第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする。
(任意規定と異なる意思表示)
第91条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときはその意思に従う。
(任意規定と異なる慣習)
第92条 法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
(自己契約及び双方代理等)
第108条 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りでない。
2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りでない。
(無効な行為の追認)
第119条 無効な行為は追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
(条件が成就した場合の効果)
第127条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
第128条 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
(条件の成否未定の間における権利の処分等)
第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。
(条件の成就の妨害等)
第130条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる。
2 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方はその条件が成就しなかったものとみなすことができる。
(既成条件)
第131条 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は第128条及び第129条の規定を準用する。
(時効の援用)
第145条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は完成しない。
- 一 その合意があった時から1年を経過した時
- 二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る)を定めたときは、その期間を経過した時
- 三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第1項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第1項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ)によってされたときは、その合意は書面によってされたものとみなして前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第1項第3号の通知について準用する。
(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)
第153条 第147条又は第148条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
2 第149条から第151条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
3 前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
(物権の設定及び移転)
第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
(現実の引渡し及び簡易の引渡し)
第182条 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
2 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
(囲障の設置)
第225条 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
2 当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ高さ二メートルのものでなければならない。
(地上権の存続期間)
第268条 設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは地上権者はいつでもその権利を放棄することができる。ただし、地代を支払うべきときは1年前に予告をし、又は期限の到来していない1年分の地代を支払わなければならない。
2 地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、20年以上50年以下の範囲内において、工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。
(法定地上権)
第388条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は当事者の請求により裁判所が定める。
(種類債権)
第401条 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
(選択権の移転)
第408条 債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は相手方に移転する。
(履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由)
第413条の2 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
2 債権者が債務の履行を受けることを拒み又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
(損害賠償の範囲)
第416条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者はその賠償を請求することができる。
(賠償額の予定)
第420条 当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は賠償額の予定と推定する。
第421条 前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。
(連帯債権者による履行の請求等)
第432条 債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は全ての債権者のために、全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は全ての債権者のために、各債権者に対して履行をすることができる。
(連帯債務者に対する履行の請求)
第436条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者はその連帯債務者の1人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
(債権の譲渡性)
第466条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という)をしたときであっても、債権の譲渡はその効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者はその債務の履行を拒むことができ、かつ譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)
第466条の5 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
2 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては適用しない。
(第三者の弁済)
第474条 債務の弁済は、第三者もすることができる。
2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときはこの限りでない。
3 前項に規定する第三者は債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときはこの限りでない。
4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
(受領権者としての外観を有する者に対する弁済)
第478条 受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
(相殺の要件等)
第505条 2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときはこの限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
(相殺の方法及び効力)
第506条 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
(履行地の異なる債務の相殺)
第507条 相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。
(相殺の充当)
第512条 債権者が債務者に対して有する一個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。
2 前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
- 一 債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く)は、第488条第4項第2号から第4号までの規定を準用する。
- 二 債権者が負担する一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、第489条の規定を準用する。この場合において、同条第2項中「前条」とあるのは「前条第4項第2号から第4号まで」と読み替えるものとする。
3 第1項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。
(更改)
第513条 当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
- 一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
- 二 従前の債務者が第三者と交替するもの
- 三 従前の債権者が第三者と交替するもの
(契約の締結及び内容の自由)
第521条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
(同時履行の抗弁)
第533条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
(債務者の危険負担等)
第536条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
(第三者のためにする契約)
第537条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
(第三者の権利の確定)
第538条 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者はこれを変更し又は消滅させることができない。
2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
第539条の2 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位はその第三者に移転する。
(解除権の行使)
第540条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は相手方に対する意思表示によってする。
2 前項の意思表示は撤回することができない。
(催告による解除)
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときはこの限りでない。
(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は前条の催告をすることなく直ちに契約の解除をすることができる。
- 一 債務の全部の履行が不能であるとき
- 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
- 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき
- 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき
- 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき
2 次に掲げる場合には、債権者は前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
- 一 債務の一部の履行が不能であるとき
- 二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
(解除権の不可分性)
第544条 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除はその全員から又はその全員に対してのみすることができる。
2 前項の場合において、解除権が当事者のうちの1人について消滅したときは他の者についても消滅する。
(解除の効果)
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときはその受領の時から利息を付さなければならない。
3 第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない。
(贈与)
第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
(書面によらない贈与の解除)
第550条 書面によらない贈与は各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分についてはこの限りでない。
(売買)
第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによってその効力を生ずる。
(売買契約に関する費用)
第558条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
- 一 履行の追完が不能であるとき。
- 二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
- 三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
- 四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
(目的物の滅失等についての危険の移転)
第567条 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し又は損傷したときは、買主はその滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は代金の支払を拒むことができない。
