未定稿のおわりの部分

 ……寺院センターでミロンガが行われている深夜、だれも乗っていない明かりの消えた列車が単線の線路の上を走っていました。ヘッドライトに照らされたレールと枕木のあいだの線路に外来種の雑草がおい茂り、線路の両側にはゴミがうず高く堆積しています。運転手はレールに沿って電車を走らせ、車掌は誰もいない車内に虚しく説教を続けています。漆黒の闇夜のなか、窓を開けたまま乗客のいない電車が走っています。ガッターンドットーン、ドッターンゴットーン、ダッターンゴットンドットン、ドットーンガッターンドットン、ゴットーンダッターンドットーン、、、
 ヒョウが踏み切りのまん中に立って電車の最後部の紅い球状の照明を見ていると、踏切と電車のあいだの線路の上でンヴィニ教徒たちが絡みあい凭れ合うようにして、蜃気楼のように揺れています。電車の行く手には深い断崖があり、後戻りすることはできません。ヒョウには、その風景が確かに見えています。
 その後、ヒョウは老人と司祭たちに会っていません。死の扉からエレベータに乗り込んだ老人と司祭たちが見たのは死の世界だったのでしょう。同行したはずのヒョウは何を見たのでしょうか。どうやら、ヒョウは自分がどこにいるかわからなくなったらしいのです。誰も彼の言うことを聞かなくなって数十年が経っています。ヒョウはもう世間にいない存在だったのです。

未定稿のはじめの部分

わきびとたち

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