号において同じ)の時に行われたものであること
  •  その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること

 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

  •  その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること
  •  その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること

(他の担保の供与)

第451条 債務者は、前条第1項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。


(主たる債務者が保証人に対して償還をする場合)

第461条 前条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。

 前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。


(個人根保証契約の元本の確定事由)

第465条の4 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

  •  債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき
  •  保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
  •  主たる債務者又は保証人が死亡したとき

 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

  •  債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき
  •  主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき

(契約締結時の情報の提供義務)

第465条の10 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

  •  財産及び収支の状況
  •  主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
  •  主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。


(免責的債務引受による担保の移転)

第472条の4 債権者は、第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

 前項の規定による担保権の移転はあらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。

 前二項の規定は、第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。

 前項の場合において、同項において準用する第1項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。

 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。


(弁済による代位の効果)

第501条 前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。

 前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の1人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。

 第1項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。

  •  第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない
  •  第三取得者の1人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する
  •  前号の規定は、物上保証人の1人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する
  •  保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて債権者に代位する
  •  第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第1号及び第2号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第1号、第3号及び前号の規定を適用する

(一部弁済による代位)

第502条 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて債権者とともにその権利を行使することができる。

 前項の場合であっても債権者は単独でその権利を行使することができる。

 前二項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。

 第1項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。


(債権者による債権証書の交付等)

第503条 代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。

 債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。


(債権者による担保の喪失等)

第504条 弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても、同様とする。

 前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。


(更改後の債務への担保の移転)

第518条 債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合にはその承諾を得なければならない。

 前項の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。


(指図証券喪失の場合の権利行使方法)

第520条の12 金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする指図証券の所持人がその指図証券を喪失した場合において、非訟事件手続法第114条に規定する公示催告の申立てをしたときは、その債務者に、その債務の目的物を供託させ、又は相当の担保を供してその指図証券の趣旨に従い履行をさせることができる。


(贈与者の引渡義務等)

第551条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。

 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。


(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)

第565条 前三条の規定は売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む)について準用する。


(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。


(競売における担保責任等)

第568条 民事執行法その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という)における買受人は、第541条及び第542条の規定並びに第563条(第565条において準用する場合を含む)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。

 前項の場合において債務者が無資力であるときは、買受人は代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。

 前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。

 前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。


(債権の売主の担保責任)

第569条 債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。

 弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは弁済期における資力を担保したものと推定する。


(担保責任を負わない旨の特約)

第572条 売主は、第562条第1項本文又は第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。


(権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)

第576条 売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。


(賃貸借の更新の推定等)

第619条 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。

 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、第622条の2第1項に規定する敷金については、この限りでない。


第622条の2 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

  •  賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき
  •  賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき

 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。


(雇用の更新の推定等)

第629条 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。

 従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。


(請負人の担保責任の制限)

第636条 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。


(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

第637条 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。


(受任者による費用等の償還請求等)

第650条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。

 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。


(脱退した組合員の責任等)

第680条の2 脱退した組合員は、その脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。この場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、脱退した組合員は、組合に担保を供させ、又は組合に対して自己に免責を得させることを請求することができる。

 脱退した組合員は、前項に規定する組合の債務を弁済したときは、組合に対して求償権を有する。


(他人の債務の弁済)

第707条 債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は返還の請求をすることができない。

 前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。


(共同相続人間の担保責任)

第911条 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。


(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)

第912条 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。

 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。


(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担)

第913条 担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。


(遺言による担保責任の定め)

第914条 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。


(公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者)

第935条 第927条第1項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは残余財産についてのみその権利を行使することができる。ただし、相続財産について特別担保を有する者はこの限りでない。


(財産分離の請求の防止等)

第949条 相続人は、その固有財産をもって相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。ただし、相続人の債権者が、これによって損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。


(受遺者による担保の請求)

第991条 受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。停止条件付きの遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様とする。

Shaws and Goolees

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