2 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。
(買戻しの特約)
第579条 不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第583条第1項において同じ)及び契約の費用を返還して売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
第586条 交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。
2 当事者の一方が他の権利とともに金銭の所有権を移転することを約した場合におけるその金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。
(消費貸借)
第587条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
(書面でする消費貸借等)
第587条の2 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
2 書面でする消費貸借の借主は貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対しその賠償を請求することができる。
3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときはその効力を失う。
4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
(準消費貸借)
第588条 金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借はこれによって成立したものとみなす。
(返還の時期)
第591条 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
3 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対しその賠償を請求することができる。
(使用貸借)
第593条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
(期間満了等による使用貸借の終了)
第597条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は借主の死亡によって終了する。
(使用貸借の解除)
第598条 貸主は、前条第2項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主はいつでも契約の解除をすることができる。
3 借主はいつでも契約の解除をすることができる。
(賃貸借)
第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
- 一 土地の賃貸借 1年
- 二 建物の賃貸借 3ヵ月
- 三 動産及び貸席の賃貸借 1日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に解約の申入れをしなければならない。
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第618条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
(賃貸借の更新の推定等)
第619条 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
2 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は期間の満了によって消滅する。ただし、第622条の2第1項に規定する敷金についてはこの限りでない。
(雇用)
第623条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによってその効力を生ずる。
(期間の定めのある雇用の解除)
第626条 雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は5年を経過した後いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは3ヵ月前、労働者であるときは2週間前に、その予告をしなければならない。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは当期の前半にしなければならない。
3 6ヵ月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは3ヵ月前にしなければならない。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは相手方に対して損害賠償の責任を負う。
(雇用の更新の推定等)
第629条 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は第627条の規定により解約の申入れをすることができる。
2 従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金についてはこの限りでない。
(使用者についての破産手続の開始による解約の申入れ)
第631条 使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。この場合において、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。
(請負)
第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによってその効力を生ずる。
(委任)
第643条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる。
(委任の解除)
第651条 委任は各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
- 一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
- 二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したとき。
(寄託)
第657条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる。
(寄託者による返還請求等)
第662条 当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者はいつでもその返還を請求することができる。
2 前項に規定する場合において、受寄者は寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対しその賠償を請求することができる。
(寄託物の返還の時期)
第663条 当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者はいつでもその返還をすることができる。
2 返還の時期の定めがあるときは、受寄者はやむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
(組合契約)
第667条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによってその効力を生ずる。
2 出資は労務をその目的とすることができる。
(組合員の損益分配の割合)
第674条 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は各組合員の出資の価額に応じて定める。
2 利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は利益及び損失に共通であるものと推定する。
(終身定期金契約)
第689条 終身定期金契約は、当事者の一方が自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによってその効力を生ずる。
(和解)
第695条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによってその効力を生ずる。
(和解の効力)
第696条 当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。
(婚姻の届出)
第739条 婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによってその効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭でしなければならない。
(婚姻の無効)
第742条 婚姻は次に掲げる場合に限り無効とする。
- 一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
- 二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻はそのためにその効力を妨げられない。
(不適法な婚姻の取消し)
第744条 第731条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後はこれを請求することができない。
2 第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者もその取消しを請求することができる。
(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
第747条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3ヵ月を経過し、又は追認をしたときは消滅する。
(婚姻の取消しの効力)
第748条 婚姻の取消しは将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。
(財産分与)
第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときはこの限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
(離婚による復氏の際の権利の承継)
第769条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議でその権利を承継すべき者を定めなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は家庭裁判所がこれを定める。
(縁組の無効)
第802条 縁組は次に掲げる場合に限り無効とする。
- 一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき
- 二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第799条において準用する第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組はそのためにその効力を妨げられない。
(養子が尊属又は年長者である場合の縁組の取消し)
第805条 第793条の規定に違反した縁組は、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
(協議上の離縁等)
第811条 縁組の当事者は、その協議で離縁をすることができる。
2 養子が15歳未満であるときは、その離縁は養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
3 前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議でその一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
4 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
5 第2項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
6 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
(裁判上の離縁)
第814条 縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り離縁の訴えを提起することができる。
- 一 他の一方から悪意で遺棄されたとき
- 二 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
- 三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
2 第770条第2項の規定は、前項第1号及び第2号に掲げる場合について準用する。
(養子が15歳未満である場合の離縁の訴えの当事者)
第815条 養子が15歳に達しない間は、第811条の規定により養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して離縁の訴えを提起することができる。
(特別養子縁組の離縁)
第817条の10 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
- 一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
- 二 実父母が相当の監護をすることができること
2 離縁は前項の規定による場合のほかこれをすることができない。
(扶養の順位)
第878条 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所がこれを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても同様とする。
(扶養の程度又は方法)
第879条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所がこれを定める。
第1044条 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても同様とする。
2 第904条の規定は前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年」とあるのは「10年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る)」とする。
第1045条 負担付贈与がされた場合における第1043条第1項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。
第1050条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヵ月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときはこの限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。